【試乗記】「流行に敏感に、速さに敏感に」 2014年型フォルクスワーゲン「シロッコ R」
日本では2014年3月に販売終了となったフォルクスワーゲン「シロッコ」。だが、欧州ではちょうど同時期にマイナーチェンジが施され、エンジンのパワーもアップした"フェイズ2"が発表されている。日本への導入は今後、あるのかないのか気になるところだが、今回は同様に輸入を待ち望んでいる米国Autoblog US版記者による試乗記をお届けしよう。

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ドイツの自動車メーカー各社は、我々米国人が頭をかきむしるのを見て楽しんでいるようだ。彼らは伝統的な自動車のボディスタイルに固執せずに、その境界線をわざと曖昧にし、新たに生み出したスタイルに新しいカテゴリー名を考案している。背が低いセダンは"4ドアクーペ"と称され、クロスオーバーは" スポーツ・アクティビティ・クーペ"として販売されている。ルーフがボディ後端までなだらかに傾斜している高級車は、もはや何と言うかすら我々には分からない。結果的として顧客にはより多くの選択肢が用意されるわけだが、その選択肢のせいで、購入したその新しいドイツ車がどういうジャンルに属するクルマなのか、自分で考えてもよく分からず、また人に説明しようとしても混乱を招くことになる。例えばフォルクスワーゲン「シロッコ」。カテゴリー分けを滅茶苦茶にするクルマが増える少し前に復活したモデルだ。

フォルクスワーゲン(VW)は今から40年前、初代シロッコを世に送り出した。初代シロッコは、VWが「ビートル」に次ぐ2番目のモデルとして発売した「カルマンギア」の後継車として開発され(日本版編集者注:正しくは「タイプ2」トランスポルターがその間に登場しています)、ジョルジェット・ジウジアーロ氏の手によって不朽のデザインに仕上げられた。1981年に2代目のシロッコが登場し、1992年まで生産が続くと、「コラード」が1995年までその地位を引き継いだ(コラードは1988年に販売が開始され、2代目シロッコと販売時期が重なっている)。そこからVWがシロッコを復活させるのが妥当だと判断するまでに13年を要した。2008年にシロッコが返り咲いた時、我々はそのボディスタイルを何と呼べばいいか探ろうとした。ハッチバック? クーペ? それともスポーツカー? VWによる説明の中には、これら3つの単語がほぼ同じ意味で使われている。それは今も昔もシロッコが流行に敏感で、モダンなシロッコの低くて長く伸びたルーフラインが、ポルシェ「パナメーラ」BMW「X6」アウディ「A7」と同じように、既存のカテゴリーに分類されたくないと抵抗を示しているからだろう。

今年3月にジュネーブ・モーターショーフェイスリストしたシロッコがデビューしてもこの疑問は当然ながら解決しなかった。流線型でスタイリッシュなシロッコは復活してから北米のショールームに現れていないので、我々は飛行機に乗ってシロッコの本拠地であるドイツに向かい、このカッコいい謎のクルマの正体を探ってきた。




2008年のジュネーブ・モーターショーで復活したシロッコは、フォルクスワーゲン・グループの「A5プラットフォーム」をベースに造られていた。このA5プラットフォームは、同時期の「ゴルフ」や「ジェッタ」、ビートル、「ティグアン」をはじめ、グループ傘下のアウディセアトシュコダ、そしてフォルクスワーゲン商用車のクルマにも同様に使用されていた。これらのモデルの多くは、VWが開発した先進的プラットフォーム「MQB」をベースとする新世代型に生まれ変わっている。ゆくゆくはシロッコも新しいモジュラーアーキテクチャーで造られるであろう。しかしVWは当面、モデルライフ中盤の現行シロッコにフェイスリフトを施してショールームでの関心を維持させようとしている。

シロッコはアップデートされても引退間際のクルマのように見えるが、ビフォー・アフターで2台を並べてみると、丸みを帯びた先代よりも、シャープなラインで彫り込まれたスタイルと、低く構えた姿勢がより強調されていることに気付くだろう。重要なのは、馴染み深いが新鮮な印象を与えるという点だ。ヘッドライトがバイキセノンになり(ベースモデルはオプションで、Rモデルでは標準装備)、テールライトはLEDになった。インテリアはシート、ステアリング・ホイール、ダッシュボード上の3連メーター、トリム、電子機器が刷新されている。もちろん、新しいアロイホイールや他のこまごまとした変更もあるが、最大の進化はボンネットの下で見られる。




