【試乗記】「やはり2代目は偉大だった」 2016年モデルの3代目アウディ「TT」に試乗!
2014年3月のジュネーブ・モーターショー開幕前夜に3世代目となる新型が発表されたアウディのスポーツクーペ「TT」。現在はその日本導入が待たれるところだが、一足先にスペインで試乗したAutoblog US版記者による試乗記をお届けしよう。

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先に登場したのは「メトロセクシャル」だったかアウディ「TT」だったか。メトロセクシャルとは、"metropolitan(都会人)"と"heterosexual(異性愛者)"の合成語で、ファッションやスキンケアに気を遣う男性のことを指し、この造語が生まれたのは、アウディ「TT」のコンセプトカーが登場した1995年よりも1年早かった。しかし、どちらも注目に値する文化の進化であり、この2つは思いがけずお似合いの組み合わせでもあった。というもの、2002年に公開された映画『アバウト・ア・ボーイ』で、ヒュー・グラント演じる主人公ウィル・フリーマンの愛車がシルバーのTTであり、これが主人公のキャラクターにこれ以上ないほど似合っていたからだ。

映画公開から10年たった後も、オリジナルのTTは重要な存在だった。2012年の終わり頃にTTクーペの3代目が登場するという噂が流れた時、最も興奮を誘った空想は、その新型クーペが16年前に発売された初代のような"オリジナリティとインパクト"をいくらか取り戻すかもしれないというものだったほどだ。熱心なアウディのファンでさえ、アウディが初代のマネではなく、新しいデザインを作り上げるに違いないと推測していた。去りゆく2代目TTを偲び、ろうそくに火を灯そうとする者が誰もいないということは明らかだった。だからこそ、3代目の最初のリーク画像がインターネットに流れた時、皆が疑いを持ち始めた。そしてジュネーブ・モーターショーで実物が発表された時、我々の投票結果とは裏腹に、ネット上では3代目TTに対して不満の声がほとんどだった。

新型はTTらしいスタイルが継承されており、インテリアバーチャルコックピットスペックなどは確認できたものの、試乗するまで評価を下すことなどできない。筆者は新型TTに乗るため、大西洋を渡ってスペインのマルベージャ市に飛んだ。そして発見したのは、3代目TTが2代目より良くなってはいるが、格段に変わったわけではないということ。TTはやっぱりTTだったということである。




まずはこれまでにアウディが果たした功績をきちんと認める必要がある。TTは2代目になって、ハンドリング性能が大幅に改善された。見た目はオリジナルの初代から受け継いでいるが、その子孫である2代目は「TT RS」に見られるように、いい意味で元気溌剌としていた。そして3代目はそれらの遺産を掛け合わせ、注ぎ込むことであらゆる面で最良のモデルになることが期待された。

しかし、3代目TTはプラットフォームが新しくなったにも拘わらず、全面的にまったく新しいものを作り出してはいない。全面的に細部を新しくしただけだ。新型を先代の隣に置いて並べて見比べないと、大きな違いが分からないほどだ。だが一度気付けば、どれだけ変更箇所があるかも明らかになり、また、初代のデザインからどれほど影響を受けているかが分かるはずだ(ご覧の通り、ほこりっぽいスペインの道路を走ったため、新型TTのボディがほこりまみれであることを心からお詫びしたい)。

新型TTの全高は先代と同様だが、全幅は約1cm狭く、全長は約2cm短くなっている(日本版編集者注:発表された車両寸法は全長4,180mm × 全幅1,832mm × 全高1,353mm。日本仕様の現行モデルと比べると、10mm短くて、8mm幅が狭く、27mm低い)。ホイールベースは37mm伸びてオーバーハングが短くなった。フロントは丸みのあるデザインから、大きなシングルフレームのグリルを強調するシャープな表情へと変わっており、ボンネットに付けられた"フォーリングス"のエンブレムと共に「R8」を想起させる。一方で、ヘッドライトユニットの中でLEDデイタイムランニングランプから縦に伸びた2本の柱は、レースカーの「R18 e-tron quattro」を連想させる。アウディが"重ね合わせたような外観"と呼ぶホイールアーチはシャープさを増し、外側に突き出したサイドシルでつながっており、これはどちらもオリジナルTTのトレードマークだ。




