Vespa 946 Bellissima

ベスパといえば、お洒落なイタリアンスクーターの代名詞。そもそも"服を汚さずに乗れるバイクを造ろう"と、いかにもイタリアンらしい発想で造られた乗り物であり、その通りに「ローマの休日」ではアン王女がスカートで乗り回し、「探偵物語」では工藤ちゃんがスーツ姿で乗り回していたりする。さらに、60年代のモッズとロッカーズの抗争を描いた映画『さらば青春の光』の中では、ロッカーズはどちらかというと土方で硬派に革ジャンを羽織った男臭いバイク乗り。モッズは、スーツ姿にモッズコートを羽織り、ベスパやランブレッタでお洒落に決めるスクーター乗りといった描かれ方をしている。これをみても、昔からスクーターはおしゃれな人が乗るモノ。というイメージが確立していて、バイク好きというよりも、一般的にはファッションに敏感な人たちが、ファッションの一部としてベスパに乗っている、といったイメージが強かったりするのだが......。

Vespa 946 Bellissima Vespa 946 Bellissima

ちょっと昔のバイクに詳しい人たちならば、ベスパがとんでもなく乗りにくい乗り物"だった"いうことをご存じだろう。そう、昔のベスパと言えば、ハンドシフト(シフトチェンジがハンドルだった!)にオイルとガソリンを混ぜなきゃならない混合給油。お洒落に乗りこなしたくても、ちょっとしたコツやマニアでなきゃ乗りこなせない乗り物でもあったりしたのだ。しかし、今のモデルは排ガス規制の影響もあり、インジェクションにオートマチック。さらには混合なんてしなくても良い、誰にでも乗りこなせるスクーターに進化している。これじゃぁベスパじゃないっ! なんて頑固者もいるかもしれないが、この「946」を見たら、そうはいっていられなくなるはず!
というのも、ベスパの量産第1号車である「ベスパ98」が発売された1946年にちなんでつけられた「946」というモデル名に、その98のプロトタイプであった、MP6を近未来的にモディファイして現代に蘇らせたモデルだからだ。

Vespa 946 Bellissima Vespa 946 Bellissima

さらには、フレームも兼ねるモノコックボディに、側面は伝統的なオメガ(Ω)の形状を継承し、クラシカルなシートを再現。

Vespa 946 Bellissima

これだけでも、往年のベスパファンにはたまらないはず。もちろん、それまで何となくしかベスパを知らなかった人でも、そのクラシカルながらも近未来的なフォルムに美しさを感じ得ずにはいられないだろう。さらに、驚きなのが、ポリッシュ仕上げ、ハンドルレザーのステッチ、組み立てなど、メイドインイタリアにこだわり、工場に専用ラインをもうけ、専用の職人が1台1台ハンドメイドで作り上げているということ。全てにおいて妥協をせずに、スペシャリティな1台を作り上げる、そんな職人気質なイタリアンならではの1台とも言えるのだ。
Related Gallery:Vespa 946 Bellissima

昨年(2014年)、ニューモデルとして登場した「946 Ricordo」は、その排気量とは思えない100万円を超える価格にも関わらず完売。今シーズンの2015年モデルは、排気量を150ccにアップして、モデル名もイタリア語で"美しい"の最上級の意味をもつ「Bellissima」に。そんなプレミアムなスクーターを目の前に、心拍数が上がらずにはいられない。

Vespa 946 Bellissima

まず見た目のインパクトは最強で、個性的な形状の革張りシートに高級感を感じる。だって120万円超えですよ! 当たり前といえば、その通りだが、150ccクラスのスクーターでこの価格設定というのは、なかなか思い切ったモノ。モノの良さや行程、こだわりなどを知れば、なるほど、と納得出来る価格ではあるが、日本ではどちらかというと,足代わりにがんがん使い倒すイメージのスクーターを、こんなコンセプトで作って、しかも、販売してしまうというのは、多分......ありえない。

Vespa 946 Bellissima Vespa 946 Bellissima

質実剛健ともまた違う。布きれなのにウン万円もする海外ブランドのスカーフに通じるモノがある。さすがヨーロピアン。よくぞ作ってくれた! と思わずにはいられない。洋服も、どうして海外のブランドモノはそんなに高いの? と良く聞かれるのだが、その歴史の中で培われてきた技術の継承、職人の技、確固たるアイデンティティがありそれが価格となっているのだ。

