【試乗記】2015年型マクラーレン「650S スパイダー」(ビデオ付)
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全てが規格外で高額なマクラーレンのハイブリッド・スーパーカー「P1」に試乗し、テストトラックでの走行を楽しんだことがつい先日のことのように思える。今回、筆者はまたマクラーレン車に乗る機会を与えられた。南スペインのアスカリ・レースリゾートに来ており、これからいまやマクラーレンにとって最重要モデルとなった「650S」に試乗する。「650S クーペ」は26万5,500ドル(約2,700万円)、「650S スパイダー」が28万0,225ドル(約2,860万円)という価格が付けられているが、今回はオープントップの650S スパイダーに焦点を当てることにする。なぜなら、北米市場における650Sの販売台数のうち、約90パーセントをスパイダーが占めていること、そして何より、スパイダーの方が会話のネタとして最高だからだ。あなたがこの試乗記を読んでいる間にも、最初の顧客たちに向けて納車が行われている真っ最中だろう。

650Sは本質的に「MP4-12C」をベースにしているが、MP4-12Cに比べるとあらゆる点が改良され、入念に洗練されている。このマクラーレンの新型モデルの外観はどちらかと言うと「P1」に似ているが、価格で言えばP1より75万ドル(約7,650万円)以上も安い。実はマクラーレンは650Sの生産台数を増やすために、12Cの生産終了を発表しており、噂されているようなポルシェ「911」アストンマーティン「V8 ヴァンテージ」のライバルとなるニュー・モデルが登場するまでは、マクラーレンのラインアップの中で"エントリー・レベル"を受け持つ。

新しい650Sには期待したい重要な点がいくつかあった。それは12Cよりもパワーとトルクが優っていること、「H(ハンドリング)」と「P(パワートレイン)」の3つのモードからどれを選択しても、乗り心地とハンドリングのバランスがより高度に調整されていること、V8ツインターボのエキゾーストノートがより特徴的で派手さを増していること、そして平凡に見えたデザインが改善されていること、などだ。

今回の試乗レポートではこの全てについて取り上げているので、ぜひ最後までお読みいただきたい。




一見すると、650Sのシャシーとパワートレインは12Cとほとんど同じものに思われるが、確かな変化も存在する。英リカルド社によって組み立てられた3.8リッターのドライサンプ式「M838T」型V8ツインターボ・エンジンの上部は、より高い熱効率を実現し、ムービング・パーツのフリクションの低減を目的に設計し直された。これらの改良により、ほんのわずかではあるが燃費が向上し、CO2排出量も削減された。同様に、グラジアーノ製7速SSG(シームレス・シフト・ギアボックス)も同じユニットを搭載しているものの、公道とサーキットいずれの走行時にもより滑らかなシフトチェンジが行えるようにソフトウェアが書き換えられた。

12Cはピレリ製の「Pゼロ」タイヤを標準装備し、オプションとしてよりハイパフォーマンスな「Pゼロ・コルサ」が用意されていたが、650Sはレーシングタイプのコンパウンドが使用されたその「Pゼロ・コルサ」を標準で装着している。ブレーキに関しても同様のアップグレードが施され、12Cではオプションだった曙ブレーキ製カーボンセラミックブレーキが、650Sでは標準装備となっている。



650Sは、P1に似た新しいフロントエンドがより多くの空気を取り入れ、150mph(約241km/h)時のダウンフォースは12Cに比べて40パーセント増加した。フロント両サイドの大きくなったエンジン冷却用エアインテークは、見ても分かるようにカーボンファイバー製となっている(我々の試乗車には、エクステリアの細部までカーボンファイバー製となるオプションが装着されていた)。向上したダウンフォースによって、より速いラップタイムが期待できるが、これを補うために「プロアクティブ・シャシー・コントロール」と呼ばれるサスペンションが搭載されている。

