Can-Am Spyder RT

いいですか、これ、見た目以上に面白いですよ。
ワシっと地面に張り付く巨大なカメのように、重量感満点のスタイリングがなかなかにインパクトあるコイツだが、この愚鈍そうなデカい図体だけ見て偏見を持っちゃいけない。
だって何を隠そう、かく言う私こそがこの外観にコロっと騙され、あまりのスポーティーさにひっくり返りそうになっちゃったんだもの!
やっぱ小学校の恩師、幸田先生は正しかった。人(?)は見た目で判断しちゃいけないのだ。

Can-Am Spyder RT Can-Am Spyder RT

Can-Amと書くと、エビちゃんとかモエちゃんとかそういう理想の部下的風体の美形モデルがわんさと出てくる赤文字系ファッション誌をぽわわんとイメージさせるような字面ではあるが、『カンナム』と読むのが正しい。そしてあのYouTube再生10億回とかそれ以上とか、数年前に流行った韓流のアレとも関係ないので注意してほしい。

Can-Am Spyder RT

カンナムは前2輪・後ろ1輪で逆三輪車スタイルのいわゆるリバース型トライク(3輪バイク)である。通常は前1輪・後ろ2輪の形式をとることが多い3輪バイクだが、敢えてこのスタイルをカンナムが取ったのは、このリバーススタイルのほうがスポーティーなハンドリングが実現できるからだとしている。
カンナムを製造・販売するBRP(ボンバルディア・レクリエーション・プロダクツ)社はカナダに本社を置く会社で、レクリエーション・プロダクツの名の通りに本国ではスノーモービルやウォータークラフト(水上バイク)などの趣味性の高いモビリティを製造・販売している。その歴史は思いのほか古く、1937年に創業者であるボンバルディア氏は最初のスノーモービルを製作している。
ちなみに過去にはATV(バギー)でかのダカール・ラリーにも出場している、まあちょっと面白いことが好きな会社であるわけだ。
このトライクにおける同社の歴史は2007年からスタートした。

Can-Am Spyder RT Can-Am Spyder RT

現在日本にも法人が存在し、正規輸入されている。
今回は、スパイダーRTリミテッドに試乗した。高速クルージングのためにゆったりと作られたスパイダーの中でも最上級となる豪華モデルである。2,991,600円(税込)、けっこうしっかりしたお値段なのだ。
しかしもう、いっかいこのアクセルワークと独特の加速感を楽しんでしまえば、トリコになるひとがいるのもよくわかる。しかもトライク、現状は合法でノーヘルメット走行も可能なのだ。もちろん二輪での事故経験者としてはヘルメットをかぶることを推奨したいけど、今のところこの開放感はオープンカーの比ではないのである。なのに普通自動車免許で乗られるところも、バイクよりもやや気軽に手を出せるんとちゃいますのん、というカラクリになっている。だいたい3輪もあるから立ちゴケもしないし、女性をツーリングデートに誘っても、ヘマをしようがないのが嬉しいではないか。

Can-Am Spyder RT Can-Am Spyder RT

エンジンはBRP-Rotax製の1330cc、水冷3気筒。それに6速セミATと後進ギア1速を備えている。ナビもガーミンが組み込まれ、いやいや、屋根がないだけでこれはちょっとした軽自動車よりも装備がエエやないのとビビるのはまだ早い。

Can-Am Spyder RT

なんとスタビリティ・コントロールとか、トラクション・コントロールまで装備しちゃってるし、もちろんクルーズコントロールなんてモノも入っている。ゴージャスなことこの上ないのだ。
ちなみに、個人的には必要ないが、4つのスピーカーが装備され、FMとiPodケーブルも付いてくる。

Can-Am Spyder RT Can-Am Spyder RT

とはいえ、やっぱりバイクでもなくクルマでもないから、乗りこなすのには練習をしたほうがいい。

Can-Am Spyder RT Can-Am Spyder RT

始動には若干の慣れが必要だ。メーターの中にある始動画面が完全に立ち上がってから、セーフティーを確認する画面の確認ボタンを押してやっと、エンジンをかけさせてもらえる。この辺、やっぱり外国産というか、日本の製品のイージーさに慣れているとプチイラっとするかもしれない。
さらにコイツを手足のように操るには、案の定四苦八苦した。
コーナーを曲がる際、ボディを倒して曲がれないというのは意外にもそう難しいことではなかった。だって、どうやっても倒れないんだから(あたりまえだ)、ハンドルを押したり引いたりするしかないんだもの。だけど、肝心のその押したり引いたりがまあ、クセモノなのだ。
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今回は試乗会ということで、この動力性能を試す前の練習コースとして、ミニジムカーナのような体験をさせてもらったのだが、これが悶絶モノの難しさであったのだ。そりゃ「はいどうぞ」って貸してくれないよな、である。何人たりともこの練習コースを2~3回回らないと、借り出しが出来ないシステムになっていたのも納得だ。

Can-Am Spyder RT Can-Am Spyder RT

ハンドルが、意外にも重いのだ。
で、超低速だと切れない。重くて。
練習コースはミニジムカーナだからして、パイロンスラロームなんかをさせてくれるのだけど、おっかなびっくりそろそろと走り出すと、いざカーブに差し掛かってからハンドルを切っても重みで切り遅れてしまうのだ。

Can-Am Spyder RT

そして、アクセルのレスポンスもわりと緩やか。開度に対してややラグがあってからトルクが生まれるイメージだから、このタイミングを掴むのが難しい。
それにブレーキはフットのみ。これもまた!(激しく混乱)

Can-Am Spyder RT Can-Am Spyder RT

しかし、面白いのである。
この四苦八苦感もだいぶ、面白いのである。
そぼ降る雨の中、ちっさいコースでバターになるかと思うくらいにぐるぐる周回を続けていても、この「なんとなく掴めない感」から「あれ?なんかうまくなってきたかも感」になり、「え、意外にわたし上手いんじゃないの?感」に変わるあたりの爽快さは最高だ。

Can-Am Spyder RT

そして晴れて練習コースから解き放たれたとき、このスパイダーRTリミテッドのベテラン演歌歌手みたいなド安定感しか感じないトルクフルな加速に、もう、もう、完全に笑顔全開になってしまった。特にゆるいカーブにそこそこの速度で入って行くときのGのかかり方は最高に面白い。確かにコレはバイクでも、クルマでも味わえない未知のGであった。

Can-Am Spyder RT

もちろん、ある程度スピードが出ていれば、ハンドルが重くて重くてどうしようもなくなっちゃうほどではない。
だから、超低速走行がイヤがおうにも必要となる駐停車時はやっぱり、ある程度のテクニックが必要だと思う(自動車用のパーキンスペースに駐車することが可能)。

Can-Am SpyderF3 Can-Am Spyder RT

さて、実はカンナムにはもうひとつ、ニューモデルのトライクがある。スパイダーF3だ。
コチラもチョイ乗りしてみたのだが、ドシっとふんぞり返って座るようなツーリング用のスパイダーRTリミテッドと違って、F3のほうがややライディングポジションが前傾したスポーティーなもの。
エンジンスペックは同じだけど、性格がかなり違うから、気になる人は両方とも試してから買って欲しい。
いやいや、双方もっと長距離乗りたかったです。これはホント、いい遊び道具だ。

■BRP ジャパン 公式サイト
http://www.brp-jp.com/spyder/