日本では10月23日に販売開始となったレクサスの高性能スポーツクーペ「RC F」。同時発売されたRC」のハイパフォーマンス・バージョンであり、レクサス・スポーツ・モデルに与えられる「F」の称号を継承する最新モデルでもある。多くの自動車ファンにとって気になるのは、標準グレード「RC350」との差よりも、先代「F」である「IS F」との違いの方かも知れない。今回は、その辺りについてもサーキットと公道で検証してきたAutoblog US版記者による試乗記をお届けしよう。

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筆者が初めてレクサス「IS F」を運転する機会に恵まれたのは2009年のこと。IS Fの販売が開始されてから2年も経っていた。筆者は今でもその日のことを鮮明に覚えている。当時、筆者はレクサスのラインナップのほぼ全てに試乗していたが、V8エンジンを積むフェンダーが膨らんだマッスル・セダンにようやく乗れるとワクワクしていた。だが、それはきっと速いが無菌室で作られたような、あまり運転し甲斐のないクルマに違いないだろうとすっかり思い込んでいた。それまでレクサスは、ボディのチリがしっかりと合った、快適で、静かで、信頼性の高い、臆病者のためラグジュアリーカーばかりを造るメーカーだったからだ。皆も実際にそう思っていたに違いない。

しかし、後に筆者は100%間違っていたということが分かった。レクサスというプレミアム・ブランドの高く評価された"スカンクワーク・チーム"(既存の製品開発組織から独立した研究開発チームのこと)が、あの巨大なV8エンジンを純真なISに詰め込み、富士スピードウェイ(知らない方のために、"F"は"富士"を意味する)で攻めても秀逸な走りができるようにチューニングした時、彼らはそれまで20年をかけて築き上げた来たブランドの価値を忘れてしまったようだ。IS Fは粗野でうるさく、鋭い反射神経を持ち、パワースライドの傾向があった。パドックから解き放たれたレースカーように、公道の路面では乗り心地が固かった。

ベース車とその誕生の物語と同じくらい、IS Fとレクサスの"F"バッジは、初めて聞く人にとって面白い話だ。その続編であるこの新しい「RC F」は、否応なくその組み合わせを背景として見られるに違いない。実は別世界にいる「LFA」が2番目のFモデルとして数えることも出来るのだが、RC Fは5.0リッターV8エンジンの進化や、ボディとシャシー構造の共有、類似したフェイスデザイン、そしてタイヤから煙を上げることに憧れを抱く上級の顧客を真っ向から狙った価格など、IS Fからの継承と発展が見て取れる。

筆者の疑問は、「レクサス Fモデルの最新の進化型が、"タチの悪い遺伝子"を継承しているか?」ということだ。その答えを、ニューヨークのハドソン・リバー・バレー周辺の一般道と、モンティセロ・モータークラブのクネクネとしたサーキットコースで探ってみることにしよう。




少なくとも外観を見る限り、RC Fがどこか欠けていると非難されることはほとんどないだろう。どの角度から見ても、この大型クーペが平凡に思えたり、市場に出ている他のクルマの真似のように感じられることはない。複雑で丸みを帯びた面が、鋭いラインや荒々しい細部の造形と至る所で隣り合っている。筆者は特に、斜め後ろから見た姿が独特の興味深さを感じさせると思った。リアのコンビネーションランプはボディから出っ張り、見たことがないようなZ型に切り取られている。

過去5年間のレクサスのデザインと同様に(特に現行型の「IS」で顕著だが)、RCのカタチに対する批判や批評のほとんどは、特徴的なフロント部分に注がれるだろう。RC Fのフロントは、レクサスのスピンドルグリルが大きな口を開けて大胆に繰り返されている。縦にも横にも大きな口はクロームで縁取られ、ブラックのダイヤモンド・メッシュ仕上げとなっている。スピンドルグリルの脇には大きなエアベントが2つ備わり、ノーズ全体が永遠に新鮮な空気を飲み込み続けようとしているみたいだ。

