Porsche GTS Experience 2015

 実は911タルガ4GTSのテストドライブが叶ったスペインでのイベントには「GTS Experience 2015」のタイトルが付けられていた。ここには911以外にも、ポルシェが現在ラインナップしているすべてのGTSモデルが揃っており、自由に試乗できたのだ。
 古くはレーシングスポーツの904カレラGTSに使われ、その後、初代カイエン後期型にて復活した"GTS"とは、日常使いに適した快適性を有しながらも、Sモデルをも更に凌ぐ、サーキットでも存分に楽しめるパフォーマンスを備え、更にははじめから充実した装備を備えた存在と定義することができる。
 そのエントリー的な位置にあるのがボクスターGTS。車体中心部の低い位置に積まれた3.4ℓフラット6は、ボクスターS用に較べて15ps増の最高出力330psを発生し、パワー・ウェイト・レシオは4.1kg/psを誇る。すでに日本上陸済みではあるが「GTSとは何か」をより深く知るべく、改めてテイスティングを試みたのだ。

Porsche GTS Experience 2015

 オープンボディのボクスターでもサーキット走行で何か不満を感じるということはなく、ミッドシップらしいノーズの入りの良さ、そして自分を中心にくるりと向きが変わる感覚を、きわめて上質な感触の下に堪能できる。15psのパワーアップはシャシーが完全に受け止めていて、エンジンを思い切り回して楽しめる。
 あと少しパワーが増すだけで、トラクションに物足りなさを感じることになるかも? バランスはそんなところにある。十分な速さを備え、しかしながら使い切る歓びもある、とてもいい案配のパフォーマンスと言えるだろう。敢えて不満を言うなら、普段は心地良い手触りのスムースレザーのステアリングリムが、サーキットを熱心に攻めると、滑りが気になりだすことぐらいだ。
 同じミッドシップのケイマンGTSは、そのクローズドボディ故のキャパシティの余裕で、更に10ps増の最高出力340psを得ている。こちらも、すでに日本導入済みである。

CaymanGTS

 その走りで何より印象的なのはその乗り心地の良さ。足元には大径20インチのタイヤ&ホイールを奢っているというのに、実にしなやか、滑らかな絶品の快適性には感心させられるばかりだ。ケイマンが元々持つ圧倒的なボディ剛性の高さが、大いに貢献しているのだろう。
 それでいて鞭を入れれば、その走りは正真正銘のピュアスポーツ。これはボクスターGTSも同様だが、ミッドシップならではの前後重量バランスの良さ、ヨー慣性モーメントの少なさを活かした、自分を中心にクルマが向きを変えていく旋回感覚は911にはない個性だ。

CaymanGTS CaymanGTS

 もっとも、それ故にトラクションは911には叶わないというのも事実ではある。試乗した個体はサーキットで終日酷使されていたためタイヤが寿命を迎えていて、ワインディングロードでペースを上げていくと、PSMオンにも関わらずカウンターステアを必要とするようなスライドに何度も見舞われてしまった。
 主原因はタイヤとは言え、もう少しリアがしっかり路面を掴んでくれてもいいかな...などと思ったのは、おそらく911を知るからこそだろう。リア荷重の大小だけでなく、ストラット式のリアサスペンションの限界でもあるのかもしれない。
 そんなことを書いてはみたものの、ミッドシップのくせに滑ってもコントロール性は十分に高く、気難しさは無かったのも事実。あくまで贅沢を言えばという話でである。

Related Gallery:CaymanGTS


■ポルシェジャパン 公式サイト
http://www.porsche.com/japan/
Porsche GTS Experience 2015 Panamera GTS

続いてはパナメーラGTSのステアリングを握った。フェイスリフト後のGTSに乗るのは、実はこれが初めてだ。
 一昨年のフェイスリフトの際、パナメーラS/4Sのエンジンは従来のV型8気筒4.8ℓ自然吸気から、V型6気筒3ℓツインターボへと変更された。しかしながら、その高性能版たるGTSだけはV型8気筒4.8ℓを継承し、しかも最高出力を10ps増の440psに高めている。そのパワーは7速PDK、電子制御式4WDシステムのポルシェ・トラクション・マネージメント(PTM)を介して、エアサスペンションで吊られる4輪に伝達される。

