マツダは10月26日まで、東京ミッドタウンで行われている「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH」に新型「デミオ」を展示するとともに、25日(土)と26日(日)には同社のクレイモデラーによるクレイオブジェの製作作業を実演。来場者が自らクレイ(粘土)を削ってみることができる体験会も実施する。プレス向けプレゼンテーションで聞かせていただいた、マツダのデザインに掛ける想いなどのお話について今回はご紹介させていただこう。


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マツダが新型「デミオ」を含む新世代ラインアップの各モデルで採用している「魂動(こどう)」と呼ばれるデザイン。今回のイベントでは、実車だけでなくスケッチやそのイメージを形にしたオブジェ、そして製作過程やコンセプトを説明するビデオなども展示され、「生命感」をカタチにするという最新のマツダ・デザインについてより深く知ることができる。

中でも最も興味深いものは、世界的に高く評価されているマツダのクレイモデラーが実際に会場ブースでクレイモデルを製作する実演作業だ。さすがにクルマの実寸大クレイをその場で削り出すわけではないが、市販モデルのデザインが行われる際に、まずイメージを膨らませ、具現化し、共有するために製作されるというオブジェのクレイモデルを造り出す作業を、目の前で見ることが出来る。マツダでは市販車のデザインに取り掛かる前に、「アドバンスデザイン」として、このようなイメージ・オブジェ(下の写真:右)がデザイナーとモデラーの共同作業によって製作、いや"制作"されるという。



デザイナーがまず描くのは、インスピレーションを線で現したスケッチ(上の写真:左)。いきなりクルマの絵を描くわけではないそうだ。しかし、4つのタイヤにキャビンとエンジンルームが載っている一般的なクルマの形状と違い、我々素人がそのスケッチを見てもそれが一体どういう"カタチ"をしているのか、さっぱり分からない。実は線を描いたデザイナー自身も、完璧に立体物として把握しているとは限らないらしい。だからそれを元に、デザイナーのイメージを3次元の立体にしていくことが、モデラーの仕事となる。それは単に造形する技術だけではなく、創作する感性も要求される仕事だ。



"設計図"にあたるスケッチはまったく見ずに、もくもくとクレイを削るモデラーの方に訊いてみた。

削り出すべきカタチはすでにこのクレイの塊の中に見えているのですか?

「そうですね、見えていますね」

モデラーの方のお仕事は、デザイナーの描いたスケッチを忠実に立体化する、というだけには留まらないのですね。

「もちろん、そういった作業も仕事の内ですが、デザイナー自身がイメージをまだカタチとして明確に認識できていない場合もあります。だからスケッチだけでなく、言葉や、時には擬音とか(笑)によって、彼らが伝えるイメージをカタチにしていくのが我々の仕事です」


そのプロセスが実はマツダという会社の特色でもある。モデラーは、2次元のスケッチだけでなく、哲学や理念といった眼に見えないモノまでカタチにする能力が求められることもある。この、"デザインもできるモデラー"は、マツダの中でも"トップガン"と呼ばれている人たちだそうだ。マツダのモデラーが凄いという話は海外でも有名で、ここだけの話だが、ヨーロッパに赴任している時には海外の自動車メーカーからヘッドハンティングの誘いもたくさん来るとか...。ちなみにトップガンのお一人、高梨雄太氏(上の写真:右)は、逆に他社から移籍した経歴を持つ。マツダならこういう仕事が出来ると知って、すぐに関東から広島へ移住を決めたそうだ。



今回のイベントでは我々一般の来場者も、彼らの道具を借りて実際にクレイを削ってみることが出来る。削るための道具はもちろん用途によって様々だが、薄い金属板を切ったヘラは、彼らモデラーが自分で使いやすいように試行錯誤しながら作ったものだという。

筆者もクレイを削らせてもらったが、想像していたより何倍も難しい。ただクレイを削るだけなら教えてもらえば出来るのだが、イメージ通りのカタチに削るためには、やはりかなりの鍛錬と研究、努力が必要だ。道具の持ち方、握り方、身体の向き、腕の動かし方、力や体重の掛け方など、感性以前にまず習得しなければならない様々なフィジカルな要素がある。

「我々も先輩達の作業を見て、真似しながら学びました。どういう姿勢で、足はどのくらい開いて削るか、とか」

なるほど、野球選手がイメージ通りのバッティングをするためにあれこれ考えてフォームを掴むようなものですね。

「あ、まさにそうですね」

このようなオブジェの製作と、市販車のクレイモデルを製作するモデラーは別なのですか?

