2015年ル・マン24時間レース、総合優勝を巡る各チームの戦いを振り返る
フランスのサルト・サーキットで現地時間13日午後3時にスタートした第83回ル・マン24時間レースが、14日にゴールを迎えた。今年は序盤から、歴代最多優勝回数を17に伸ばそうとする名門ポルシェと、2009年からの6連覇を狙う近年の覇者アウディとの間で激戦が繰り広げられた。

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長いレースを制したポルシェ919ハイブリッド」の19号車(ニック・タンディ/アール・バンバー/ニコ・ヒュルケンベルグ)は、ル・マンに3台のマシンを送り込んできたポルシェの中では予選の順位が表すように"3番手"の存在だったが、結局一度もトラブルに見舞われることなく順調に最も多い周回を重ねて優勝した。

その左側で並んでチェッカー・フラッグを受けた2位のポルシェ17号車(ティモ・ベルンハルト/ブレンドン・ハートレー/マーク・ウェバーが)は、ポール・ポジションを獲得した同じポルシェの18号車(ニール・ジャニ/ロマン・デュマ/マルク・リーブ)をスタート直後にパスすると、レース序盤をリードして見せたが、他車の事故による追い越し禁止区域で違反を犯し、1分間のピットストップというペナルティが科せられてしまう。接戦のレース展開でこのタイムロスは大きい。チーム・メイトに首位を譲った。

予選で3分16秒887というコース・レコードを記録したポルシェ18号車だったが、レース開始から7時間が過ぎた頃、コースを外れてタイヤバリヤに激突。ダメージの割に素早い修復でコースに戻り、速さとはまた別の強さを見せ付けたが、夜の間にもブレーキトラブルから2度目のコースアウトを喫し順位を下げ、5位でゴールした。



搭載するハイブリッド・システムのエネルギー放出量は、レギュレーションで定められている中で最大の8MJ(メガ・ジュール)を選択し、替わりに制限される燃料消費量に、2.0リッターV型4気筒ターボという小さなエンジンの燃費を向上させることで対応するというポルシェの作戦が見事に当たった。それを完璧に実現した技術力も、流石ポルシェと言わざるを得ない。もし、次期型「ボクスター」のエンジンが4気筒ターボにダウンサイジングされたとしても、今年のル・マンを見れば文句を言う人はだいぶ減るのではないだろうか。



一方、予選ではポルシェに差を付けられたアウディR18 e-tron quattro」も、レースでは3車とも予選タイムを上回る3分17秒台というベストタイムを記録しながらライバルに迫る。まるでスプリント・レースのような手に汗握るバトルを見せ、観衆を沸かせた。しかし、3位でゴールした7号車(アンドレ・ロッテラー/マルセル・ファスラー/ブノワ・トレルイエ)は途中で無線にトラブルが発生したり、リア・カウルに問題が発生してアウディ(というかチーム・ヨースト)らしくないガムテープによる補修を行うなど、完璧とは言えないレースだった。

続く4位となったアウディ8号車(ルーカス・ディ・グラッシ/ロイック・デュバル/オーリバー・ジャービス)は、スタートから3時間が過ぎた頃にスローダウンしたLM-GTEクラスのマシンを避けきれずにコースアウト。ここで既に1ラップ周回遅れとなってしまう。

アウディ9号車(フィリップ・アルバカーキー/マルコ・ボナノミ/レネ・ラスト)はレース終盤、ハイブリッド・システムに問題が発生。トヨタの1台に先行されてもこれを追う力は失っていた。7位でフィニッシュする。

今年のアウディは、これまでのような"横綱相撲"とは様相が違った。速いポルシェに必死に着いていくあまり、いつもの余裕が根こそぎ削られたのだろうか。



予選では敢えて最速ラップタイムを目指すタイムアタックは行わず、決勝レースのためのセットアップに注力したトヨタ。「TS040ハイブリッド」は、一発の速さで遅れを取っても、長丁場のレースを着実に走り抜き、最後に笑う...はずだった。しかし、速さに勝るライバル達が、同じように着実に走り切ってしまったら、もう対抗する術はない。しかも1号車(アンソニー・デビッドソン/セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴)はクラッシュしてフロント・カウルとリア・サスペンションを壊し、修復のため15分を失ってしまった。2号車(アレックス・ブルツ/ステファン・サラザン/マイク・コンウェイ)がアウディの1台を凌ぐ6位でゴールしたのは上出来と言えるだろう。1号車は8位と、予選順位から変わらない。昨年型のマシンを熟成させてレースに臨んだトヨタだったが、ライバル達の進化に対する予測が甘かったか。



ミドシップが常識となっている他のプロトタイプ・レースカーに対抗し、フロントにエンジンを積んで前輪を駆動するという特異なレイアウトで挑戦した日産だったが、「GT-R LM NISMO」は遅い上にトラブルも多いという散々な結果に終わる。23号車(マックス・チルトン/ヤン・マーデンボロー/オリヴィエ・プラ)と21号車(松田次生/ルーカス・オルドネス/マーク・シュルツイスキー)はコース上で止まってしまいリタイア。残る22号車(ミハエル・クルム/ハリー・ティンクネル/アレックス・バンコム)が総合40位、最後尾で完走を果たした。来年はどうするつもりなのだろう、と今から心配になる。確かに参戦初年度の今年は事前のテスト走行が足りなかったが、これから1年掛けて進化させても、きっとライバル(と現状では言えないが)はもっと速くなっているだろう。


市販スポーツカーをベースにしたレース仕様車で戦うLM-GTEクラスも見応えがあった。英国のアストンマーティン、イタリアのフェラーリ、米国のコルベット、ドイツのポルシェが激しくやり合う光景は、クルマ好きにとっては夢のよう。ここに日本車がもし加わるとすれば、日産「GT-R」がその筆頭にあげられるだろう。前輪駆動の珍奇なマシンではなく、その名前の由来通り"GT"というカテゴリで戦い、世界の名だたるビッグネームに勝利することこそ、日産とニスモに今、ファンが最も期待するレースなのではないかと、どうしてもそんなふうに思えてしまう。

総合優勝を目指すなら、来年はまず、3分20秒台で24時間走り切れるマシンを作らなくてはお話にならない。一年後に向けて、勝者も敗者も、今日からもう戦いを始めていることだろう。


By Hirokazu Kusakabe
Photo Hideyuki Nakano

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