【短評】「SとGT3の中間をうまく取った」 2015年型ポルシェ「911カレラGTS」
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現在、ポルシェ「911」シリーズには19ものバリエーションが存在する。それぞれがエンスージアストの興味を引くレベルに達しているが、中でもレースの血を引く「911GT3」はリア・エンジン車のラインナップの頂点を極めている。とは言え、あいにくGT3のサーキット向けにチューニングされたハードコアな性格は、日常的に運転している多数のドライバーにとって煩わしいことも事実。そこで、スポーティなドライビング・ダイナミクスを最も重要視してはいるが、快適さには妥協したくないドライバーの希望を叶えるためにポルシェが導入したのが、この新しい「911カレラGTS」だ。

よりパフォーマンスに重きを置くため、GTSには、兄弟モデルの「911カレラS」よりも能力を引き上げる多くの仕様が標準で与えられている。機械的な面では、改良された3.8リッター水平対向6気筒エンジンが、「911カレラ4」やGT3と共有するワイドボディのプラットフォームの後部に搭載された。その他の装備としては、ポルシェ・トルク・ベクトリング(PVT)や、ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメントシステム(PASM)、ダーククローム仕上げの テールパイプが特徴的なスポーツ・エキゾースト・システム、「911ターボS」のセンターロック式20インチホイール(5穴タイプのホイールも無償のオプションで用意)などが挙げられる。エクステリアには、ブラック仕上げのバイキセノンヘッドライトやブラック塗装のホイール、"スポーツデザイン"のフロントスポイラーとエクステリアミラー、ブラックで統一されたエンジングリルやリア・ルーバー(4WDモデルでは、左右のテールライトがストリップで結ばれている)、"Carrera GTS"のロゴが付いたドアシルプレートなどが装備される。シートにスポーツシート・プラスを採用したインテリアは、各部がホワイトのスティッチを施したアルカンターラ仕上げとなっており、ブラックで統一された計器類や陽極酸化アルミニウムのトリムストリップが特徴的だ。

GTSとしては先代997型に続き2世代目となるこのモデルのキーをポルシェから渡され、様々な路面で試す良い機会を与えてもらった我々は、LA盆地からLA郊外のモハーヴェ砂漠にあるウィロースプリングス・レースウェイへと向かった。




所感

このカレラGTSは、クーペとカブリオレという2つのボディスタイルが設定され、それぞれに後輪駆動と4WDが用意される。また、トランスミッションは、伝統的な7速マニュアルまたは7速DCT「PDK」から選択可能だ(日本仕様はPDKのみ)。対してGT3は、PDKのクーペしか選べない。往路は後輪駆動でPDKを装備するガーズレッドに塗られたクーペを、復路は4WDで7速マニュアルというGTシルバー・メタリックのカブリオレを走らせた。

GTSの自然吸気3.8リッター水平対向6気筒エンジンは最高出力430psを発揮する。「911カレラS」や「911カレラ4S」の400psよりも30ps高い数値だが、これはバルブストロークを11mmから11.7mmに増やしたり、吸気管の効率化や研磨といった昔ながらの方法で向上させたものだ。こうすることで、吸入空気量を増やし、燃費を犠牲にすることなく、高回転域でのパワーアップを実現している。センターコンソールのボタンを押して「スポーツ・エキゾースト」をオンにすると、水平対向6気筒エンジン独特の、とても個性的な荒々しいサウンドが聞こえてくる。フルスロットルにすると絶叫するような音を立て、減速時には甲高い音がコツコツと響く。リアのバルクヘッドの厚い防火壁のせいで、室内ではエンジン音が鈍く押さえられてしまっているが、クルマの外にいる見物人には、極上のサウンドを体験させることが出来るだろう(もちろん、カブリオレでトップを下ろせば、燃焼が奏でる音楽が運転席にもすべて届く)。