後部はよりシャープになったラインがリアのデッキリッドを縁取り、存在感を放っている。LEDのコンビネーションランプは、テールの幅いっぱいに内蔵されたハイマウント・ストップランプとつながりバンパーの形状を強調させている。その下のテールパイプはオリジナルに敬意を表し、2本の距離が近くなっている。他に気付いた点として、給油口のクラシックなシルバーのカバーの下にキャップがなくなった。見た目は確かに良くなっており、時間をかけて外観をチェックすれば、その進化に気付けるだろう。しかし筆者の評価は、心で感じたというより頭で判断したものだ。

米国ではこのクルマを1年先まで入手できないので、米国仕様の車両重量は不明だが、欧州モデルでは先代より軽量化されている。これはアルミニウムとスチールの複合材料を使ったスペースフレームや、シート、ホイールに新たなデザインを採用するなど、減量対策を施したおかげだ。2.0リッターの4気筒TFSIエンジンに6速MTを組み合わせた車両重量は1230kgで、公式記録によれば、"先代より約50kgの軽量化"に成功したそうだ。プラットフォームを共有するフォルクスワーゲンの7代目「ゴルフ」は最大100kgの減量を達成したが、欧州モデル同士で比べると、TTはゴルフよりもさらに約140kg軽い

米国仕様も共通となるこのエンジンは、ターボチャージャーによるトルクの太さが特徴で、最高出力230hp、最大トルク37.7kgmと、先代よりもそれぞれ19hp、1.9kgmほどアップしている。直接燃料噴射を補う間接噴射(走行状況によって機能する)のような内部改良やスタートストップシステムの追加、積極的な軽量化を行ったことで燃費性能が向上し、アウディの報告によれば、欧州基準で15.6km/リッターとのことだ。米国モデルについては来年分かるだろう。



今回の試乗で最も注目したのがインテリアだ。車内の居心地は、国際家電見本市 (CES)で展示されていた時よりも、ほぼ間違いなく良くなっている。空調のコントローラーは操作しやすく、吹き出し口の中央に設置されている。空気の方向を変えるには、吹き出し口を調整するのではなく、吹き出し口の枠を回して内側のタービン翼の角度を変える。「MMI(マルチ・メディア・インターフェイス)」のコントローラーは改良され、4つのボタンから大型のロータリースイッチとその両脇にある2個のトグルスイッチの組み合わせに変わった。ドライバーは手元を見なくてもナビゲーションや電話、ラジオ、メディアの切り替えができる。MMIのノブの表面はタッチセンサー式で、指の動きによって画面をズームさせたり、文字の手書き入力が可能だ。さらに喜ばしいことに、アウディで初めてスクロール機能が採用された。これで地球上に存在する他のすべてのクルマと同じように、右に回すと下にスクロールし、左に回すと上にスクロールするようになった。

計器類の役割も果たす12.3インチのスクリーンは、単なる四角い形状ではなく、その端は曲線になっている。画面は明るくて、ひときわ強いスペインの太陽の光が当たっても見辛くなることはなかった。ディスプレイの両端に、スピードメーターやタコメーターが従来のアナログ計器と同じくらいのサイズでくっきりと表示され、その間には他のインフォテインメントのメニューが並ぶ。また、メーターを縮小して、ナビゲーションマップのような他のメニューを大きく表示することも可能だ(これについては下にある短いビデオをご覧いただきたい)。助手席の位置からは画面が見えないのではと危惧する方もご安心いただきたい。スクリーンの四隅の一部を除けば助手席からもはっきりと見ることができるし、MMIコントローラーをつかんで好きなように操作することができる。ただし、ドライバーが望まないときに助手席の乗員が勝手に操作したら、ドライバーの気が散るかも知れない。




インテリアで1点だけ文句を言いたいのは、助手席の前までインストルメント・パネルが大きく広がっていることだ。 パネル先端部から急な角度に傾斜したウィンドシールドの底部までが離れており、シャシーの低い位置に設置されたシートから外の世界を見るには、ビーチのように長く広がった黒いプラスチック越しに見なければならない。「TTS」では、パネルが部分的にざらさらした表面に覆われ、視界はわずかに改善されているが、我々の願いとしては、デザインの特徴を変えるか、装飾を加えるなどして、変更して欲しいところだ。

