【試乗記】「美と性能を兼ね備えたドライバーズ・カー」 新型アルファ ロメオ「4C」
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初めて目にした時と初めて走り始めた時に感じた印象の違いは衝撃的だった。

アルファ ロメオは、この4Cと共に米国市場への本格的な復帰を果たす。プレス向けイベントが行われたのは、サンフランシスコ・ミッション地区の高級家具会社が使用するグラフィティ・アートで彩られた倉庫。米国でのお披露にぴったりのヒップな会場だ。コンクリートと金属の背景を対照に、この曲線が美しいスポーツカーの魅力的なスタイルは見事に引き立てられていたが、一方で泣けてくるほど高いこの地区の地価と完璧に同調しているようにも感じた。若くて富裕な上流階級の人々が集まる場所では、この新型アルファ ロメオ「4C」は光り輝く主役として注目の的になることは間違いない。

試乗のため、筆者が体をよじって運転席に乗り込み、アルファ ロメオ製の小さな1.7リッターエンジンに火を入れると、すぐに4Cのけたたましい"シンフォニー"が響き渡った。駐車場から通りに出る時に、まず必然的なフロントバンパーの下を擦る音がして、それからすぐにエンジンがウォーミングアップする野蛮な騒音が、頭の後ろにある薄いガラスを通して洩れ響いた。エンジンが冷えた状態でアイドリングする時のサウンドは、想像通りフォルクスワーゲンのディーゼル・エンジンから聞こえるものと大して違わない。

ありがたいことに、交通渋滞はなくサンフランシスコ市内の通りをすぐに抜けて起伏のある湾岸道路へ向かうことができた。すると、扇情的な見た目と未完成車のような荒々しさから感じる戸惑いは、次第に薄れていった。

以前に米国で市販された最後のアルファ ロメオとは異なり、この4Cは上流階級のプレイボーイ向けのクルマではない。もの凄くホットなドライバーズカーだ。




新たにインフィニティのPRマエストロとなった(元Autoblogヨーロッパ担当記者の)マット・デイヴィスが昨年4Cを試乗した際には、臆面もなく4Cを"ベイビー 458"(つまりフェラーリ「458 イタリア」の小型版)と呼んでいた。4気筒ターボエンジンをミッドシップに搭載した5万5,000ドル(約560万円)の羽のように軽い4Cにとって、その言葉は非常に強力な保証宣伝だ。だが、そこまで持ち上げたことにはそれなりの理由がある。(衝突安全対策のために)厚みを増したカーボンファイバーや、米国の基準に合致したより大きいエアバッグ、標準装備となるエアコンやオーディオ機器などによって、米国仕様の4Cは欧州仕様車より150kg以上も重くなっている。にも関わらず、アルファ ロメオのハンサムな新型クーペはイタリアン・スポーツカーの本質を見事に体現していた。

迫力あるエンジンと共に、この4Cの非常に素晴らしいハンドリング性能とパフォーマンスの土台となっているのは、カーボンファイバー製のモノコックタブだ。先ほど述べたように米国仕様の4Cは重量が増えてもなお、信じがたいことに1,118kgしかないことに気付くと思わず動きが止まる。その車両重量はソフトトップのマツダ「MX-5 ミアータ」(日本名:「ロードスター」)よりも約20kg、ポルシェ「ケイマン」より180kg以上も軽く、あの素晴らしい(スーパーチャージャー非搭載の)ロータス「エヴォーラ」と比べると約270kgも軽い。4Cはあまりにも軽いから、体重が107kgもある筆者の試乗体験は、平均的な体型の人とはだいぶ違ってしまうかも知れない。そんなことを思うとちょっと落ち込むと同時に炭水化物を断ちたくなった。

前後をアルミ製サブフレームで挟んだカーボンファイバー製主構造のおかげで、カリフォルニアのキラキラと輝く海岸沿いを高まる熱狂とともに飛ばしても4Cは並外れて剛性が高く捩れない。サンフランシスコからソノマ・レースウェイ(旧名はインフィニオン・レースウェイ。高齢者の間ではまだシアーズ・ポイント・レースウェイと呼ばれている)までの"長距離"ドライブは、何マイルも続く海岸沿いのつづら折りの山道から優雅に伸びる広い2車線のアスファルト道路につながっていった。イタリアのアルプス山脈を別にすれば、4Cが最もくつろげる場所だ。コーナーからコーナーへ、当然のごとく4Cは彫刻刀で彫ったように正確なラインを刻んだ。僅かなロールさえも打ち消す見事な足回りと、2,380mmという短いホイールベースがキビキビとした方向転換を可能にしている。