自然吸気6気筒エンジンは、今日の良く出来たターボチャージャーユニットほどのトルクは発生しない。特に低回転域では不足を感じるが、ひとたび回転数が上がればトルクはしっかりと立ち上がる。エンジンは活きが良く回り、アイドリングからレッドゾーンまで淀みや躊躇なく一気に吹け上がる。加速はかなりのものに感じるが、エンジンはインテークがすべて開く6,000rpmまで猛然と回り、そこで燃焼は絶頂に達すると、8,000rpmより手前で燃料カットが働き、パーティーはお開きとなる。

ドライバーは、センターコンソール上にある一連のボタンで、パワートレインとサスペンションのダイナミクスを別々に設定できる。標準では、すべて最もソフトな設定になっている。「スポーツ」もしくは「スポーツ・プラス」モードにすれば、ダンパーやスロットル(とペダル)の反応、PDKの制御がより攻撃的な性格に切り替わり、エキゾースト・ノートの音量もそれぞれのボタンに応じて変化する。日常的な運転なら、標準の設定でもダンピングは固く、スロットルの反応も速いので、十分にスポーティと言えるだろう。しかし、サーキットでは、横滑り防止装置の介入が控え目になる、元気な「スポーツ・プラス」が好ましい。

公道では(予想通り)カレラSよりも乗り心地が固く、(これも予想通り)タイヤノイズがより大きくキャビンまで伝わってくる。しかし我々のエンスージアストとしての立場は、アメリカ西部の道路よりも、ポルシェが仕上げた性能の高さの方を受け入れたい。

GTSは、"ビッグ・トラック"の異名を持つウィロースプリングス・レースウェイの長い本コースで、際立ったパフォーマンスを発揮した。(カレラやカレラSと比べ)低められた車高と拡げられたトレッドが、非対称トレッドパターンを持つピレリのP ZEROタイヤが首が痛くなるほどの横グリップを発生するのを助ける(オンボードのコンピュータでは1.32Gの横Gを記録した)。パワーとハンドリング・ダイナミクス、ブレーキ性能のほぼ完璧なバランスにより、苦もなく速いラップタイムを記録することが出来た。エンジンがリア・アクスルの後ろに取り付けられているにも関わらず、この改良された991型プラットフォームは限界域でも見事に扱いやすかった。もっと重要なのは、目が飛び出るほどブレーキングした時の安定した姿勢や、コーナー出口の前でスロットルを開けていくときのトラクションなど、リア・エンジンの強みが一切損なわれていないことだろう。車重のほとんどが後輪にしっかりと掛かっているため、外側の前輪を擦ることなく、狭くて難しい第4コーナーを抜けることができ、スリリングな高速の第8コーナーで100mph(約161km/h)を越えた時も、感心するほど安定していた。

7速マニュアルの方が好ましいだろうと思って試乗に臨んだが、PDKがその期待を良い意味で裏切った。スポーツ・プラスモードではレバーをDポジションに入れたままでも、変速のロジックにほぼ欠点がなく、瞬時にシフトチェンジする。3ペダルのモデルで同じような動作をしようと思っても出来ないだろうと言わざるを得ない。

長い1日を終え、この新型911カレラGTSは、GT3に対する申し分ない妥協案であり、911のラインナップの中で幅広いエンスージャストが選ぶモデルとして評価すべきと確信した。もし、欧州のプレミアム・スポーツカーの市場において、平日は楽しく通勤に使え、週末はサーキットを飛ばせる性能を持つクルマを探すなら、カレラSには目もくれずにGTSを選ぶべきである。


【基本情報】
エンジン:3.8リッター水平対向6気筒
最高出力:430ps/7,500rpm
最大トルク44.9kgm/5,750rpm
トランスミッション:7速DCT
0-100km/h:4.0秒
最高速度:304km/h
駆動方式:後輪駆動
エンジン位置:リア・エンジン
車体重量:1,445kg
座席数:2
燃費:市街地19mpg(約8.1km/ℓ)、高速道路27mpg(約11.5km/ℓ)(推定)
ベース価格:11万5,195ドル(約1,390万円)
テスト車両価格:12万5,000ドル(約1,500万円)(推定)
日本仕様価格:1,702万円(税込)

By Michael Harley
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:日下部 博一

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