BMW C 600 SPORT

2011年に発表されたBMW Motorrad史上初となるビッグスクーター。「ビーエムにスクーター?」なんて、スクーターの存在を知らなかった方も多いかもしれないが、そのスポーティーな乗り味と安心感の高さはBMW Motorradそのもの。軽くて速くて雨の日でも路面の接地感が高く感じられ、ぐいぐいとどこまででも走りたくなる。スクーターなんてただの"足"でしょ? なんて思っていたら大間違い、『C 600 SPORT』を侮るなかれ、まさしくスポーツする『ビーエム』のモーターサイクルなのだ。

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日本でのビッグスクーターのイメージといえば、若者がカスタムして乗っているイメージが強いが、欧州では大人の乗り物というイメージの方が強い。スーツをびしっと着こなした男性が颯爽と乗りこなしているシーンを多く見かけ、アウターには皮ジャンというよりもトレンチコートや、ミリタリー色の強いミドル丈のナイロンジャケットなどを着こなし、ヘルメットもスポーツタイプというよりも航空航パイロット用のヘルメットをバイク向けにデザインした「MOMO DESIGN」(http://www.motorimoda.com/momodesign/)のようなおしゃれなジェットタイプをかぶっている。ビジネスマンやビジネスウーマンが都会の足として、近未来の乗り物のごとくスタイリッシュに乗っているのだ。

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そんな欧州から発進されるスクーターは、ベスパをはじめ、日本ではスクーターの存在を余り知られていないが、マラグーティ、ジレラ、アプリリア、プジョー、デルビなどさまざまなメーカーが手がけているが、どれも実用的だけでなくデザイン性が高いのも特徴的だ。「ベスパ」を代表するように、映画「ローマの休日」でアン王女がローマ市内を乗り回したり、ドラマ「探偵物語」で松田優作が愛車として足に使ったり、60年代のモッズ・カルチャーを描いた青春映画「さらば青春の光(原題・Quadrophenia)」などなど、スクリーンにも数多く登場するようにファッション性の高い乗り物として認識され、ファッションの歴史を振り返る上での重要なキーアイテムとなっているとも言えるのだ。特に、「さらば青春の光」の中で描かれている、モッズとロッカーズの対立では、モッズ(スクーター乗り)=おしゃれ、ロッカーズ(ライダー)=硬派。という図式が欧州でのスクーターの位置付けを強く物語っている。

BMW C600 BMW C600

そんな背景を元に生まれた、BMW Motorradのスクーターといえば、2000年に『C1』というモデルが登場しており、欧州では根強い人気を持ち今でも街中を走っている姿を見かける。しかし、125&250ccという小排気量に加え、ルーフが装着されたコミュータータイプのみ。そして、満を持して2011年のミラノショーで発表した『C 600』は、BMWが本気で作った大排気量のスポーツする大型スクーター。日本でよく見かけるビッグスクーターと呼ばれる中型AT免許で乗ることのできる250〜400ccとは異なり、大型AT免許を持っていないと乗ることが出来ない650ccという排気量のマキシスクーター。ジャンルとしては、ちょっと街乗りに......という足としてだけの存在というよりも、それに加えてロングツーリングまでより快適に楽しめるというモデルとなっている。
登場したのはツーリングタイプの『C 600 GT』とスポーツタイプの『C 600 SPORT』の2モデル。今回どちらに試乗するか悩んだが、見た目が軽そうで、女性が乗っても格好良く見える『C 600 SPORT』をチョイスした。

BMW C 600 SPORT

『C 600 SPORT』のデザインもスマートでスタイリッシュ。シュッとかちあがったシャープなテールがいかにも速そうな近未来的なスタイリングとなっている。車体にあしらわれたプロペラマークのエンブレムがラグジュアリー感を高め、街中でも注目を集めそうな完成度の高いデザイン。このスクーターもライダー専用のウエアというよりも、ちょっとおしゃれに乗れそうな雰囲気が漂ってくる。