Porsche GTS Experience 2015 Porsche GTS Experience 2015

 GTSのキモであるこのエンジン、控えめに言っても最高だ。低回転域から大排気量らしい豊かなトルクと繊細なレスポンスに浸ることができ、そして回すほどに表情がイキイキとしてくる。更にトップエンドでは、専用の吸気系やハイリフトのカムシャフトなどによって、吸い込まれるような伸びと刺激を堪能させてくれるのだ。これはハイチューンの自然吸気ユニットでだけ味わえる世界。エンジンだけでもパナメーラGTS、価値がある。

Porsche GTS Experience 2015

 しかもフットワークだって素晴らしい。全長5メートルの4ドアとは思えないほどノーズの入りはシャープで、まさにアンダーステア知らず。アクセル操作で姿勢変化を誘発して楽しむこともできるし、その際のコントロール性も抜群なのだ。サーキットは味見程度のつもりだったのに、気付けば真剣に走りを楽しんでしまった。このサイズで、こんなにピュアなスポーツ性を持った4ドアなんて、他にあるだろうか?

Related Gallery:Porsche GTS Experience 2015 Panamera GTS

 最後はカイエンGTSである。これまで自然吸気の最高峰モデルとして君臨してきたGTSだが、新型は従来のV型8気筒4.8ℓエンジンに代えて、遂にV型6気筒3.6ℓツインターボユニットを、その心臓に据えることとなった。おそらくポルシェは今後、この方向に突き進んでいくのだろう。 最高出力は440psで、奇しくもパナメーラGTSと同じ。一方、最大トルクは600Nmと80Nmも大差をつけている。トランスミッションが8速ATとなるのも大きな違いだ。

Porsche GTS Experience 2015

 DIN表示で2110kgという車重を考えれば、低回転域から図太いトルクを発生する過給ユニットの搭載は、確かに理に適っている。実際、発進の瞬間からアクセル操作に対するピックアップの鋭さが光っていて、コーナーの立ち上がりでは約200kgも軽いパナメーラGTSに肉迫できる。自然吸気に較べれば情緒を欠くのは事実。しかしカイエンにはよくフィットしていると言わなければならないだろう。

Porsche GTS Experience 2015 Cayenne GTS Porsche GTS Experience 2015 Cayenne GTS

 驚かされたのは、そのフットワークだ。この巨体だけに姿勢変化は小さくないが、決して不安定なわけではなく、コーナーでは結構攻められる。外輪を大きく沈ませつつフロントをしっかりインに向ければ、あとはアクセル操作でドリフトに持ち込むことも容易い。慣性質量の大きさは感じるが、さすが4WDだけにコントロール性は上々。気付けばガンガン攻め込んで、先導していたインストラクターを煽りまくってしまった。怒られると思ったらホメられたのでホッしたけれども...。但し、さすがにブレーキはPCCB付きでも厳しいので、そういう走りを想定している希有な方は装着必須と言っておこう。

Porsche GTS Experience 2015 Cayenne GTS

 その優れた実用性と抜群の走破性によって、雪や氷の世界も臆せず進んでいけるかと思えば、そのままサーキットに持ち込んでも思い切り楽しめる。カイエンGTSは、まさに究極のマルチパフォーマンスカーと言える。元々お気に入りの1台だったのだが、更に惚れ込んでしまった。

Porsche GTS Experience 2015 Cayenne GTS Porsche GTS Experience 2015 Cayenne GTS

 各車へのGTSの展開によって、ポルシェのラインナップはさすがに煩雑になり過ぎている感、否めない。そして特にSモデルなどは、存在意義というか選ぶ意味が曖昧になってしまっている。逆に言えば、予算が合うならお勧めはやはりGTSだということ。究極を求める人は、ターボなりGTxモデルなりに行けばいいとして、標準装備を合計するだけでも実はSより買い得感があり、走りの面でも十二分に満足させてくれるGTSは、コストパフォーマンスも含めて、もっとも幅広い層を満足させる選択と言えるはずだ。

Related Gallery:Porsche GTS Experience 2015 Cayenne GTS

Porsche GTS Experience 2015

■ポルシェジャパン 公式サイト
http://www.porsche.com/japan/