12月22日に行われたスズキの新型「アルト」発表会では、3月に発売が予定されているという高性能バージョン「アルト ターボRS」のプロトタイプも展示されていた。開発を担当されているスズキの方にお話を聞いて来た。

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現時点で公式に明らかにされていることは、「アルト ターボRS」という名前が表すように、エンジンにターボチャージャーが付いていること、3月発売予定であること、以上。あとは展示されているプロトタイプの実車を見て、標準モデルのアルトからいくつかアップグレードされていることが分かっただけだ。

特徴的な左右非対称フロント・グリルは、スリットが縦から横に変更され、開口部も拡大されている。クロームメッキで囲まれたヘッドライトは、通常のアルトにはオプションでも(現在のところ)用意されていないディスチャージ式。フロント・バンパーには赤いアクセントが入り、フォグランプが埋め込まれている。リア・バンパーも同様に赤いラインが入るなどの"化粧"が施されているが、基本的な形状は標準モデルとほぼ同じだ。 テールランプ下のダクト風に見える箇所も、実際には開いているわけではない。ボディにはリア・スポイラーとサイドスカートが取り付けられ、タイヤはブリヂストンの「ポテンザ RE050A」を装着していたが、サイズは標準アルトの上級グレード「X」と同じ165/55R15だ(ただし標準アルトは同じブリヂストンでも「エコピア EP150」だった)。実はホイールも同じ型に切削加工を施したものだそうだ。内装はガラス越しに覗くだけで、ドアを開けることは許されなかったが、フロント・シートが黒地に赤いストライプが入ったスポーティな専用品となっていることは確認できた。


スズキで開発を担当されているエンジニアの方に気になることを訊いてみた。


エンジンは660ccターボということですから、64psですか?

「まあ、そうですね...。今ははっきり言えませんが(笑)」

4駆ではないのですね?

「FF(前輪駆動)です」

トランスミッションは?

「それも今は言えません」

展示車はCVTのようですが、もちろん5速MTも用意されますよね?

「うーん...。それはあんまり期待できないかも知れない...(笑)」

エンジンにターボが付いていることは分かりましたが、足回りもやはりチューンされています?

「もちろんやっています。車体も部分的に板厚を上げたりして補強しています。ベースが軽量になったので、補強を入れても(車重的に)余裕がありました」

価格はだいぶ高くなりますか?

「いえ、出来るだけ抑えました。期待していて下さい(笑)」

乗ると楽しそうですね。

「楽しいです(笑)。この価格でここまでやっているという、自信があります」

昔のアルトワークスを所有している人が乗っても、がっかりしませんか?

「がっかりしないと思います。もっと良くなっています」

白いモデルは、ドアミラーや前後バンパー、リア・スポイラーが赤く塗られていますが、赤い方のモデルはボディ同色なのですね。

「これはボディ・カラーを問わず、全て赤になります」

ボディ・カラーは展示されている白(パールホワイト)と赤、あと他には?

「もう1色くらい用意します」

ホットハッチと呼ばれるジャンルのクルマは多いですが、このクラスになると他にライバルは見当たりません。開発時にベンチマークとなるクルマもなかったのでは?

「いや、ですからもっと上のクルマを見ていました。当然エンジンの排気量は違いますからそういう面では仕方ない部分もありますけれど、ハンドリングとか走りの点では引けを取らないぞという(笑)」

リア・スポイラーはともかく、このサイドスカートも空力的に効果があるのですか?

「いえ、これはファッション的なドレスアップですね」

わりと外観のアップグレードは控え目のような気もします。コストを抑えるためということもあるでしょうが、あとはアフターパーツに期待ということでしょうか?

「それは期待しています。(これをベース車として)盛り上がってくれると嬉しいですね」

今後は他の軽自動車でもこのようなスポーツ・モデルを考えていらっしゃいます?

「そうですね。既存のモデルをベースにしたこういう方向はあるかも知れませんが、2シーターのスポーツカーのようなモデルは計画していません」

市販モデルの発表は1月の東京オートサロンですか?

「いや、もう少し後になります」

ありがとうございました。発売を楽しみにしています。



お話を聞いて、"ワークス"を名乗らなかった理由も分かる気がした。スズキのスポーツ・モデルとしては価格的にはすぐ上(と言ってもいいだろう)に「スイフト スポーツ」がある(172万8,000円〜)。となると、アルトでは過給器が付いても140〜150万円くらいか。ベース車+30万円強程度で、ターボ、サスペンション、ハイグリップタイヤ、ボディ補強、エクステリアのパーツやデカール、さらにシートまで専用品を用意するのだ。かつてのように独立したカリカリのホット・モデルを目指すというよりは、他のターボ軽自動車と共有するドライブトレインにスポーティな足回りを組み合わせ、標準アルトと共通で差し支えない部分はなるべくそのままで価格を下げることに尽力されたのではないかと想像できる。

若い人たちがクルマの楽しさ、運転の楽しさ、そしてイジる楽しさを知るために、適した教材となる資質はありそうだ。ただ、それならパドルシフト付きCVTだけではなく、クラッチの操作も学べる5速MTも是非、設定して欲しいところ。マニュアルの乗り方こそ、出来れば若いうちに学んでおくべきではないかと記者は思うのだが...。スーパーカーでさえ2ペダルが当たり前の今、そんな考え方はすでに時代遅れなのかも知れない。



それはともかく、走りに関してはスズキの方も相当自信をお持ちのように見受けられた。スイフト スポーツがあの価格であれだけ楽しいのだから、アルト ターボRSも期待できるだろう。3月の発売よりも前に、まずは東京オートサロンに出展されるという17インチ・ホイールとレカロシートを奢った「アルト ターボRS コンセプト」について、来月またご紹介できると思う。お楽しみに。


By Hirokazu Kusakabe

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