Vespa 946 Bellissima

ファストファッションで安価に洋服が手に入る時代となったが、それを基準として全てを考えるとおかしなことになる。老舗と呼ばれるアパレルや、バイクメーカーがこの時代に生き残るために何をしなければいけないのか。こんな所に現れているのではないかなぁ、なんていう思いも過ぎる。なんて、バイクと全く関係のないところまで考えを及ばせるというこのスクーターはやっぱりただ者ではない。乗り味がどうとか、言う前に、そのフォルムだけで全てを物語るバイクというのも、なかなか出逢えるモノではない。いつもなら、直ぐに跨がって、その性能やハンドリングを試したくなるのに、じっくりといつまででも眺めていたいと、思わせるスクーターだ。

Vespa 946 Bellissima Vespa 946 Bellissima

ひとしきり、その流線型の美しいフォルムを堪能してから、跨がってみる。ん? やっぱり足が届かない......。さすがは外車、日本人には相変わらず厳しい! 

Vespa 946 Bellissima

スクーターなのに足付きが悪い、というのはベスパの昔からの特徴でもあり、シートからお尻を落とさないと両足が届かない。でも、エンストの心配はないのでその分気楽だ。スロットルを捻ると、緩やかに優しく発進する。150ccという排気量の割には大柄な車体に、ちょっと物足りなさは感じるものの、空冷ならではのジェントルさがたまらない。

Vespa 946 Bellissima Vespa 946 Bellissima

走り出すと軽やかで、ハンドリングもスムーズ。今回、写真を見てお解りの通り、土砂降りの中での試乗となったのだが、ボディに着いた雨粒が流れる様も美しい! と見とれるほどの余裕さえある。スクーターという特性もあるかもしれないが、怖さを全く感じない。

Vespa 946 Bellissima

そして、なんとこの946 には、150ccクラスだというのに、ABSが標準で装備されているのだ。さらには、トラクションコントロールシステムも搭載! こんな雨の日の悪路でも、全く滑る感覚がなく、割とラフにアクセルを空けても、ブレーキを強めにかけてみてもスムーズだったのは、この技術のおかげだったのだ。見た目のフォルムだけで満足していたら、この性能。デザインだけでなく、最新の技術が搭載されているというのはなんとも頼もしい。雨の日も楽しく気軽に乗れる、というのがまさにスクーターの真骨頂だと思うのだ。

Vespa 946 Bellissima Vespa 946 Bellissima

こんなバイクに乗るときは、ファッションもやっぱりちょっとこだわりたい。スカートとピンヒールで乗るのは、日本の道路事情では、安全面で余りオススメ出来ないが......。スポーティーなライディングジャケットではなく、もう少しカジュアルにファッションも楽しめそう。

Vespa 946 Bellissima

バイクは、そのものだけでも充分に雰囲気を語ってくれるが、スクーターの場合、ライダーの服装も含めた全てが全体の雰囲気となる。そんな不思議な乗り物。

Vespa 946 Bellissima

「Vespa 946 Bellissima」は工業製品と言うよりも、もはや芸術品。そんなスクーターがあってもいいわよね。と物欲と共に所有感を満足させる、納得させる1台だったのだ。

■特設ページ
http://www.piaggio.co.jp/vespa946/index.html


946 Bellissima
■SPEC
◎全長×全幅×全高:1965×730×1170mm ◎ホイールベース:1405mm ◎シート高:805mm ◎車両重量:147kg ◎エンジン型式:空冷4ストローク単気筒SOHC 3バルブ(吸気2/排気1)◎最大出力:11.9hp/8,000rpm ◎最大トルク:11.5Nm/6,750rpm ◎排気量:155cc ◎ボア×ストローク:58×58.6mm ◎燃料タンク容量:8.5L ◎フロントタイヤ:120/70-12 ◎リアタイヤ:130/70-12

■PRICE
124万2000円(消費税8%込み)

■ピアッジオ グループ ジャパン 公式サイト
http://www.piaggio.co.jp/vespa/