【試乗記】 新型フェラーリ「458 スペチアーレ」(ビデオ付)
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V8エンジンをリアに搭載したフェラーリのクーペが、今後この「スペチアーレ」エディションを超えることができるかどうか、筆者には分からない。「458 イタリア」や「458 スパイダー」を晴れた日に広々とした道路やサーキットで走らせたことがある人にとって、この2台は心にとても深く刻まれている。筆者も2011年に初めて458 スパイダーを運転した時に味わったあまりの陶酔感に、これに勝るクルマはないと確信していた。だが、どうやらその考えを変えなくてはならないようだ。

フェラーリのような企業は、既に出来上がっている優秀なベースカーに"性能"という金粉を振りかけるだけでいいという羨ましい立場にいる。つまり、ベースカーを少しばかり改良してもう1つのモデルを生み出し、再び人々を虜にすればいいのだ。例えば、伝説的な「エンツォ」は2002年、フェラーリのフィオラノ・テストコースで1.9マイル(約3km)のトラックを1分24秒9で疾走し、自己ベストを記録した。この458 スペチアーレはエンツォよりもエンジンのシリンダーが4本少なく、車両重量が上回っているにもかかわらず、フィオラノのラップタイムは1分23秒5とエンツォに勝る。フィオラノを走っていて、「ほんの少しでも運転操作の判断を誤れば、死んでしまうかも」と筆者が思ったのは、1度ではない。

まず初めにほぼ全てがアルミ製の458 スペチアーレを眺めてみよう。新たに加えられたエッジとフラップには、全てに目的がある。空気抵抗係数(CD値)が0.35と見事に抑えられている一方で、フロントとリアのダウンフォースは高められている。これは、重要なアクティブ・エアロダイナミックスの採用が大きく貢献しており、最上位モデルの「ラ フェラーリ」でもさらに拡大された形で見られるという。950hpというパワーを持つラ フェラーリの可動式の整流板が超音速マシンを路面に押しつける手助けをするのに対して、597hpの458 スペチアーレでは、空気抵抗を低減させながらもスーパースポーツカーが駆け回るのに十分なダウンフォースを発生させる。筆者の目には、この458 スペチアーレは大きなロータス「エヴォーラS」のようなクルマよりも好ましく見える。




筆者が午後のトラック・セッションを終えると、熱心な顔つきのフェラーリ担当者が「アクティブ・エアロダイナミクスが作動したのを感じましたか?」と聞いてきた。筆者がきっぱりと否定すると、彼は少々困惑していた。チンスポイラーの真ん中、または大きなリア・ディフューザーの中で可動式フラップが役目を果たしていることに気づいていたら、筆者はがっかりしただろう。だがドライバーからすれば、あからさまにアクティブ・エアロダイナミクスが効いていると分かることは全くなかったのだ。スペチアーレはエアロダイナミクスの最適化を通じて、ドライバーに素晴らしく刺激的な体験をさせる仕事を静かに遂行する。アクティブ・エアロダイナミクスのおかげで、ドライバーはコーナーの進入時や旋回中に、エンツォだけでなく、2007年に発表された「430 スクーデリア」でさえも凌ぐ速度を体感できる。

2009年に458 イタリアの生産が開始されて以来、我々が慣れ親しんできたテクノロジー、つまりSCM磁性流体ダンパー、7速「F1」デュアルクラッチ・ギアボックス、「F1-Trac」トラクション・コントロール、「E-diff」電子制御ロッキング・ディファレンシャル、CCMカーボン・セラミック・ブレーキシステムは全てその能力が新たなレベルに引き上げられている。だが、本当に新しい取り組みはここからだ。アダプティブ・エアロダイナミクスがフロントとリアに加わった上、「サイドスリップ・アングル・コントロール(SSC)」と呼ばれる装置が搭載されている。基本的にSSCはトルク・ベクタリングとトラクション・コントロールを統合させた非常に高度に進化したソフトウェアをベースにしており、限界域に近づくとシャシー全体が自ら瞬時に対応する。その効果は筆者にも明らかだった。スロットルから右足を上げるリスクをあまり冒さずに、タイトなコーナーで常識的かつコントロールされたドリフトを維持できる(ただし、ステアリング・ホイール上の「マネッティーノ」ダイヤルで「Race(レース)」または「CT OFF(トラクション・コントロール・オフ)」モードに設定しているときだけだが)。




フェラーリの発表によると、458 スペチアーレは0-60mphを2.9秒で駆け抜けるという(日本の公式HPでは0-100km/hが3.0秒)。これに寄与しているのは、車両重量が458 イタリアよりも約200ポンド(約90kg)軽くなり、3,075ポンド(約1,395kg)になったことだ。この軽量なスペチアーレは、「FL」と呼ばれるフェラーリ「F136」型エンジンの最新バージョンで推し進められる。この直噴V8ユニットは、最高出力が458 イタリアよりも35hp高められている。最大トルクは458 イタリアと同じ55.1kgmだが、14:1という圧縮比(458 イタリアは12.5:1)のおかげで、広範囲で高トルクを発生する。この全てが高速旋回時の挙動を良くしているだけでなく、コーナーから直線へさらに俊敏に立ち上がることも可能にしている。

