【試乗記】「元祖ポニーカーが再びその頂点に」 2015年型フォード「マスタングGT」
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過去50年間、それは人々にとって憧れの対象であり、チューナーにとっては夢を現実化する手段であり、また時には銀幕の中で輝くスターのような存在でもあった。これまでに900万台を超える台数が販売されて来たフォード「マスタング」というクルマについて、今さら紹介する必要もないだろう。しかしフォードは、1964年5月の誕生以来最大の変更が施された最新の2015年型マスタングについて、この1年の間ずっと紹介を続けてきた。

我々Autoblogでも、発表時には特集を組み、実車が公開された際にはその姿を皆さんにお届けした。さらにエンジンのスペックを紹介したり、V8エンジンのエキゾースト音走行シーン、標準搭載のバーンナウトに使う"ラインロック"機能などのビデオを紹介して来た。

他にやり残している事と言えば? そう、試乗することだ。ロサンゼルス周辺を数時間走り終えた今、読者の皆さんに言いたいことは、まず、あなたがマスタングについて知っている事をすべて忘れて欲しいということだ。というのも、この新型はこれまでの旧式な面を恥じ、マスタングというモデルを再定義し、同じセグメントに属する他のクルマとの差を、"何馬身"も引き離しているからだ。




適切な評価をするため、まずは旧型に乗ってみる

適切な見方から評価するということを証明するために、まず我々は最初に、ロサンゼルスのディーラー「ギャルピン・フォード」が貸し出してくれた2014年型(先代型)マスタングのV6モデルとV8モデルの走りを試すことにした。トランスミッションはどちらもマニュアルだ。まず先に、標準のピレリ製P235/50ZR18タイヤを履いたV8エンジンを搭載するモデルに試乗する。我々がお気に入りの渓谷の道路を走ってみたのだが、無感覚で曖昧なステアリングや、タイトなコーナーに入って行くには恐ろしく不十分なブレーキ、不整路面では必ず跳ねたり滑ったりする旧式なだけのサスペンションによるハンドリング特性など、様々な不安を感じさせられた。しかし、スロットル・レスポンスや粘り強いエンジン、マニュアル・トランスミッションの出来映えは本当に気に入ったし、エンジン音も良かった。だが、他はすべて、優しい言い方をすれば、期待はずれであった。Autoblogの同僚の間で行った非公式な調査や、皆さんからの投票結果では、他のライバル車よりもマスタングを支持する声が高かったにも拘わらず、である。

次に、V6モデルで先程と同じ山道を走った。今度はオプションの19インチ・ホイールに255/40R19タイヤを装着していたこともあり、コーナリング性能は先ほどのV8と比べ大きく改善されていた。とは言え、やはり路面の不整では跳ねるし、ブレーキは全く自らの仕事に乗り気ではないようだったが、コーナリング時にはずっと高いグリップを発揮した。ベース・グレードのV6エンジンが息切れするような音を発することもあったが、乗っている時間の98パーセントは素晴らしいエキゾーストノートが聞こえていた。

両車に言えることだが、一昔前のシャシーと旧式のサスペンションは年齢を感じさせ、攻めた走りをさせることに嫌悪感を抱かせた。トラック・パック(改善されたサスペンションとスタビリティ・コントロール、より大きなタイヤやはるかに優れたブレーキが付く)仕様なら、もっと好感を抱けたことは間違いないだろうが、筆者には「BOSS 302」や「シェルビーGT500」、「Roush Stage 3」などのチューンド・マスタングを持ってこないと胸が躍らないと思った。




V6に取って代わる新しい4気筒ターボ「エコブースト」

先代を改めて確かめた後で、いよいよ2015年モデルとして発売された新型マスタングに乗る。

この2015年モデルでは、低級グレードの目が届き難いところも改善されていた。ただしV型6気筒エンジンを除いて。もはや旧世代となるこの3.7リッター自然吸気V6エンジンはすでに見捨てられたも同然で、フォードはほとんど手を入れていない。これを積む新しいエントリー・モデルは、馬力も燃費もぱっとせず、しかも同じエンジンを積む旧型と比べても305hpから300hpにパワー・ダウンされている。さらに、プレミアム・パッケージやパフォーマンス・パッケージ、レザーシートやレカロシート、トラックアプリや18インチ以上のホイールなどのオプションは、選ぶことが一切出来ない。おそらくフォードが、販売店を訪れた顧客に購入を検討させたいのは直列4気筒ターボのエコブーストで、V6はレンタル市場向けの廉価版だ。

