Volkswagen e-up! 2014

もしEVを買うならどのモデルを選びますか?
そんな風に聞かれたら、僕はe-up!と答える。ほとんど迷わずに。
それぐらい、e-up!の魅力度は高い。
いや、本音を言えばテスラモデルSが一番欲しいんですよ。でも1000万円となるとなかなか・・・ね。その点、e-up!の価格は366万円。補助金を使えば300万円を切る。
それでも、ガソリンエンジンを積んだup!と比べればざっと100万円は高い。100万円あったら家族で豪勢な海外旅行にだって行けるし、何十回も高級レストランに行けるし、ブランドものの時計だってハーレーだって買えちゃう。にも関わらず、カタログ値(JC08モード)で185㎞、走り方にもよるが実用的には120㎞程度の航続距離しかないクルマをわざわざ買うというのは、冷静になって考えればかなり酔狂なことである。

Volkswagen e-up! 2014 Volkswagen e-up! 2014

でも、冷静になれないのがクルマの面白さでもあるわけで。エンジンを搭載せず、電気の力だけで走るEVには、大排気量のV8とかV12エンジンとはまた違った意味での、真新しい面白さがある。エンジンの音がしないとか、排気ガスが出ないとか、ガソリンスタンドに行かなくていいとか・・・考えてみれば当たり前なことだけれど、実際にそれを体験する、あるいは生活に取り入れたときの気持ちを想像してみると、なにやらワクワクしてくるのがEVの魅力だ。なにも化石燃料の枯渇問題や二酸化炭素による地球温暖化問題といった、大切だけど難しい話を大上段に振りかざさなくても、ただ純粋にEVに乗りたいという人の気持ちが僕にはよく分かる。マンション住まいだと難しいが、家に充電設備があり、しかも2台所有なら、その内の1台はEVがいいかなと真剣に思っている程だ。

Volkswagen e-up! 2014 Volkswagen e-up! 2014

と言っても、上記の話だけではe-up!をイチオシする理由にはならない。日本には量産EVの先鞭を付けた日産リーフ三菱アイミーブという2大巨頭がいるからだ。何故リーフでもなく、アイミーブでもなく、e-up!なのか? 僕の回答は「すべてにおいてちょうどいい」となる。
ゴーン氏の強力なリーダーシップ(ゴリ押しとも言う?)によって、積極的なEV普及策を講じてきた日産。その結果生まれたのがリーフだが、僕はデビュー当初からそのコンセプトに懐疑的だった。
228㎞(JC08)という長い航続距離を実現しつつ、価格を抑えたのは高く評価できる。しかし、如何せんクルマとしての魅力に欠けるのが問題だ。コストを下げる為に既存車種(ティーダ)のプラットフォームを使ったのはいいが、大容量バッテリーによる重量増加により衝突安全性の確保が苦しくなり、フロントのオーバーハングを大幅に延長。結果的に「間延びしたティーダ」のようになルックスになってしまった。

Volkswagen e-up! 2014 Volkswagen e-up! 2014

そもそもEVは近距離用途に使うのが理想的で、外出先での急速充電器によるロングドライブは、例外的な使い方と考えておくべき。急速充電器が普及すれば普通のクルマと同じように使えるようになるというのは明らかなミスリード。もしそんなことになりEVが一気に増えたら、あちこちで充電待ちの長蛇の列ができてしまうだろう。ならば増やせばいい? いやいや、chademo規格の急速充電器の消費電力は最大で125アンペア×400ボルト=50kw。6台並べて同時に充電を始めたら、たった1時間で標準的な4人家族の1ヶ月分の電力を消費してしまう。こんなものが増殖したら、真夏の電力ピーク時に大変なことになる。したがって、EVは家庭で夜間に充電し、充電した範囲内で通勤や通学やお買い物といった短距離で使うのがベスト。であるならリーフほどの大きさは必要ない。もっと小さく軽くつくった方が、結果的にバッテリーの搭載量も少なくて済み、低コストで使い勝手の良い商品になる。おそらく北米市場で大量に売るにはある程度の大きさが必要だという判断があったのだろうが、リーフはデザイン的にもパッケージング的にも中途半端になってしまった。



その点、アイミーブは素晴らしい。ベースとなったアイは軽自動車界の革命児ともいうべき優秀かつ個性的なデザインとパッケージングの持ち主だし、EVと軽自動車にはもともと高い親和性がある。サイズ的にも、近距離に特化した使い方をされている点でもEVに向いている。180km(JC08)走れる上位グレードに加え、航続距離を120km(JC08)に減らし、バッテリー容量=価格を抑えたグレードを用意しているのも好感が持てる部分だ。
ただし、リーフと同じくアイミーブも販売面では苦戦している。関係者によると、EVに乗りたいと考えるような酔狂な、いや失礼、先進的なユーザーには、軽の黄色いナンバーに抵抗をもっている人がまだまだ多いのだという。なんとなく分かる気がする。僕は黄色ナンバーに抵抗はないけれど、インテリアの安っぽさはちょっと許せない。

