SUZUKI ALTO

当たり前のことなんだけど、いざ新型アルトを目の前にしたら、つい言ってしまった言葉がある。「ちっちゃ!」だ。
発売が発表されてからやたらあちこちで見かけるその姿の写真たちは、ボンネットがしっかりと前に出て、その先端にワイド感を強調させるがごとく左右に張り出したようなヘッドライトを持つどこかクラシックなもの。これまで質感を上げるために多用されてきたメタル装飾を排除したするっとシンプルなカオは、どこかイタリアンコンパクトカーを彷彿とさせるような粋なデザインだ。

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その絵的な存在感から、なんとなくもっと大きいクルマなんじゃないかと思っていたのだ。軽自動車の肥大化には目が慣れていることもある。
だけどこのアルト、思ったよりもほんとうに小さいのだ。それは数値としてきっちりと現れている。それにコイツ、正月太りをいまだ引きずる我が身を叱咤激励されてしまうかのような(涙)、ものすんごい数字を達成したのだ。それが先代比−60kgという壮絶なダイエットである。

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大きく変わったのは全高だ。
刷新されたプラットフォームにより、先代アルトエコに比べて−45mmもルーフラインを下げた。ボンネットもちょっと鼻先が膨らんでいたような曲線形状から、スッと先端に向け流れ落ちるような形状になり、少しオーバーハングを短縮している。

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テールゲートは角を落としてリアウインドウを背負うような印象的な佇まいに変わった。ストンとまっすぐ下に切り落としたようだった先代アルトエコのリアエンドから考えるとやや後方に膨らんだような印象を受ける。が、実はリアのオーバーハングは数値的にはほんの少し短縮されているのだ。リアタイヤが先代よりもうんと後ろに下がって、ホイールベースを伸ばしたからだ。

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これにより新型アルトは外観のロー&ワイドなスポーティーさを纏(まと)い、はっきりと視覚に鋭いインパクトを与えていると同時にむろん空気抵抗の低減にも貢献しているのだが、室内空間はむしろ先代アルトエコよりもゆったりと取られているのに注目して欲しい。

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乗り込んだ感じですぐわかる。乗員と乗員の間に、適度なパーソナルスペースがしっかり取られているのである。特に感激したのは拡大されたホイールベースの恩恵から来る、後部座席に乗り込んだときのニークリアランス。身長162センチの私が足を組み、ふんぞり返って座れるくらいの膝前スペースが余裕で用意されているのだ(※あくまでも乗り心地を試すためですので悪しからず!いつもはもっと控え目に乗っています・笑)。

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エンジンルームの最小化とタイヤを極限まで四隅に配置することで室内長を最大限に生かしたこのレイアウトでは、ホイールベースが60mmの延長をしているため室内長が2.040mmと+145mm。これにより、前後の乗員間距離は+85mmを叶えている。この数値はクラストップになるのだが、なるほど外から見るコンパクトな印象とずいぶん違う。乗り込んでしまえばせせこましさが微塵もない。

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さらに後部座席は先代比+5mmもヒップポイントが上がっていて、運転席よりもほんの少し高い位置にお尻が設定されているため、視界もなかなかにクリアだ。
乗り込みの際も低いルーフが煩わしく感じることはなかった。開口部がしっかりと確保されているために、想像以上にアプローチが楽々なんである。
ほんとしみじみ、よく考えられたボディだ。

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だがしかし、感心するのはさらにその先である。そう、ダイエットの件だ。
軽量かつ高剛性な高張力鋼板をボディーの46%に採用し、スズキ初となる樹脂製のフロントフェンダーなどでさらに軽量化した。

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シートフレームも刷新され、見た目に新しいのはもちろんのこと、こちらも軽量化がなされている。
座ってみるとかなり薄いのだが、意外にも身体の収まりは上々。ヘッドレストも前傾しすぎておらず、身体をすっぽりと預けても快適だ。

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乗り出すとその軽量化からくる加速のなめらかさにはちょっと新鮮な感動を覚える。アクセルペダルに足を軽く乗せただけで、私+男性二人を乗せていてもスッと足取り軽く滑り出す。
一般乗用車としては大本命となろう、「37km/L」を叩き出したFFCVTモデルには、スズキのエコ技術としてすでに市民権を得つつある「エネチャージ」が搭載されていて、これももちろん加速性能に一役買っているのは間違いない。

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(CVT)