見直されたサスペンションは、より大きなピストンを組み込んだ大径のダンパーが採用され、油圧で制御されるダンパーはアキュムレーターと連結している(このセットアップはP1と似ている)。その結果、あらゆる状況下において、全てのダイナミックな動きをより正確にコントロールできる。さらに回頭性を向上させるために、リアのスプリング・レートが高められ(12Cを運転していると、ハードウェアが機能していると分かっていても時々ばねがソフトに感じることがあった)、ドライバーはより確かなフィードバックを明瞭に感じられる。これらの要素によって、全てのコーナーや姿勢変化の際に信頼感が増した。




我々はアスカリ・レースリゾートの全長5.4kmのコースで、650Sを思いっきり走らせた。以前、特にサーキットで12Cを走らせた時に感じたことだが、確かに12Cは常に手際よく有能に仕事をこなすのだが、秀でた才能はあまり感じられず、フィードバックは少し正確さに欠けていた。12Cに搭載されたプロアクティブ・シャシー・コントロールの効果は抜群だったが、結果的にドライバーはどれくらいのスピードが出ているのか、また一体どこまでのスピードが出せるのか、そのあたりの感覚をうまく掴むことができなかった。またダンパーやスプリング、ステアリングもその動きがあまり伝わってこないという印象を受けた。どれも良い働きをしたとは思うが、例えばフェラーリ「458 イタリア」ポルシェ「911 GT3」が決まってそうだったように、12Cももっと我々を驚かせるような、先進的な歯切れの良さや、ドライバーの操作にダイレクトに応えてくれるシャシーが必要だったように感じた。

650Sはそれらのマイナス要素を補って余りある。最高出力は(モデル名が表す通り)650ps、最大トルクは69.1kgm(12Cに比べて13%アップ)に引き上げられたことや、前述のテクニカルなアップグレードによって、12Cがフェラーリでいえば「458 イタリア」なら、まさに650Sは「458 スペチアーレ」に相当する。パワートレインとハンドリングの設定を「ノーマル」「スポーツ」「トラック」のいずれのモードに切り替えても、シャシーとギアシフトは望み通りの働きをしてくれる。我々は曲がりくねった公道と数えきれないほど周回したアスカリ・レースリゾートのコースで、3つ全てのモードを試してみたが、あらゆる点においてより速くかつスムーズになり、フィードバックも向上していた。そして最も重要なことは、650Sではこれらの改善された点が単なる技術上の話としてではなく、ドライバーが体験的にはっきりと感じられるということだ。電動油圧式パワーステアリングのターンイン時におけるレスポンスは飛躍的に改善された。また12Cに採用されたときからすでに非常に優れていた「ブレーキステアシステム」(コーナリング時に、内側のリヤタイヤにブレーキをかけてアンダーステアを抑制する)も引き続き搭載されている。



強度を増したピレリ「Pゼロ・コルサ」タイヤや、F1並みのクオリティーを誇るカーボンセラミックブレーキによってもたらされた変化は絶賛に値する。この理想的なドライ・コンディションのもと、サーキットで650Sを走らせる時間がもっとあれば、これらの並外れた装備についてもっと熱心に検証したかったところだ。他にも、ブレーキのソフトウェアが見直されたことで、ペダルを踏んだときの感触と反応がよりリニアになり、オンとオフしかないスイッチのような感覚は減った。

パワートレインのモードを「トラック」に設定した状態で、エンジンの回転数が5000rpm以上に達しているとき、スロットルを全開にしてシフトアップすると、次のギアにシフトされる際にエンジンの回転数が高く維持され、よりトルクが大きく保たれるため、変速時に加速が鈍らない。この機能は「イナーシャ・プッシュ」と呼ばれ、ランボルギーニ「ウラカン」にも同様なものが搭載されている。そしてこれをアスカリ・レースリゾートのコースにある主要な3つのストレートで試してみると、まるでP1に搭載されている、電気モーターのアシストによって長い直線で圧倒的なパフォーマンスを発揮する「IPAS」ボタンと似たような感覚が得られ、実に感動した。もっとも、650Sにはその種のボタンが装備されているわけではない。また、高速時に機能するDRS(ドラッグ・リダクション・システム)に関しても同じことが言える。このシステムはリアのエアブレーキがダウンフォースを発生させることでもたらされるドラッグ(抗力)を低減させる機能だが、650Sのそれは扱いやすく、P1に搭載されていた技術をより低予算で応用している。


