Mercedes-Benz AMG GT

5月8日、メルセデス・ベンツは"究極のハイパフォーマンスを追求するブランド"として「メルセデスAMG」ブランドを設立しスタートさせることが発表された。先に発表された究極のエクスクルーシブを追求するブランド「メルセデス・マイバッハ」とともに、メルセデスの両極の究極を支える柱になる。
そのメルセデスAMGの第一弾として「メルセデスAMG GT」がデビューした。

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AMG GTはスペースフレームを持つスポーツクーペで、SLS AMGの実質的な後継モデルとなる。搭載するエンジンは4L V8直噴ツインターボ。ドライサンプ化され、フロントミッドシップに搭載。トランスミッションはデュアルクラッチ式セミオートマのAMGスピードシフトDTC。これをトランスアクスル化し、リヤアクスルにレイアウトする。
その結果、前後重量配分は47対53の理想的な前後重量配分を実現している。

Mercedes-Benz AMG GT

チューニング違いの2つの4L V8ツインターボを用意し、452馬力/600Nmのパワーユニットを搭載するAMG GTが1580万円。510馬力/650Nmを搭載するAGM GT Sが1840万円。

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メルセデスは、このクルマでスポーツカー市場に本格的に参入するという。メーンターゲットはポルシェ。エンジンパフォーマンス的には911ターボまで含まれる。このほか、2シータースポーツでみるとアウディR8やジャガーFタイプあたりも視野に入りそうだ。

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つまりスパーカーカテゴリーの少し下。ブランド名もさることながら、パフォーマンスで勝負するスーパースポーツカテゴリーとでも言ったらいいのだろうか、ポルシェ911の主戦場でもあるわけだが、そこにAMG GTは参入してきたということだ。
しかも、その出来栄えが素晴らしい。
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今回試乗したのはAMG GT S。富士スピードウエイで走らせることができた。
結論を急げば、このクルマはコントロールする楽しさ、面白さを持ったクルマであった。

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とかくこの手のハイパワースポーツカーは、驚異的な加速性能と、旋回スピードを上げるために、グリップ性能の限界を追い求め、それを誇る...といったイメージがある。またユーザーも、どこか限界知らずの高性能車が高性能スポーツカーであるかのような錯覚を持っている。けれどもどんな高性能スポーツカーであろうと、クルマである限り運転するのは人であり、人がコントロールしやすいことは、重要な性能なのである。
メルセデスAMGは見事にそんな車を作ってみたのだ。

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とはいえ、最初にステアリングを握る時にはさすがに緊張する。510馬力のパワーと650Nmの最大トルクを発揮するモンスターである。ところがいざ走り出してみると、不思議なくらい緊張することなく、スッと走らせることができるのだ。

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以前SLS AMGに試乗したことがある。このクルマも想像するよりはるかに乗りやすかったが、長大な(感覚的に)ノーズ、コクピットの穴倉に下半身をもぐりこませているかのようなドライビングポジション、ダイレクトなエンジンレスポンス、鋭いピックアップなど、少なからずドライバーを緊張させる要素が(たぶん意図的に)残されていた。実際に走らせると思いのほかドライバーに寛容で、その点にも驚かされた。ボディ剛性が素晴らしく高く、パワーをきっちり受け止められるだけのシャシー性能を備え、ビックリするくらい優れたトラクション性能を持っていた。ハイペースで走らせるときのSLS AMGはひと時も緊張を抜けない緊張感の中にあるが、ドライバーを裏切らない、という絶対的な安心感も備えており、シビアさと安心感を併せ持った、これまでのスーパースポーツカーとは毛色の違ったクルマであると感じた。

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その血統を受け継いだAMG GTは誤解を承知で言えば、SLS AMGから限界性能のピークをさらに少し削って、その分コントローラビリティを優先したセッティングになっている。4L V8直噴ツインターボエンジンは、アクセル操作に対するスロットルの開き方や、それに伴うパワーやトルクの出し方を巧みにコントロール。具体的にはストッロルを踏み込んだ瞬間のスロットルの開き方を(大げさに言うと)ディレイさせ、マイルドに(と言っても相当刺激的だが)パワーやトルクが発生するように味付けしている。