改良された直列4気筒直噴ターボエンジンは、先代のユニットに比べてよりパワフルになったと同時に燃費の向上も達成している。エンジンの選択肢は全部で6つ。2種類のディーゼルエンジン(148 hpまたは181hp)と4種類のガソリンエンジンだ。ガソリンエンジンは最高出力123hpを発生するベースモデル用のユニットから、最上級グレード「シロッコ R」に積まれる276hpの高出力ユニットまで揃う。試乗するにあたり我々がどのエンジンを搭載するモデルを選んだかは、言うまでもないだろう。

シロッコRは、最高出力290hpを誇る最新の「ゴルフR」に比べればパワー(と駆動輪)が足りないが、シロッコRと同じく前輪駆動で210hpの「ゴルフGTI」には数段勝る。先代から最高出力が15hpアップした2.0リッター4気筒ターボエンジンは、シュコダがこれまでに製造してきたあらゆるスリーパー(見た目は普通なのに中身は高性能のクルマ)を遙かに凌駕し、ニュルブルクリンクで記録的な速さを見せたセアト「レオン・クプラ280」をも十分に攻撃できると証明した。276hpという最高出力のおかげで、シロッコRはルノー・スポールの「メガーヌ RS 275 トロフィー」オペル「アストラ OPC」といったパフォーマンスを重視してチューンされたヨーロッパのハッチバックと肩を並べることになったのだ。

人によってはこれを「バラエティに富んでいる」と捉えるかもしれないが、筆者は困惑している。ライバルの自動車メーカー(例えば、前述のルノーオペル)は、3ドア・ハッチバックにクーペのようなフォルムを採用し、5ドア・ハッチバックは背が高くて箱のようなスタイルと明確に作り分けている。だがVWは3ドアに両方のスタイルを用意しているため、シロッコが販売されている市場では、3ドアのゴルフにするか、それともシロッコにするかという選択が生じてしまう。



しかし、シロッコがゴルフと多くのコンポーネントを共有しているという認識は、流麗でよりスタイリッシュなフォルムを目にすれば一瞬にして頭から飛んでしまうことだろう。さらに車内に乗り込めば、そんなことを思っていたということすら、記憶から消え去ってしまうだろう。スイッチギアや全体的なインテリアのデザインは、VW車に乗っていることを意識させる。しかしVW車をよく知らない人なら、ゴルフとの共通点はあまり見つけられないに違いない。まず初めに思うことは、室内が大きな箱のように感じられるということだ。それは一部の人には魅力的だろうが、その他の人は興ざめだと感じるかもしれない。特にシロッコRは、ゴルフよりも着座位置が低く、周囲のガラス面積も小さい。シューティングブレークのようなルーフラインのせいで、後方視界が極めて狭く、しかも後部座席の背もたれと一体になった大きなヘッドレストが邪魔になり、運転席から振り返ると死角ができてしまう。後席に人を乗せるつもりなら大した問題ではないかもしれないが、太いAピラーのせいで(厳しくなったルーフ構造の安全基準によってどのクルマにも生じる問題)、フロント側にもかなりの死角が生まれてしまい、コーナリング時にドライバーはフロント・ガラスとサイド・ガラスの間で視線をせわしなく移動させなければならない。

コーナリングにおけるラインのトレースに関しては、ありがたいことにシロッコRは頼りになる。電子制御式ディファレンシャルロック「XDS」のお陰で、ゴルフRには採用されている4輪駆動システム「4MOTION」によるトラクションの追加(と重量の増加)は必要ないと思えたし、全てのパワーがフロントに掛かるにも拘わらず、アンダーステアはほとんど発生しなかった。実際、滑りやすい路面で激しく走らせても、電子制御システムの作動はほとんど見られず(どのシステムもほとんど介入しなかった)、コーナーを抜ける時もニュートラルに操縦することができた。

シロッコはドライバーに制御システムの設定を幅広く用意しており、トラクション・コントロール(完全にオフにすることもできる)、スタビリティ・マネジメント(「スポーツ」モードでは制御が働く介入ポイントが緩和される)、可変ダンパー(「コンフォート」「ノーマル」「スポーツ」の設定がある)、トランスミッション(「ドライブ」「スポーツ」「マニュアル」に切り替え可能)から、ドライバーは自分にとって好みの組み合わせを見付けることができる。丸一日行なわれた試乗の間に我々が試せたのはほんの僅かだったが、路面が濡れたコンディションの時には、スタビリティ・マネジメントとトラクション・コントロールをオンにしておいた。ダンパーの設定による違いはほとんど感じられなかった。シフトモードを切り替えると、満足のいく、そして注目に値する設定が見つけられた。




