スズキは11日、軽乗用車「アルト」をベースにターボ・エンジンを搭載した「アルト ターボRS」を発表。同日より販売を開始した。

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昨年12月に行われた新型アルトの発表会場プロトタイプが公開されると同時に、その軽量プラットフォームとトルクフルなターボ・エンジンの組み合わせに一部のクルマ好きが大きな期待を抱いたアルト ターボRSがいよいよ発売となった。これまで明らかにされていなかったスペックや詳細なチューニングがついに公開されたので順番にご紹介しよう。



まずは車名にも掲げたターボ付きエンジン。「RA06A」型658cc直列3気筒吸気VVT(可変バルブ・タイミング)インタークーラー・ターボは、これまでスズキの各軽自動車でも既に上級グレード等で採用されてきたが、アルトRSターボではより急速燃焼を引き起こせる高タンブル吸気ポートを採用することで低中速域のトルクを太らせ、最大トルクも従来型の9.7kgm/3,000rpmから10.0kgm/3,000rpmに向上した。また、ターボチャージャーはタービンの通路面積を縮小してガス流速を速め、レスポンスの向上とターボラグの解消を図ったという。コンプレッサーの方も翼形状の変更により低速域の高過給に対応させた。これまでと比べ、ターボラグは約20%抑えられているそうだ。最高出力は(残念ながら)業界による自主規制値の64ps/6,000rpmに留まる。1987年にこの規制が生まれる切っ掛けとなる「アルト ワークス」を送り出したスズキ自ら撤廃に導くことはやはり難しいか。停車時のみ作動する(これ大事)アイドリングストップを採用したことで、JC08モード燃費は25.6km/L(4WD車は24.6km/L)を達成。エコカー減税の対象となる。



このエンジンと組み合わされるトランスミッションは、日本の軽自動車で現在主流のCVTでも、古来から一般的な3ペダルのマニュアルでもなく、自動変速も可能なシングルクラッチ式「AGS(オート・ギア・シフト)」のみの設定。既にアルトの低価格グレードや軽トラック「キャリイ」で採用されているこのトランスミッションも、ターボRSでは専用のチューニングを施し、ドライブモード(オート)は「快適なドライブフィールを優先し、ショックの低減を重視」した設定に、またステアリング・ホイール裏に備わるパドルでシフトも可能なマニュアルモードでは「スポーツドライビングに特化し、よりダイレクトなシフトレスポンスを重視」したという。各ギア比と最終減速比は、標準モデルのアルト「F」用AGSとは全て異なり、結合減速比を計算するとターボRSでは、特に2速と3速の間がクロスしていることが分かる(その代わり、4速と5速の間が離れている)。なお、今回は設定されなかったマニュアル・トランスミッションも、スズキの方に聞いたお話では「ユーザーから要望があれば検討する」とのことだった。前輪駆動の他に、通常のアルトと同様の4WDも用意されている。

新型アルトで世間を驚かせた軽量モノコックには、まずストラットタワーバーとフロントバンパーメンバーを装着し、カウルフロントパネルや、サスペンションのアッパー部のブラケットとそれを斜め方向から支えるサスペンションアッパーエクステンションの板厚をアップすることで、標準モデルのアルトと比べるとねじり剛性が5%、ストラット取付部の横剛性は14%も向上したという。さらに左右ドア開口部のセンターピラー上部付近と、後部ハッチ開口部の四隅付近に、スポット溶接を増し打ちして操縦安定性と応答性を高めた。




全長3,395mm × 全幅1,475mm × 全高1,500mm(ルーフアンテナを折り畳んだ状態)というサイズは全高も含め標準モデルのアルトと同じ。注目の車両重量は2WD車が670kg、4WD車は720kgと、アルトの上級グレード「X」と比べてもわずか20kg増に留まった。例えば、同様に15インチ・タイヤとターボ付きエンジンを搭載するホンダN-ONE」の「Premiun Tourer」と比較すると200kgも軽い。エンジンのスペックに大差ない軽自動車でこの差は大きいだろう。

サスペンションには前後とも専用のKYB製ショックアブソーバーを採用し、前後スプリングのバネ定数も高められた。フロントのストラットは操縦安定性を高めるためにシリンダーのサイズとピストンロッドの径が太くなっている。フロントはサスペンションアームの前後ブッシュとステアリングギアのマウントブッシュを変更することで応答性を向上させ、リアはトーションビームのブッシュ(I.T.L.式を採用する4WD車はラテラルロッドのブッシュ)を変更して横剛性を強化したという。

