【短評】飽くなき進化を遂げた、アストンマーティン「V12ヴァンテージ S ロードスター」
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アストンマーティン史上、最もパワフルで最も速いオープントップのロードカーが、2014年のペブルビーチ・コンクール・デレガンスで初めて公開された。その「V12ヴァンテージ S ロードスター」は基本的に、アストンマーティンの最強パワートレインを、小型のシャシーに詰め込んだ「V12ヴァンテージ S クーペ」のコンバーティブル・バージョンである。

この新しい「S」モデルが、先代の「V12ヴァンテージ ロードスター」と違う点は、よりパワフルなエンジンと新しいトランスミッション、アダプティブ・サスペンションを搭載し、より豪華な装備や手直しされたスタイリングが与えられたこと。先代の好ましい6速マニュアル・トランスミッションが無くなってしまったのは涙が出るほど残念だが、アップデートされたこのロードスターは、他のすべての点に興味をそそられる。我々は(赤いカーボンファイバーのアクセントが付いた)チャイナグレイのV12ヴァンテージ S ロードスターに乗り込み、米カリフォルニア州のリゾート地、パームスプリングスを囲う山々や砂漠で丸1日試乗を行った。


所感

このロードスターはクーペと同様、押し出し接合アルミニウム製モノコックに、軽量なアルミニウム製ボディ・パネル(一部ステールやマグネシウム、複合素材を使用)を纏っている。ルーフを取り払ったことにより失われた剛性を補うため、このオープン・プラットフォームにはクロスメンバーが追加された。電動式ソフト・トップは全て自動で作動し、30mph (約48.2 km/h)以下の速度なら走行中でも、スイッチを押すだけで14秒あれば開閉可能だ。ルーフ格納時は、その全ての構造物がシート後方に設けられたハードトノカバーの中にすっきりと収められる。

先代と間違えられないように、アストンマーティンは特徴的なフロントグリルを、このモデルではアルミ素材からカーボンファイバー製に変更した。メッシュはブラックまたはチタンシルバーから選択可能だ(ボディカラーのアクセントを組み合わせることもできる)。また、新たに軽量な10スポーク鋳造アロイホイールを採用し、トランクリッドには見てすぐに分かる赤い「S」の文字が付く。インテリアを見てみると、シートには滑りにくいアルカンターラ素材や、新しいパターンのステッチなどが確認できる。この他にも、アストンマーティンのカスタマイズ部門「Q by Aston Martin」による高級なオプションが幅広く用意されている。

お馴染みの自然吸気6.0リッターV12エンジンは大幅に改良され、大径スロットルボディやデュアル可変バルブタイミング機構、新しいインテークマニホールドと燃料ポンプ、全てCNC加工された燃焼室などが採用されている。これらの改善点は、新しい「AM28」V12エンジンの良さを保証するには十分だ。ダイノテストでは最高出力573ps、最大トルク63.2kgmを叩き出す。先代の6.0リッターエンジンも517psと見事な出力を誇っていたが、この改良されたエンジンはさらに、開いた口が塞がらない程のレベルにまで高められているのだ。また、このエンジンは絹のように滑らかで、実際に額面通りのパワーが感じられるが、車両重量1,745kgとクーペより80kg重くなった車体で特に速さを感じたいなら、高めの回転域(4,000rpm以上)を使うべきだ。コクピットに直接流れ込むエキゾーストノートは、特にスポーツ・モードでは驚くほど素晴らしい。

一新されたギアボックスは7速「Sportshift III AMT」(いわゆる7速シングルクラッチ・オートマチック・ギアボックス)のみの設定で、これがシャシーに後方にミッドマウントされ、堅牢なトルクチューブを介してエンジンと繋がっている。刺激的な名前をしているが、実際には動作があまりスムーズとは言えず、シフトも遅く感じられた。シフトチェンジ時にギクシャクするのを避けるためには、ギアがつながる前にドライバーが少しアクセル・ペダルを戻してやる必要がある。もっとも、強く鞭を入れている間に限ればこのレース育ちのギアボックスは楽しめるようで、平均的な合格点が与えられるだろう。

先代モデルでは固定式ダンパーが標準だったが、このSモデルには3ステージ・アダプティブ・ダンピング・システム(ADS)が採用され、「ノーマル」「スポーツ」「トラック(サーキット)」の各モードをドライバーがセンターコンソールに設けられたボタンで選択できる。アダプティブ・ダンピングは多くの自動車メーカーから提供されており、大抵は切り替えてもあまりその変化に気付かないものも多いのだが、アストンマーティンは違った。「ノーマル」でも十分スポーティな設定で、「スポーツ」にするとかなり硬く、さらに「トラック(サーキット)」では、鏡のように滑らかな路面を走るときのために取って置くべきであるほど硬い設定となる。ピレリ製「Pゼロ コルサ」タイヤ(前255/35-19・後295/30-19)は、チューイングガムのようにしっかりと路面に張り付くが、荒れた路面では暴れまくる。巨大なカーボンセラミック製ディスクブレーキのおかげで、クルマはいとも簡単に止まってくれる。

このV12ヴァンテージ S ロードスターは、古典的なヨーロピアン・マッスルカーであり、その伝統を匂わせる。1世紀に及ぶアストンマーティンの歴史や、怖ろしく古い時代から伝承された英国の人間工学、そしてヴァンテージというモデルが2005年から生産され続けていることの功績を称える1台だ。最新のクルマの中で、見た目が満足できると同時に、運転してみて魂を揺さぶられるようなモデルは極めて数が限られている。今から30年後、もし孫にこの時代のお気に入りを聞かれたら、V12ヴァンテージ S ロードスターのような希少なクルマの存在を思い出すことだろう。


【基本情報】
エンジン:6.0リッターV型12気筒
パワー:最高出力573ps/6,750rpm・最大トルク63.2kgm/5,750rpm
トランスミッション:7速シングルクラッチ・オートマチック
0-100km/h加速: 4.1秒
最高速度:323km/h
駆動方式:後輪駆動
エンジン位置:フロントミドシップ
車両重量:1,745kg
座席数:2
ベース価格:19万9,500ドル(約2,348万円)
試乗車価格:22万4,986ドル(約2,648万円)
日本販売価格:未定

By Michael Harley
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:日下部 博一

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