もっとも、これは道理に適っている。新開発のエコブースト・エンジンを積むモデルは、基本的にかつてのV6モデルを置き換える位置にあり、しかも大きく改善されている。我々はまず、6速ATが組み合わされたエコブーストの「プレミアム」仕様に乗り、朝の渋滞したロサンゼルス市内の道路を抜け、エンジェルス・クレストへと向かった。このクルマが搭載するターボチャージャー付き直列4気筒は、まるで6気筒と同じように感じられた。それも驚くことではない。この新型エンジンは今では姿を消したかつての6気筒と実質的に同等のスペックを持つのだ。フォードの新世代エンジン戦略は上手くいっている。

マスタングのエンジンという役目に合わせてチューンされたこのエコブーストは、スロットル・レスポンスやパワーの出方が一定で、44.3kgmという最大トルクをあっさりと2,500rpmで発生する。2.3リッターにも拘わらず、音に関しては3.7リッター・エンジンのようだ。Autoblogの記者であるMichael Harleyが生産前の試作車に試乗したとき、ターボからの音が確認できなかったと言っていたが、やはり今回の90分に及ぶ試乗でも同様にツインスクロールのコンプレッサーが発する音は全く聞こえなかった。アクセルを踏み見込むと、思ったより低い音が聞こえるが、そのまま回転を上げていけば6気筒と同じような力を発揮し始める。



先代より"おしゃべり"になったステアリング

エンジェルス・クレスト・ハイウェイでは、コーナーをいくつか曲がっただけで、これまでのマスタングに関する全ての印象がほとんど消え去ってしまった。試乗車は、数日前に乗った2014年型の8気筒モデルと同じサイズの18インチ・ホイールを装着していたが、共通している点はそれだけ。2014年モデルと比べ、2015年型マスタングのリンケージが改良されたステアリングは、"おしゃべり"というラベルを貼れそうなほど反応がよく感覚に富む。径が小さくなったステアリング・ホイールも、握りやすくなっている。3つのモードが用意された電動パワーステアリングの設定を「スポーツ」に切り替えると、手応えが最も重くなるが(「コンフォート」では軽く、「ノーマル」なら万人向けになる)、切り返すのに重すぎるというほどではなく、適度に固く、そしてよりダイレクトな感触になる。フロント・サスペンションはしっかりと前輪の動きに追従し、タイヤを継続して地面に押し付け、ドライバーの意思を反映する。これによってステアリング・ホイールとタイヤのつながりを感じ取ることができ、ステアリングを回したときも、前輪がどこを向いているか、路面とのグリップがどれくらい保たれているのかなど、その時々の状態に関してより多くの情報を与えてくれる。

「セレクトシフト」トランスミッションとそのコンベンショナルなトルク・コンバータは改良されており、ケースには鋳込みのリブが付き、クラッチは改良されてフリクションが減少した。ハードなコーナリングに向けて自動でシフトダウンを試みると、「スポーツ」モードではその反応が2拍ほど遅く感じられるが、ドライブモードを「スポーツプラス」または「トラック」に切り替えれば改善される。しかし、パドルを使って自分でシフトするのが一番だ。パドルを引いてシフトダウンすると、マスタングは安定を保ったまま、素早く回転を合わせてギアを落とした。




サスペンションの改善がバンプに対する"アレルギー"を克服

何よりもサスペンションの改善は、マスタングの路面のバンプに対するアレルギーを克服させた。皮膚炎を治してくれたとでも言えるだろうか。ダブルボール・ジョイント式マクファーソン・ストラットのフロントサスペンションや、旧態依然としたリジッド・アクスルをついに捨て、マルチリンクとなったリア・サスペンションの重要性は、どれほど説明しても誇張にはならないだろう。コーナーに入る前のブレーキング時にシャシーが落ち着くのを待つ必要はないし、コーナーの途中に穴があったら対向車線にはみ出したり崖から飛び出してしまうのではないかと心配する必要もない。ピックアップトラックの後ろから落ちた2x4の木材を避けようとして路面の凹凸に載ってしまったときにアクセルを閉じなくても大丈夫。未舗装のコーナーの出口でパワーを掛けても、ボディシェルの剛性が28%高まったという車体はバタつくことなく、またホイールは路面上で最高の仕事をし、しっかりとパワーを伝えてくれる。

