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もし、仮に目隠しをした状態でこの上の写真のクルマに乗せられて「出発しろ」と言われたとしたら、2分くらいでそれが2016年型マツダ「MX-5 ミアータ(日本名:ロードスター)」であると分かるだろう。そこには歴代ロードスターそれぞれの世代で熟成されてきたドライビングが切り子のように散りばめられており、それがクルマとドライバーの間に実に独特な共存関係を生み出しているからだ。確かに、同じ種類の体験をもたらしてくれるクルマは他にもあるが、ミアータ特有のマジックと同じものは他では得られない。

マツダは、 ミアータが非常に特別なマシンだということを心得ている。同社のエンジニアやデザイナーによる、この4代目ND型の開発に関する話は興味深かった。ディテールへの拘りは驚くべきものがあり、このミアータのプロジェクトに携わった1人ひとりが、最も重要な目標はこのクルマを祖先の精神に可能な限り忠実に保ち続けることだと分かっている。このクルマは、単に優れたコンバーチブルというだけでも、優れたマツダ車というだけでもなく、優れたMX-5 ミアータでなければならないのだ。

しかし、同社はただ単に2005年に登場した3代目NC型を改良したかった訳ではない。新しいND型を1989年に誕生した初代NA型にまで立ち返らせたかったのだ。89年当時のミアータは、今より非力な最高出力120ps、最大トルク14.0kgmの1.6リッターエンジンを搭載するモデルだった。マツダの開発者チームは、歴代MX-5の全バージョンを誇りにしていると言っていたが、同社によれば初代モデルこそが"最も正しく"、ミアータの最もあるべき姿だという。




スペインの郊外にあるワインディング・ロードに新型MX-5でアタックする前に、マツダが筆者に極上の初代NA型に乗せようとしたのもそのためだ。そのマリナーブルーのNA型は、走行距離計が23万9,000kmを刻んでいたが、乗った感覚では非の打ちどころがなかった。軽くてレスポンスに優れ完璧にバランスが取れている。これはまさしくマツダがすべてのミアータに求めているドライバーとクルマの調和の形を具現化した原型だ。

マツダの幹部たちは、初代ミアータはサイズの面でもちょうどいいと感じていると語っていた。そのため、4代目ND型は3代目NC型に比べ105mmも短く、ホイールベースは20mmほど短縮されている。初代モデルと比べても全長が50mm以上も短くなっており、全高は変わらない。胴回りや足元がますます大きくなっている現代において、これを実現したことは注目に値する。

また、4代目は大幅な軽量化も達成した。ND型についての最終的なスペックをマツダはまだ明らかにしていないが、NC型と比べ220ポンド(約99.8kg)軽いと同社は謳っている。言い換えれば、日本仕様モデルの車両重量が2,200ポンド(約998kg)程ということになる。装備が追加されているにも関わらず、初代と比べてたった100(約45.4kg)から200ポンド(約90.7kg)重くなっただけなのだ。軽量化を達成できた要因は、ご察しの通り、アルミのコンポーネントや高張力鋼をより多く使ったことにある。マツダは、クルマの重心から一番離れている場所にアルミを採用し、重いコンポーネントをなるべく低く、シャシーの中心に配置した。エンジンの搭載位置が13mm低く、15mm後方に下げられているのもそのためだ。エンジンはフロントアクスルの真後ろに位置し、いわゆるフロントミッドシップとなっている。




スタイリングについての議論に入ることも出来るのだが、この新型については皆さんもこれまで沢山の写真を見てきたことだろうし、2代目NB型オーナーでもあるAutoblogのエクゼクティブ・エディターによる事細かなレビュー記事もある。ただ、これだけは知っておいて欲しい。このスタイリングは、機能ではなく、形を優先して仕上げられているということだ。ヘッドライトがお気に召さない? それは残念。マツダは可能な限りボンネットを低くしたかったので、コンパクトなフルLEDを採用した。さらに一層アグレッシブなクルマとなり、路上での見た目はとても良い。