Related Gallery:Volkswagen e-up! 2014

Volkswagen e-up! 2014 Volkswagen e-up! 2014
Volkswagen e-up! 2014 Volkswagen e-up! 2014

さて、ようやく主役のe-up!に話を進めよう。軽自動車をひとまわり大きくした程度のボディはEVには理想的なサイズ。その分、後席やラゲッジルームはさほど広くはないが、4人で長距離走るためのクルマではないから、小ささはむしろ善である。フォルクスワーゲンは年央にゴルフのEV版も導入する予定だが、リーフと同じ理由から僕は否定的だ。先進的なゴルフが欲しいなら、同じく今年導入予定のPHEV(プラグインハイブリッド)版、GTEをオススメする。それはともかく、リーフやアイミーブの弱点を、e-up!は巧みに回避している。大きすぎないし、さりとて軽自動車でもない。

Volkswagen e-up! 2014 Volkswagen e-up! 2014

オリジナルup!のもつクリーンで親しみやすいデザインをきちんと踏襲した上で、専用アルミホイールや前後に配した変形C字状LEDランプなどによってEVであることをさりげなくアピールしているのも上手いなと思う。ヒーターを内蔵したシートの快適な座り心地や、シンプルでありながら質感にもきちんとこだわったダッシュボード&メーター周りの仕上げも秀逸だ。EV専用デザインをもつリーフよりずっとモダンな印象を受けるのはなんとも皮肉なものである。

Volkswagen e-up! 2014 Volkswagen e-up! 2014
Volkswagen e-up! 2014 Volkswagen e-up! 2014

クリーン、親しみやすい、モダン、上質・・・内外装から受けるそんな印象は、そっくりそのままドライブフィールにも当てはまる。ひと言でいえば超ウルトラスムース。誰もが気持ちよく、意のままに運転できる。ベースとなったup!はもともとコンパクトカー離れした走行性能を備えているが、ギクシャクした動きが出がちなASG(シングルクラッチ式AT)には馴染めない人も多いようだ。その点、抜群のスムースさを誇るe-up!はup!とは真逆。ホイールハウス内に専用のアコースティックフリースを奢るなど静粛性対策にも力が入っているし、床下に積んだ230kgのバッテリーによる低重心化や、モーターならではの力強いトルクなどによって、嘘でしょ?と思うほどに質の高いドライブフィールを味わわせてくれるのだ。ドライブフィールに関してはリーフもなかなか良くできているが、e-up!の完成度はそれ以上。乗り心地や静粛性面でちょっと前の軽自動車を連想させられるアイミーブとは大きな違いがある。

Volkswagen e-up! 2014 Volkswagen e-up! 2014
Volkswagen e-up! 2014

加速性能にも不満はない。0-60km/h加速4.9秒というタイムは、ほぼ2L車並みと考えておけばいい。0-100km/h加速は12.4秒かかるが、高速道路への流入にもとくに支障はなかった。最高速も130km/h出るので、その気になれば追い越し車線の流れにも付いていけるが、アクセルペダルを深く踏み込むとバッテリーがみるみる減っていくから、特に高速道路では穏やかな運転を心がけたい。

Volkswagen e-up! 2014 Volkswagen e-up! 2014

近距離用途とはいえ、年に何回かは遠出をする機会もあるはず。その点、日本の急速充電器規格であるchademoに対応しているのは嬉しい配慮だ。chademoを使えば30分で80%のチャージが可能。200V普通充電は8時間でフルチャージとなる。

Volkswagen e-up! 2014 Volkswagen e-up! 2014

ノーマル、エコ、エコプラスという3つの走行モード(順に遅くなるが電費は向上する)、アクセルから足を離した時にかかる回生ブレーキの強さを4段階に調整可能な機能、充電やエアコンの作動予約ができる専用アプリなど、EVらしい使い方や楽しみ方を提案しているのもe-up!の魅力だ。
このところガソリン価格が低下傾向にあるとはいえ、電気代はガソリン価格よりはるかに安い。ただし、100万円という価格差のもとを取るのは非現実的だろう。経済原理で選ぶのではなく、EVのある生活を楽しみたいと考える人。そんな人にとって、e-up!は今もっとも魅力的な回答を示しているクルマだ。これ1台でなんでもこなすというオールマイティーな使い方ではなく、セカンドカーとしてなら、かなり現実的な選択肢として検討する価値は大いにある。

フォルクスワーゲン グループ ジャパン株式会社 VolksWagen公式HP
http://www.volkswagen.co.jp/ja.html