スズキは12月22日、5年ぶりにフルモデルチェンジした軽自動車「アルト」を東京都内で発表した。

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発表会で最初に登壇した鈴木 修 会長兼社長が「スズキ軽自動車の原点」という初代アルトは1979年5月に発売。ボディ・カラーを制限し、内装も簡素化、「なるべく所得の比較的少ない方でも乗っていただけるように」と、物品税が安いバンとして、47万円という低価格で販売された。それから数えて8代目となる新型アルトは、そんな「初代アルトに原点を戻して発売させていただく」と鈴木社長は仰る。




その心が目に見える形で端的に表れているのが、初代アルトを想わせるシンプルで直線的なエクステリア・デザインとフロント・マスクということになるだろう。すでに公開済みのデザインについては賛否両論、様々な感想が聞こえてきているが、スズキによればそれは「美味しいごはん」のような、"「美しい」普通"を目指したという。特に重視されたのがプロポーションだそうで、確かに凝縮された力強さを感じる真横から見た姿が、記者には最も魅力的に思えた。

「メガネをモチーフにした」という左右ヘッドライトとそれをつなぐ"フレーム"は、その名も「めがねガーニッシュ」という純正アクセサリーとしてボディ・カラーと同じ全8色が用意されている。車体色と合わせると全部で56通りの組み合わせが可能だそうだ。また、このヘッドライトは先代よりもコンパクトで軽いため、リア・バンパーに埋め込まれた横長のテールランプと合わせて、先代より3割も軽量化されたという。


車体全体による軽量化は、今回のモデルチェンジで最も注目すべき点だろう。超高張力鋼板と高張力鋼板の使用範囲を拡大した新開発プラットフォームをはじめ、新設計された足回り、樹脂化されたフロントフェンダー、小型化した空調ユニット、そのほかエンジンから内装に至るまで各部の改良により、新型のCVT仕様車と先代モデルの「アルト エコ」を比較すると、60kgも軽量化されたという。商用車「アルト バン」の5MT同士で比べたら、車両重量は690kgから610kgへ、80kgも軽くなっている。もっと言えば、先々代のバンと比べると100kgも軽い。これらの軽量化技術と新プラットフォームは、今後発売されるスズキの軽自動車に順次採用していく予定だ。



RA06A型658cc直列3気筒エンジンは、先代アルト エコや「ワゴンR」「ハスラー」などに搭載されているものから圧縮比を上げる(11.2から11.5へ)など、さらに高効率化を推し進めた。車両重量の大幅な軽量化もあり、お馴染み「エネチャージ」を搭載する前輪駆動のCVT車では、JC08モード燃費37.0km/Lというガソリン車No.1の低燃費を達成している。ついでに言うと0-100km/h加速は1.9秒も速くなっているそうだ。最高出力52ps/6,500rpm、最大トルク6.4kgm/4,000rpmというスペックは、従来型とほとんど変わらない(最高出力の発生回転数が500rpmほど高くなっている)。

トランスミッションは副変速機付きCVTの他に、5MTと、そのシフト操作とクラッチ操作を自動化した「AGS(オートギアシフト)」が、バン「VP」とその乗用版と言えそうなセダンのエントリー・グレード「F」に設定されている。ただし、5MTに組み合わされるRA06A型エンジンは可変バルブタイミング「VVT」を持たず、スペックも49ps/6,500rpmと5.9kgm/4,000rpmとやや低い。スズキの方にお訊きしたところ、「5MTをお求めになる方は、出来るだけ価格が安い方がいいというお客様が多いため」ということだった。つまり5MTはエンジンも含め、"廉価仕様"ということらしい。なお、アルト バンのAGS車はJC08モード燃費26.2km/Lと、CVT&エネチャージを採用するセダンの量販グレードに比べると見劣りするが、これでも商用車No.1の低燃費だそうだ。従来通り用意される4輪駆動モデルでは、ハスラーに採用された4WDシステムをベースに、軽量化や振動、こもり音を低減するなどの改良が施されているという。



車体サイズは全長3,395mmと全幅1,475mmは変わらず、全高が1,475mmと45mmほど低くなっている。ホイールベースは先代の2,400mmから2,460mmに延長され、これにより室内の、特に後部座席が広くなった。145mmも拡大した室内長2,040mmという数値は、ダイハツ ミラを抜いてクラストップになった。前席をそれなりのポジションに調整しても、確かに後席の足元には十分な余裕がある。インテリアの質感は当然高いとは言えないが、安価なマテリアルでもそれほど物悲しい気分にならないように上手くデザインされている。ただ、インパネの白いパネルは、ボディ・カラー同色なども選べたらいいのにと思った。

バックドアは両サイドからテールランプがなくなったことにより、開口部が拡がり使いやすそう。バンにはスペアタイヤが付属するが、乗用のセダンは全て荷室床下にタイヤパンク応急修理セットを装備。アルト エコでは20リッターにまで削られたことが批判された燃料タンク容量は、27リッターとだいぶ改善された。マクファーソン・ストラット式フロント・サスペンションはサスペンションフレームをフラットな形状にして軽量化と高剛性化を両立。リア・サスペンションは前輪駆動車のみ、従来のI.T.L.(アイソレーテッド・トレーリング・リンク)から、より軽量なトーションビーム式に変更された。最上級グレード「X」のFF車のみ、前後にスタビライザーが付く。



今回の発表会では、新型アルトのCMに起用されたタレントのベッキーさんが登場。CMではアルトの「目力(めぢから)」を強調すると同時にベッキーさんの眼がアップで映るのだが、「いつかこの私の眼を、アップで皆さんにお見せしたいなと思っていたので、夢が叶って嬉しい」と語っていた。

新型アルトの価格は、バン「VP」の5MTが先代と変わらず69万6,600円から。バンでもAGS車なら衝突被害軽減ブレーキ「レーダーブレーキサポート」装着車も選べる。セダンは微妙に値上げされて「X」の5MTおよびAGSが84万7,800円から、装備充実「X」の4WDで「ミディアムグレー2トーンバックドア仕様車」の124万5,240円まで(いずれも税込み)。詳しい情報は以下のURLから公式サイトをどうぞ。

スズキ 公式サイト:新型「アルト」
http://www.suzuki.co.jp/car/alto/




By Hirokazu Kusakabe

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