標準モデルのアルトでも上級グレードに採用されている15インチ・アルミホイールは、ENKEI製「all one」をベースに、新型アルトに合わせて開発したもの。ターボRSでは専用の切削加工が施されている。これに装着する165/55R15サイズのタイヤは、専用に新開発したというブリヂストン製「ポテンザ RE050A」。専用のパターン設計で高い剛性を確保し、操縦安定性とハンドリングのレスポンスを両立したという。フロント・ブレーキは13インチのベンチレーテッド・ディスクにアップグレードされたが、リアは車重が軽いから十分とは言え、残念ながらリーディング・トレーディング式ドラムから変更なし。(追記:ドラムの方が効きが良くないという印象を受ける書き方は良くないと、複数の読者からお叱りを受けました。申し訳御座いません、"残念"なのは主に後輪のホイール越しに見える、見た目の部分ですね。ライターはまだ試乗していないので、実際に乗ったときの印象については今後掲載を予定しております、自動車評論家の方による試乗記にご期待ください)



エクステリアは12月に公開された時のまま。前後バンパーはナンバープレート周囲のセクションがブラックアウトされ、下部に赤いアクセントが付く。フロントはフォグランプを装備した専用デザインだが、リアはランプ下にメッキの加飾と、赤いロアスポイラーを装着することで、標準モデルと基本的に共有のバンパーをスポーティな雰囲気に見せている。他に追加装着されたエアロ系パーツは、サイドアンダースポイラーとルーフエンドスポイラー。ヘッドライト周囲の通称"メガネ"とターボRS専用の横方向にスリットが開いたグリル、そしてリアハッチにクロームのガーニッシュが付く。ディスチャージヘッドランプも(今のところ)ターボRSの専用品だ。

ボディ・カラーはパールホワイト、ブルーイッシュブラックパール、ピュアレッドの3色が用意され、ドアミラーはすべてレッドで統一。ボディ・サイドのデカールは赤または黒(ビュアレッドの場合)となる。



インテリアでは、スポーティなドライブに必要不可欠とも言える、サポート性の向上した専用スポーツシート、本革巻ステアリング・ホイール、タコメーター付き3連メーターを装備。エアコンの吹き出し口に赤いフレームを加え、ピアノブラックのパネルをセンターコンソールに装着するなど、標準モデルと共通のトリムにも専用の演出が施されている。フロントに2つのスピーカーは装着されているが、オーディオレス仕様が標準だ。

運転席に標準装備されるシートヒーターを、4WD車では助手席にも装備する上にPTCヒーターも採用。これは発熱素子に電流を流すことで発熱し、エンジン冷却水が温まる前の寒冷時にも暖かい風を出すことができる装置だそうだ。スズキの各車でお馴染み、アイドリングストップ中でも冷風を室内に送る「エコクール」は全車に標準装備されている。

安全装備も標準アルトの上級グレードと同等。最適な制動力を前後に自動配分するEBD付き4輪ABSや、ESP(横滑り防止装置)は当然として、レーザーレーダーで前方車両を検知する衝突被害軽減ブレーキ「レーダーブレーキサポート」や、ペダルの踏み間違えから急発進による衝突を防ぐ誤発進抑制機能も標準で搭載されている。なお、この辺りの電子制御装置が走りの邪魔になると感じられるときには、オフにするスイッチもちゃんと用意されているのでご安心を。




消費税込み価格は2WD車が129万3,840円、4WD車が140万5,080円( パールホワイト塗装は2万1,600円高)。メーカー・オプションとして用意されているのは「バックアイカメラ」のみで価格は1万800円だが、これを使用するためにはスズキ純正ナビゲーションと後退時左右確認サポート機能・自動俯瞰機能付きコントローラーが必要になる。

個人的にはフロント・バンパーをどうせ替えるならもっとアグレッシブなデザインにしてもよかったのではという気もするし、自分の意思で回転を合わせクラッチを繋ぐことができるMTの設定が欲しいと思うが、エンジンやボディから足回り、インテリア、ギア比まで、かなりきめ細かな改良の手が入ってこの価格、そしてこの軽さは見事と言うほかない。スズキによればこのコンセプトは、「多くの人に本格的な走りを届けたい」という思いから、「気持ちの良い走りを心から楽しめ、毎日気軽に使える実用性も兼ね備えたクルマ」を作ることだったそうだ。その出来映えを最終的に確かめ、評価を下すのは、エンジニアでもジャーナリストでもない。オーナーになるかも知れないあなた自身だ。限られた人向けの高価格スポーツカーとは違って、近所を探せばきっと誰でも気軽に乗れる試乗車が用意されている販売店があるはず。是非ご自分でステアリングを握り、スズキの言う"本格的な走り"を味見されてはいかがだろうか。


スズキ 公式サイト
http://www.suzuki.co.jp/




By Hirokazu Kusakabe

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