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先日、2014-2015日本カー・オブ・ザ・イヤーのインポート・カー・オブ・ザ・イヤーを獲得したメルセデス・ベンツCクラス。インポート・カー・オブ・ザ・イヤーとは、その年に発売された輸入車のなかでもっとも評価が高かったクルマに贈られる賞だ。大接戦の末、カーオブザイヤーの本賞こそデミオにもっていかれたけれど、点差はわずか。一歩間違えればイヤーカーになっていた可能性だってあった。僕自身、最高点の10点はデミオに与えたが、Cクラスにも9点を付けた。これはもう、どちらも甲乙付けがたいという意味の配点である。

ここで皆さんにお伝えたしたいのは、どうしてCクラスの評価がそこまで評価が高いのかということだ。メルセデス・ベンツなんてまるで縁遠いクルマだと思っている人も少なくないだろう。もっとも安いグレードで419万円もするのだから無理もない。高いんだからよくて当たり前、という考えだって正論だ。では、ここで59人の選考委員による選考結果(http://www.jcoty.org/result/)をみて欲しい。スバル・レヴォーグや日産スカイライン、リストには入っていないが今年発売されたBMW4シリーズグランクーペと比べて、Cクラスの獲得点数は圧倒的だ。

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Cクラスが高い注目と評価を集めた理由。それは、クラスの概念を打ち破ったことに尽きる。単に少々優れたハードウェアを備えているだけではイヤーカーにはなれない。雌雄を決するのは、ここまでやるのか?!というサプライズと、それが他メーカーのクルマ作りに与えるであろう影響力の大きさだ。言い換えれば、そのクラスの「常識」をいかに鮮やかに塗り替えたかが問われるのだ。
昨年、日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得したゴルフは、まさにそんな一台だった。200万円台で買えるCセグメントにプレミアムカーの装備と質感を持ち込んだことが評価された最大の理由。いまごろ世界中のメーカーはゴルフをバラバラにして研究し、次のクルマの開発の参考にしているだろう。そうやってCセグメントの「常識」水準は高められていく。Cセグメントがよくなれば、その上のクラスはもっといいクルマでなければならない。こうした技術競争が起こることで、他メーカーのクルマを買う人を含め、すべての自動車ユーザーが恩恵に浴するわけだ。

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Cクラスに話を戻そう。Cクラスは、Cセグメントのひとつ上のDセグメント(CDセグメントとも呼ばれる)に属する。なかでもBMW3シリーズアウディA4とこのCクラスは、プレミアムメーカーが手がけるモデルとして激しいバトルを繰り広げている。レクサスキャデラックジャガーといったプレミアムメーカーも分け入ろうとしているが、いまだ上記3台の牙城を崩すには至っていない。「Cクラス、3シリーズ、A4のドイツ勢3台は技術的にもデザイン的にも本当に深い魅力をもっています。そこにどれだけ追いつけるかが開発テーマでした」。欧米でインフィニティQ50として販売されている現行型スカイラインの開発者の言葉からも、ドイツ御三家の実力がうかがい知れる。スカイラインは、ハイブリッドモデルのコストパフォーマンスなど、部分的には超えたところもあるが、全体としては未だ超えられていない。これはレクサスISにしても同じことだ。
そういう意味で、新型Cクラスは、間違いなくこのクラスの「常識」を大幅に嵩上げする存在だ。誤解を恐れずに極限まで単純化した表現を使うなら、アウディA4を凌ぐ内外装の質感に、BMW3シリーズのようなスポーティネスと、Sクラスに匹敵する最新安全装備を備えたモデル、ということになる。ライバル車のいいとこ取りにとどまらず、世界最高の高級車との誉れ高きSクラスの技術まで惜しげもなく与えてきたのだ。先進安全装備はベーシック系グレードでは19万5400円のオプションになるが、それをチョイスしても消費税、諸経費込み450万円でお釣りがくる。

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しかも、ドアを開けてシートに座れば、目の前にはいままで見たこともないような素晴らしいクォリティのインテリアが拡がっている。鈍い輝きを放つシャドウシルバーメッキのスイッチ類、ステアリングの上質な手触り、疲れ知らずのシート、間接照明、慣れると使いやすいCOMMANDシステム、それに連動する全車標準装備のHDDナビゲーションシステム・・・その出来映えはまさにミニSクラスである。

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これほどのクォリティを見せつけられたら、値段が高いのだからよくて当たり前・・・という言葉は説得力を失う。宿敵3シリーズを足下にも寄せ付けないほどの上質感は、まさにこのクラスの常識を破るもの。このインテリアを上回るモデルが登場するとすれば、2015年夏頃に登場予定だった次期アウディA4だろうが、一部には発売延期の噂もある。Cクラスを見て、そのあまりの実力(内外装、安全装備など)に設計変更を強いられているのではないか、との見方もある。

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もう少し詳しく見ていこう。新型Cクラスの先進性をもっとも明確に示しているのが安全装備だ。合計6個のレーダーセンサーとステレオマルチパーパスカメラが、高度なプロセッサーと複雑なアルゴリズムによって包括的に処理され、クルマが人間と同じように考え、行動する。ステレオマルチパーパスカメラは、歩行者認識の他、前方の車線を認識しステアリング操作をアシスト。歩行者の飛び出しや横切る他車を認識できるのも特徴で、コンピュータが必要と判断すれば警告音を発した後、自動ブレーキをかける。25GHZの近距離用レーダー、77GHZの中長距離用レーダーにステレオマルチパーパスカメラという組み合わせは現段階での最強コンビである。

Mercedes-Benz E-Klasse Infografik Radarsysteme
Mercedes-Benz E-Klasse Infografik Distronic Plus mit Lenk-Assistent

