audi S1

飛び切りのSモデルが登場した。S1/S1スポーツバックが登場したのだ。アウディのエントリーモデルともいえるコンパクトカーA1がベースなのだが、中身はベツモノ。可愛らしい外観に強烈なパフォーマンスを秘めた正統派Sモデルに仕上がっている。
実はA1が発売になった時、Sモデルが登場する可能性はとても薄いだろうと考えていた。Sモデルの駆動方式はクワトロであることが暗黙の約束事。しかしながらA1のリヤサスペンションは、トーションビーム式の固定式(非独立タイプ)。クワトロを作るためには、リヤサスを独立式にしなくてはならない。理屈では強引にリジッドサスのまま4WDにできないことはないのだろうが、モダンな4WDにするためにはやはり、独立式サスペンションは必須。しかし、姉妹車ポロに4モーション(4WD)の設定でもしない限り、リヤサスペンション形式を変更するほど大がかりな改造はちょっと考えられない。
サスペンションを作り直すためには相当のコストがかかる。当然それをペイしなくてはならないのだから、S1を作るためだけにリヤサスを作り直すだろうか?
そう考えていたのだ。
ところが、作ってしまったのだ。リヤサスを4リンクタイプの独立式に変更し、サスペンション取り付け部回りに補強を施し、さらにフロントサスペンションのピポットベアリングの位置まで変更している。
ピポットベアリングの位置変更は、フロントサスペンションのロールセンターの位置をリヤサスの変更に合わせて整える為だろう。

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そして、搭載されるエンジンは2L直噴ターボ(TFSI)に換装。最高出力231ps/7600rpm,最大トルク37・6kgm/1600-3000rpmを発揮する。
このエンジンは、単純な直噴ではなくポート内噴射(通常の噴射方式)も併用したもので、中負荷領域のみ作動する。さらに吸気側60度、排気側30度の範囲でバルブタイミングを変更することが可能。加えて排気側に可変バルブリフトコントロール機構も備えている。最高出力自体はさほど強力ではないが、制御の精緻さ、緻密さは世界トップレベルといえる。

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組み合わされるトランスミッションは6速MT。ちなみにS1に組み合わされるトランスミッションは6速マニュアルトランスミッションのみで、これは世界共通。

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パフォーマンスアップに合わせてブレーキも強化されている。ブレーキローターはフロントが310mmφのベンチレ―テッドディスク、リヤが272mmφのソリッドディスクとしマスターシリンダーの拡大やブレーキブースターのチューニングも施されている。

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ブレーキのペダルストロークをとったA1に対し、ストロークを短くしブレーキ圧を素早く立ち上げるタイプに変更されている。
ホイール&タイヤもグレードアップされている。アルミホイールは7・5J×18の鋳造5アームデザインで、組み合わされるタイヤは225/35R18となる。ちなみにスペアタイヤスペースは、リヤデフのために使われているので、タイヤリペアキットが装備される。

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S1に乗り込んで小さな感動を覚えるのは、クラッチペダルを踏んでシート位置を合わせるその手順。アウディとしては久々のマニュアルトランスミッション搭載モデルであることを改めて実感する。クラッチの踏力はさほど重くない。シフトレバーを1速に入れる。シフトフィールは、縦置きエンジンほどのダイレクト感はないものの、節度感がありゲート感もしっかりしていて使いやすい。

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クラッチのつながりもスムーズ。1000回転内外でクラッチをつないでも案外トルクがあり、ギクシャクすることなく発進することができる。このあたりにもエンジンの細かな制御が生きているのだろう。
ドライブモードはアウディドライブセレクトによって、効率(コンフォート)とダイナミックから選ぶことができる。ダンパーの減衰力やアクセル操作に対するスロットルの開き方、エキゾーストサウンドが変化する。

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乗り心地は「効率」を選ぶとややソフトめの乗り心地となり「ダイナミック」にすると硬めとなる。ただ、ダンパーの動き出しがしなやかで、サスペンション(ダンパー)の動き出しの渋さがないので、どちらのモードを選んでも突っ張ったような硬さはない。あえて言えば市街地は「効率」ワインディングでスポーティドライブを楽しむ時や高速道路では「ダイナミック」がマッチする。走り方によって硬さを選ぶというよりは使う速度域によって選ぶのがよいのではないかと思う。

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走り方や車速に応じてモードが切り替わる「自動」にしておくのが一番使いやすかったりもする。
S1のギヤ比は比較的低めに設定されており、レブリミットの始まる6500回転まで回した時、計算上1速57km/h、2速91km/h、3速129km/h、4速175km/h、5速223km/h、6速247km/hとなる。
エンジンは2000回転も回っていれば、アクセルを踏み込むと即座にターボのトルクが膨らんでスムーズに加速してくれる。スポーティドライブでも3500回転をキープしていれば十分に速い加速が可能。トルクバンドが広いので、無理に高回転を維持する必要はない。
パワーの出方は効率、ダイナミックとも穏やかな部類で、アクセルのオンオフ対しても過敏に反応しないので、最大トルクが370Nmもあり、1600~3000回転で発生するにもかかわらず扱いやすい、あるいは走らせ易いと感じる。

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これはもちろん4WDになったことで圧倒的に安定性が高まったことも大きな理由になっている。
S1の4WDシステムは、ハルデックスカップリングと呼ばれるハルデックス社製の4WDシステムで、トルク配分は、フロント100対リヤ0を基本に50対50までの範囲で制御する。実際の走行場面ではタイヤのグリップ状態によって理論上100対0~0対100まで行うことができる。

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実際に走らせてみると、割りと積極的に後輪へ駆動力を配分しているように感じられる。こう書くと安定志向のセッティングと思われるかもしれないが、スイスイ曲がる適度な軽快さも持っている。
足回りのセッティングは、リヤタイヤのスライドをある程度許容しているようで、速いコーナリング中アクセルをオフにしてやると、軽くリヤタイヤが滑り出す。ESCの介入もFR車、FF車に比べると1テンポ遅めで軽くリヤタイヤがスライドしたところからESCが介入する。

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4WD車はリヤの安定性を高くし過ぎると...つまりリヤタイヤがスライドしにくいセッティングにすると(程度問題だが)曲がりにくくなる傾向がある。S1はリヤサスペンションを新設計した際、そうした操縦性まで考慮して設計・セッティングされているようだ。
もっとも、ちょっと飛ばした程度ではそうした不安定さに繋がるような動きはまず顔を出さない。S1の操縦性は素晴らしくしつけがよく、ハンドルを切り出すと素直に曲がっていく。駆動力が前輪に集中していないので、フロントタイヤの旋回グリップ力がしっかり使えるのだ。このあたりからも4WDの駆動配分が積極的にリヤに配分されていることが想像できる。

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加えてS1にはイン側のブレーキをつまむことで行う左右トルクベクタリングシステムが装備されていて、これがグリップ限界に近い領域でクルマの曲がりやすさをアシストしているようだ。
なにより任意にギヤをセレクトでき、シフト操作・クラッチ操作を行いながらクルマを走らせる、クルマの原点ともいえる面白さがS1にはある。アウディではSトロニックと呼んでいるデュアルクラッチのセミオートマがこれからのトランスミッションの主流になる。そんな風潮がある中、あえてマニュアルトランスミッションのみの設定となっているS1は、つまりクルマを操ることの面白さの原点に帰ったモデルといえるのではないかと思う。アウディのクワトロモデルの面白さを凝縮した1台といえる。

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