BMW X6

世界中のセレブリティが、猫も杓子もこぞって飛びついているのがSUVというジャンルのクルマで、ハリウッドあたりを転がす俳優・女優からヨーロッパで破格の年棒を稼ぎ出すサッカー選手まで、とにかく皆SUVにゾッコンらしい。
10年前、プリウスでレッドカーペットに登場して以来、とかく「エコカー大好き」とグリーンなイメージをアピールしている、かのレオナルド・ディカプリオのガレージにだって、エコカーと分類するには難しいような数台のSUVが埋蔵されているくらい。ちょっとアタマを捻れば名前の浮かんでくるくらい名の知れた欧米の著名人なら、誰だって少なくとも一台は何かしらのSUVを所有していると思って間違いはない。走りが良くてグッドルッキングでイバれて荷物も人も搭載出来る。これ以上おあつらえ向きのパッケージはないっていうわけだ。

BMW X6

で、なんでセレブの友達でもないのにそんなことを私が知っているかっていうと、実はお恥ずかしながら、某男性向けファッション雑誌にて、セレブリティの愛車を紹介する連載を担当して早○年というキャリアを持っているため。遠く離れた日本にて、L.Aをパパラッチしているかのごとく、日々セレブリティのガレージ事情を覗いているのである(きゃっ)。

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そんな中でも所有率から、欧州の、特にサッカー選手や、若い世代のハリウッドスターに人気があるなと感じていたのが、『BMW X6』だ(2014年・今井調べ)。
BMW的には、X6はSUVではない。X5X3のような、いわゆる世間で言うところのSUVには独自に『スポーツ・アクティビティ・ビークル(Sport Activity Vehicle)』=SAVという呼称を与えているBMWだが、このX6と、そして先日発売された弟分X4にはSAC『スポーツ・アクティビティ・クーペ(Sport Activity Coupe)』と独自のカテゴライズをしている。
ちょっとややこしいのだが、それくらい差別化された、特別なモデルだという心意気でもある。BMWはユーティリティーを重視して走りを殺すわけでは決してないという、姿勢の現れだと感じられる。

BMW X6

確かに初代、X6が市場に投入された時、その独自性を目の当たりにしたときの衝撃は大きかった。目からウロコというか、青天の霹靂というか。
ラゲッジルームの使い勝手や乗員の快適性の確保を至上命題と考える従来のSUVは、専有面積をまるでビルを建設するかのように真上に伸ばし、ある程度スタイリングを犠牲にしてまで車内空間を確保するのがフツウであった。が、これはどうだ。

BMW X6 BMW X6

その名の通り大胆に、クーペのように傾斜するルーフライン!まさにデザイン先行型、デッドスペースだらけのなんちゅう贅沢な空間の使い方!こういう解釈のラグジュアリーもあったのか!
初代の初期モデルはさらに割り切った設計で、なんとこのバカでかい図体に4人乗り設定のみ、という暴挙に出たが、さすがにそれではあまりに俺様スペックすぎたのだろう、途中から後部座席の真ん中にヘッドレストとシートを備え、5人乗りにも対応した。

BMW X6

そしてこういうモデルの独自性・個性・押しの強さに加え、メーカー側のほんの少しの妥協による使いやすさの進化が、特に保守的な価値観を排除するかのような若く伸びやかな感性を持つ、若いセレブ層に支持されたのではないかなと推測している。

そんなセンセーショナルなモデルだけあって、乗る顧客を選びはするが熱烈なファンも多いX6、日本でも常にバックオーダーを抱える、隠れた人気モデルだった。
「え、そんなこと言ったって、もともと生産台数が少ないからバックオーダーになっちゃうんじゃないの?」なんて穿った見方をしてみたのだが、否、初代モデルの年間販売台数は800台、同社SAVのX5がピーク時に年間2,000台だったというから、モデル独自性を考えれば決して少ないほうではない。むしろそんなに売れているのかと驚いたほどだった。

そんな流れを受け、新型X6は完全に初代の流れを踏襲し、コンセプトをキープしている。もちろん後部座席も評判のいい5人乗りを引き続き採用した。
インテリア面での大きな変化はナビゲーション。10.2インチの大型ディスプレイは地図を大きく表示することも、画面を左右二分割表示にして、左側にマップ、右側に天気予報など、ひとつの画面でマルチな情報を得ることも可能だ。なによりフラットで大きな画面はタブレット端末を置いたようで見た目にも先進的だ。

BMW X6 BMW X6

安全装備も大きく進化した。カメラとミリ波レーダーを使った衝突回避・軽減ブレーキや、車間距離を維持しながら速度制御を自動で行うアクティブクルーズコントロール(スタート・ストップ機能付き)、前車接近警告機能や車線逸脱を振動で知らせるレーン・デパーチャー・ウォーニングを備える「ドライビング・アシスト・プラス」を全車標準装備している。車体がデカいだけに、もしものときのため安全性能が標準装備なのは安心だ。

