SUZUKI ALTO Turbo RS

 昨年末に登場した8代目となる新型アルト。新たなラインナップとしてターボエンジンを搭載する「アルト ターボRS」が加わった。
 ちなみにアルト+ターボ+走り=アルトWORKSという印象を抱いているアナタのために、その呼称もターボエンジン搭載モデルも、5代目の途中で途絶えてしまっている。
アルト=WORKSが勇名だった時代は筆者も明るくはないが、それはつい先日まで在ったビルが無くなったとたん存在が忘れ去られてしまうように、いつしか過去のものになってしまっていたのではないか。SUZUKI ALTO works
(1998 アルトワークス)

今回、新型アルトが登場した際に開発者の方にお話をうかがったところ「ボーイズレーサー的な印象がWORKSにはあり、今回はそういう存在ではないから」と言っていた。コンパクトモデルのスイフトにRSが登場して以来、スズキではスポーティなモデルを"RS"に統一する流れにあるようだ。ボーイズレーサーという言葉もビュンビュン弾丸系的なモデルを系統的に示す、過去の存在?
「いやいや、アルトと言えば、WORKSでしょう」という方の心中はさておき...。

SUZUKI ALTO Turbo RS

 新型アルト ターボRSはターボエンジン搭載を軸に真面目に走行性能の向上に取り組んだモデル、という印象を受けた。

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昨年末に発表になった新型アルトは最軽で610kgという軽量化と最良で37.0km/lの低燃費、そして85万円~という価格を実現させたベーシックなノンターボ(以後NAと略)モデル。「Simple is Best」ではなく「Better」を感じさせるワリキリに好感を抱くことができる。個性的な外観デザインは賛否もあるが、個人的には中途半端に万人受けを狙うよりも、このくらいの存在主張があってなおかつ暴走し過ぎない程度は所有する楽しさにつながると思うのだ。

SUZUKI ALTO SUZUKI ALTO
(スズキ 新型アルト)
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ターボRSでは、NAの実用性はそのままに重量増も抑えられ、走りをスポーティに向上させるための強化とデザインが施されている。このモデルが初搭載となる改良型ターボエンジン、ボディ補強、専用チューニングされたサスペンションやブレーキ、ホールド性を高めた専用のフロントシートなどが主な変更点。トランスミッションはマニュアルトランスミッション(以後MTと略)システムをオートマチック(以後ATと略)のように操作できる、シングルクラッチタイプのオートギヤシフト=AGSとパドルシフトを採用。

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因に、駐車スペースから通りへと向かう走り出しからターボRSは、新型アルトの軽さとは対照的に、ボディやステアリングフィールにカッチリ感が増していると感じた。また走行中はフラットな乗り心地と姿勢や態勢を保つ印象がある。ターボRSでは、あの小さなボディのスポット溶接個所を効果的に増やし、サスペンションは前後スプリングのバネ定数の変更、ショックアブソーバーは前後とも専用のKAYABA製を採用。フロントストラットはシリンダーとロッドのサイズをアップ。さらに減衰力特性を専用チューンしたことなどが、フラットな乗り心地と操縦安定性に効果を発揮しているそうだ。それにストラットタワーバーを2WDなら前後に、4WDはフロントのみ装着される。

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ステアリングギヤ比は変更せずともセッティングは合ったそうだ。ギヤのマウントブッシュを変更し、さらにブリヂストンポテンザ RE050AをターボRSに専用開発。

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ハンドルの操作感は重めで応答性やスポーティさが増し、ボディ補強と相まって操作と動作のシッカリ感が頼もしい。ちなみに乗り心地は硬めで特にリヤシートは走行中ゴツゴツと感じる場面も多い。

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エンジンはまず、ノンターボエンジンを搭載する新型アルトでは新たに改良を行った、ある意味、新世代エンジンを採用している。ターボRSはそれをベースに改良型のターボチャージャーを組み合わせた。つまりターボエンジンとしても改良型の第一弾をこのモデルに搭載したことになる。高タンブル吸気ポートの採用で急速燃焼がノッキングを防ぎ、タービンのガスの流速向上などによりターボラグも既存のエンジンと比べ約20%抑えているそうだ。性能的には低中速域と最大トルクが向上している。そしてこのエンジンにはターボRS用に変速チューニングによって変速時間が20%向上したAGSが組み合わされているのだ。

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エンジンの力強さ=頼もしさは十分。加速時のターボラグも気にならず速やかに力強いトルクをタイヤに伝えてくれる感覚が得られる。長く強い加速を続けていると3000-4000回転あたりがもう少し盛り上がってくれたら...とも思うが、スムーズな発進からの加速はトランスミッションとの連携もよく全般的に頼もしさが勝つ。

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AGSは新型アルトよりも変速時間が向上したことにより、確かによりスイスイと加速&シフトチェンジをしてくれる。が、それでも欲を言えばシフトダウンのタイムラグが気にならなかったわけではない。ときに気持ちよくかつリズミカルに走行しているドライバーのムードを...、やや...、な感じなのだ。そこでターボRSにはパドルシフトも採用されていて、機械よりも自分の意思でコレを操作するほうがよりスムーズだし楽しい。一方で流すような走行ではAGSのリズムに慣れると「まあ任せてもいいか」と思えなくもない。シーンによってパドルを効果的に使えばいいのではないか。

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 ハンドリングは先にも紹介したように、ボディや足回りの剛性感とフラットなライド感、手応えがしっかりと得られるレスポンスのいいステアリングによって、基本性能が高められたのは間違いない。冒頭で真面目に...と申し上げた理由はソコなのだ。キュンキュンと走らせる場合にも応えてくれるハードを与えられ、ドライバーとのスポーティなドライビングコミュニケーションもしやすいと感じる性能は魅力的に与えられた。とは言え、そこではやはりAGSのパドル操作が理想。アルトのブレーキディスクに12インチを採用しているのに対し、ターボRSには13インチを採用。ブレーキのしっかり感もボディやステアリング剛性感にマッチしていた。

SUZUKI ALTO Turbo RS

 軽量&シンプルにこだわったベーシックなアルト。さらにボディもシャシーもカッチリと造り込まれたターボRSは単にスポーティなだけでなく、走りの質を上げたモデルという見方もできる。乗り心地はやや硬いが、剛性は高くターボエンジン搭載モデルらしくとてもよく走る。それにAT免許でも運転できるAGSを採用している。ターボRSは、スズキ最新の安全装備も備えている。そこでドライブフィールと実用に注目して一家に一台、夫婦で一台、という選択もアリ。

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その一方でクルマ好きな筆者の感想は「うーん、いいんだけど何だか物足りない」。軽自動車のスポーツモデルは、昨年から動きがやや活発化している。そんな中にセダンタイプ(スズキはラインナップするモデルを大きくワゴン/セダンと分類)のスポーティモデルを久々に登場させているのだ。

SUZUKI ALTO Turbo RS

MTがあってもよいのでは? コンパクトカー+小排気エンジンを、マニュアルトランスミッション(MT)で走らせる楽しさや面白さは欧州(例えばFIATやルノー、プジョーとか)そして日本にも存在する。WORKSの名を外すのはかまわないけれど、MTモデルがあってもよくないですか? 個性際立つ新型アルトの個性をより色濃いものにするために。

■スズキ 公式サイト
http://www.suzuki.co.jp