筆者は、デザイン・ディレクターのフランク・ステファンソン氏と彼のチームが手がけた、P1を思わせるアップデートされた650Sのスタイリングが気に入っている。12Cは上品だが、特にフロント部分のデザインに関して言えばこれといった特徴があまりない。一方650Sのスタイリングには個性が感じられ、実に目を引く。また、ビデオでも見ることができるが、ルーフが開閉する様子を眺めるのも楽しい。

650Sのキャビンは、生産期間わずか3年と"短命"に終わった12Cに比べ、顧客の好みを反映できるオプションの適用範囲が拡大している。エクステリアのオプションの数も増え、ボディカラーには4つの新色が特別に用意されている。今回の試乗車にペイントされている特徴的なオレンジ色は、イタリアのブラッドオレンジの品種「タロッコ種」にちなんで「タロッコオレンジ」と名付けられた。他にもストームグレイ、オーロラブルー、マンティスグリーンの3つが新色として加わった。何よりも我々の試乗車に装備されていたオプションのウルトラスエード表皮のレーシング・シートは、ちょっとの間あなたにダイエットを決意させるだろう。




確かに座席はキツイのだが、650Sの優れたパフォーマンスを肌で知るにはピッタリのものだ。マクラーレンが発表した0-100km/h加速3.0秒という数字は、若干控え目ではないかと思える。最高速度は333km/hに達する。

短命に終わった12Cは、そのエキゾースト・サウンドに対して残念なコメントが数えきれないほど浴びせられた。その進化バージョンとも言える650Sのエキゾースト・ノートは、良くはなっているのだが、外で聞くとものすごくうるさく、車内では静かすぎる。今回のスパイダーでさえ、ルーフを開け、リアウィンドウを下げた状態にしても、フェラーリが奏でるオペラのような感動的なサウンドには及ばない。だが公平に言って、マクラーレンはこの点に関して他社と張り合おうとは思っていないだろう。まあ、少なくとも同社はシフトアップ時に2気筒の点火を瞬間的にカットする「シリンダー・カット」技術を開発したので、スペインの村まで陽気で傲慢なエンジン音をかき鳴らしながらひとっ走りできる。



スパイダーのルーフシステムはシンプルで、開閉に要する時間は17秒。「MP4-12C スパイダー」から何も変わっていない。もっとも、市場には様々なメカニズムを持つルーフシステムが存在するが、我々は今でもマクラーレンのシステムが一番だと思っている。裕福なオーナーが650Sで優雅に外出する際、ルーフの開閉は19mph(30km/h)以下の車速なら走行中でも動作可能だ。ああ、ゆっくりと走りながらゆっくりとルーフが開くこの喜び...。

MP4-12C スパイダー同様、650S スパイダーのねじり剛性および曲げ剛性はクーペと全く同じで、アルミニウム製サブフレームとカーボンファイバー製モノセルで構成されるシャシーは優れた強度を誇る。もしサーキットで乗り回したいとお考えでも、わざわざクーペを選ばなければならない理由はなさそうだ。

650Sは、数年前に世界中の話題をさらった12Cを総合的に見直したモデルといえる。様々な変化がはっきりと認められたし、顧客も認めることだろう。それはともかく、米国におけるマクラーレンの顧客の9割、つまりスパイダーを選ぶ人々のチョイスは決して間違っていない。
【基本情報】
エンジン: 3.8リッターV型8気筒ツインターボ
パワー: 最高出力650ps / 最大トルク69.1kgm
トランスミッション: 7速DCT
0-100km/h: 3秒
最高速度: 333km/h
駆動方式: 後輪駆動
乾燥重量: 1330kg
座席数: 2
荷室容量: 195ℓ
燃費(推定、EUサイクル): 20mpg(8.5 km/ℓ)<複合モード>
米国におけるベース価格: 28万225ドル(約2,852万円)から
日本における販売価格:3,400万円(消費税込み)

By Matt Davis
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:日下部 博一

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