【レポート】アキュラ「NSX」は、業界で初めて女性がデザインを指揮したスーパーカー
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女性カーデザイナーのミッシェル・クリステンセン氏をご存じだろうか? おそらく、最近発表されたスーパーカーの情報をネットでチェックしているか、あるいはスポーツ・クロスオーバーの流行初期の頃から多大な興味を抱いていた人でなければ、彼女の名前を聞いてもピンと来ないかもしれない。

北カリフォルニア出身のクリステンセン氏は、ドラッグレーサーの一家に育った。あの偉大な1932年型フォードや、「プリムスGTX」、「ダッジ・スーパービー」など数々の名車が自宅ガレージにあったという。ティーン時代の彼女は、友人のためにプロム(アメリカの高校などで卒業前に行われるダンスパーティー)で着るドレスをデザインしたり、レーシング・チームのピットクルーとして働くことを夢見て過ごした。やがて、高校時代に出かけたモーターショーで、父親から著名なカーデザイナー、チップ・フース氏のことを教えてもらったのがきっかけで、そうした職業が存在することを初めて知る。その後、カーデザイナーになることを志した彼女は、世界的なデザイナーを数多く輩出することで知られるカリフォルニア州パサデナのアートセンター・カレッジ・オブ・デザインに進学し、卒業制作で「プリムス・バラクーダ」をリデザインした。そんな彼女の肩書に新たに加わることになるのが、新型アキュラ「NSX」のリード・エクステリア・デザイナーだ。

スーパーカーのエクステリア・デザインを手がける初の女性リーダーとなったクリステンセン氏だが、そのキャリアはまさに"初めて尽くし"。2005年、大学を卒業するとホンダに入社し、アキュラ部門初の女性カー・エクステリア・デザイナーとなった。さらに、入社後に初めてデザインした「ZDX」のコンセプトを描いたスケッチが、社内コンペを経て市販モデルのデザインに選ばれている。

彼女がNSX開発チームに加入したのは、フロント・エンジンのV型10気筒コンセプト(かつてNSXの後継として開発が進められていたものの、市販化に至らず計画が中止された)に代わるミッドシップのコンセプトカーが2012年の北米国際自動車ショーで公開された後のこと。以後8人のチームを率いて、「エモーショナルかつ立体的なフィーリング」をキープしつつコンセプトカーのデザインを改良することに努めた。子供の頃に家のガレージで見た、余計な装飾を一切廃した1932年型フォードのホットロッドを思い出しながら、チーム一丸となってシンプルで軽快なデザインを維持しようと取り組んだそうだ。

風洞試験の結果から、市販モデルでは空気の流れを最適化するためにバンパー、フード、サイドインテークを大型化。これにエンジン搭載位置の変更が相まって、新型NSXのエクステリアは「単に開口部が多く、アグレッシブで扇情的なデザインになっただけでなく、アスリートのような力強さが加わった」とクリステンセン氏は語っている。それは決して先代モデルのデザインを復古調に甦らせたものではないが、リアのデッキリッドに沿って装備された3つ目のブレーキライトだけが、初代NSXのテールライトを受け継いでいる。

現在34歳のミッシェル・クリステンセン氏は、今後も我々に素晴らしいデザインを見せてくれるに違いない。







By Jonathon Ramsey
翻訳:日本映像翻訳アカデミ