ホンダ、軽自動車の新型オープン・スポーツカー「S660」を発表!(後編)
<前編からの続き>

3月30日にホンダから発表された待望の軽オープン・スポーツカー「S660」。前編でお届けした若き開発リーダーの思いとドライブトレインの話に続き、後半では内外装を手掛けたデザイナーの方にお聞きした話などを中心にご紹介しよう。

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全長3,395mm × 全幅1,475mmという軽自動車の枠内で、「ワイドで低く見えるように」デザインすることは大きな挑戦だったとエクステリア・デザイナーの方は仰る。旧規格の「ビート」より100mm長く85mm幅広いが、全高は1,180mmと5mmしか高くなっていない。ホイールベースも2,285mmと5mmだけ長い。

そもそも、このスポーツカーの量産化が始まった際に「軽自動車に収めるのか、それとも世界を見据えてAセグメントにするのか、といった点で非常に議論を交わしました」とのこと。最初から"軽ありき"ではなかったというのだ。だが、「まずは一番小さく作る。小さなサイズで作って、その後から大きくするのは可能なのかなというような話も実はしていたんです」と語ってくださった。そんなことを聞くと、S660のシャシーをベースにトレッドを拡げて一回り大きなエンジン(1,000ccの3気筒ターボ)を積む「S1000」なんてモデルが遅れて登場するのではないかという期待も抱いてしまうが、そういう具体的な計画は「まだ、ない」そうだ。

話を戻すと、「とにかく薄く、幅広く見せるために」ウインドスクリーンのフレームやロールバーをブラックとしたほか、前後のライトを「目一杯ワイドに見えるところまで引いています」とのこと。2011年の東京モーターショーに出展された「EV-STER」の頃から関わっていらしたデザイナーの方は「昔から(フェラーリ)ディーノ 206/246GTBとか、アルファロメオ Tipo33ストラダーレとか、ミドシップのスポーツカーが好きだった」と仰るが、S660はそんな1960〜70年代を思わせるレトロな方向に行くことは「全然考えなかった」そうだ。「やはりホンダ製品としては、未来とか先進性を感じさせるプロダクトにしたかった」という。ただし、全体のフォルムや抑揚の与え方など「古いクルマも非常に参考になっている」そうである。もちろん、ディーノやTipo33も当時は決してレトロではなく、先進的なデザインだったわけだが。ちなみに、デザイナーの方が個人的に好きなS660のアングルは「出来る限りワイドさを強調した斜め後ろ姿」で、お薦めのボディ・カラーは「全てなんですけど、どれか1つということであれば水色(プレミアムビーチブルー・パール)かな」とのことだった。





なお、S660は660台のみが限定販売される「CONCEPT EDITION」(238万円)を別にすれば、カタログ・モデルとしては上級グレード「α」(218万円)と、200万円を切る価格が魅力の「β」(198万円)という2タイプが設定されている。「α」には本革 × ラックス スェードが表皮に張られたスポーツレザーシートが備わるほか、シフトノブ、ステアリング・ホイールも本革巻となり、ステンレス製スポーツペダルが装備される。βのメッシュとファブリックが張られたシートも決して悪くはないのだが、残念なのはステアリング・ホイールがウレタンになってしまうこと。インテリア・デザイン担当の方にお聞きした話では「βは黒に拘ってデザインしている」そうで、αではシルバーまたはクロームメッキされている操作系の加飾がピアノブラックで統一される。選べるボディ・カラーも白・黒・グレーのモノトーン系のみとなる。「単なる廉価版ではなくて、黒の世界観を見せたいという思いでデザインした」そうだ。他に快適装備や走行性能に関する面での差異化はない。オーディオはフロントに2個のスピーカーとUSBプレーヤー機能付きAM・FMチューナーを搭載。スマートフォンと接続可能なセンターディスプレイはオプションだ。



