【試乗記】2014年型ポルシェ「911タルガ」
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筆者は電動油圧式ルーフパネルが開閉するのをこの24時間以内に73回ほど見たが、その複雑な動きは何度見ても興味深く、飽きることがなかった。グリーンハウス全体が持ち上がり、まるでスライドパズルのようにコンポーネントを配列し直すと、スムーズに組み立て直して(ルーフパネルがなくなる)、よく知られた911のボディスタイルを正確に再形成する。これほど難解なルーフシステムの開発をやってのけるのはドイツのメーカー、もっと具体的に言えばポルシェぐらいのものだろうと筆者は結論付けた。

ポルシェの新型「911タルガ」は、1965年に登場した911タルガをほぼ完璧に近い形で現代版にアレンジしたモデル。このセミコンバーチブルのボディスタイルは、50年ほど前に生産が始まった911シリーズ全体の販売台数の中で約13%の割合を占める。タルガの初期モデルではルーフ開閉が完全に手動のため、当時のドライバーはルーフを自らの肉体を使って着脱する必要があった。新型タルガのルーフ開閉は全自動で、ドライバーが室内に設置されたスイッチをたった19秒間押している間に魅力的なショーが始まり、変形が完了する。

今年初めに開催された北米国際自動車ショーで新型タルガがお披露目された際、筆者は同車の複雑なルーフの開閉について学び、とても好奇心をそそられた。そのため、地球上を3分の1ほど移動して試乗のために南イタリアへ向かいながら、筆者はその地中海性気候によって、現代版としてよみがえったポルシェの象徴的なスポーツカーのことがもう少し明らかなるだろうと期待した。




ポルシェが着脱式の不透明なルーフを採用した伝統的なタルガモデルを提供していたのは、1992年の964型プラットフォームが最後だった。後続となる993型、996型、997型のタルガ・モデルにはリアウィンドウの下に格納できる開閉式ガラスルーフが搭載されており、ルーフを閉じた状態でもドライバーは空を楽しめ、また後方の視界が歪んでイライラすることのない気の利いたアレンジとなっていた。新しい991型ではすでにクーペモデルでリアウィンドウ上方にスライドさせる大きなパノラマガラスルーフが提供されていたので、ポルシェが再び往年のタルガトップを市場に復活させることにしたのは非常に興味深い。

100mほど離れたところからあまり詳しくない人が見ても、サイドのデザインから新型911タルガを見分けることが出来るだろう。このポルシェには、"タルガ・バー"と呼ばれる太くて特徴的な明るいアルミニウム製のBピラーが採用されている。また、斬新な湾曲したワンピースのリアガラスを持っており、リアから近づいて見るとCピラーがないことにすぐ気付くだろう。注意深く観察した人なら、わずかにワイドになったリアフェンダーや、広くなったタイヤの接地面、左右のテールランプとつながる機能的な細いレッドライトバー、ホイールを結ぶ両サイドのブラックのシルパネル、フロントエンド左右の内側に設けられたユニークなインサートなどに気付くかも知れない。これらの特徴の多くは、構造を共有する「911カレラ4 カブリオレ」から来ている。

エクステリアはレトロ調を生き生きとよみがえらせた一方で、タルガのインテリアは実質的にカブリオレと変わらない。例えばタルガルーフを操作する小さな2つのスイッチは、カブリオレと同様にセンターコンソールのドライバーのヒジ下にちょうどくる位置に設置されている。それ以外に他の911と異なるところはない。ただ、頭上を見上げれば数インチ離れたところに布で覆われた長方形のルーフパネルがある。それがタルガであることを示す全てだ。