運動性能向上と燃費低減を目的とした軽量化にも貪欲に取り組んでいる。ボディシェルのアルミ使用率は先代の9%から50%にまで拡大。70kgの軽量化効果を発揮した。スチールとアルミの接合に、接着剤とリベットとねじを使った「ImpAcT」なる量産車世界初の工法を採用したのもすごい。まあ、ユーザーにしてみれば工法などどうでもいいことかもしれないが、少なくとも他の自動車メーカーの生産系エンジニアはImpAcTにかなり注目している。



0.24というcd値(空気抵抗係数)はクラス最高。ちなみにメルセデスは他のほとんどのモデルでもcd値においてクラス最高を獲得している。サスペンションはフロントが新開発の4リンク式。リアは伝統の5リンク式マルチリンク式。上級モデルに用意したAIRMATIC(エアサスペンション)はクラス初だ。

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このように、新型Cクラスを通してメルセデスがアピールしているのは、このセグメントのトップに立つという強い想いだ。そしてその想いは、当然ながらデザインにも大きな影響を与えている。
2008年からメルセデス・ベンツのデザイン部門のトップを務めるゴードン・ワーグナーはこう言った。「デザインとは過去と未来をつなげるものである」。非常に哲学的な言葉だが、意訳すれば、メルセデスの伝統を次世代へとつなげていくことがデザイナーである自分の役割であるということだ。
世界最古の自動車メーカーとして知られるメルセデスは、その長い歴史と伝統ゆえにもっとも尊敬されている反面、権威主義的なイメージがある。悪くいえば年寄り臭い。それが嫌な人はBMWやアウディを選ぶ。事実、メルセデスオーナーの平均年齢はライバル車より5歳ほど高いという。

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デザインの力でそこを何とかしたい、というのがゴードン・ワーグナーの考えだ。だがそれは決して、歴史と伝統を捨てて若い人に媚びることではない。メルセデスの魅力を父から子、子から孫へとつなげていくために彼が導き出した回答が新型Cクラスのデザインだ。Sクラスを彷彿させるフォルムをもちながら、ボディサイドにアグレッシブで躍動的なラインを配することで、伝統と若々しさを同時に表現した。ちょっと保守的になってしまった感のある3シリーズや、モデル末期を迎えているA4と比べて、明らかに「攻め」の姿勢を感じるし、モダンでもある。もう誰も、新型Cクラスをみてオジサン臭いなんて言わないだろう。

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走りのテイストにも同じことが言える。メルセデスによると、コンフォート(快適性)、アジリティ(俊敏性)、インテリジェント(知能化)が新型Cクラスの走りを支える3本柱だという。
インテリジェントは先進安全装備のところですでに述べた。そこでまずはアジリティだが、たしかに先代のCクラスよりステアリング操作に対するクルマの動きが俊敏になった。え、メルセデスなのにこんなにスポーティーなの? と思えるほど。少なくともフットワークのスポーティーさでは3シリーズに負けていない。ユーザーの若返り戦略として、スポーティネスはいまや必須なのである。現状、パワートレーンの選択肢は3シリーズのほうが豊富だが、ディーゼルやAMGバージョンも登場する予定。常にメルセデスよりもスポーティーであることを武器に戦ってきたBMWが今後どんな反撃に出るのかが楽しみだ。

一方、快適性は歴代メルセデスが安全性とともに常に最重視してきた領域。たとえそれがスポーツカーであっても、オープンカーであっても、快適性と安全性には絶対に妥協しないのがメルセデスの哲学だ。
当然ながら、新型Cクラスにも同じ思想が色濃く反映されている。高速道路での快適性に大きな影響を与える直進安定性は素晴らしい!のひと言。エンジン音や風音の封じ込めも優秀で、日本の高速道路の流れ程度であれば室内はしんと静まっている。横風安定性や追従型クルーズコントロールの自然な挙動も、ロングドライブ時の快適性を大きく引き上げている。

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ただし、乗り心地には注文を付けたい。日本仕様は全車ランフラットタイヤを履いている。パンクしても一定距離走れる便利なアイテムなのだが、サイド面のゴムが固く、かつ重量が増すため乗り心地には不利。その影響がモロに表れてしまっている。16インチタイヤを履くC180はそこまで悪くないが、売れ筋のC180アヴァンギャルドにオプションのAMGラインを装着すると(18インチタイヤになる)、これはもうメルセデスとしては落第レベルの乗り心地になってしまう。C200アヴァンギャルドのエアサスも18インチだが多少マシになる程度。いずれにせよ乗り心地がこれほど不利になるのであれば、ランフラットタイヤではなくノーマルタイヤを履かせるべきだった。「最善か無か」(採用するのは最高の技術のみ。中途半端な技術は採用しない)というメルセデスの社是はどこに行っちゃったの?という感じである。

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全体的には高く評価しつつも、カーオブザイヤーで最高点の10点を与えなかった理由はここにある。もちろん、メルセデスもこの問題はすでに認識済みであり、サスペンションの再チューニング、あるいはランフラットタイヤからノーマルタイヤへの履き替えの検討を開始している。そんなわけで、この原稿を読んでいる新型Cクラス購入検討中の方には、買うならもう少し待った方がいいとアドバイスをしておきたい。ランフラットタイヤに起因する乗り心地問題がいつ改善されるのか。具体的なタイミングはまだわからないが、そう遠くない将来には、先代Cクラスのような大トロ系のまろやかで滑らかな乗り心地が戻ってくるだろう。そうなったとき、Cクラスは無敵の存在になる。
【岡崎五朗 試乗インプレッション】

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