試乗車には6速デュアルクラッチ・トランスミッションが装備されており、ギアの切り替え、ホールドともに良い仕事をしてくれた。しかし、この「R」のようなパフォーマンス重視のモデルでは、もっと大きなパドルシフトが欲しかった。手元を見ずにシフトしようとすると、すぐそばにあるウインカーレバーやワイパーレバーに何度も手を伸ばしてしまったのだ。もちろんこの問題は、より魅力的なマニュアルを選べば解消されるが、ほとんどの購入者はマニュアルよりシフトチェンジが素早いDSGを選ぶだろう。どちらのモデルでも、最高速度は155mph(250km/h)だが、これはほとんどのドイツの自動車メーカーが自主的に制限している速度である。DSGバージョンの0-100km/h加速はマニュアル・バージョンより0.2秒速い5.5秒となっている(しかし、より路面をしっかり捉えるゴルフRよりは0.4秒も遅い)。

どちらのトランスミッションでもシロッコ Rには肉厚のステアリングが備わり、平均以上のフィードバックと中立付近での良好な感触をもたらしてくれた。ブレーキペダルも同様に素晴らしいフィードバックを伝えてくれ、フロントが13.6インチ(345mm)とリアが12.2インチ(310mm)のベンチレーテッド・ディスクをしっかりと掴む。ダッシュボードの中央に備えられた3連メーターの中でもターボ圧計の針の動きを見るのは楽しかったが、なぜ油温計と時計の方が運転席に近く、ターボ圧計が一番遠い位置にあるのか不思議でならなかった。アルカンターラをまとったシート(シロッコRでは他にレザーシートとレース用バケットシートのオプションが用意されている)は、横方向のサポートは優れているものの、一日中のドライブしていると腰のサポートが足りないと感じた(VWによると、オプションのレザーシートではもっと調整が利くらしい)。また、2本出しのエグゾーストパイプから轟くサウンドは、4気筒ターボということから想像していたよりもよく響き渡る音を発する。



空港へ戻ろうとアウトバーンを猛スピードですっ飛ばしていた時、我々の前を走っていたアウディ「RS3」を見失うことはほとんどなかった。気がつくと筆者は再びシロッコのスタイルをどう呼ぶべきか考えていた。ハッチバックだろうか? 恐らくそうなのだろうが、そうするとゴルフとどう区別して言えばいいのか分からなくなる。ならクーペか? クーペには跳ね上げ式のバックドアなど存在しないものだ。それではスポーツカーか? スポーツカーなら普通は前輪駆動ではないと言いたい。プジョー「RCZ」あるいは、やや小さいがヒュンダイ「ヴェロスター・ターボ」と同じカテゴリーに入れるのが良さそうだ。どちらもシロッコと同様に前輪駆動モデルで、少なくとも中身と同じぐらいスタイルも大切にしている。だが、ドイツの自動車業界の現状が我々に何かを教えてくれるのだとしたら、表示やカテゴリーはもはや価値がないということだろう。少なくとも高額な価格以外は...。

我々の頭にあるもっと大きな疑問は、VWにとって大西洋の向こう側にシロッコを引き留め続けることが果たして正しい判断なのかということだ。結局のところ、シロッコは欧州市場向けであって、北米市場向けではなかった。しかし、アップデートされたシロッコRが、使い古されたプラットフォームでもVWはこれだけのことができるという証であるとするならば、彼らがより新しい技術で作り上げる次期型シロッコもぜひ見てみたい。その時が来たら、我々が最近試乗したピックアップトラックの「アマロック」と同様に、北米市場も考慮に入れ、その新しい技術を見せてほしい。

【基本情報】
エンジン:2.0リッター直列4気筒ターボ
パワー:最高出力276hp/最大トルク35.7kgm
トランスミッション:6速DSG
0-100km/h:5.5秒
最高速度:155mph(250km/h)
駆動方式:前輪駆動
車両重量:1,450kg
座席数:2+2
荷室容量:1,006ℓ(最大)
燃費:市街地22mpg(約9.4km/ℓ)、高速 38mpg(約16.2km/ℓ)〔新欧州ドライビング・サイクル〕
ベース価格:3万6,175ユーロ(約506万円)

By Noah Joseph
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:Hirokazu Kusakabe

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