このような実際的な改善は信頼感につながるし、副作用として"楽しさ"をもたらしてくれる。コーナーリング中に用心深く構えたり、点字を読むように路面を注視する必要もなく、速く走れるし、危険があれば避けられる。失ったものはと言えば、綺麗に舗装された滑らかな路面を見たときに「これで安心して走れる! でも気は抜けないぞ」と思わず叫んでしまうような興奮くらいだろう。

先代型を思い出させるものは、コーナリング中にアクセルやステアリングを調整した時に感じる浮遊感(これはパフォーマンス・パッケージが付かない標準仕様のGT V8モデルでも感じた)と、ブレーキだ。2ピストンのブレーキはフェードしたりまったく効かなくなったりすることはなかったが、80%の使い方を保っていれば、すぐにパッドの心地よい匂いとともに制動力が復活する。だが、エコブーストに用意されるパフォーマンスパッケージを選べば、GTの標準仕様と同じ4ピストンのユニットに交換できる。




買うなら迷わずこちらを選ぶ

次に、V8エンジンを搭載する「GT」のマニュアル・トランスミッション仕様「パフォーマンスパック」付きに乗り込んだ。エコブーストですでに好感触を得ていたので、パフォーマンスの面で期待を裏切ることはないだろうと確信していた。我々はつい先日、フェラーリ「F355」やポルシェ「911ターボS」を走らせた渓谷の険しい道で、マスタング GTの試乗を行った。結果を言えば、その時と同じように実に楽しかった。前述の2台とは全く違うし、価格も大幅に安いが、全体的に妥当なパフォーマンスが楽しめる。

最高出力420hpを発揮する先代の5リッターV8でも全く問題はなかったが、新型のGTはより大きなバルブと高流量のポートを持つ新設計のシリンダーヘッドや、改良されたカムシャフト、鍛造コネクティングロッドなどのアップデートが施され、435hpへとさらに性能が向上している。アイドリング時には以前より静かだが、アクセルを踏めばすぐにその性格が一変する。いま乗っているクルマはGT500やRoushではなかったはずだが、と思うくらいだ。また、このマニュアル・トランスミッションのシフト・リンケージが改良されており、シフトノブは少し小さいが、ギア・チェンジの感触はこれまでにないほどスイートだ。

クルマ自体の面積が大きくなったことで、ステアリング・ホイールの感触は重くなっている。シャシーに補強が入れられ、硬めのスプリングとスウェイバー、前後で幅が異なるタイヤ(フロント255/40、リア275/40)を装備したこのクルマを一言で形容するならば、"粘り強い"という言葉が当てはまる。ブレンボの6ポット・キャリパーと15インチローターを組み合わせたフロントのブレーキは即座に、そして一貫した制動力を発揮する。2014年型のV8モデルを不安定にさせた、同じ不整路面がうねった道路で、2015年型は思い切って走らせることができた。改良が施されたボディは上下に震えることもなく、意図せずにタイヤが鳴くこともなかった。コーナリング中にスキール音を発生させてしまうことはあるが、その時でも運転の楽しさに没頭していられる。さらに大事なことは、いつ訪れるか分からない破綻の心配をしなくて済む。エコブーストの前後重量配分が52:48であるのに対し、V8のGTは53:47。その1%の違いは気にもならなかった。確かにV8を積むGTの方が重いが、こちらの方がずっと好ましい。フォードによれば、最新のBoss 302よりもサーキットでは速いという。もし購入するならば、エコブーストよりも迷わずGTを選ぶだろう。




筋肉質なエクステリアは気に入った

我々が試乗会の最後に乗ったのは、クロームメッキのトリムや特別なバッジを装着し、3層コート「トリプルイエロー」カラーで塗られた「マスタング 50イヤー・リミテッド・エディション」だった。

