私がパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(以後パイククスと略)の取材をするようになって5年。標高4301mの高山が舞台のこのレースはかなりハードであり、毎年、行くか行かぬか、一瞬悩む。けれど終わってみると、今年も行ってよかったと思うのだ。高山病の心配や天候でどんなにツライ目に遭っても、帰るころにはこの山が愛おしいとすら思えてしまうから不思議だ。山の天気は変わりやすく猛烈に寒いけれど、景色は素晴らしく美しい。

 参加者はプロよりも圧倒的に一般のレース経験者やクルマ好きが多く、そういう方たちがこの山のゴールである山頂を目指す想いに触れることができるのは、同じモータースポーツ好きとしてはとても貴重。プロの中では1985年にミシェル・ムートンがアウディ・クワトロで、また昨年はセバスチャン・ローブプジョー208T16で総合優勝するなど、欧州メーカーにとっても制覇する価値のある山と一目置かれているのは間違いない。ただしWRC集団が軽い気持ちでやって来ても、痛い目に遭うこともあり、それゆえにプロたちをも魅了するのかもしれない。が、なんでこんな過酷なレースに世界からやって来るんだろうって思う。
 F1だって日本のスーパーGTだってコスト削減のために練習走行のほか諸々を縮小しているというのに、このレースは一週間、"7日間も"かけて行われるのだ。

( 車検の様子 )
Pikes Peak International Hillclimb Pikes Peak International Hillclimb
( エレクトリックマシンは走行中にサイレンを鳴らさなければいけないレギュレーションがある。その音の大きさも決まっていて、車検では音量も測る )

月曜日の車検に始まり、火曜日は希望参加の練習走行。水曜日から金曜日は公式練習。土曜日にはスタート地点にマシンを運び、日曜日がいよいよレースというスケジュール。

( コース図 )
Pikes Peak International Hillclimb
で、何がハードかと言えば。このレースはパイクスピーク・フリーウエイという有料道路を使っているため、練習走行は一般観光客がやってくる前の早朝。

( ミドルセクションの夜明け:薄暗いうちから走行がスタート )

ゲートオープンは午前3時半。走行開始は日の出頃のまだ薄暗い5時半から始まる。参考までに標高4301mの山頂まで単に上るための道路をスペンサー・ローズという人が1915年に造ろうと思わなければ、このレースは生まれていなかった。第一回のレースは1916年に始まっている。ダートだった道路は徐々に舗装化が進み、2012年に完全舗装(山頂のPは未だに未舗装)。また10年以上参戦を続けているモンスター田嶋は、総合6連勝を果たした経験やその走りと風貌、人柄により日本ではもちろん、地元でも大人気ドライバーの一人。地元コロラドスプリングス空港の職員たちからも「モンスター今年も頑張って!」なんて言われちゃうほどなのだ。
 練習走行のやり方も独特。約20kmのコースをボトム、ミドル、アッパー(トップ)のセクションに三分割。そして参加車両をバイク1グループ、四輪2グループの計3グループに分け、毎日違うパートを走る。走行方法はヒルクライムゆえコースの下から順番に走行しゴール地点で待機。そして全員が走り終えると各セクションのスタート地点に一斉に移動...というのを繰り返す。


( ミドルセクションのゴール地点で全てのマシンが上がってくるのを待つマシンたち。その後、一斉にスタート地点に戻り再び走行...を繰り返す。)

( トップセクション:山頂で全車が上がってくるのを待つマシンたち )

( トップセクション:走行を終え、スタート地点に戻るマシンたち )


セクションによって走行距離が異なるため走行本数は3本から7-8本というところか。ただし、マシントラブによるストップルやクラッシュ、滑落などによって走行が中断すると走行本数が減ってしまう場合もある。
ちなみに予選順位はボトムセクションの走行タイムを採用。改めてタイムアタックをするわけではないので、本番に備えたマシン調整を行いつつ、その走行タイムが採用されるのだ。単に個人の趣味のために参加しているならここでタイムアタックも楽しめるだろう。けれどメーカーの威信を背負っていたり、総合優勝を狙って緻密なテストプランを立てている方々が目を向けているのは日曜日のレース本番。このセクションだけを速く走るセッティングをしても意味がないのだ。

( 明け方の準備 三菱チームの場合 )

例えば今年の三菱チームの監督兼ドライバーの増岡 浩さんはボトムセクションの走行(予選)前日、「予選順位も大事だけど、ボトムセクションを走れる貴重な時間だからタイムにこだわるというよりも本番に向けた調整を優先しないとね」とコメントしている。

( 明け方の準備 あるバイクチームの様子 )

パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム2013 プジョー208T16を駆るセバスチャン・ローブ選手の挑戦をハイライトでご覧頂きたい。

パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム1985年 Audi quattro S1 ミシェル・ムートン選手

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