ポルシェの以前の発表によれば、911タルガには「911タルガ4」と「911タルガ4S」の2つのモデルが提供されるという。911タルガ4のベース価格は輸送料込みで10万2,595ドル(約1,045万円:日本価格はPDK仕様が税込み1,500万円)で、911タルガ4Sは11万7,195ドル(約1,194万円:日本価格は同じくPDK仕様で税込み1,800万円)。それぞれに用意されるパワートレインを見てみると、911タルガ4には最高出力350ps、最大トルク39.8kgmを発生する3.4リッター水平対向6気筒エンジンが積まれ、911タルガ4S(ギャラリーの画像)では最高出力400ps、最大トルク44.9kgmのさらに大きな3.8リッターの水平対向6気筒エンジンが搭載されている。駆動方式は4輪駆動のみだが、トランスミッションは7速マニュアルと7速PDKから選ぶことができる(今のところ、すべて明るいアルミニウム製のタルガ・バーとブラックのファブリックルーフパネルの組み合わせのみとなるが、顧客の要望があれば将来的には他の仕上げも用意されるに違いない)。

ポルシェの価格構成をざっと見てみると、911タルガ4は「911カレラ4クーペ」よりも1万570ドル(約107万円:日本では122万円)高いが、911カレラ4カブリオレよりは1,330ドル(約13万円:日本では26万円)安くなっている。カブリオレと部品をいくつか共有することで、兄弟車よりも低価格に抑えることが可能となった。

面白いことに、新型タルガの開発期間は長く、試作モデルが作られたのは997型だったが、実際に市販化されたのは991型だった。

今回の試乗における筆者の第一目的は、911タルガの圧倒的な加速性能ではなく、タルガ・ルーフについてレビューすることだったので、待ち合わせの場所に駐車されていたPDKを装備する6台の911タルガ4Sに気を取られることはなかった。筆者の足は最もパワフルなモデルへは向かわず、ガーズレッドのスタンダードな911タルガ4へとまっしぐらに進んだ。同車に装備されていた伝統的なマニュアル・トランスミッションは、「911GT3」や「911ターボ」ではもう用意されない今となっては特にレアになってきている。



好奇心をかき立てるルーフと戯れる前に、筆者は911タルガ4をざっと見て回った。外から見ると、タルガのフロントウィンドウはクーペやカブリオレと変わらないが、上端左右のわずかなカーブがBピラーの厚みを強調し、このモデル独自のデザインになっている。ほとんどの人は当てはまらないと思うが、身長が190cm近くある筆者は運転席を後ろの方までスライドさせなければならなかったので、そうするとピラーが視界の妨げになった。だが、ありがたいことに2つのサイドミラーと室内のリアビューミラーがその不足分を補ってくれた。

クーペのCピラーや、転倒時の保護としてカブリオレに内蔵されているポップアップ式ロールバーの代わりにタルガ・バーを採用したことで、タルガの構造は当然のことながら頑丈になった。タルガ・バーの内側にはスチール製のロールバーが埋めこまれ、フロアパンの両サイドまで届いている。外側はペイントされたアルミダイカストで仕上げられ、内側にはソフトなアルカンターラが張られている。タルガ・バーの両サイドに見られる3本のフィンには機能的な意味がなく、オリジナルの1965年型タルガに敬意を表すものだ。

ポルシェのエンジニアたちはルーフを2つの可動式コンポーネントに分けた。大きい方はリアガラスとその周囲のデッキリッドで、複合的な曲線に成型されたラミネート加工の薄いセーフティガラスと、ボディカラーにペイントされたアルミニウム製のエプロンから成る。もう1つのピースは2つのマグネシウム製パーツで構成されるルーフパネルで、ファブリック素材で覆われており、格納される際にはZ型に折りたたまれる(ルーフパネルのフロント部分はカブリオレのルーフで使用されている電子ロック機構をほぼそのまま転用しているので見覚えがあるはずだ)。前述のコンポーネントに加え、タルガ・バーの両サイドに設置されたケーブル駆動のフラップが、ルーフのアームを通過させるために開く構造になっている。