4代目では、幌の構造部分にアルミ製のコンポーネントが使われている。聞かれる前に答えておくと、電動開閉式のハードトップが提供されるかどうかについては、マツダからは何のコメントもない。とは言うものの、以前のレポートを信じるとすれば、採用の可能性もありそうだ。幌の開閉は、これまでと同様にかなり簡単にできる。開けるときは、留め具を外して後ろにスライドさせるだけだ。これも"ミアータ流儀"の重要な要素で、ドライバーがコックピットに締め付けられることなく、すんなりと後方に手が届き、素早く幌の引き上げ/引き下げが行えるのポイントだ。インテイリアの紹介に移る前に、以下の映像で、ソフトトップのシンプルさを確認してほしい。



もちろん、土砂降りの場合を除いて、どんなときでも幌を閉じた状態でミアータを運転するべきではない。マツダは幌を開けた状態に拘っており、ドアトリムとAピラーは、しっかりとクルマの上部に空気が流れるようにデザインされている。しかし、あるエンジニアによれば、ドライバーが"心地よいそよ風"を感じられるように、両側から僅かな風が車内に入り込んでくるように計算されているという。さらにオープン・ドライビングを強化するため、マツダは再びヘッドレストにオーディオスピーカーを組み込んだ。

とは言え、バルセロナから離れた田園地方をドライブしてみて、筆者が好んだミュージックはミアータ自身から聞こえてくるものだった。音量自体は控え目だが存在感のあるエキゾーストノートや、先代より荒さと耳障りな唸りが減ったエンジン音に、筆者は耳を傾けた。ボンネットの下で動いているのは以前と同様、明らかに4気筒エンジンだが、これまでよりさらに洗練されている。

今年後半に米国へ導入される新型ミアータは、最高出力155ps、最大トルク20.0kgmを発揮する2.0リッター"SKYACTIV-G"直列4気筒を搭載する予定だ。それより低いことはまずないだろう。現行型より12hp低くなっていることは分かっているが、トルクは1.1kgm増し、車両重量は200ポンド(約90.7kg)軽くなっていることを強調しておきたい。

マツダの広報によれば、完全に動作するND型の量産前のプロトタイプがごく少数のみ世界に存在し、今回のテストのためにそのうちの4台がスペインに集められたという。それらは全て日本仕様モデルで("MX-5"の代わりに"Roadster"のバッジが付いていることにお気づきの方もいるだろう)、米国では入手できない、パワーの控え目な1.5リッター"SKYACTIV-G"4気筒エンジンを搭載している。最高出力は131ps/7,000rpm、最大トルクは15.3kgm/4.800rpmに過ぎないが、本気で、正直に、心から、これでまったく問題ないと誓おう。高速道路を走行している時に6速のままアクセルを踏み制限速度の70mph(112.6km/h)まで加速する時の反応は遅いか? と訊かれたら、確かにそうだ。しかし、4速へ急速にシフトダウンし、右足を踏み込めば大丈夫? という質問は、答えるまでもない愚問だ。スロットルのマッピングは改良され、自然な加速を味わえるが、最も重要なのはバランスや軽量さだ。スペインの脇道で十分に乗り、日常的な運転を考えてテストを行った結果、1.5リッターエンジンは十分に米国市場に適しているという確信に至った。またマツダは、1.5リッターは2.0リッターエンジンよりも"MX-5のコンセプトを表現している"とも言っている。



脇道での走行がこの日の試乗の大半を占めたので、1.5リッター・エンジンを存分に働かせて、この右ハンドルのテスト車で面白く素敵な様々なコーナーを試すことができた。MX-5体験のもう1つの良い部分は、法定速度でも大きな楽しみを与えてくれるということだ。日産「GT-R」は全くもって素晴らしいクルマだが、45mphの制限速度での走行は退屈で仕方ない。一方のミアータは、コーナーでは2速で7,500rpmまで嬉しそうに回り、警察に捕まらないスピードで満足感を与えてくれる。

