6月14日(日曜日)、袖ヶ浦フォレストレースウェイに於いて、日本電気自動車レース協会(以下JEVRA:愛称ジェヴラ)の主催による、2015 ALL JAPAN EV-GP SERIES ROUND.3(2015年度第3戦 全日本袖ヶ浦EV55Kmレース大会:以下EVレース)が開催された。その模様をお届けしたい。

EV:Electric Vehicle:電気自動車(以下EV)の略称

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EVレース、聞きなれないユーザーも多いかもしれないので、ここで概要をお伝えする。
一言で表現するのであれば「地球環境に配慮したモータースポーツ」それがEVレースだ。
当然のことながら、EVは二酸化炭素(CO2)の排出はゼロ。地球温暖化というテーマをも踏襲したこのEVレースは、これからの新しいモータースポーツとしての期待度も高い。

JEVRA主催のこのレースは、2010年から開催され、本年で6年目を迎える。このレースが開催されている趣旨であるが、日々進化の過程にあり、これからの時代を牽引するであろうEVを「レース」というフィールドで競い合う場を設けることにより、互いの性能を鍛え上げ、技術開発のスピードアップを図ると共に、市販EV車へのフィードバックを目的としているとのことだ。



また、大会事務局長の富沢久哉氏に直接話を伺ったのだが、このEVレース、一般的な自動車レースとは違い、JAFのモータースポーツライセンスが不要で参加できるほか、ロールバーの取り付けやシートベルトの変更といった車輌の改造も不要で、「市販車のまま、誰でも」参加が出来るとのこと。速さを競うだけでは勝てない、EVレース独特の世界「電費(燃費)と電欠 (ガス欠)を緻密に考えたレース運び」に、このレースの面白さと楽しさがあり、是非ユーザーのみなさんにも参加していただきたい、とのことだ。ついつい「特別」と考えてしまうモーターレースの世界の中では、大変興味深い話である。



このEVレースには、またまた独特なクラス分けが存在する。今年から2クラス増えて合計8クラスとなっている。

■市販車クラス(駆動モーター最大出力によって4クラスに分類)
・EV-1クラス:161kW以上
テスラ・ロードスター(215kw)等〜
・EV-2クラス:111kW以上161kW未満
〜BMW i3(125kW)等〜
・EV-3クラス:61kW以上111kW未満
〜日産リーフ(80kW )やFIT EV(92kW)等〜
・EV-4クラス:61kW 未満市販車のエンジンを
〜三菱i-MiEV(46kW)やスマートEV(55 ~ 60kW)VW e-UP!等〜

■モーターに転換したEV-C(コンバート)クラス(出力自由)
・鉛電池搭載クラス
・リチウムイオン電池クラス

■開発もしくはレース専用に製作されたクラスEV-P(プロトタイプ)クラス(出力自由)

■燃料電池車(FCV)クラス





レースは、予選・決勝の2部にて構成されている。予選は決勝のスターティンググリッドを確定するために、ベストタイムを競う。決勝は、それぞれの大会で設定された「距離数」が勝敗を大きく左右する特徴を持つ。例えば今大会の場合は「55km」。駆動モーター最大出力によって様々なクラスが存在するため、総合トップが23周、レース名の「55km」を走り終えた後の順位で、総合ならびにクラス順位が確定する。但し、この「距離数(今大会は55km)」というのが厄介でもあり、EVレースの最大の面白さでもあるという。「電費(燃費)と電欠(ガス欠)を緻密に考えたレース運び」をしなければ、電気不足でのリタイアや、電気をセーブしすぎた為にラップタイムが伸びず順位を落とすことになるなど、ただ踏み込んで最速ラップを重ねる、という一筋縄ではいかない「頭脳戦+技術戦」という面白さが存在する。



さて、今大会、第3戦のEVレースも様々な車がエントリーしたが、その中でEV活用の面白い取り組みである「神奈川県横浜市内で、ワンウェイ(乗り捨て)方式のカーシェアリングサービス「スマート ワンウェイ カーシェアリング」(愛称「smaco」)を展開しているメルセデス・ベンツ日本(以下、MBJ)が、「smart」でエントリーしていたので密着を試みた。実はこのMBJチーム、今回は所用にて搭乗することは無かったが、同社社長、上野金太郎氏自らがドライバーとして参戦する計画もあるというから驚きだ。