大きく膨らみエアダクトが開けられたボンネットを持つRC Fが、かなりフロントヘビーに見えるのは疑いようがない。これまでの"レクサス・スピンドルグリル時代"のモデルの中でも、非常にアグレッシブで自信に満ちていると言える。だが、この形状が最近の記憶の中でも最も意見が分かれるデザインとなったのは驚くことではない。リスクを取ると結局は大好きか大嫌いに割れてしまうものである。

RC Fのフロント・エンドの見た目の重さを評価する前に、フードの下に搭載されたV8エンジンの素晴らしさをデザイナーたちは強調しようとした、ということを念頭に置いてほしい。RC Fに動力を供給する5.0リッター・エンジンは紛れもなくIS Fの伝統を受け継ぐ物だが、エンジニアたちは旧いシリンダー・ブロックに新しい部品を組み合わせてこのエンジンを進化させた。




このV8のシリンダー・ブロックには、新設計のシリンダーヘッドと、改良されたクランクや鍛造コネクティング・ロッド、チタンバルブなど、軽量化された構成部品が組み合わされている。圧縮比が高められ(IS Fの11.8:1に対して12.3:1)、また最高回転数(6,800rpmに対し7,100rpm)も引き上げられたことで、最高出力477psと最大トルク54.0kgmを発揮する。

最高出力がIS Fの423psから54psもアップしたことは特筆に値するが、最大トルクが2.5kgm増えたことも見逃してはならない。RC Fのエンジンは、4,800 rpm~5,600rpmの範囲で最大トルクを発生させる。IS Fのエンジンは5,200rpmが必要だった。スロットル・ボディの大型化とエンジンの高回転化に合わせ、最大トルクがより低回転で発生されるようになったことで、サーキットの低速コーナーではIS Fよりも力強く立ち上がる。さらにIS Fで感じたときよりも一瞬速く身体がシートバックに押しつけられるように感じた。

読者の皆さんは驚くかも知れないが、筆者は本当にこの5.0リッター・エンジンを高く評価している。最近は高出力のターボチャージャー付きエンジンのクルマに多く乗っていたからか、初めにRC Fのステアリングを握った時には、現代の過給機付きエンジンに比べ瞬時にトルクが発生しないことに閉口した。しかし、試乗時間が経つにつれ、自然吸気エンジンの甘美さが明らかになっていった。リニアに上昇する出力カーブが、クロース・レシオの8速トランスミッションと轟き渡るエグゾーストと見事にマッチして筆者を魅了したのだ。

このオートマチック・トランスミッションは、IS Fから引き続き使われているもので、プラス面もマイナス面もそのまま引き継いでいると筆者には感じられた。ドライビング・モードは「Manual」モードに加えて3種類のオートマチック・プログラム、「Normal」(サブ・モード「Eco」付き)「Sport」「Sport+」が用意され、かなり幅広いドライビング・スタイルが楽しめる。NormalモードとSportモードは、どちらも公道での走行に適しており、ステアリング・ホイールに備わったパドルシフトを使ってダウンシフトすれば、素早い追い越しができるし、エグゾースト・システムが活発になって空を切り裂く音をただ楽しむことも可能だ。



日本以外のサーキットでレクサスのエンブレムを付けたクルマを見かけるのは珍しいかもしれない。だが、この8速ATは1周約6.5km、18コーナーから成るモンティセロでは申し分なく役目を果たした。Sport+モードに切り替えれば、コーナリング時にスロットルの入力や速度に応じて積極的にギアをホールドしたり、またはキックダウンする。ただし、Manualモードでラップを重ねている時に筆者自身が選択したギアとは全く合っていなかった。マニュアルでシフトしている際には、タコメーターの針がレッドゾーンに近づくとRC Fの計器ディスプレイがはっきりと報せてくれ、レッドゾーンに達するコンマ数秒前に警告音が鳴り響く。街中で乗っているときには少々うっとうしいだろうが、初めてのクルマで初めてのサーキットを学んでいる時や、最適なラップを探ろうとしている時には実にありがたい機能だと感じた。

ラップタイムを更新しようとして走り込む際に、パドルシフトが本当に使用されるために設計されたものであるならば、もっと指が届きやすい位置にあるべきだ。レクサスの小さなパドルはこういう場合に理想的とは言えない。コーナー進入時に素早くシフトダウンしようと手を伸ばした際、僅かに滑りやすいと感じたのは一度や二度ではなかった。