しかし、新型TTの走りに不満は一切ない。シャープでパワフル、その連動によって、これまで以上にスポーティなドライブが可能となっている。これらの変化はTTに大変革をもたらしているわけでも真のスポーツカーに押し上げているわけでもないが、先代型よりレスポンスが向上していることは明らかだ。その理由のひとつとして挙げられるのがアップデートされたクアトロシステムで、コーナリング時にこれまでよりパワーを瞬時にかつ頻繁に後輪に伝えるよう改良されたため、旋回性能が向上している。さらに、ドライブセレクトのモードを切り替えれば、軽量化された電子制御油圧多版クラッチが、操舵角などを考慮して先を見越した働きをし、トルクベクタリングなどのハンドリングを補助する装置も積極的なドライブに備えた制御を行う。



この上なく軽い操作系が好みでない限り、ドライブモードは「ダイナミック」に設定し、ステアリングとアクセルのフィードバックが安定するまで、ほんの一瞬待ってからドライブを楽しむのがいいだろう。ボディシェルのねじり剛性は23パーセント強化され、磁気ダンパーの働きもあり、不整路面でも乗り心地に荒さは感じない。アクセルを踏むと、わずか1750rpmでトルクは37.7kgmに達する。スポーツモードに設定してパドルシフトの準備をすれば、TTはどんな曲がりくねった道でも、スペインの山道でさえ走るのに恐れることはない。デュアルクラッチ式の6速Sトロニック・ギアボックスが、期待どおりの変速を素早く行い、それに伴って非道く高価なポルシェ「911ターボS」にも似たサウンドトラックが響く。風切り音は気にならない程度だが、おかげでサウンドアクチュエーターが調節したサウンドがいっそうよく聞こえて来る。アウディは、この音がダイナミックモードで"鳴り響く"と表現しているが、筆者が思うに、低く単調な音で唸る傾向があり、むしろ泡立つようなゴボコボという音に近い。

さらにハードに走らせると、予想通りアンダーステアが発生するが、続けて軽くドリフトするような、横方向に傾く独特の感覚が味わえる。間抜けのように何もしないでいるだけで、ノーズは進むべき方向を向く。

新型TTは、おそらく先代型から94パーセントくらい変わっているだろう。アウディによれば、新型TTの2.0 TSFIエンジンは排気量以外すべて変更されているそうだ。しかし、外観と内装を見た限りでは、40パーセントくらいしか変わっていないように感じるのだ。立ち止まってよく見なければ、外見の違いにすべて気付くことができない。



TTは現在、米国での本年度の販売台数は1,056台(8月末時点)と、あまり売れているクルマとは言えない。しかし、それとは対照的に他の国々では好調なのだが、その理由は明らかだ。 BMW「Z4」(これもまた売れ行きが悪い)や メルセデス・ベンツ「SLK」(いまだに人気がある)とは違った男性的な力強さを感じさせるということに加え、ポルシェ「ボクスター」よりも9,000ユーロ(約130万円)安く、トルクが大きくて燃費性能に優れるディーゼルエンジンと6速MTの組み合わせが選べるのだ。

しかし、筆者はドライブ中にこんなことを考えた。「新型TTは"PF"、つまり"パーフェクトリー・ファイン(すべて申し分ない)」だ。ハードに運転するのは楽しく、インテリアは高く評価できるし、もっと多くのクルマが同車のように整然とした、製造品質や細部のデザインにこだわったものになってほしいと願っている。しかし、米国市場における話で言えば、その最大の長所は、"ボクスターよりも安い"の一言に尽きるのではあるまいか。もっとも、そのボクスターの本年度の販売台数は8月末時点で2,749台を記録しているが...

試乗を終えて、筆者の頭に浮かんだのは結論ではなく疑問だった。
"なぜアウディはTTをお終いにして、「R4」を開発する道を選ぼうとしないのか?"

【基本情報】
エンジン:2.0リッター直列4気筒ターボ
パワー:最高出力230hp/最大トルク37.7kgm
トランスミッション:6速DCT
0-60mph: 5.3秒
最高速度:155mph(250km/h)
駆動方式:AWD
車体重量:1,230kg
座席数:2+2
荷室容量:10.8立法フィート(約306ℓ)
燃費:市街地36.8mpg(約15.6km/ℓ)(欧州基準)
ベース価格:3,5000ユーロ(約480万円)(ドイツ)

By Jonathon Ramsey
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:Hirokazu Kusakabe

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