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安全性を考えたら、プロテクター装着は必須だが、ライディングジャケットというよりも、上記にも書いた、ウールのコートやトレンチといったベーシックなカジュアルなアイテムが似合いそう(今回は雨だったので、ライディングジャケットでの試乗となってしまったが......)。ラグジュアリー感は車体だけでなく、シート下に容量が可変出来るラゲッジボックスや可変式のスクリーン、グリップヒーターに加え、シートヒーターまで装備されたワンランク上の仕様となっている。極寒の冬でも快適にツーリング出来るというわけだ。

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排気量は650ccと、その数字から大柄な車体をイメージしていたが、なんともコンパクトで250ccとそう変わらない大きさにも見える。しかしスクーターながらもシート高が810mmと足が届かないことが想像でき、こちらは数字の通り、案の定跨がってみると157cmの私の身長では片足のつま先しか地面に接地しない。ステップボードが多少シェイプされているのだがそれでもやっと。さらにはしっかり車体を支えるためには、腰を落とさないと接地せず、両足をつくためにはシートから完全にお尻を落とさなければならないという......。しかし、お尻を落とせば両足が届くというのが、スクーターならでは。いざというときの安心感にも繋がる。

BMW C 600 SPORT

ハンドルの位置はスクーターにしたら多少低めで女性からすると操りやすい。合わせてシートが高いので若干前傾になり、スーパースポーツに乗っているような感覚にもなる。スポーツバイクと違い足を前に投げ出すポジションになるが、かなり攻めた走りも楽しめそうで、スクーターに慣れていないバイク乗りでも、違和感無く操れる優しさを感じる。

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乗り出してみると、スロットルのレスポンスの良さに驚く。スクーターと言えば、ふわーっと優しく加速するイメージが強かったのだが、そのイメージとは真逆に力強く軽やかに加速する。路面がウェットだったため、思い切った走行は出来なかったが、雨の日でも全く不安を感じること無く普通に乗れてしまった......というところもさすがBMW Motorrad。フロントとリアブレーキ共にギュッと握っても車体は全く動じず、怖さを感じない。標準装備されたABSの恩恵を正に受けたという感じだが、リアタイヤの接地感も高く雨でも滑る感覚が皆無で乗りやすい。車重があるので取り回しがちょっと大変だが(とはいっても他のBMW Motorradのバイクに比べたら軽い方だが......)、それさえ我慢すれば楽しい。スクーターとはいえ、ポジションが違うだけでオートマチックのスポーツバイクという感じだ。

BMW C 600 SPORT

バイク乗りとして、ミッション操作やその無骨でもあると言えるスタイルにそれなりの拘りはあるが、オートマチックで気軽に操れる乗り物として、ちょっと前のSF映画に登場していた近未来的な乗り物に近づいてきているのかも。なんて考えるとミッション付きの跨がるタイプのバイクとは異なる乗り物として、そのうちタイヤもいらなくなるのかな? なんて期待感を込められずにはいられない。日本と欧州の道路事情がかなり違うため、コンセプトは自ずと異なっては来るが、日本でももっとスクーターをスタイリッシュに乗りこなす大人が増えて来たら、進化はもっと速く進むのかもしれない。

■SPEC
◎全長×全幅(ミラーを含む)×全高(ミラーを除く):2170×877×1480mm ◎ホイールベース:191mm ◎シート高:810mm ◎車両重量:445kg ◎エンジン型式:水冷4ストローク並列2気筒4バルブ ◎最大出力:60ps/7500rpm ◎最大トルク:66Nm/6000rpm ◎排気量:647cc ◎ボア×ストローク:79×66mm ◎燃料タンク容量:16L ◎フロントタイヤ:120/70ZR15 ◎リアタイヤ:160/60ZR15

■PRICE
112万0000円(消費税8%込み)

BMW Motorrad JAPAN
http://www.bmw-motorrad.jp/jp/ja/index.html