リア・エンドからまっすぐに突き出ている大きなツイン・エグゾーストは、このフェラーリにシリアスなトーンのエグゾースト・サウンドをもたらしている。ハードコアなレースカーのサウンドと同じだが、フラットプレーンのクランクシャフトを採用する通常のフェラーリV8エンジンから聞こえる単なる歓喜の雄叫びとは違う。事実、イタリアやスパイダーよりもハードな仕事をするクルマとして設計されているので、こう感じるのも当然だ。

458 スペチアーレの顧客の15%は定期的にサーキットを走る愛好家だと予想される。購入者の約70%はフェラーリ車のリピーターで、そのうち20%は430 スクーデリアと「360 チャレンジ・ストラダーレ」のどちらかもしくはその両方を所有している、あるいは所有していたことがある人だろう。筆者の経験と勘から、かつて生産されたこの2つのスペシャル・エディションと458 スペチアーレを比較すると、率直に言ってスペチアーレは完全に新次元のマシンであると言える。




改良されたカーボン・セラミック・ブレーキとF1デュアルクラッチ・ギアボックスの歯切れがよいシフトは458 スペチアーレの全体像を完成させている。シリコンの含有率が新しくなったセラミック・ディスクは、458 イタリアと直径は同じだが、制動距離は8%短縮され、耐久性は2~3倍延びている。キャリパーですら軽量化と放熱性向上のために全体的に穴が開けられている。マネッティーノ・ダイヤルを一番アグレッシブなモードにセットしたとき、F1ギアボックスのレスポンスは458イタリアと比べてシフト・アップで44%、シフト・ダウンは20%速くなっている。また、ステアリングのレスポンスは11%クイックで、高速で走行している時やコーナーを攻めている時に操舵力が14%軽くなっている。さらに、ミシュラン製「パイロット スポーツ カップ2」タイヤでさえグリップ力が6%向上し、サーキットにおけるホットなラップが数周多く可能になった。

カーボンファイバーのシェルを採用したサベルト製の新しいバケットシートと4点式ハーネスは北米向けにもオプションで用意される。サーキットでの使用に限られてしまうが、少なくとも入手は可能だ。このシートはよくある不快感を軽減してくれ、1日中運転するための優れた装備と言える。カーペットや衛星ナビゲーションシステムはなく(インフォテイメントはオプションで注文できる)、キャビンのガラスは全て軽量なプレキシガラスタイプのレース用素材でできている。コースを攻めている時の車内の雰囲気は(ビデオを見てほしい)、自信に満ちたドライバーが求める通りのものだ。



そういうと、458スペチアーレは特に北イタリア丘陵地帯の路面が荒れた郊外の道路を走っているときなど、ドライバーに酷い衝撃を伝えるクルマであると思うかも知れない。しかし新しいSCMダンパー(専門的に言うとFrs SCM-E、周波数分析システムとツイン・ソレノイドを装備した磁性流体サスペンション制御)は、非常に正確で瞬時に反応するため、乗り心地の荒さは程度問題でしかない。ステアリング・ホイール上にあるサスペンションの設定を柔らかくするボタンを押すと、シャシーがインパネの左側に「Bumpy Road(デコボコ道)」と表示されるモードに設定されるのだが、筆者はこれが気に入った。単に「Comfort(コンフォート)」と表示されるよりもずっといい。

2014年3月末に北米でも販売が開始された29万8,000ドル(約3,038万円)の素晴らしいマシンが欲しいのなら、やるべきことは、この458 スペチアーレを手に入れ、所有しているスパイダーを手放さず、競い合う必要がない外出時のためにとっておくことだ。自分で書いていながらバカバカしく聞こえるが、こういうことを言っておかないと、フェラーリは458 スペチアーレのような秀逸なマシンを造ろうとしないだろう。


【基本情報】
エンジン:4.5リッターV型8気筒
パワー:最高出力597hp/最大トルク55.1kgm
トランスミッション:7速AT
0-60mph:2.9秒〔推定〕
最高速度:202mph(日本公式HPでは325km/h以上)
駆動方式:後輪駆動
車両重量:3,075ポンド(約1,395kg)〔推定〕
座席数:2
荷室容量:8.1立法フィート(約229ℓ)
燃費:市街地13mpg(約5.5km/ℓ)、高速道路17mpg(約7.2km/ℓ)〔推定〕
ベース価格:29万8,000ドル(約3,038万円)〔推定〕(日本販売価格は消費税込み3,390万円)

By Matt Davis
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:日下部 博一

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