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ターボもタービンのピックアップは素晴らしくいいが、トルクの出し方は穏やかで、特にアクセルを踏み込んだ瞬間の、トルクが爆発的に増大してシビアになりがちな部分を上手に丸め、ドライバーに刺激は与えても緊張を与えないような、あるいはクルマの挙動を唐突に乱さないような味付けがされている。

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ドライビングポジションも下半身をもぐりこませるようなものから、ペダルとハンドルとヒップポイントの三角形が乗用車的になって、この点でもしっくりくるものになっている。
乗車位置もクルマのほぼ中央(ちょっと後ろ側)あたりになっており、SLS AMGと比べボンネット長が短くなっていることもあって、違和感がなくなっている。
乗り易さのもう一つの理由は、クルマの動きがシビアすぎず、それでいて無駄な動きを感じさせないところ。

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シャシーセッティングは、AMGダイナミックセレクトで、コンフォート、スポーツ、スポーツ+、インディビデュアル、RACE(GT S専用)から選べルのだが、コンフォートのままでも、フワつきがすくなく、そのままサーキットを走れるほど。これだけパワー&トルクがあると、エンジンレスポンスやシフトアップがそれほど気にならない。もちろんスポーツ+やレースモードにすると、よりサーキット走行にあったセットアップになっているといえるが、ダンパーのセッティングは厳密にサーキット仕様というよりは、アウトバーンを走る速域によって、ダンパーを硬さを合わせることを狙っているのではないかと思う。例えばコンフォートは100km/h内外まで、スポーツは150km/hくらい、スポーツ+とRACEはそれ以上でクルマの動きがピタリとくる。

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もう一つ興味深いのが3ステージESP(横滑り防止装置)の採用だ。通常のESP ON、一定のドリフトアングルを許容するESP SPORTS Handling、サーキットでのダイナミックなどリビングのためのESP OFFから選べるようになっていたこと。従来メルセデス車はESPの完全オフができないクルマがほとんどだったが、AMG GTはカットできるようになっているのだ。これ一つとっても、メルセデスAMGが、ダイナミックなドライビングを楽しむことのできるスポーツカーを作ったことを表している。

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実際、コントロール性は相当に良さそうだ。良さそうだというのは、今回、ESP OFFを許されなかったのでESP SPORTS Handlingモードで試乗したのだが、リヤタイヤのグリップ限界が訪れ、そこからスライドの移っていく時の挙動は素晴らしく穏やかで、コントロールしやすかった。タイヤ1本分リヤタイヤがスライドし続けているような状況までESPの介入がない。この領域はそれほど広くないので、意図的にドリフトを持続させるのは難しいが、いくつかのコーナーのターンインからクリップまで、あるいはクリップから立ち上がりで軽いテールスライドを作り出すことができた。

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ノーズがインを向き、リヤがこれに付いてくるというより、ボディ全体が向きを変えるような印象で、グラッとくるような不安定な動きを一切見せずハンドルを切りだす速さや量に応じて正確度の高い応答を見せてくれる。

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走り出した瞬間からビタッとタイヤが路面をグリップしている感触があり、安定感がある。実際装着していた専用設計のミシュランスーパースポーツは、タイヤの温まり方が速く、グリップレベルも相当に高い。偏平率が高いのにしなやかでもある。また、このタイヤはC3Mと呼ばれる新工法で製造されたタイヤで、抜群のユニフォーミティ(真円性)を持っている。

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話がそれたが、クルマが滑りだす時、あるいはスライドが止まるとき、ボディには大きなストレスがかかり、唐突な動きを見せやすいのだが、AMG GTはまさにその部分が上手にチューニングされている...というは素性の良さが表れている。タイヤの滑り出しやスライドの収束が自然で穏やかなのだ。

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基本的な訓練を積めば誰でもコントロールできる。そこにはピンホールに意図をとおすようなシビアさは皆無。なるほどメルセデスを名乗るスーパースポーツは、操縦性にもメルセデスの思想が貫かれている。そう強く感じたのだった。速くて刺激的だが、同時に信じられないくらいコントローラブルで楽しいスポーツカーなのである。AMG GTは、間違いなく、今後のハイパフォーマンス・スポーツカーの重要なベンチマークの一台となるだろう。





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