昨年12月に燃料電池自動車「MIRAI(ミライ)」を発売したトヨタは、その開発過程等で取得したと思われる燃料電池関連の特許(審査継続中を含む)の実施権を、無償で提供すると発表した。

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これはトヨタによれば、「燃料電池自動車(FCV)導入初期段階においては普及を優先し、開発・市場導入を進める自動車メーカーや水素ステーション整備を進めるエネルギー会社などと協調した取り組みが重要であるとの考え」に基づくもので、燃料電池スタック(約1,970件)・高圧水素タンク(約290件)・燃料電池システム制御(約3,350件)といった、FCV開発・生産の根幹となる燃料電池システム関連の特許について、「これらの特許を実施してFCVの製造・販売を行う場合、市場導入初期(2020年末までを想定)の特許実施権を無償とする」という。

また、水素供給・製造といった水素ステーション関連の特許(約70件)に関しては「水素ステーションの早期普及に貢献するため」水素ステーションの設置・運営を行う場合の特許実施権を「期間を限定することなく無償とする」とのこと。

今回、無償で実施権を提供することが発表された、トヨタが単独で保有している燃料電池関連の特許は、世界で約5,680件に上るという。

トヨタはこれまでも、知的財産(特許)の取り扱いについてはオープンポリシーを基本とし、第三者からの実施の申し込みに対しては「適切な実施料により特許実施権を提供」してきた。燃料電池関連の特許についてはこれをさらに一歩進め、無償で特許実施権を提供することによって「FCVの普及を後押しし、水素社会の実現に積極的に貢献していきたいと考えている」そうである。

もちろん、これらの特許技術を利用するためには、無償提供とはいえ、然るべき手続きを踏み、トヨタと契約を締結する必要がある。



その研究開発には莫大な費用が掛かっていると思われるMIRAIの根幹技術。他企業に有償提供しながら回収を進めるのではなく、自社の製品だけで採算ラインを超えることを目指し、そのためにはまず、インフラの拡充や量産効果によるリチウムイオンバッテリー等の製造コスト低減を優先するというわけか。まるでトップランナーが後続のランナー達を気遣うような余裕にも感じられるし、世界的大企業による社会貢献の一環とも受け取れる。したたかなビジネス戦略という見方もあるだろう。

2020年、果たして街を走るクルマの何割が、排ガスを出さず水だけを排出する燃料電池車となっているか。もしかしたら今まで我々が想像していたよりも、ずっと増えることになるかも知れない。


By Hirokazu Kusakabe

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