そのダイナミクスに関して言えば、ND型の動きのどこをとっても革新的なところは無かった。しかし、これは良いことだ。ミアータは常に信じられないほど鮮やかな身のこなしで動き回る。荒い路面を寛容に受け止める素直なシャシーと、前後のピッチングやノーズダイブ、ロールを許すサスペンション。ドライバーの関与を目的に、エンジニアはあえてそのように全体を調整している。

もっとコーナリング中の姿勢をフラットに保つような設定は出来なかったのだろうか? 確かに出来ただろうが、筆者としてはそうなって欲しくはなかったし、マツダの開発チームも筆者と同意見だろう。その代わり、ドライバーは見晴らしの良いコクピットから、左右のフェンダーが見え、どんな時でも4つのタイヤがどうなっているのかを感じ取ることができる。実際に開発チームは、シートの位置がピッチセンターとちょうど同じ位置にくるように設計しており、カーブに差し掛かりブレーキを強く踏んでノーズがダイブした時でさえも、ドライバーの視線は上下しない。シチュエーションや速度がどのような形であっても、クルマの荷重がどちらに移動したかを絶えず正確に把握できるし、アクセルやステアリングの入力を適切に与えることが出来る。コーナーを抜けながら右のペダルを深く踏み込むと、16インチのアロイホイールにP195/50R16のタイヤを履いたミアータは素早く旋回し、ステアリングをサッと切って立て直す間、クルマのテールはほんの少しだけ流れるのみ。トラクションコントロールのボタンは一切触っていないでこの調子だ。




ステアリングには、同社製品のほとんどのクルマにも見られる電動アシストユニットを採用している。油圧式の代わりに電動パワーアシストステアリング(EPAS)を使用することに対して好きなだけ文句を言うのも良いが、重量増も燃料消費も抑えられるこの種のコンフィギュレーションが、実に素晴らしいフィールや、十分な路面からのフィードバックを提供してくれることを、ぜひマツダ車、特にミアータを運転して確認して欲しい。正直に言うと、今回試乗したMX-5は全体のステアリング・フィールが期待していたよりも少し軽く感じたが、マツダの担当によれば、チューニングがまだそこまで済んでおらず、より大きく、よりパワフルなエンジンを積んだ米国仕様モデルは、もっと"重め"のステアリングを持つことになるそうだ。全体として重くなるのか、それともコーナリング時の反力が重くクイックに強化されるのか、今は断定できないが、良くなると想像すべきだろう。

新型ミアータのトランスミッションは、6速マニュアルと6速オートマチックが設定されるが、もし前者を選ばないとしたらどうかしている。これまでの全てのMX-5のように、ND型のトランスミッションは最高傑作と言えるだろう。踏み込みは軽いが剛性感は高く調節しやすいクラッチペダルに、短く丸いシフトレバーがうまく調和して、ギアの切り替えは自信を持ってカチカチと素早く行うことが出来るのだ。その上、3つのペダル配置はヒール&トーの操作のために調整されており、素直でリニアなスロットルレスポンスは回転数を合わせやすい。右ハンドルのクルマに乗った経験があまりないこともあり、まだ左手でのシフト操作に完全に慣れていなかったが、身体の左側でシフトする筋肉に神経を集中しつつ何度かギアチェンジしている間に、今朝、左ハンドルのNA型ミアータに乗った時のように、タイミング良く、素早く、スムーズなシフトさばきを繰り出すことが出来るようになった。




もちろん、前後の重量配分はほぼ完璧な50:50を実現している。ここでサスペンション・ダンピングなどのスペックを挙げてNAやNC型との比較を行いたい所だが、(現時点で)正式な数値は分かっていない。ブレーキサイズのデータも持っていないが、ブレーキが効きすぎたり、その反対に弱すぎたりすることは、見事に一度もなかったことを伝えておこう。