スポーツ走行を目的とした観点から言えば、RC Fのフロントシートは優れたデザインだ。これはFモデル専用に設えられたもので、非常に柔らかく身体をしっかりと支えてくれ、見た目にも素晴らしいと思った。深くえぐられたようなシートボルスターのおかげで、足やお尻、胴体のみならず肩までもしっかりとサポートしてくれる。シートの調整幅はとても広く、身長195cmの筆者でもヘルメットを被った状態でステアリング・ホイールの近くに快適に座れた。




もちろん、リアシートも2席用意されている。だが、そのシートをどうしても使いたいと思う場面を筆者は見つけられなかった。BMW「M4」メルセデス・ベンツ「C63」といったライバル車よりもレッグルームが150mm程狭く(RC Fは693mm)、間違いなく窮屈に感じる。

その他のインテリアのスタイリングや装備に関しては、高級感を上げるためにレザーの使用範囲や詰め物が増えているが、基本的に2014年型ISから継承したデザインだ。RCのインテリアは各部にマット仕上げやブラッシュド仕上げが施されており、特有の水平基調のダッシュボード、分かりやすいコントロール類が備わり、ISと同様にモダンで洒落ていると感じた。ただし些細な不満が2つある。まず、インフォテイメント・システムの表示が画面いっぱいに出ないこと。これは奇妙で腹立たしい。もう1つは、新しくなったタッチパッド型のインターフェイス。従来のマウス型コントローラーから改良されてはいるものの、タイムラグと待ち時間の長さは解消されず、出来の悪いスマートフォンのようだと言わざるを得ない。

ありがたいことに、インフォテイメント・システムをいじるよりもステアリング・ホイールでRC Fをコントロールする方がずっと楽しかった。RC Fは反応が良く、機敏で、シャープなハンドリングのクーペであり、攻めた走りをする時にはドライバーの運転テクニックを補ってくれる。その多くは洗練されたアダプティブ・サスペンションと電子制御のトルク・ベクタリング・リア・ディファレンシャルという新しい仕掛けのおかげだ。




RC Fのサスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーン式、リアがマルチリンク式で、標準モデルのRCに比べて剛性が高く、かつ軽量な構成部品が使われている。スプリングやダンパー、ブッシュ、ステアリング・ナックル、コントロール・アームなどは、パワフルなFモデルの操縦性が向上するように新設計または再設計されているという。

新機構の「トルク・ベクタリング・ディファレンシャル(TVD)」は、RC Fのパフォーマンス・パッケージの一部としてオプションになるだろう(日本仕様もメーカーオプションとして設定)。このシステムは明らかにレクサスのエンジニアたちが披露できたことに最も興奮している技術だ。TVDは、2つの小さな電動モーターと2つのマルチプレート・クラッチ、そして各ドライブシャフトに備わるプラネタリーギアで構成されている。エンジントルクを1,000分の1秒毎に調整して左右の後輪に賢く配分し、たとえドライバーがアクセルを閉じているときでさえも、コーナリング中には外側の駆動輪に継ぎ目なくパワーを送り続ける。これだけでも十分に魅力的だが、TVDには「Normal」「Slalom」「Track」という3種類のモードがあり、Slalomモードはクイックなステアリング・レスポンス用に、Trackモードは"サーキットでの高速走行"用に最適化されている。

果たしてTVDはどのように機能するだろうか? まず、RC FをSport+モード(トランスミッションとスロットルのマッピングの変更に加え、トラクション・コントロール、スタビリティ・コントロール、ABSの介入を緩やかにする)に設定し、様々なTVDモードでトラックを周回してみた。きちんと一貫性を持って6周したところで、この素晴らしいディファレンシャルは長い高速コーナーで明確な恩恵をもたらしてくれることが明確になり、タイトなコーナーからも俊敏かつスムーズに立ち上がることが出来た。駆動力が配分されても不自然に"介入"されている印象は全くなく、乗り手を"ドライバー"として補完するような感じだ。このシステムと走り方に慣れ、周回を重ねるにつれて、コースの各部分でどんどんスムーズに、どんどん速く走れるようになっていった。