州道1号線の多くのコーナーを高速で抜けていく時、トヨタ「プリウス」のドライバーや商用ワゴン車との間に十分な車間距離があったにも関わらず、筆者は前後重量配分が41:59となる4Cのリア・エンドを上手くコントロールできたとは言えない。広くてしっかり舗装された路面や柔らかそうに見えるランオフ・エリアのあるサーキットなら、小気味よい4Cのグリップの限界を自信を持って見付けることができた。スロットルをオフにして馬鹿げたオーバーステアを楽しむこともできた。だが、公道の裏道では4Cは手術用メスのように極めて鋭い。

コーナーからコーナーへ4Cを飛び込ませたいという欲望は、古典的なパワーアシストのない15.7:1というギア比のステアリングによってさらに燃え上がる、ということは言っておかなければなるまい。サンフランシスコの街中へ戻ったら、アシストがないステアリングは日頃から上半身を鍛えていない人にとって、やっかいで扱い辛く、恐らくクイック過ぎると感じるだろう。これはスタイリッシュなクーペで都市部や郊外を走り回るドライバーを甘やかすような設定ではない。例えば、ポルシェの各モデルやシボレー「コルベット」のような居住性が良好なクルマとは全く対照的に、4Cは快適性に対する妥協を盾のエンブレムで飾った鼻であしらっているようだ。その長所は、コーナー中盤でステアリングの感触や重さといったことを気にする人にとっては開いた口が塞がらないほどの驚きのステアリングを体感できるということ。でありながら、ロータスの「エリーゼ」やエヴォーラのようなおしゃべり過ぎる性格はちゃんと避けられている。

つまり4Cは、F1マシンを理想とするような熱狂的なドライバーから太鼓判を押されそうなステアリングを備えている。"超"が付くほど素晴らしい。



車体中央に積まれたパワーユニットも同様にかなり楽しませてくれるものだ。アルファ ロメオはターボチャージャー付き直噴4気筒を"1.75リッター"エンジンと呼び続けているが、4Cの本当の排気量は1,742cc。通常は42ccの部分を切り捨て1.7リッターと称するものだが、アルファ ロメオにとって「6C 1750」から始まり「1750 GTV」などに受け継がれた「1750」という数字が、伝統として大切なのだ。...まあいいだろう。重要なのは、エンジンが237hpの最高出力(日本公式HPでは240ps)と35.7kgmの最大トルクを発生させることであって、正確な排気量ではない。

このシングルターボ・エンジンは6,000rpmというかなり高い回転数で出力のピークに達し、2,200rpmから最大トルクを発生させる。加速感は筆者がこれまで試乗してきた多くのターボエンジンよりもわずかにリニアだ。ターボラグは4Cにとって特に問題ではない。しっかりとアクセルを踏み込むと高速でピストン運動をする4気筒がたちまち期待通りのスピードをもたらしてくれる。アルファ ロメオが発表した0-60mph加速4.4秒という数字はおそらく正確だろう(走行状況に合わせて電子制御システムを切り替えられる「アルファD.N.A.システム」で走行モードを「レース」にすると、ローンチコントロールを使うことができ、本当に4秒台中盤のスタートダッシュが可能だ)。時速60マイル(約96km/h)以上で走行していれば、豊富なトルクもまた素晴らしいレスポンスを見せてくれる。4Cよりも高い回転数で最大トルクを発生する他の小排気量エンジンではこの速度域で輝きを放てるとは限らない。

市内に戻ってくると、先ほども言ったようにこの直噴エンジンの騒々しさはかなり耳障りだった。しかし、開けた道(あるいはサーキットのトラック)に出れば、500ドル(約5万2,000円)のオプションとして用意されるレーシング・エキゾーストを装着した4Cは、サラブレッド種のようなサウンドを奏でる。少なくとも外からはそう聞こえる。エンジンが始動し、走り始め、加速し、シフトダウンする音をソノマ・サーキットで聞いた際には、ときどき鳥肌が立った。エキゾーストに含まれるイタリア流の響きに深く感動した。公正に言って、全体的な音響は4Cのステアリングを握って運転している時にはかなり感動的だった。それでも、高速道路の走行など普通の運転をしている時のサウンドは思いやりを持って言っても"単調"でしかなかった。




6速デュアルクラッチ・トランスミッションも同じように二極性を持っている。4Cに鞭を入れてサーキットの丘を上がったり下ったりしながら走らせていると、トランスミッションは望むギアに驚くほど巧みに素早くシフトしてくれることが分かったし、オートマチック・モードで走行中にトランスミッションが自らの判断でシフトを切り替えるその素早さについては何の不満もない。しかし、プッシュボタン式ギア・セレクターのコンパクトなパッケージングは、リバース・ボタンを探すといった日常操作における扱い難さの言い訳にはならない。望むギアに切り替えるためには(おそらく意図的にそう設計されているのだが)ボタンを深く押し込む必要がある。しかも、反応が従来のシフトレバーと比べて異様に遅い。筆者は日頃からボタン式トランスミッションが嫌っていたが、この件に関して4Cの設定が筆者の考えを変えさせることはなかった。

