Ford ecosport

 フォード製SUVのなかでもっともコンパクトなモデルがエコスポーツだ。古くはブロンコ、最近ではエクスプローラーやクーガなど、SUV作りを得意とするフォードの伝統とノウハウを注ぎ込んだモデル、と彼らは胸を張る。なのに駆動方式はFFだけだったりするのが微笑ましいのだが、実はそこも、SUVを知り尽くしたフォードならではの部分なのかもしれない。このあたりはのちほどじっくりと考えてみることにしよう。
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日本での発売は2014年5月。その直前にタイで開催された国際試乗会に参加した。なぜタイで試乗会? そりゃもう当然ながらタイ工場で生産されるモデルだからだよね?と、会場にいたフォードのスタッフに確かめてみたところ、工場の場所と試乗会とは関係ないよ。そんなことよりここ(ホアヒンビーチ)、すっげーいいところだろ! と親指を立てながらニヤリ。ただ単に、タイ王国ゆかりのリゾート地に本人たちが来たかっただけのかもしれない。そういえば試乗会の進行も、オリエンテーリングあり、荷物積み競争ありと、いかにも米国メーカーらしい愉快なものだった。この緩さ、嫌いじゃない。緩いといえば、一緒に試乗会に参加していたオーストラリアの女性モータージャーナリストは、技術プレゼンテーションでエアバッグが7個付いていると聞いて、うちのワンちゃんはどこに乗せたらいいの?!という素人のようなジョークを飛ばしていたっけ。

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こんな調子で進められた試乗会だが、もちろん愉快なだけじゃない。日本で開催される輸入車の試乗会と違うのは、実際にクルマを企画設計したエンジニアたちがスタンバイしていて、いろいろな質問に答えてくれるところだ。僕が真っ先に聞いたのはエコスポーツ最大の特徴であるスペアタイヤの搭載方法について。今どきなぜ背面スペアタイヤなのか?ということだった。

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ひと昔前のSUVは背面スペアタイヤがデフォルトだった。けれどSUVが新種のスペシャリティカーとして爆発的にユーザーを増やしている昨今、スペアタイヤは車外から車室内へと定位置を変えてきている。砂漠を走るためじゃなく、都会中心にカッコよく乗りこなしたいというマインドをもつ多くのSUVユーザーにとって、背面スペアタイヤは見た目的にも使い勝手的にもウェルカムではないのだ。
そんな疑問に対するエンジニアの答えは「最初から先進国で売ることを想定していたら、スペアタイヤは見えない場所に積んでただろうね」というビックリするほど率直なものだった。

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日本ではほとんど知られていないが、エコスポーツは今回が2代目で、初代はブラジルを中心とした新興国でかなりの人気を誇っていたそうだ。そこで2代目の企画を練る際も、成功した初代のコンセプトを引き継いだという。ところが、折しもコンパクトSUVブームが世界中で巻き起こり、うちの国でも販売したいという要望が世界中のフォード販社から殺到。結果、欧州や日本といった先進国を含む世界100カ国で販売されるグローバルモデルへと昇格した。ところが、その時点では設計が最終段階まで進んでいて、スペアタイヤの搭載位置変更はできなかったのだという。

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この話だけを取り上げると、見込み違いとか遅きに失したという印象をもつかもしれないが、さにあらず。僕としては、先進国のマーケティングデータを取り入れなかったことこそが、エコスポーツの魅力の源泉だと思っている。たしかにスペアタイヤを取り付けたバックドアは開閉に力が必要だ。片手で気軽にスッと開け閉めできるようなものではない。しかしその代わり、エコスポーツには広大な荷室空間が生まれた。全長はわずか4195㎜に過ぎないが、荷室容量は通常で362L、後席を畳めば705Lに達する。しかもバックドアの開口部は広く、形状はスクエアで、高さにも余裕があるため使い勝手は抜群。ドラム式洗濯乾燥機を楽に積み込んでみせるデモンストレーションは圧巻だった。コンパクトSUVとしては文句なしのユーティリティーをもっているというわけだ。

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見た目にしても、背面スペアタイヤなんて時代遅れだと片付けてしまうのは考え物だ。各メーカーからじゃんじゃん新型車が出てきているなから、本来のSUVらしさを強く感じさせる個性的なルックスに惹かれる人も多いはずだ。

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搭載するエンジンにもエコスポーツのユニークな出自が感じられる。プラットフォームを共用するフィエスタが1L3気筒ターボというハイテクエンジンを搭載しているのに対し、エコスポーツが積むのはコンベンショナルな1.5Lの4気筒自然吸気。エコスポーツの故郷であるブラジルをはじめとし、先進国以外ではエンジンの製造コストや広範囲なガソリン品質への対応といった性能が求められるのが理由だ。そしてここが重要なポイントだが、このエンジン、なかなかいい味わいなのだ。フィエスタの1L気筒ターボと比べると全体的なトルクの線は細いけれど、優れた静粛性とフラットなトルク特性は、エンジンのことなど意識せず、景色を見ながらゆったりノンビリ走るのにピッタリだ。

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足回りはフィエスタより穏やかな味付けで、自然に付き合える扱いやすさが特徴。エコスポーツのキャラクターを考えれば、変にハンドルをクイックにしたり、足を硬めすぎなかったのは正解だろう。気軽に飛び乗れるカジュアルなクルマでありながら、いざ長距離ドライブに出かければ優れた快適性を提供してくれる。エコスポーツは、そんな懐い走行感覚をもっている。

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そう考えていくと、フォードは本当にSUVのことをよくわかっているなぁと思う。ならばなぜFFだけなのか? ブラジル向けには4WDもあるとのことだが、多くの国でFFが販売されるのは、ユーザーのSUVの使い方を研究した結果だという。とくにコンパクトSUVは砂漠地帯や泥濘値を走ることはまれで、日常生活に密着した使われ方をしている。であるなら、4WD化による価格や重量のアップを避けるのが得策だというのがフォードの判断なのだ。その代わり、途上国にまだ多く残る未舗装路に対応するべく最低地上高は200㎜を確保。ゲリラ豪雨などによる道路冠水に備えて水深550mmまでOKという本格SUV並の走破性も与えている。このあたりが、先進国向けの小洒落たクロスオーバーSUVとの違いだ。

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価格はほぼフル装備で246万円。決して高くはないが、僕としてはもうひと頑張りしてフィエスタ(235.5万円)と同じ価格にして欲しかった。そうすることで、フォードには同じ価格で異なるキャラクターをもつ二つの個性がありますよという強いメッセージになったと思うからだ。いずれにしても、SUVを知り尽くしたフォードが送り出すエコスポーツは、小さいながらも実にSUVらしいクルマに仕上がっている。ファッションとしてだけでなく、遊びにガンガン使い倒したい人にとっては見逃せないコンパクトSUVだ。

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