新開発のディファレンシャルの効果がなかったとしても、RC Fは素早く移動するためのとても効果的なツールだ。ステアリングとのコミュニケーションはやや軽い傾向があるが、見事な安定性と車重が2トンもあるクーペとは思えないほど俊敏なレスポンスを示す。コーナーからコーナーへの移動は優雅でグリップも効いており、自信を持ってRC Fの持つ全ての力を使うことが出来る。

レクサスはRC Fのパフォーマンスが本当に扱いやすいと喧伝していたが、間違いなく彼らはそれを実現したと思う。もっと野蛮だったIS Fとは違い、唐突で圧倒的なパワーの立ち上がりやリア・タイヤのグリップが失われることを心配せずに、RC Fはどうすれば速く走れるかをドライバーに学ばせてくれるだろう。

つまり、IS Fの癖が強い乗り味をその後継車としてRC Fに求める人は、おそらく他のクルマに眼を向けるべきだ。加えてRC Fは路面状態の悪い道でも従順かつ柔軟で、過去のIS Fのようにアグレッシブな振る舞いをしたがることがまったくない。全ての電子制御をオフにした時でさえ、わざとリア・エンドを滑らせるようなことをしない限り、RC Fはとてもニュートラルでコーナーでも安定していた。IS Fはきついコーナーで喜んでドリフトするだけでなく、そもそもドリフトしやすい傾向にあった。一方でRCはずっとバランスよく躾けられている。結果的に、RC Fがやや主流寄りの性格となり、独特さが失われたとしても、筆者は開発チームの大勝利だと思う。素晴らしき厄介者が、成熟した大人になった。筆者はそれが嬉しくもあり悲しくもある。読者の皆さんなら理解してくれるだろう。

【試乗記】Fモデルの最新の進化形! 新型レクサス「RC F」

明らかにRC Fにとって好ましい点が1つある。BMWメルセデス・ベンツアウディの主なライバル車(もうすぐ引退してしまうが、キャデラック「CTS-Vクーペ」も含めた方がいいだろう)と比較した場合の価格だ。RC Fのベース価格は6万2,400ドル(約675万円)で、「C63 AMGクーペ」よりも1,200ドル(約13万円)、「M4」よりも1,800ドル(約19万円)、「RS5」に至っては8,500ドル(約92万円)も安い。1対1でパフォーマンスを比較すれば解釈の仕方によって様々な捉え方が出来るだろうが、RC Fは特に魅力的な価格において議論に加えてもいいと思う。

他のプレミアム・ブランドのパフォーマンス部門の歴史を振り返ると、我々は最初のモデルに最も愛情を感じ、記憶に残っている場合が多い。過去のものを愛するという人間の性質でもあり、また、新しいスポーツカーの誕生はいつだってエンスージァストを熱狂させるからでもあるだろう。「F」モデルの原型や祖先として、筆者はこれからも最初に登場したおバカなIS Fに、情熱の炎を燃やし続けるだろう。

しかし、RC Fのように未来の高性能レクサス車に向けて道を照らすクルマがあれば、レクサスの目の前には利益の見込める持続可能な道が開けていると信じる気持ちが強くなる。それは、我々みんなにとってより素晴らしいドライビングを意味する。批評的に言えば、伝統的に退屈な会社から、継続的な興奮を約束されたということでもある。エッジが効いていて、楽しくて、速い...レクサス。しばらくの間、そんなレクサスを感じてみようと思う。

【基本情報】
エンジン:5.0リッターV型8気筒
パワー:最高出力477ps/最大トルク54.0kgm
トランスミッション:8速AT
0-60mh:4.4秒
最高速度:170mph(約274km/h)〔リミッター制御〕
駆動方式:後輪駆動
車体重量:1,795kg
座席数:2+2
荷室容量:286ℓ
燃費:市街地16mpg(6.8km/ℓ)、高速 25mpg(10.6km/ℓ)
ベース価格:6万2,400ドル(約669万円)
日本価格:953万円

By Seyth Miersma
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:日下部博一

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