4Cの窮屈なキャビンもまた、我々が期待する快適性を妥協したものであることに疑問の余地はない。だが、筆者のような大柄なオランダ人が乗っても運転席に十分な余裕があると分かり、つい有頂天になってしまった(Autoblogのスタッフ達は、身長195cmの筆者が引き締まった4Cの室内でくつろげるかどうかについて喋っていた...みんな嫌いだ! )。ヘッドルーム(シート座面から天井まで)はハードトップを閉じたマツダ・ミアータよりも約25mm広い(約965mm)。とても簡単に4Cのキャビンに出たり入ったりできるだけでなく(ビデオで確認してほしい)、ヘルメットを被っていてもまったく問題なかった。平均身長よりも高い筆者が運転姿勢をとるにあたって唯一の問題だったのは、中央に配されたデジタル・スピードメーターとインフォメーション・ディスプレイ(非常に小さい)の上部10%が見えないことと、低いルーフによって視界が制限されてしまうことだ。



 
ただし、助手席側に座ると話は全く違ってくる。右側にある極めてワイドなカーボンファイバーのシルと極めて低いダッシュボードに邪魔されて、助手席に座っている間に筆者ができたのは、足を真っ直ぐに伸ばしてしっかりと捕まっていることだけだった。筆者(と筆者より背の高い人)は助手席のシートに体がハマるようにしなければならないが、この姿勢は、女性が公共の場所でディナーの席に着く時にスカートが短くタイト過ぎると気づいた姿によく似ていた。女性は、4Cに乗る際には服の選択に注意していただきたい。とりわけ4Cから降りる時は、パンツまたはロング丈のドレスがベストだ。これ以上は言わないでおこう。

やや失望を覚えるインテリアの装飾にさえも、1つとして筆者がこのアルファ ロメオを所有したくないと思わせるものはないと付け加えておくべきだろう。内装のプラスティックに少々不満は覚えても、素晴らしいステアリングや美しい外観の魅力はそれを補って余りある。心は自らが欲するものを求めるものだ。

この言葉は4Cの全体的な価値について論じるときにも、本質的な真理を突いている。試乗車価格の6万5,945ドル(約673万円)と最高出力が237hpであることを一瞥して「それならコルベットが買えるじゃないか!」とまくし立てるAutoblogの読者がいるだろうことに最後の1ドルまで賭けてもいい。もちろん彼らは正しいが、同時に全くの的外れでもある。6万ドル半ばという価格でアルファ ロメオは4Cが売れると信じているようだが、言うまでもなくそれだけの金額を出せば、部分的にはこのイタリア製クーペよりも"ベター"な他のスポーツカーが購入できる。はっきり言ってしまえば、BMW「M4」ポルシェ「ケイマンS」ジャガー「Fタイプ クーペ」、愛してやまないシボレー「コルベットC7」といったクルマは、パワーや実用性、価格、高級感といった点で優位にある。4Cは数字を気にする人たちからは評価されないだろう。



だが、4Cはピュアで複雑で美しいクルマを望む人を惹きつけるだろう。最高速度の数値や馬力戦争のランキングよりもハンドリング性能や感触を評価するドライバーたちだ。米国に割り当てられた500台限定の「4C ローンチエディション」と、すべてのオプション込みで6万9,695ドル(約711万円)というその価格は、希少なクルマやアイコンになるかもしれないクルマを探し求めるバイヤーを魅了する後押しとなるはずだ。また、それはアルファ ロメオの米国における壮大な復活計画がどれほどうまく実現するかにも掛かってくる。好みがうるさく、洞察力に優れ、独特のドライビングテイストを求める人にとって、このクルマとその皮膚の下に隠された素晴らしいテクノロジーはお買い得であるに違いない。それ以外の人が瞬きもせずにコルベットを買うのだ。

筆者が初めてダウンタウンを運転した時に証明されたように、非常にマゾ的な人は別として、誰にとっても日常運転に相応しいクルマというわけではない。しかし、思った通りにドライブできることはまさに魔法のようで(おそらく、明らかな欠陥を甘受することによってその長所はさらに輝きを増したのだろうが)、4Cは今日購入できる最高のスポーツカーの仲間入りに値するクルマだと思う。お帰り、アルファ ロメオ。4Cのようなクルマをもっと見せてください。

【基本情報】
エンジン:1.7リッター直列4気筒ターボ
パワー:最高出力237hp/最大トルク35.7kgm
トランスミッション:6速DCT
0-100km/h:4.5秒
最高速度:258km/h
駆動方式:後輪駆動
車両重量:1,118kg
座席数:2
荷室容量:110.4ℓ
燃費:市街地 24mpg(約10.2km/ℓ)、高速 34mpg(約14.4km/ℓ)
ベース価格:5万3,900ドル(約550万円)(日本販売価格783万円)
試乗車価格:6万5,945ドル(約673万円)

By Seyth Miersma
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:日下部博一

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