ホンダは15日、新型コンパクト・ステーションワゴン「シャトル」を発表。同日より発売した。「フィット」の派生車種を名乗ることをやめ、新たに独自のモデルとして展開されるこの新型ワゴンについて、発表会で聞いた話も含めてご紹介しよう。

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1983年に「シビック」の5ドア・モデルとして登場した「シビックシャトル」から名前と精神を受け継ぎ、2代目「フィット」ベースのステーションワゴンである「フィットシャトル」の後継となる新型車は、単に「シャトル」と呼ばれることになった。開発責任者の磯貝尚弘氏によれば、これはコンパクト・ステーションワゴンとして独自の価値をしっかりと折り込み、その価値を確固たるものにしたいという、開発当初からの意図を反映させたためであるという。派生車ではない、独自のステーションワゴン型モデルなのだという主張だ。想定するユーザー像も、"フィットにもっとたくさん荷物を積みたい人"ではなく、「ライフスタイルを拡げ、人生を愉しむため」にこういうクルマを求める人。ホンダはそのコンセプトを「ひとクラス上の大人へ〜CLASSY RESORTER」という言葉で表現している。洗練された上質なスタイルで、リゾートを愉しむ人々という意味だろうか。確かに内外装の仕立てもフィットより「高級」「大人」がキーワードになっているらしいということが窺えた。



全長4,400mm × 全幅1,695mm × 全高1,545mm(FFの場合)というサイズは、フィットより445mm長く、20mm背が高い。2,530mmのホイールベースは共通だ。荷室容量は5名乗車時で570リッター(床上540リッター+床下30リッター)、後部座席を倒せば1,141リッターと、ホンダによれば「クラス最大」で「3ナンバーワゴンを超える広さ」。ライバルとなるトヨタカローラ フィールダー」の407リッター/872リッターを大きく凌ぐ。また、この荷室は後部座席の背後に「マルチユースバスケット」という格納式の棚が仕込まれており(一部グレードを除く)、さらに床下荷室は水や汚れに強いワイパブル仕様となっている。全高はルーフやシャークフィン・アンテナの形状を工夫することで、ほとんどの立体駐車場に入庫可能な高さに抑えたという。





パワートレインは、1.5リッター直列4気筒アトキンソンサイクル i-VTECエンジンに、電気モーター内蔵7速DCT(デュアルクラッチ式トランスミッション)とリチウムイオン・バッテリーを組み合わせた「SPORT HYBRID i-DCC」を採用するハイブリッドと、1.5リッター直噴 i-VTECエンジン+CVTを搭載するガソリン・エンジンの2タイプ。それぞれ前輪駆動と4輪駆動が用意される。ホンダでは販売比率をハイブリッド9:ガソリン・エンジン1と見ているという。



ハイブリッドのエンジンは最高出力110ps/6,000rpm、最大トルク13.7kgm/5,000rpm、モーターが最高出力29.5ps、最大トルク16.3kgm。ガソリン・エンジン(のみ)の方はよりパワフルな最高出力132ps/6,600rpm、最大トルク15.8kgm/4,600rpm。これらの数字だけを見るとフィットまったく同じなのだが、シャトルは開発当初にまず、ハイブリッドではJC08モード燃費34.0km/L(つまり、カローラ フィールダー ハイブリッドの33.8km/Lを超える)という目標値を掲げ、これを実現するために各部のフリクションを低減するという改良が施されている。

例えばタイミングチェーンは、チェーンのコマの摺動面形状に僅かにRを付けることで摺動力を減らし、ピストンはモリブデンコーティングが厚膜化されている。エンジニアの方によれば、これは従来の「3倍まではいかない」ほどの厚さで、「ある程度、馴染んできたときに平滑化するように」考えられているそうだ。他にもクランクシャフトとカムシャフトの軸受け部や、オイルシールなども形状や構造を工夫することで徹底的にフリクションが減らされている。これらを全部合わせて、燃費は数%の向上をみるという。本当に、細かなことの積み重ねだ。