「我々は両方やります。私は先代デミオの時、担当しました」

市販車の形を作る作業は、やっぱりまた違いますか?

「違いますね。エンジニアリングや生産性という要素も関わって来ますし、そこにどの素材が使われるのか、鋼板なのかアルミなのか樹脂なのか、当然それを考えて作る形も違ってきます」



市販車の場合、まず設計によって決定している4つのタイヤの位置、ルーフの高さなど、大まかに機械で削り出された形を土台にして、チーフデザイナーの描くイメージ通りに、全体のスタイルから、各部のディテール、さらに鉄板のエッジがどのくらいの曲率で折り返されているかなどという細部に至るまで、クレイを削ったり盛ったりしながら製作していくという。完成した実寸のクレイモデルと、生産される市販車の形を比べると、その誤差は僅か0.1mmというから驚きだ。クレイとは粘土だから、温度や湿度の変化によって収縮する。そのため、他社では普通、1mmから5mmくらいの誤差は許容範囲にしているという。だが、マツダではメーカーと協力して「まったく収縮性がないクレイを開発した」そうだ。「完成車になったとき、数mmも違っていたら、デザイナーやモデラーの志が落ちる」と、マツダ‪デザイン本部デザインモデリングスタジオ部長‬の‪呉羽博史‬氏は言う。

「昨今では若い人はあまりクルマに興味がないと言われていますが、これは時代の流れでもあるんですけど、それ以前にまず、我々自動車を作る側が、自動車ってこんなに素晴らしいものなんだと思えるような、持っていて、傍らに置いといてドキドキするようなものを作らないといけない。(自動車に興味がない人が増えるのは)我々作る側にも責任があるという思いを持って、自動車造りの概念を変えるため、設計の概念を変えるために、マツダ社内でも、ハッとするような、ドキドキするような物を作ろうと、このようなビジョン・モデルを造ってきたわけです」




最近ではクレイモデルを使わずに、コンピュータで3Dのデータ作成し、そこから自動車を作る方法もあり、「大きな自動車メーカーでもそれをやっているところはある」そうだ。しかしマツダは「人の手で作る」ということに拘る。それは「日本人の美意識」に根差したものだと‪呉羽‬氏は言う。だがマツダでは、単にナショナリスティックな感傷的な気分で、わざわざ時間と手間とコストを掛けているわけではない。そうやって作られたデザインでなければ「ヨーロッパ等に打って出たとき、日本独特の文化を感じさせないと埋没してしまうから」という販売戦略に基づく理由がある。決して大メーカーとは言えない日本のマツダが、世界という市場で戦うための、デザインは有効な武器でもあるのだ。

‪呉羽‬氏によれば「魂動デザインとは、気持ちをカタチにするという、宗教のようなもの(笑)」だから、「沢山の人たちが話し合いながら作るものではなくて、1人や2人の天才的なメンバーが、"ご神体"のようなものを作り、それを下にどんどん降ろしていく」ことで製品になるという。こういうやり方をしているのは「恐らくマツダ」だけで、ここまでやるには「相当苦労した」そうだ。



粘土の中から、生命感やエネルギーが湧き出てくるようなカタチを作る。マツダのモデラーは、石や木から仏の姿を掘り出す仏師のような存在なのかも知れない、と思った。表現すべきは自己ではなく、誰もが共有できる美的価値。そこがいわゆる芸術家とは若干異なる。

今週末の10月25日と26日には、13時からと15時からの2回、東京ミッドタウン プラザ1F キャノピー・スクエアにて、クレイオブジェ製作の実演会・体験会が行われる予定だ。お近くの方は是非、マツダのデザインを支える彼らの技術と感性をご覧いただき、そしてご自分でも実際にクレイを削ってみることをお勧めしたい。きっと、自動車のボディの線や面を見る目、触れたときの感じ方が、少し変わるのではないかと思うから。イベントに関する情報は以下のリンクから、「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH」公式サイトをどうぞ。

http://www.tokyo-midtown.com/jp/designtouch/2014/index.html


By Hirokazu Kusakabe

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