新型アルトに搭載されているのは、実質的なマイルドハイブリッド、つまり回生したエネルギーを加速時に使用する進化版「S−エネチャージ」ではなく、減速時の回生エネルギーをバッテリーに蓄え、ウインカーやワイパー、オーディオなど電装系に使用することで、これまで電装系に割かれていたエンジンのパワーをすべて走行に生かせられるというベーシック版「エネチャージ」。アルトというクルマがベーシックな実用車であるという位置づけから、もっともプレーンなエネチャージを搭載することに決めたのだという。
ベースとなるCVTも変速比幅を低回転域に振ることで、燃費に貢献する最適化がなされている。

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肝心のエンジンも、新しいプラットフォームのちいさなエンジンルームに納まるようにコンパクト化された。エキマニ一体型シリンダーヘッドの採用や触媒ケースのサイズのコンパクト化など先代アルトエコに比べてエンジン自体でさえ高さ-23mm、幅-36mm、全長-79mmを実現している。
ちょっと軽自動車が自宅や勤務先にある人はボンネットを開けてみて欲しい。そしてただでさえコンパクトに設計されたエンジンをさらに小さくする、そのピンセットで折り紙の鶴を折るような、靴ベラでエンジンをねじこむような努力に想いを馳せ、是非とも感涙して欲しい。

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効率面から言えば、圧縮比を上げ、吸気ポートピストン上部の形状を変更して熱効率を向上、弊害として生まれるノッキング(異常燃焼)を抑えるため排出ガスの一部を燃焼室内に戻して燃焼温度を下げ、自然発火を防ぐEGRシステムが採用されている。

さて、加速もさることながら、感動的だったのは時速40~50kmあたりでのアシのなめらかさである。
試乗シーンでは工場地帯も含み、路面がワダチで凹んだり塗装が剥がれたりと荒れまくっているような場面も走行したのだが、その辺を乗り越えたときのストン、と正しい場所に納まるかのようなコナレた感じのいなし方が素晴らしかった。

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底つき感、突き上げなどガツガツ来るような大きい入力をすんなりと逃がしてくれるのだ。
コーナリングでのしなり、適度に手応えのある柔らかさも、運転手に適度なリラックス感を与えてくれる癒し系。もちろんエコタイヤを装着しているのだが、ジタバタ感とかあばれる君な挙動は微塵も出ない。新開発のサスペンションは前後ともにストロークを拡大し乗り心地の向上を図っているのだというから納得だ。

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もちろんここにも軽量化のための尽力がある。リアサスペンショントーションビーム式を新採用したほか、フロントも最軽量化。ただしサスペンションフレームと車体メンバーの固定点は増やされ、取り付け部の剛性は上げられている。取り付け根元がガッチリ固まることで、ストローク含めよりサスペンションが正しくフレキシブルに可動するのだ。

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さて、新型アルトと言えば、乗用車に初めて採用された新トランスミッションであるMTベースのセミAT5AGSも注目だ。
同社"軽トラ"のキャリィには搭載されており、商用車ユースにも耐えられる安価な自動変速機として、すでにインドなどアジア圏で爆発的人気を得ているものを日本に持ち込んだかたちだ。
電動油圧式アクチュエーターを採用したAGSは、すでに他社のセミATを経験している者からすれば質感は高い。

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ボディが軽量であることも手伝って、シフトチェンジのたびに生まれる変速ショックの揺り返しの処理なんかも比較的成功している方だ。アクセルペダルを踏み込めば踏み込むほどかなり低速で引っ張るから、ちょっと車線変更をしなければならないときなんか、焦る気持ちのままぐっと踏み込んだら逆に下のギアに入ってしまい、しばし加速にタイムラグが生まれてしまう...のだが、それもきっと慣れだろう。

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しかし、CVTよりもやや安い値段だから、という価格面だけでセミAT未経験者がCVTから乗り換えるとなると、シフトチェンジのたびの独特の変速ショックに、不満を感じるかもしれない。このショックは従来のATより大きいからだ。ちなみにAGS、減速時はシフトダウンするたびに結構大きなガシャコン、ガシャコンという、なんとも言えず牧歌的な音がトランスミッションからわりと大きく聞こえてくる。ギアを機械的に押し込んでいる音なのだ。もちろん私的にはこの音、かなり萌える感じなのだが、世の奥様全員がこれに賛成と言わないのもなんとなく予想がつく。
やはり日常にストレスのない使い勝手というところを切り取れば、レスポンス面とスムーズさはCVTに軍配が上がると感じた。
実はMT好きの著者ではあるが、今回はCVTに軍配を上げる。ラクだし静かですから。

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(5AGS 左:AT / 右:MT)

さてここまで基礎体力に優れていると、このあと3月に登場するターボモデル、アルト ターボRSが激烈に楽しみだ。すでに世間ではワンメイクレースの開催を検討しているファンもいるとか。試乗が待ちきれない。





■スズキ 公式サイト
http://www.suzuki.co.jp