一方、ガソリン・エンジンも「平成32年度燃費基準達成車」になるためには、21.8km/Lという燃費を達成しなければならなかった。この数字は共通のパワートレインを積む「フィット 15XL」と同等の燃費を意味する。車両重量が70kgも重いシャトルで、フィットと同じ燃費を実現するため、回生エネルギーを効率よく回収して蓄えておき、電装品(エンジンのコントロールユニットから、ヘッドライトやオーディオまで)の電力として使用するキャパシタ電源というものが新たに採用された。もちろんエンジン自体にも上記のハイブリッド用エンジンと同様にフリクションを低減させ、加えて補機ベルトのテンションを変えて摺動力を減らす工夫も採用しているという。つまり、現在のところフィットとシャトルは別のエンジンを作り分けて搭載されているというわけだ。もちろん、将来的にはこれがフィットにも採用される可能性はあるという。また、シャトルの開発初期には「もっとブッ飛んだアイディアもあった」そうだが、ずっと研究開発を続けている中から、シャトルの発売というこのタイミングに実用化・量産化できるものを採用したとのこと。「こういうものは、ずっと続けていないとすぐに追い抜かれてしまうので」と担当エンジニアの方は仰る。

販売台数でいえば一割しか期待されていないガソリン・エンジン車だが、「こちらのエンジンはアトキンソンサイクルではなく、パワーもあって走りが楽しいので、実は結構おすすめ」だそうだ。マニュアル・トランスミッションもあると面白いのでは?と訊いてみると、笑いながら「個人的には欲しかったんですけどね。そうすると"大人のCLASSY RESORTER"ではなく、スポーツワゴンになってしまいますから(笑)、今回のコンセプトからずれてしまうので。そのうち、個人的に提案したい」と答えてくださった。せっかくフィットには6速MTがあるのだから、今の時代にはあまり合致しないのかも知れないがスポーツワゴンを仕立てれば、欲しいという客層も案外、"大人"の中にいるのではないだろうか。



派生車種ではなく、独自のモデルとして素養を磨くため、シャシーにもシャトル専用のサスペンションやステアリング・システムなどが与えられた。ステアリングは電動パワー・アシストの設定とギア比をシャトルに最適化。サスペンションは剛性を高めた上、振幅感応式ダンパーというものがハイブリッドの上級グレードに採用されている。これは2つのピストンバルブを設けることで、フラットな路面など上下動が少ない状況ではメインピストンバルブのみを作用させて低い減衰力で快適な乗り心地に、高速でコーナーを曲がる際など、上下動が大きい場合は両方のビストンバルブを作用させ、高い減衰力で車両姿勢を安定化させることが出来るという。後部が長いワゴン・ボディとなったことで、Cピラー環状骨格やリアダンパーの取付点まわりなども強化されているという。



インテリアは長距離ツーリングに備え、運転席と助手席がそれぞれプライベートにくつろげるように、ハイデッキセンターコンソールを採用。インテリアを担当した方の話では、シートの形状はフィットと同じものだが、表皮は糸の織り方を工夫して、触感を向上させているそうだ。ブラックの他に、上級グレードでは「大人の方に乗ってもらいたい」というアイボリーやブラウン系のインテリアも設定され、しかもボディ・カラーとの組み合わせが自由に選べる。ブラウンのカラーリングはエスプレッソを、アイボリーはシャンパンをモチーフにしたとか。フィットよりもコストが掛かっていそうですね、と訊いてみると「フィットよりは少しだけコストは上ですが、それでも先代のフィットシャトルとは変わらない範囲内で、色々と工夫して(笑)質感を高めました」と仰っていた。

シャトルの消費税込み価格は、ガソリン・エンジン車「G」のFFが169万円から、ハイブリッドの最上級グレード「HYBRID Z」の4WDが254万2,000円まで。もちろんフィットとは装備が異なるが、同じパワートレインを搭載するフィットより安いガソリン・エンジン車はお買い得に感じる。


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今回の発表会場には、ホンダ純正用品を手掛けるホンダアクセスの「モデューロ」仕様と、ホンダ車のチューニングやレース活動でお馴染み、「無限」のパーツを装着した車両も展示されていた。どちらもシャトルに不足気味と思われるスポーティな要素をそれぞれのセンスで加味してある。モデューロはボンネットのスリットを強調したグリルでホットハッチのような顔に仕上げられている。ほとんど手作業で製作しているというレザー調の高級感のあるラゲッジボードも魅力的だった。


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無限バージョンは、大型のリアウイングや、ドライカーボンを使用したミラーカバーや球形シフトノブ、2本出しのエキゾーストパイプが特徴的なスポーツサイレンサーなどを装着し、モータースポーツとのつながりを感じさせるレーシィなカスタムとなっている。

さらに詳しい情報は以下のリンクから公式サイトをご覧いただきたい。

ホンダ 公式サイト「シャトル」
http://www.honda.co.jp/SHUTTLE/

ホンダアクセス「シャトル」
http://www.honda.co.jp/ACCESS/shuttle/

無限「シャトル」
http://www.mugen-power.com/automobile/products/shuttle/






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By Hirokazu Kusakabe

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