今ではYouTubeなどの動画投稿サイトを見れば、ほとんどどんなスーパーカーでも走っている姿を見ることが出来る。美しい公式プロモーション・ビデオや、自動車メディアによるレビューももちろん楽しいが、中でもつい興味を引かれてしまうのが、"街で見掛けたスーパーカー"ではないかと思う。2014年に公開された動画で、最も筆者の印象に残ったものをご紹介させていただこう。

フランス在住のalexsmolikさんがパリで撮影したというこのビデオをご覧になれば、その非日常的な光景に一瞬呆気にとられるのではないだろうか。それこそ"スーパーカー"と呼ばれるものの面目躍如。見慣れた街の景色を突如としてエンターテインメントに変えてしまう魔力があるから、我々は子供の頃から夢中になる。

特徴的なグリルとスリー・ポインテッド・スターのエンブレム、そして丸目4灯のフロント・マスクで、これがメルセデス・ベンツだということはお分かりになるだろう。しかしその車体は低く、極めてワイドで、フェンダーは大きく張りだし、ルーフにはエアダクトまで備わっている。実はこれ、1997年に始まったFIA GT選手権に参戦するために、メルセデス・ベンツとAMGが製作した「CLK-GTR」というモデルのロードゴーイング・バージョン。つまり、ほとんどレーシングカーだ。

当時、このレース・シリーズのトップカテゴリであるGT1クラスには、公道用モデルを1台だけでも製作すればホモロゲーション(出場資格の型式認定)が取得できた。だが、メルセデス・ベンツでは、というよりAMGのファクトリーでは、1998年から1999年に掛けてCLK-GTRの公道仕様車を全部で25台ほど製造(20台がクーペで、残る5台はオープントップのロードスター)。日本にも数台が輸入され、とある有名ミュージシャンが所有していたことはよく知られている。




CLK-GTRという名前が表す通り、フロント・マスク(だけ)は初代「CLK」のイメージを踏襲しているが、全長4,870mm × 全幅1,970mm × 全高1,160mmというプロポーション(微妙に異なる諸説あり)は、公道走行に対応するためか若干高めの車高を除けば、レーシング・プロトタイプそのもの。ただし革張りの内装やエアコン等を装備するため、車両重量は1,440kgと結構重い。イルモア・エンジニアリングによるV型12気筒エンジンは、排気量がレース仕様車の6.0リッターから6.9リッターに拡大され、最高出力612ps、最大トルク79.0kgmを発生するという。もちろんミドシップに搭載され、パドル付き6速シーケンシャル・マニュアル・ギアボックスを介し後輪を駆動。公道での使用におそらく不可欠なトラクション・コントロールも装備されていた。

後継の「CLK-LM」と共に、FIA GT選手権では1997年、1998年と2年連続でチーム・タイトル&ドライバーズ・タイトルを獲得した、レースカーとしても文句なしの実績を誇る。そんなクルマをパリの街中で路上駐車し、用事を済ませて走り去る紳士は一体どんな人物なのだろう...と興味は尽きない。撮影したalexsmolikさんによると、エンジンが存分に回せないため、その音には「ちょっとがっかりした。ラジコンカーみたいな音だった」そうだ。



By Hirokazu Kusakabe

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