運転席の方が広かったビートと異なり、S660は両座席とも同一サイズだが、運転席がライトグレー、助手席がダークグレーと異なる色の表皮を与えた「アシンメトリーカラースポーツレザーシート」も用意される(ただしボディ・カラーがプレミアムスターホワイト・パールのαのみ選択可能)。インテリア・デザイナーの個人的なベストは「ボディ色は赤が気に入っていますので、そうすると内装はブラックのレザーに限定されます。本当は赤いボディにアシンメトリーの内装が理想ですが...」と仰っていた。冬でもオープンで乗るため、ヒーターが強化されていたビートだが、S660はさらに進んで、オープン時に冷えやすいお腹から腿の辺りに風を送る「ミッドモード」が加えられている。また、リア中央のウィンドウが電動で上下できるため、室内に巻き込む風量を調節できる。この辺り、ちゃんとオープンカーによく乗っている人が考えているな、と思わされる。



東京モーターショーの際には秘密とされていたルーフは、軽量な脱着式ソフトトップ「ロールトップ」が採用された。オープンにするときには、縦骨が3本入ったファブリック製のソフトトップを取り外し、くるくると巻いてフロントフード下のユーティリティボックスに収納する。荷室らしきものは他にない。ビートにはあったエンジン後方のトランクもない。室内にいくつか物入れはあるが...もちろん小物しか入らない。幌を上げればシート背後が使えたビートよりもこの辺は厳しい。例えば2人乗りで旅行に行く際には様々な工夫が必要だ。車両重量はMTが830kg、CVTは850kgと発表されている。



この日の発表会では、ホンダ純正アクセサリー「Modulo」のパーツを取り付けたS660と、ホンダと縁が深い「無限」によるカスタマイズが施されたモデルも展示されていた。Moduloの注目パーツは、車速が70km/hを超えると自動でせり上がるというアクティブスポイラーだろう。取付工賃別で16万2,000円と値は張るが、さらにS660のプチ・スーパーカーらしさを高めたい方にお薦め。ボルドーレッドのロールトップは限定モデルの装備品と同じもの。ボディ・カラー、インテリアに加え、トップの色もコーディネートできるのが、ソフトトップ・コンバーティブルの特権だろう。内装では往年の「TYPE R」を思い起こさせるチタンのシフトノブなどが用意されている。

一方の無限バージョンは、ロールトップと同様の方式で取り外し可能というハードトップが装着されていた(23万5,440円)。ボンネットやエンジンフードは軽量化が期待できるFRP製。前後バンパーだけでなく前後フェンダーまで交換されている。リアウイングは無限らしいドライカーボン製。S660の短いシフト・ストロークをさらに短縮するクイック・シフターも装備されていた。クルマを注文してから納車までの実に長く感じる日々は、このようなアフター・パーツのカタログを見ながら過ごすことになるのではないだろうか。



軽自動車で200万円という価格は高いと感じる方も多いだろう。しかし、月間計画販売台数わずか800台のこのクルマのために、専用設計されたシャシーから足回り、ドライブトレイン、内外装に至るまで、常識的な企業では考えられないほどのコストが掛けられていることは一目で分かる。このサイズで本格的なスポーツカーにするため、「とにかくぜいたくに作り込みました」と言うホンダの言葉はおそらく大袈裟ではない。もっと安くて、速くて、便利なクルマはいくらでもある。しかし、このクルマこそ自分が最も幸せになれる、と感じた方は是非手に入れていただきたい。他のクルマでは味わえない魅力が、S660にはきっとあるはずだ。もっとも、今から注文しても納車までかなり時間が掛かるらしい。待つ価値があるのかどうか、試乗車が用意されてから判断してもよいだろう。詳しい情報は以下のリンクから公式サイトをご覧いただきたい。


ホンダ 公式サイト:「S660」
www.honda.co.jp/S660/



<S660 スペック>
車体寸法:全長3,395mm × 全幅1,475mm × 全高1,180mm
車両重量:830kg(MT)〜850kg(CVT)
乗車定員:2名
駆動方式:横置きミドシップ後輪駆動
エンジン:水冷直列3気筒DOHC
排気量:658cc
最高出力:47kW[64PS]/6,000rpm
最大トルク:104N・m[10.6kgm]/2,600rpm
JC08モード燃費:21.2km/L(MT)〜24.4km/L(CVT)
使用燃料種類:無鉛レギュラーガソリン
タンク容量:25L
トランスミッション:6速MTまたは7スピードモード付きパドルシフトCVT
タイヤ(前/後):165/55R15 75V / 195/45R16 80W
サスペンション(前):マクファーソンストラット式
サスペンション(後):デュアルリンクストラット式


By Hirokazu Kusakabe

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