GT プレミアムは、エコブーストよりも速く魅力的で、GT パフォーマンスパックほど頑固ではなく、先に試乗を行った2台の中間にうまく位置する。とは言え、マルホランドの酷くアスファルトが荒れた路面をトラックモード(横滑り防止のESCがスポーティな設定になるが、完全にオフにするものではない)で走らせた時、より優れたハンドリングを感じることは出来たが、しかしやはり少々浮遊感があった。また、ある点においてはこれが最も素晴らしい選択だとも言える。というのも、後輪のグリップが高くないため、コーナーではリアが穏やかにスライドを始め、スロットルを保ったままでドリフトさせることができ、また少し間を置いてからラインに戻すことも出来る。あるいはアクセル・ペダルを踏み込んで後輪に荷重を掛け、パワーを与えてコーナーを立ち上がることも出来る。これが実に楽しい。

エクステリアはどのアングルから眺めても筋肉質で、我々も大変気に入っている。粗探しをするならば、唯一気になるのが、ボンネットに隆起した2つのバルジだろう。クルマの外から見たときにはそれほどでもないが、キャビンから見たときには爬虫類の背中のように目立ってしまう。






インテリアはというと、大幅に改善されていた。多様なラインと素材だけでも目を虜にするが、その上(小さな)ミラーに搭載されたブラインド・スポット・ワーニング・システムや、明るく鮮明なイメージを映し出すリアビュー・カメラ、アダプティブ・クルーズ・コントロールなど、多くの親切な快適装備が採用されている。少しだけ言わせてもらうと、センターコンソール下部にあるトグルスイッチが、メタリック仕上げのようなコーティングが施されているせいで、プラスチック感が際立ってしまい、さらにそのボタンのマークが明る過ぎて日中はどの状態に切り替えてあるのか見分けが付きにくい。スポーツシートは快適だが少し柔らかすぎる。どこを見てもボタンだらけでこちらを惑わせる(すぐに用途が分かったのは、ナンバープレートのちょうど上にあるトランクリリースのボタンだけだった)。でも間違いなく、このインテリアは工場から出荷された標準のマスタングとしては、これまでで一番の出来だである。

まだ話を続けることも出来るが、ともかく知っておいて欲しいのは、これはマスタングの歴史の新しい章が始まったのではなく、新しい本が刊行されたということだ。もう、大金を出してGT500を買ったり、まともなパフォーマンスカーにするために様々なアップグレードを施したりする必要はないのだ。



2014年モデルに乗ったとき、Autoblogの同僚たちの間で堂々巡りの議論を繰り広げた挙げ句、我々が出した結論は、「V8モデルは改良していくためのキャンバスとしては素晴らしく、3万4,430ドル(約411万円)で世に出たが、あと数千ドル掛ければいい仕事をするだろう。出来れば2年落ちの中古車を購入してその浮いた分をアップグレードにつぎ込めば、新車で買った人たちの怒りに火を付けることができる」と評した。

しかし、それは忘れて欲しい。新型のV6モデルのことも忘れていい。2015年型のマスタング エコブーストのプレミアムは、2014年型のV6より2,500ドルほど高いが、両車を比較するとアップグレードされている点を考慮すればその価格差はないも同然。しかもエコブーストの方が燃費もいい。さらに1,000ドル高い2015年型GT プレミアムはというと、もし、公道でこれだけのクルマに乗りながらほとんど喜びを感じていない人がいたとしたら、フォードに代わって警察か少なくとも医者を呼んでやった方がいい。きっとどこかおかしいか、体調が悪いのだろうから。

結論。新型マスタングは、価格を考えればこのセグメントでは他の追随を許さない。また、値段の安さを言い訳にする必要さえない。





【基本情報】
エンジン:5.0リッターV型8気筒
パワー:最高出力435hp/最大トルク55.3kgm
トランスミッション:6速MT
最高速度:155mph(250km/h)
駆動方式:後輪駆動
エンジン搭載位置:フロント縦置き
車両重量:1,680kg
座席数:2+2
燃費:6.4km/L(市街地)10.6km/L(高速道路)
ベース価格:3万6,925ドル(約434万円)
テスト車両価格:4万3,490ドル(約511万円)

By Jonathon Ramsey
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:日下部 博一

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