DAIHATSU MOVE CUSTOM

「よその子とオクラは育つのが早い」というネタはTHE MANZAI 2014王者の博多華丸・大吉さんのモノだけど、そのオクラのごとく、ちょっと目を離した隙にとんでもない進化をするのが軽自動車。このジャンルはいつ見ても面白い新車やテクノロジーにあふれているのだが、特に昨年末から年始にかけて注目の新車が出まくり、新年早々かなりアツいことになっている。
そんな中でも注目のうちの一台に乗って来た。今回で6代目にモデルチェンジを果たしたダイハツ・ムーヴだ。

ムーヴはダイハツが1995年に初のスペース系軽自動車として世に送り出したモデルである。
2003年からは今や同社ドル箱モデルとなったタント、昨年(2014年)からは"ウルトラスペース系"なんて言葉を作り出したウェイク、なんていうふうに跡を追うモデルがバンバン登場してきて、今やスペース系としてはやや十八番を奪われた感あるのだが、そもそもは同社においてムーヴはこのジャンルのパイオニアなのだ。

DAIHATSU WAKE DAIHATSU WAKE
(WAKE)
実は今回、ムーヴの進化には弟分・タントとウェイクが一役買っている。つまり、タントとウェイクが出来てくれたおかげでムーヴは空間の拡大というハンドリングに逆行するテーマに囚われず、思う存分あたらしい方向に伸び代を見出せたというわけだ。
長きにわたってダイハツのコア車種であっただけに、今回のモデルチェンジも恐ろしいほどに気合いの入ったものになっている...というのは、大きく変貌を遂げたこのルックスを見るだけでお察しいただけるかとおもう。

DAIHATSU MOVE CUSTOM DAIHATSU MOVE CUSTOM

だけどその方向こそ奇抜なルックスではなく、基本の"き"である『走り』の強化だった。
そう、今回のムーヴはちょっとワクワクするくらいスポーティーに仕上がっている。

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さて、今回は数ある新型ムーヴのラインナップの中でも新たに追加された最上級グレード、ターボエンジン搭載、15インチタイヤを装着する、その名も「ムーヴカスタム RS "ハイパーSA"」の試乗記をお届けしようと思う。

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ベースとなるムーヴ、そして上級となるムーヴ カスタム、さらにその上に新たに用意されたのが"ハイパー"である。
それにしても「ムーヴカスタム RS "ハイパーSA"」...
なんちゅう大袈裟な名前やのん!いやそこにこそ、内に秘めたるナニワのダイハツパワーを感じるやおまへんか!と思わずひとり乗りツッコミせずにはいられない。一回聞いても覚えられないが、一回覚えたら忘れない気もする。
さらに言うならお値段も試乗モデルで166万8,600円、軽としては結構強気なお値段なのだ。これは気になる。非常に気になる。

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乗り込めば、室内空間のこだわりようにはやはり納得させられてしまった。やっぱりお値段だけのことはあるのである。本当にこれが軽自動車なのかと質感の高さには舌を巻く。

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たとえばレザー×ファブリックのリッチなシートに施されたステッチは"ハイパー"にのみ許されたブルーなのだが、このブルーは他にも要所要所にテーマカラーとして散りばめられている。例えばドリンクホルダーのドリンクのマークが青く光ったりもするのだがこれは明るいと見えにくい、隠れキャラみたいなモノなので、オーナーにだけ許されたプチ萌えポイントかもしれない。

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ステアリングホイールもレザーで巻かれ、インパネのマーブルも件の"ハイパー"専用ブルーをインスパイアさせる色合い。徹底的にこだわりまくっているのだ。

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しかしやっぱり主役は「走り」なんである。
ドアを閉めたときから、剛性を感じさせるカッチリした仕上がりをボディが物語っているのだ。
試乗コースの中には石畳も存在するシビアなシチュエーションだったのだが、ここを乗り越えるのに感動したのは静粛性の高さ、大空間車にありがちな、車内の反響音の少なさである。
さらにステアリングを切り込んだときのコーナリングの的確さ、レーンチェンジのテンポの良さ。
突出したところはないものの、機敏でスッキリと切れ味のいいハンドリングと収まりのいいボディのバランスは、ずっと乗っても飽きない楽しさなのである。日常使いの多い軽自動車にとって、それがなにより一番大事でしょう。

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今回、ムーヴには大きな変更がなされた。まずはモノコックだ。
新開発されたボディ骨格構造は、ドア開口部含むサイドアウターパネルの全面厚板のハイテン化により、剛性を確保すると同時に補強材が削減され、剛性強化と軽量化を同時に叶えている。さらに外板を樹脂化するなどボディだけで20kgの軽量に成功しているほか、アンダーボディには走行性の向上のために補強がなされた。
このボディの高剛性化の恩恵は相当効いている。とにかくグラつきがないししゅっとリアの挙動が収束して付いてくるキレの良さにつながる。