これは嘘ではなく、もしこれまでミアータを運転したことがあるなら、ND型を体験してみて衝撃を受けたり不安に思ったりすることは一切ないだろう。がっかりすることもないはずだ。このクルマはドライバーを夢中にさせる。9時と3時の位置でステアリングを握り、渓谷の道を走らせれば最高だし、ドアの上に肘を置いて、柔らかな風を感じながら開けた高速道路の長い道を走るのもまた良い。

インテリアは20世紀から受け継がれているため、新型では居心地の良さも証明してやる必要がある。ただし、従来型が質の悪いキャビンを持っていたと言いたいわけではない。ただ、急激な速さで成長しているインフォテイメントシステムや、今ではほぼ全てのクルマで標準になっている、あっと言わせるガジェットの存在を考えると、時代遅れ感が否めなかった。だがこの新型MX-5は、すっきりとしたドライバーフォーカスなレイアウトを採用し、使いやすい操作類がセンターコンソールに小ぎれいに積み込まれている。しっかりしたカップホルダーを備え、座席間の収納スペースは、グローブボックスとしては今でも驚くほど容量が大きい。また、「マツダ3」(日本名:「アクセラ」)に導入されたマツダのカーコネクティブ・システム「マツダ コネクト」が採用され、これまで同社のロードスター・オーナーが利用できなかった少しばかりの技術と機能が提供されている。



ドライバーの目の前には、清々しいほど基本的なインストゥルメント・クラスタが備わり、必要な情報のみを表示するメーターが並んでいる。ステアリング・ホイールの直径はほんの少し小さくなっており、これまでよりも調整可能な角度がやや大きくなっている(未だテレスコピック機能は不採用だ)。シートは心地よく、体をしっかりと支え、また重要なことに、NC型よりも座面が20mm低い。前述の通り、これは出来るだけ路面に近い位置に重心を下げるためだ。(米Autoblog編集部のSeyth Miersmaのように)大柄なドライバーは、頭がフロント・ウィンドスクリーンから上にはみ出てしまうが、試乗会に参加した人たちに訊いてみたところでは、彼らは気にしていない様子だった。むしろこのキャビンの大いなる利点は、ドライバー中心のレイアウトを採用し、運転の楽しみを妨げるものが何もないことだ。

結局、現時点でこのクルマについて知っておくべきことは、運転の楽しみが何よりも第一に考えられている、ということに尽きる。言い訳も妥協もない。これが、ミアータがミアータたる所以だ。概して、マツダ ロードスターは全世代通して、オリジナルであるNA型の力強さの上に成り立っており、この第4章は、約25年前に世界中を虜にした日本の軽量スポーツカーの誇り高き伝統を語り継ぐだけではなく、軽量化によりオリジナルの本質の一部を取り戻している。マツダが言うように、同社が生産する全てのモデルは"ミアータの一部"を持っていて、その始まり以来、この小さな1つのクルマがブランド全体の方向性に影響を与え続けてきたのだ。

単なる優れたクルマ、優れたマツダ車である以上に、4代目が真に素晴らしいMX-5ミアータであることは間違いないという確信を、日本仕様モデルの試乗を通して抱くことが出来た。もし、米国仕様車も日本仕様テスト車の良い調子をそのまま保っているとしたら、エンスージアストたちにとっては楽しみに待つ甲斐が十分にあると言える。MX-5は常にクルマ好きのためのものであった。このND型は,マツダの25年モノのレシピが今もなお美味であるという確固たる証拠だ。


【基本情報】
エンジン:1.5リッター直列4気筒
パワー:最高出力131ps/最大トルク15.3kgm
トランスミッション:6速マニュアルトランスミッション
駆動方式:後輪駆動
エンジン位置:フロントミッドシップ
車体重量:2,200ポンド(約998kg)(推定)
座席数:2

By Steven J. Ewing
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:日下部 博一

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