開閉が全自動のタルガルーフは(カブリオレと同様に)1個の油圧ポンプによって作動するが、操作が行えるのは停止中のみ。ポルシェによれば、ルーフを開閉する際には熱線入りリアウィンドウパネルが車体後部より後ろにはみ出して傾斜するので(標準装備のパークアシストシステムが車体の後ろをモニターし、障害物が場所をふさいでいれば操作を阻止する)、ブレーキランプが遮られるため、走行中に作動させると違法となる可能性があるからだという。同社はさらに、リアウィンドウパネルは36kg以上の重さがあるため、特定の運転状況下で高く持ち上げられて後方に傾斜した際、不安定になるとも説明している。安全を期するに越したことはないだろう。

ルーフを開閉するにはクルマをいったん停止させるだけでなく、開閉が終了するまでルーフボタンを指で押し続ける必要がある。その時間はほんの20秒以下だ(このプロセスはカブリオレのファブリックルーフを上げ下げすより約30%遅いが、タルガのパーツの方が大きくて重たいように思える)。電動油圧システムを作動してルーフを開閉させることは何回でも続けて可能だ。オーナーが望めば、次から次へと連続して開閉することができるので、地元のカーズ・アンド・コーヒーで見せびらかすのに一役買うだろう。

ルーフパネルをしまい込むと、地中海の陽光が筆者の肩に降り注ぐ。ストロークの短いシフトレバーを1速に入れ、イタリアの郊外へ向けて走り出した。




スタンダードの911タルガ4は、Sモデルのような低回転域のパンチ力はないが、それでもエンジンは全ての回転域で活発な加速力を発生し続けた。ポルシェによれば、911タルガ4の車両重量は1,540kgで 、911カレラ4クーペより110kgほど重く、911カレラ4カブリオレと比べるとほんの40kgほど重い。3種類のボディスタイルの中で一番重くなっているため、当然のことながら 0-100km/hは5秒と同車より軽い兄弟車たちよりも少し遅い(もう少しスピードが欲しい方は0-100km/hまで4.6秒で到達する「911タルガ4S」をチェックした方がいいだろう)。

現代のポルシェ911ほど運転が楽しいクルマは貴重だ。このリアエンジンのスポーツカーは、ステアリング、ブレーキ、アクセルの操作に対し、まるでテレパシーが通じるように忠実かつ瞬時に反応してくれる。ポルシェのエンジニアたちは注意深く軽量な素材を選択し、重量が増したタルガの重心を低く抑えることに尽力したため、ハンドリングが悪化するようなことはなかった。

タルガルーフがドライビング体験を向上させたという点には、多くの人が賛同してくれるだろう。乗員はコンバーティブルで時々経験するハリケーンのような強風を受けずに、木々の花が舞い散る田舎道の匂いや、水平対向エンジンの心地良いエグゾーストノートといったオープンエアーの特典を楽しむことができる。だが、タルガが強風とは完全に無縁とは期待しないことだ。速度が80km/h以上になると、乗員の頭の後ろにある明るいシルバーのタルガ・バーに吹き付けられた無視できないほどの風が、室内に巻き込んでくる。デートのときにルーフを開けても、髪がくしゃくしゃに乱れたり、室内で風が吹き荒れたりすることはなく、強めのそよ風が吹く程度だが、やや会話はしづらくなるだろう。



1960年代の911タルガはウィンドシールドの傾斜角が少なかったので、風が室内のはるか上に吹き込んでいたが、新型モデルで空気抵抗の少ないタルガルーフを開発するのは当時より困難を伴った。加えて、"ジャンプ"(ウィンドシールドの上端とタルガ・バーまでの距離)が開いたことが、さらにこの問題を難しくしている。吹き付ける風は避けられないが、荒れ狂う風を減らすために、エンジニアたちは2段階に位置が調整できる、手動のウィンドブロッカーをウィンドシールドヘッダ部のトップに設置した。高い位置にすると風の巻き込みを減らす効果は高いが、小さなプラスチックのウィングでちょうど乱気流が起きるため風切り音が大きくなる。そのため初期設定の低い位置のままにしておくのがベストだろう。