F20 Ausstattung DIN 1/11 FlyerBFL 1/11 FlyerEAL 1/11 FlyerESP 1/11 FlyerDIN 2/11 Katalog BMW X6
(ACC作動イメージ)
今回、試乗が叶ったのはX6 xDrive50i。
X6はこうじゃなきゃ!と唸る迫力の諸元は4.4リッターV8ターボエンジンを搭載し、450ps、650Nmを発生させるというもの。ほかにも来年2月発売予定の3リッター直6ターボも発表されているが、やっぱりこういうドヤ顔モデルはV8あたりが気分に合う。
だってこんな小山のようにデカいクルマが450psも出しちゃうのだ。

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運転している本人はもう愉快で愉快でたまらない。踏めば踏むほど底の知れないトルクがモリモリと沸いて出て、2.5トンもある巨体のマッチョさを微塵も感じさせないのだもの。キュン!とプルバックのミニカーみたいに俊敏に加速するから、長い直線なんかでは、この重い身体を圧倒的なパワーで引っ張る独特の爽快感に酔いしれて欲しい。

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言わずと知れた直線番長のX6だが、実は一般道での取り回しは意外に易い。
時速60㎞あたりではステアリングが異様に軽いのだ。ステアリングに剛性感・しっかり感を求める人には、多少の物足りなさ・不安定さ・フワフワ感(アシではなくあくまで操舵、ステアリングフィールに限る)を感じるかもしれない。片手でスルスルとハンドル操作出来てしまうほどなのだ。
実際に、これほどのビッグサイズだからこそ低速域での取り回しには配慮をしたようで、最小回転半径も5.9と、ボディサイズから考えたら破格の操作性を誇る。
日本の狭い道路状況や駐車場では、この舵角の広さがモノを言わせるシーンはそこそこ多いはずだから、これは恩恵と捉えたほうがいいのかもしれない。
ただしこれだけルーフが傾斜しているから、後方視界は著しく悪いので注意されたし。

BMW X6 BMW X6

しかしそれだけではなく、きゅっと引き締まったようなスポーティーさが際立った先代に比べ、新型はあらゆる方向において想像以上にコンフォート方向に振られていると感じた。ピーキーなところが目についた先代からすると、「ずいぶんオトナになって角が取れたね」というイメージだ。
そのタネ明かしをすれば、先代X6は実は、ドイツ本国のスポーツパッケージというスポーティーグレードを導入していたためだ。スポーツサスペンションや制御関係、ホイールなどが搭載されていたため、ノーマルよりもややハードに味付けされていた。
ひるがえって新型X6はモデルの特殊性をスポーツに紐付けさせるではなく、より高級志向に、またよりマイルドに、快適性に焦点を合わせたモデル展開に変化している。
たとえば前席のシート。座面・背面ともに大きくなったように感じたが、それは先代のバケットシートから、ノーマル形状のシートに変更したためだ。また、アシのセッティングもほんの少しコンフォートになり、3段階用意されたドライブモードのうち、ノーマルモードを選択すれば、フラットに保たれた静かな室内を楽しむことが出来る。

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これもSUVに高いファッション性を求められる昨今のトレンドの流れからすると、至極当然の進化かもしれない。乗り味をマイルドにしたことで、顧客の間口は確実に広がるだろう。
さらに顧客の嗜好性に対応させるため、今回X6に待望のMスポーツパッケージが追加されたし、また「デザイン・ピュア・エクストラヴァガンス・インテリア」(名前長っ!)というデザインパッケージも登場した。
このふたつの美味しいとこ取りをするのも可能で、外観はMスポーツパッケージにしてスポーティーに、内装は「デザイン・ピュア・エクストラヴァガンス・インテリア」にしてゴージャスに、という贅沢仕様も選べてしまうのだ。もちろんノーマルグレードに選択も可能である。

BMW X6

ここのところ、BMWは広告戦略を少し変えて来たように思う。
以前のように走り一辺倒ではなく、クルマとファッションやライフスタイルを絡めたようなプロモーションを始めたのだ。X6の今回のラインナップもまさにそれを饒舌に物語っているように感じる。そういう意味ではBMW入魂のモデルであることには間違いない。
ちなみにX5とX6の販売比率を比較すると、X6は名古屋・大阪方面で売れているそうな。...深く納得しつつ、この新型もその辺りにおおいに歓迎されそうな気がうんとする。

BMW 公式サイト
http://www.bmw.co.jp/jp/ja/

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