エントリー車種は勿論、100%電気だけで走る「smart fortwo electric drive」。その内1台はスポーツマインドを駆り立てるBRABUSモデルで参戦。このsmart fortwo electric drive、スタート直後に最大トルクを発生し、0〜100km/hを13秒以下で到達、180kmを超える長い航続距離を保つなど、毎日のシティライフにピッタリとなじむように、最小の中にすべてを求めたモデルでもある。ちなみに、EVで気になる充電時間は、EV充電用AC200Vコンセントで約8時間である。



MBJ スマート ブランドマネージャー:島川杏子氏にどんなEVなのかを伺ったところ、「普段使いの視点から考えて、既に完成しているモデルだと考えます。開発当初は"高速域重視"の設定でしたが、お客様の声を多く聴くことにより、smart fortwo electric driveに求められていることは"中低速域重視"であることに気づき、市販車として販売している今のモデルは、航続距離はそのままに、走り始めてすぐに街中をキビキビと快適に走れるようなEV、買い物に行く、通勤に使う、そういう使い方が似合うモデルとして完成致しました」とのことである。



また、島川氏はEVレースに参加する意義についても語ってくれた。「とにかく、楽しい!そんなEVをこのモデルでご提供できているという自信があります。何よりもこのEVレースに参加する私たちMBJの意義は、社長の上野も言っておりますが、『EVをもっと楽しもう!』この考え方にあります。一般的な車とEV、その役目は環境保全等という大切な考え方も勿論ありますが、その前に『EVって楽しい!』ということをレースに参加することで、啓蒙したり伝えていければいいな、と感じています」とのことである。取材中、終始笑顔で語るその姿に、その気持ちは表れているのだろう。



先ずは予選、赤いsmartは、autoblogでもお馴染みのモータージャーナリスト、斎藤聡氏がドライバーを務め、黒いsmart(BRABUS)は青山義明氏がドライバーを務める。EV-4クラスでの参戦、ライバルは三菱i-MiEV。決勝とは違う最大出力を思う存分に使える予選、決勝への駆け引きもありつつ、想像通りの真っ向勝負。



流石はEVレース、エンジン音は一切しないので、静かだ。ただ、この規模のサーキットでも最高速度は各車平均100km/h。風を切る音、タイヤがアスファルトを掴む音が響き渡る。なんとも不思議なモータースポーツサウンドだ。



結果は、EV-4クラスでsmartチームが1-2フィニッシュ。幸先の良いスタートとなる。特に赤いsmartを操るドライバーの斎藤聡氏は写真を見てもわかるとおり、余裕のクラス予選1位を獲得。決勝への期待も高まる。




予選終了後は、これまたEVレース独特の景色を楽しめる。儀式ともいうべき充電だ。決勝ではフル充電で各車臨む為、約5時間の充電時間が与えられる。車から伸びるコードが、またいつもと違った風情を醸し出している。



いよいよ決勝。EVレース最大の見せ場「電費(燃費)と電欠(ガス欠)を計算した頭脳+ドライビングテクニック」の戦いの幕開けだ。



ライバル、三菱i-MiEVとの三つ巴戦、サーキット上で火花を散らす。
取材とはいえ、熱くなる気持ちは抑えられない。



結果は、予選と違わぬ実力を発揮し、EV-4クラス、smartチームは1-2フィニッシュ。表彰台にて互いの健闘を讃え合う。smartドライバーの斎藤氏、青山氏の顔にも笑顔があふれている。勿論、表彰式にはMBJチームも参加し、共に喜びと「楽しさ」を分かち合ったことは言うまでもない。

最後に。静かでありながら、熱い火花散らす「電費(燃費)と電欠(ガス欠)を計算した頭脳+ドライビングテクニック」の戦いであったが、実際に参戦し、勝利を掴んだモータージャーナリスト斎藤聡氏が発言した「電気量を見ながら、知恵を絞りつつ、ドライビングテクニックも駆使して戦う。非常に面白いレースでした。きっとこれから盛り上がる、そう思います。」という言葉にもあるように、EVレース、これからの動向が楽しみである。ユーザーも興味があったら、是非観戦に出向いてみてはいかがだろうか。次回は8月30日(日)第4戦「全日本富士EV50kmレース大会」(富士スピードウェイ/静岡県)。詳しくは、「JEVRA公式サイト」をご覧いただきたい。


smart 公式サイト
http://www.smart-j.com/

メルセデス・ベンツ 公式サイト
http://www.mercedes-benz.co.jp/

JEVRA 公式サイト
http://jevra.jp/