HONDA SHUTTLE

 1983年のシビック シャトルからその歴史が始まり、先代フィット シャトルにて甦った"シャトル"が、めでたくシビックでもフィットでもない単独のシャトルとして生まれ変わった。このフィットからの独立は、差別化を求めるユーザーの声に応えた結果だという。フィットが基本的には実用車であるのに対して、シャトルは大抵の場合、生活を豊かにするための道具であり、物心ともに多少なりとも余裕があってこその、こだわりの1台として選ばれている。それが同じフィットに括られてしまうのは面白くない、というのはナルホド納得できる話だ。

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 名前だけでなく見映えも、ずいぶん良くなったんじゃないだろうか。正直に言うとフィット シャトルが登場した際、「これでリゾートに乗りつけてほしい」というホンダ関係者の声を聞いた時には、冗談かと思った。しかしシャトルは、リッチに見えるか否か、ハイセンスと思えるか否かはともかく、とりあえずフィット シャトルよりは格段に洗練されたと言っていい。

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 フェンダーやドアがフィットと共通なだけに、ボディサイドのキャラクターラインなどうるさく感じられる部分も継承されているのは惜しいが、少なくともフィットに荷室だけドーンと付け足したクルマには見えない。フロントマスクも結構力があって、パッと見て5ナンバーサイズとは思えないほどだ。

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 内装も印象、悪くない。似ているようでいてフィットとは別物のダッシュボードはステッチ入りのソフトパッドで覆われていて、クオリティも上々。シートやドアトリムには滑らかな高密度ファブリックが使われ、さらには最上級の「HYBRID Z」には表面の凸凹と立体的な木目調パネルなどもあしらわれて、見た目だけでなく手に触れても、凝ったインテリアだなと感じさせる。

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 広さも言うことナシ。前席だけでなく新たに2段階リクライニングがついた後席も足元、頭上に十分な余裕を確保していて、快適に過ごすことができる。

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 では肝心のラゲッジスペースはと言えば、まずはバックドアの開口部の大きさに驚かされる。地上高はFFモデルで54cmと低く、フロアと面一になっているので荷物の積み降ろしはラクなはず。開口幅も110cmが確保されている。汚れをすぐに落とせるアンダーボックスを含めて、フィット シャトル ハイブリッド比で53ℓ増の570ℓの最大容量も申し分無い。

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 しかもこのラゲッジスペース、単に広いだけではなくリアシートを倒した時に床面が完全にフラットになるよう形状が工夫され、更にサイドパネル部分までカーペット張りとすることで荷物で傷がつくのを防止し、また見映えも向上させている。リアシートの背もたれに備わる折り畳み式のマルチユースバスケットは、帽子のような置き場に困るものを入れて置くためのアイテム。こんな風に、上質な使い勝手のためにきめ細やかに配慮されているの辺り、なかなかやるなという感じである。

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 シャトルのラインナップには1.5ℓアトキンソンサイクルエンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッド、そして1.5ℓ直噴のガソリンエンジンが用意される。主力はハイブリッドで、ガソリンはエントリーという扱い。よって今回も、まずはハイブリッドの最上級グレード「HYBRID Z」から試した。

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 走り出すと、車内は非常に静か。乗り心地も良く、第一印象はなかなかのものと言える。特に静粛性に関しては、吸音タイプのアンダーカバーの採用や、ボディやテールゲート内部などへの適材適所な制振材の配置、フロントコーナーガラスの板厚アップ......と、様々な対策が為されていて、効果を発揮しているのは間違いない。しかしながら何より効いているのは、ボディ剛性の向上だろう。特に開口部の大きな車体後部の手当は念入りにされているようだ。

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 しなやかな乗り心地には、通常時は柔らかく、大入力に対しては高い減衰力を発生する振幅感応型ダンパーもひと役買っている。ここまでゆったりと動くなら、路面の継ぎ目を通過する時などの鋭い入力をもう少し穏やかにいなしてくれればと贅沢を言いたくなるが、全般的には非常に満足できる乗り心地と言える。

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 単に柔らかさで言うならフィット シャトルだって相当ソフトだったが、それと違うのは走りを犠牲にしていないこと。ステアリングは直進時の据わり感がキチッと出ているし、コーナリングもエッと思うぐらいスッキリと切れ味が良い。具体的にはリアが遅れてついてくる感じが無く、操舵と同時にスッとクルマ全体で曲がっていって、背の高さも意識させないのだ。

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 マニアックな話になるが、実はステアリングシステムもリアアクスルビームも専用品だし、ハブベアリングも高剛性タイプとされるなど、シャシーには広範囲に手が入れられている。ゆったり長距離を往くのも、これなら疲れは少ないに違いない。

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 発進を電気モーターで行なうハイブリッドは出足に優れ、その後の加速感も悪くない。回しても気持ち良いエンジンだが、ほとんどの場面でその必要を感じない。但し、たとえば80km/hくらいから追い越しなどのためにスッと速度を高めたい時などには、一瞬反応が遅れることも。DCTのシフトダウン待ちのようだが、こういう場面では電気モーターの後押しをもっと感じられたらいい。 

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 続いてガソリンエンジンの「G」も試したのだが、こちらも想像以上に好印象だった。エンジンは、これぞホンダエンジンとばかりに軽快に回り、レスポンスも良好。絶対的なトルクでは劣っても、クルマとの意思疎通はこちらの方がしやすい。ダンパーは実は同じザックス製とはいえ構造はごくフツウのものになり、液封トレーリングアームブッシュ、吸音アンダーカバーなど様々なアイテムが省かれるにも関わらず、ドライビングフィールだって快適性だって、差が無いとは言わないが、これはこれでよくまとまっている。道具っぽさというかクルマっぽさというかは、却ってこちらの方が上かもしれないとも思えた。
つまりエントリーモデルだって決して安物ではないということ。すっぴんでも爽快に走るのは、つまり骨格というか基本がしっかり出来ているのだろう。

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 シビック シャトルのような斬新さがあるわけではないが、フィット シャトルよりは多少は洒落た感じがするし、走りにしても使い勝手にしても、質の高さが感じられるのが,シャトルというクルマだ。隅々まで、よく練られた1台である。

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 主にデザインの話として、そこはかとなく醸し出す雰囲気、センスの良い生活感みたいなところで、輸入ワゴン車にはまだ敵わないのは事実。それでも、専用色のミスティックガーネット・パールにリゾーターブラウンの内装なんて組み合わせで、洋服含めてうまくキメて乗っていたら、それなりに対抗できるかもしれない。あるいはエントリーの「G」にいつも遊びのギアを満載にしてガンガン使うという方が却ってサマになるだろうか? 要するに、あとは実際に乗る人、使う人が、これからシャトルというブランドを育てていくということになりそうだ。 

■ホンダ 公式サイト
http://www.honda.co.jp