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さらにサスペンションにも改良が施されていて、そちらもロール挙動の抑制には一役買っている。
フロント・リアともに取り付けなど最適化・特性見直しを図っているのだが、とくにフロントではスプリング内にウレタン性のバンプストッパーを仕込んで小さいストロークからバネを効かせることにより、ロール挙動を抑制するという手法を取っている。確かにこれの効果は抜群で、ロールを持たせながらも早い段階でしなりが消えるので次のコーナーを目指しやすい。

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ただしこれには少しデメリットもあって、試乗中に路面に穴が空いているようなやや大きめのギャプに乗ったときや、石畳のように連続して車体が上下に揺れ続けるようなシチュエーションに入ったときなどにパンパンと風船の上で跳ねるような軽いショックをお尻に感じた。仕込んだストッパー分、バネ定数が上がるため仕方がないとも言えるのだが、悪路が多いエリアで使う人は気になるかもしれない。
対してリアも結構スポーティー方向。トーションビームの横梁を、従来のスポーティーモデルであるムーヴRSと同じ径までスタビライザー化し、さらにブッシュを同社スポーツ系モデルであるコペンと同等にするなど、気合いの入ったテコ入れが行われている。

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数ある改良の中でもいちばん感動したのは、踏み始めの初期から広範囲にわたってコントロール域の広くなったブレーキの質感だったのだが、同社としてこのムーヴから取り付けピッチの見直しなど、ブレーキの味付けの全体的なやり直しが決まったのだという。
実はブレーキはカタログ数値にあまり影響しない場所。よって一旦決まった味付けを変更するのは同社内でかなりの苦痛を伴うのだとか。しかし今回、大きな変更を受けたからこそ、ユーザーに優しいブレーキに替えることを決断されたのだそうだ。ムーヴのような基幹モデルからこういったことをスタートさせるのは本当に意味のあることなんだそう。今後の発展が楽しみだ。

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そう、ムーヴがここまで大きな変更をするには、理由があった。
今回開発陣は顧客へのアンケートを徹底的に行ったのだという。それは商品を購入したユーザーはもとより、検討したのちに非購入に至った非顧客にも及んだ。何故買ったか、じゃなくて何故買わなかったのか、をデータ化したのだそうだ。結果、得られたのは軽自動車の走行性能への不満。
と言っても、いわゆる「限界速度域のコーナリングが云々...」といった自動車雑誌によくあるタイプの文言ではない。
たとえば登録車や大きなクルマからの乗り換え組からは「信号待ちからの再加速がたよりない」とか「凸凹道とか曲がり角でフラつく」なんていう日常でのちょっとした不満を訴えたという。
そこでムーヴが目指したのは「小型車並みの乗り心地」だったというわけだ。

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だからそれを叶えるために追加された改善点は書ききれない。
快適な運転のためにステアリング・ペダルレイアウトを見直したこと、新設計のシート、そうそう、メーターに出てくる警告やインフォメーション系のサインが直感的な解りやすい絵になっていることなどなど、とにかく人に優しく出来ているのだ。

DAIHATSU MOVE CUSTOMDAIHATSU MOVE CUSTOM DAIHATSU MOVE CUSTOM

ダイハツの軽自動車は競合他社の製品と並べてみてもどれも非常に商品力が高く、ユーザーにとって魅力的な装備を用意している。最大の武器は商品としての総合力の高さ、バランスの良さソツのなさだと日頃から思っているのだが、今回はこの強気のデザインこそが明暗を分けるキーポイントになるのではないか。質感は驚くほど高い、それは間違いない。しかしいかんせんアクが強すぎる。

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確かにエッジの立ったデザインが辛くも軽自動車界のトレンドではあるのだが、特に今回設定された新グレード"ハイパー"の押し出しの強さはかなり顧客を選びそうだ。
個人的にはイタリアンコンパクトみたく、これにベースグレードのムーヴに用意されているようなソリッドのパステルカラーなんか合わせたら、化学反応が起こってキャラが立つんではないかな〜と思ってしまった。

DAIHATSU MOVE DAIHATSU MOVE

ともあれ繰り返すようだが走りは最高。特に今回乗ったターボモデルの加速の持ち上がり方なんて、胸のすくような気持ちよさだった。もちろんスペース系軽自動車の先駆けだけあって、シートアレンジも文句無し。ちょっと遠くまで走りに出掛けたくなる軽だ。

■ダイハツ 公式サイト
http://www.daihatsu.co.jp