マツダ車特約販売会社である関東マツダは、目黒碑文谷店を「マツダブランドの発信・体験拠点」としてリニューアル。2015年1月3日の営業開始を前に、報道陣に公開した。

Related Gallery:Kanto Mazda Meguro Himonya

"こんなに素敵な国産車ディーラーは、ちょっとないんじゃないか"、というのが記者の正直な感想だ。黒を基調とした建物は実にシックで、だが側面には温かみのあるウッドが張られ、ガラス張りのフロアは外から内部が見渡せるため、決して入りづらい感じはしない。2階のショールームでライトアップされた赤いマツダ車がよく映える。

1階にはクルマはなく、カウンターと椅子やテーブルが置かれているだけ。国産車の販売店によくあるような、テレビや子供を遊ばせるスペースなどは見当たらない。クルマを見に来た人は、まず階段を上がって2階へ向かうことになる。



2階は、外の道路に面した側はほぼすべてガラス張り。明るい外光が差し込み、目黒通りで色づく銀杏の木が見える。反対に内側は光を吸収するようなマットな黒。天井や壁など、各部によって微妙に色合いが異なる「様々な階層の黒」を組み合わせているそうだ。奥にはそこだけ白い壁と木目のカウンターを備えたドリンクバーがある。店内に置かれた「アクセラ」「アテンザ」「デミオ」「CX-5」には絶妙に計算された照明が柔らかな光を浴びせ、「魂動」デザインと呼ばれるボディの陰影を際立たせている。光の具合によって鮮やかな緋色から渋い葡萄色まで、様々に色調を変えるマツダの赤、「ソウルレッドプレミアムメタリック」という塗装の魅力が存分に窺える。クルマを見ながら傍らの椅子に腰掛け、テーブルを囲んで店舗スタッフや友人、家族と談笑した後、さらに"本気の商談"に入るときは奥の個室に案内されるはず。ショールームのフロアとは完全に隔離されるので、落ち着いてデリケートな話ができる。

なお、ここに置かれるクルマは、ソウルレッドのみに限定するそうだ。試乗車には他の外装色のクルマも用意されるそうだが、基本的に他のボディ・カラーを確認したければ、他店に足を運ぶ必要がある。また、当然ソウルレッドプレミアムメタリックの設定がない「MPV」や「プレマシー」、そしてスズキからOEM供給を受ける軽自動車なども展示されることはないだろう。出来るだけ多くの車種やカラーを見てもらうよりも、"マツダブランド"を感じてもらう、ということを優先しているわけだ。



普段は顧客の目に触れない地下の整備工場も見せていただいた。天井は敢えて配管を隠さずに、チューブ状の照明と合わせて、見せるようにデザインされているという。地下の工場にも関わらず、壁の一面はガラスを通して植栽のグリーンが見える。働くスタッフがリラックスできるように配慮したとのことだ。



整備を終えた車両はここからエレベーターで上に運ばれ、地上階のエントランス前でオーナーに受け渡されることになるのだが、そこには母屋とは別棟の離れのように「ブランドガレージ」と名付けられた部屋がある。この店舗のデザインに関わったマツダのデザイン本部長、前田育男氏が拘ったというスペースで、いわば「クルマ好きの隠れ家」をイメージした場所だ。選び抜かれた自動車関連のグッズや書籍のほか、魂動デザインのオブジェなども飾られている。この前田氏の「いちばん居たいスペース」としてデザインされた部屋で、オーナーは整備された愛車の準備が整うのを待つわけだ。新車を購入したら、いわゆる「納車式」も行われるという。マツダ車に乗られている方なら、多少遠方でも是非一度、訪れることをお勧めしたい。例えばオイル交換だけでもお願いして、その間にこのスペースでマツダ・ブランドを感じながら一時を過ごすことも可能だそうだ。



2012年に発売されたCX-5から、アテンザ、アクセラ、そしてデミオと、魂動デザインによる現行主力車種が揃った今、前田本部長によれば今度は「その作品(クルマ)を入れる器を作る」という念願の新店舗である。前田氏率いるマツダのデザイン本部監修の下で、設計を担当したのは広島県出身の建築家、谷尻 誠氏と設計事務所「サポーズデザインオフィス」のスタッフ。その過程は前田氏がイメージを伝えて谷尻氏が設計する、という単純なものではなく、関東マツダの西山雷大社長によれば「2人で、ケンカしながら(笑)作り上げた」そうだ。前田氏は「カーブのライン1つとっても、建築家の考えるデザインと、カーデザイナーの考えるラインは違うということに気付かされながら、相当突っ込んだ議論をして、彼(谷尻氏)と一緒に作り上げました」と語っていた。



カウンターで美味しいコーヒーをいただいたから言うわけではないが、本当に居心地が良い店だ。マツダ車を買ってもらう、という前に、マツダブランドの認知を高め、体感してもらうための店舗だから、特に購入予定がない人でも、もちろんマツダ車に乗っていなくても、大手を振って来店できる。散歩の途中に立ち寄ったり、自転車で来る方も大歓迎だそうだ。記者の個人的な思いとしては「RX-7」やNA型「ロードスター」など、旧いマツダ車に乗っている方に是非、来店されることをお勧めしたい。マツダというブランドにより一層、誇りと愛着を感じられるだろうから。


By Hirokazu Kusakabe

■関連フォトギャラリー
Related Gallery:Kanto Mazda Meguro Himonya

Related Gallery:Mazda Tokyo Midtown DESIGN TOUCH