わずかに増えた車両重量に対応するため、タルガではフロントのマクファーソンストラットとリアのマルチリンク・サスペンションに調整が施されている。だが、クーペやカブリオレと同程度のダンピングを目指すのではなく、オールシーズンに対応できるグランドツアラーとしての役割に合うように、タルガはもう少し従順な乗り味にチューニングされている。南イタリアの道路はC級も同然で、ピレリの「P Zero」タイヤ(オプションのタイヤでフロントが245/35ZR20、リアが305/30ZR20)で走った路面は傷んでおり、所々に深い轍も残っていた。それでもタルガの走りは驚くほど快適だった。オプション装備のポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメントシステム(PASM)を最もソフトな設定にしておけば、酷くでこぼこした区間においてさえ、荒い衝撃を充分にいなすことができると証明してみせた。

ポルシェのエンジニアは、タルガのボディ剛性について数えきれない質問に答えた後、同車がベースモデルのカブリオレより約10%剛性が向上していることを明らかにした(クーペはカブリオレより2倍の剛性があるそうだ)。また、ルーフパネルはシャシーの構造部品ではないため、開けていても閉めていてもボディ剛性は変わらないという。これはサスペンション設定の改良で対処したそうだ。とにかく、轍で跳ねたり、踏切に突っ込んだり、道路の穴に驚かされたりといったアクシデントに見舞われた時、ルーフをどちらの形状にしていようと車体に大きな影響はなさそうだ。だが、他のジャーナリストたちの中には、ルーフを閉じた状態の時にウィンドシールドのフレームとタルガ・パネルの間にあるガスケットがキーキーと音を立てることを指摘していた者もいたので、ポルシェは市販モデルが組み立てラインから出荷される前にこの点について対処しておく必要がある。



オープンルーフカーの試乗では、様々な天候に対応できているかを調べることも重要だが、それには母なる自然の力が必要だ。ちょうど雲っている空から大きな雨粒が降ってきたので、筆者は急いでタルガを道路の脇に寄せてルーフを閉じた。するとクーペとなったタルガは雨をしっかりと遮断した。再び走り出すと室内は静かだった。私の記憶によれば、室内の静粛性はクーペの方が上だったが(タイヤの音は大きかったが)ソフトトップのコンバーティブルにしては感動的な静かさであるカブリオレと同等の騒音レベルだった。

ポルシェによれば、911タルガがショールームに並ぶのは6月の終わり頃になるそうだ。筆者はこの新しいモデルと丸一日過ごして、同車が希少モデルになることはないだろうと確信した。タルガはエンスージアストが選ぶクーペのように、スポーティな走りだけを追求したクルマではないが、そのデザインは新鮮で、路上で人目を引くクルマだ。ユニークで魅力的なルーフメカニズムと、すべての天候に対応できる点は、オープンルーフの解決策を求めていた裕福な顧客の心を確実にとらえるだろう。同車が大成功しても不思議ではない。

長年の間で筆者が学んだことがあるとすれば、ポルシェというメーカーは中途半端なことはしないということだ。エントリーレベルの「ボクスター」から、フラグシップとなるハイブリッドカー「918スパイダー」にいたるすべてのモデルで、設計にどんな妥協もみられない。利用シーンや顧客層が明らかに狭そうなモデルにおいても、それは変わらない。ポルシェの過去モデルを讃えつつ、細部にまでこだわり現代版としてよみがえったこの2014年型911タルガ4にも同じことが言える。

【基本情報】
エンジン: 3.4リッター水平対向6気筒
パワー:最高出力350ps/最大トルク39.8kgm
トランスミッション:7速MT
0-60mph(推定):5.0秒
最高速度:280km/h
駆動方式:4輪駆動
車体重量:1,540kg
座席数:2+2
燃費:市街地18mpg(約7.6km/ℓ)、高速道路26mpg(約11.0 km/ℓ)
ベース価格:10万2595ドル(約1,045万円)

By Michael Harley
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:日下部 博一

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