SUZUKI S-Cross

 ドアを開けた瞬間からいつものスズキのクルマと違うニオイがする。走れば走ったで、そのカッチリとしたドライブフィールに新鮮な乗り味が感じられた。「コ、コレは...っ!? ヨーロッパのニオイ(テイスト)かしら?」。ハンガリー工場で生産されるSX4 S-CROSS(エス・クロス)が年間600台と少量ながら日本でも販売されることになった。

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いつもと違うニオイを感じたのは、現地で調達する接着剤や樹脂パーツなどによるもの。ちなみに、輸入車の車内のニオイがメーカーによって異なるのも、国産車のアレコレと異なるもの、同様の理由からであることが多い。ニオイに敏感な方ならそんなところにも異国車情緒もしくは新車らしさを感じていたりするのではないかしら。そこからまた新しいクルマとの出会いを感じることができるかもしれない。

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先代のSX4にはセダンや5ドアハッチバック、クロスオーバーなどのラインナップがあったが、今回はクロスオーバーのみの1モデル。その代りに主に欧州ユーザーの声を反映し、より実用性の高いパッケージングに優れた一台を造り上げたという。ちなみにS-CROSSの名は、"S"UZUKIの"S"MARTなCROSSOVERとして様々なニーズをクロス(カバー)するモデルという意味を持つそうだ。

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ユーザー調査ではマーケットで張り込み、週末のまとめ買いの様子からその量や内容をチェック。またファミリーユーザーにも注目し、日本の2-3倍ものサイズがある大型ベビーカーと荷物が積めるようにラゲッジも167L拡大し、420Lに収納力を上げている。加えてリヤシートサイズのスペースも拡大。

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全長4300×全幅1765mm×全高1575mmとコンパクトSUVのカテゴリーに入るS-CROSSは先代SX-4のプラットフォームをこの新型にも採用している。ボディサイズは前述の理由などから室内空間の拡大を目的に先代に対し全長を150mm拡大。その一方で車重は50kgの軽量。ボディに高張力鋼板を多用し、エンジンやサスペンション系のパーツ、インパネ樹脂部品の見直しなどによる成果だという。

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ニオイを風味とすれば、乗り味も新鮮な印象を抱くことができる。どことなくドイツ車テイストが感じられた。走り出した瞬間から軽やかさとカッチリとしたフラット感がこのSUVのスマートなハンドリングを予感させてくれた。タイヤのゴツゴツとした印象はあるものの、基本的な乗り心地も悪くない。コーナーではハンドル操作に対する応答性も良く、ボディが一塊で動くスッキリとした印象が気持ちよく、楽しい。ちなみに今回の試乗は4WDモデルのみが可能だった。

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試乗を終えて開発者にお話をうかがったところ、世界の市場に投入されているS-CROSSの販売の中心となるのは欧州。開発は日本で行われたというが、そのカッチリ&スッキリとした乗り味やハンドリングは欧州向けに仕上げられているという。そして仕様に関してはほとんど変更なく日本に導入されているということだった。
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パワートレインは1.6L直4エンジンにCVTを組み合わせ、2WDと4WDモデルが選べる。が、新型のトピックの一つがこの4WDシステムだった。スズキが新開発を行った4WDシステム『ALL GRIP』は電子制御による"AUTO"/ "SPORT"/ "SNOW"/ "LOCK"の4つのモード選択が可能。

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AUTOモードでは基本的には燃費優先のFFベースながら、舵角やヨーレイト、車速などをセンシングし、挙動変化後はもちろん不安定になることを検知/予想した場合にも走行安定制御を行うという。ゆえに日常走行は"AUTO"で燃費優先のFF走行をしつつ、タイヤのスリップを検知するとクルマは自動的に後輪にも必要な駆動力を与える4WDに切り替わるから、安心でエコ。

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"SPORT"ではアクセル操作に応じ積極的に前後のトルク配分を行い、コーナリング時の旋回性能を向上させる。加えてスロットル特性を切り替え加速性能が向上。CVTもエンジン回転数を高くキープしよりパワフルなドライブフィールを楽しむことができる。実際には"AUTO"で走行中、ワインディングの登坂路でエンジンは3000-4000回転付近にもう少し力強さが欲しいと思うところで、"SPORT"はモリモリとは言えないまでもトルクのモリ上がりが心強い。

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4WDの駆動配分もより積極的に介入するからか、足元が良い意味でより"重たい=グリップ感が増す"印象がステアリングを握る手元にも伝わってきた。軽くスッキリとしたハンドリングをベースに、必要に応じガッチリとした安定感をチョイチョイ感じさせる走りは高性能とは言わないまでもとても頼もしく好感を抱く。スズキの走りの基本性能に対する真摯ぶりを常用コンパクトSUVでも感じることができた。

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 エクステリアデザインからは奇をてらったチャレンジは感じられぬものの、ドッシリと構える下半身の頼もしさの一方で全身を重たく感じさせないスマートな親しみやすさを抱くことができそう。

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インテリアはあえてメーカー名を挙げるが、初見からどことなくVW系のテイストをもう少しカジュアルにした印象があった。S-CROSSのインテリアはシンプルで機能性を重視しおもてなし感や「見て、見て、いいでしょ?」的なサービス精神はやや希薄。ダッシュボードの一部にソフトパッド材、またインテリアの一部にシルバー加飾を採用するも、素材感からくる質感はあくまでもカジュアルだ。

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が、造り込みにはソツがなくスイッチ類などの手応えもいい。必要十分な装備とクオリティが与えられている。が、唯一、ベーシックな安全装備は採用されているS-CROSSながら、エマージェンシーブレーキは未採用。アルトなど軽自動車にも採用していることを思えば、S-CROSSに欲しかったと思う。

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最近、ホンダ ヴェゼルマツダ CX-3フォード ECOスポーツなど、走りもいい個性的なコンパクトSUVが登場している。都心の一家に一台のチョイスや、一家で二台、三台の駐車スペースが必要な場合でも、実用性の高いコンパクトSUVは嬉しい購入候補に成り得る。スズキSX4 S-CROSSは購入候補として新たに加わりそうなモデル。年間販売台数600台という数は決して多くはないが、その存在は頼もしさと新鮮さの高バランスぶりから、視覚感を抱かずにはいられない。

■スズキ 公式サイト
http://www.suzuki.co.jp