ロールス・ロイス・モーター・カーズと、ロールス・ロイス販売代理店ロールス・ロイス・モーター・カーズ東京を運営するコーンズ・モータースは16日、このイギリスの高級車ブランドを紹介する記念展「アイコン・ツアー」を東京・六本木の「ザ クラシカ東京」で開催した。

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今から110年前の5月4日、貴族社会で育ったスポーツマンで敏腕ビジネスマンでもあったチャールズ・スチュワート・ロールスと、貧しい家庭に生まれ9歳の頃から働きながら技術者としての才能を開花させたフレデリック・ヘンリー・ロイスの2人が初めて出会う。対照的な環境に生まれ育った彼らだが、共通していたことが少なくとも2つはあった。それは自動車を愛する心と、当時イタリアやフランスに比べて遅れていたイギリス自動車産業に不満を抱いていたこと。この日、ロイスが独自に設計・製造した「10HP ロイス」を見たロールスは大きな感銘を受け、「ロイスが作る全ての車両を販売したい」と申し出たことから、両者の名字を組み合わせた自動車会社「ロールス・ロイス」設立の合意に至る。その2年後に発表した「シルバー・ゴースト」では、早くも「世界最高の自動車」という地位を築き、日本でも大正天皇の御料車となっている。




今回、その創立110周年を記念し、シンガポールに続いて日本の東京で開催された「アイコン・ツアー」は、世界最高峰の超高級車ブランド、ロールス・ロイスの歴史、技術、デザイン、スタイル、そしてクラフトマンシップを紹介する展覧会。日本においてロールス・ロイスがこのようなイベントを開催するのは初めてのことだという。これは国内の販売代理店として、ロールス・ロイス・モーター・カーズ東京を運営するコーンズ・モータースとのパートナーシップが、今年で50周年を迎えることを記念するという意味もあるそうだ。

この日の会場となったザ クラシカ東京には、最新の限定仕様車「ゴースト Vスペシフィケーション」や、史上最もパワフルなロールス・ロイスである2ドア・クーペ「レイス」、そして2003年に新体制ロールス・ロイス最初のモデルとして発表され、2012年に「シリーズ2」へと進化したフラッグシップ「ファントム」の3台が置かれ、来場者はそれらの圧倒的な存在感と、贅沢かつ洗練された工芸品のようなインテリアを、見て、触れて、確かめることが出来た。個人的にはドアが後ろヒンジで開く2ドア・クーペ、レイスに最も魅力を感じたが、それは筆者が"運転したがり"だからだろう。"後ろに乗る人"ならやはりファントムだろうか。我々メディアではなく一般の方向けには、ゴーストとレイスの助手席または後部座席で30分間の試乗も行われたそうだ。




さらに、例えオーナーであっても普段は決して見ることが出来ないファントムの内側に隠されたアルミニウム製スペースフレームも日本初公開された。コーンズ・モータースの方によれば、「ロールス・ロイスは技術的にも凄い、というところをお見せしたくて、この日のために空輸した」という。これによって全長5.8m以上のファントムは、より小型の、といっても全長5.4mクラスのスティール製ボディを持つゴーストと比べても、「それほど重量が変わらない」そうだ。その横には巨大なV型12気筒エンジンと8速ATを展示。"ロールス・ロイス史上最もパワフルな"「レイス」では、6,591ccという排気量から最高出力632ps/5,600rpmと最大トルク81.6kgm/1,500-5,500rpmを発生し、全長5,280mm、全幅1,945mmという巨大な2ドア・クーペを0-100km/hまで僅か4.6秒で加速させる。




会場の3階に設けられた「ビスポーク・ラウンジ」では、イギリス・グッドウッドの本社でコーチラインなどのペインティングを担当しているマーク・コート氏と、インテリアのレザー装飾を担当するハナ・クリアさんという2人の職人が来日し、「ビスポーク」と呼ばれる顧客の特別注文に応える技術、「クラフトマンシップ」を披露した。

「コーチライン」とは、ボディのサイドに描かれたピンストライプのこと。ロールス・ロイスではもちろんステッカーやテープで入れるのではなく、ボディに合わせて1台ずつ、職人がフリーハンドで描き入れる。だから実車の特にドアのエッジの辺りには、まるで絵画のような、人間的な筆遣いの跡が僅かに見られる。ビスポークではストライプだけでなく、顧客が望むモチーフを描くことも可能だ。

作業のやり方としては、まず紙に鉛筆で顧客の希望にあった図柄を描き、その裏にチョークを付けてボディなどの表面に転写、そしてそれを塗料を付けた筆でなぞる。ちなみにマークさんはこれまで約2,000台のロールス・ロイスにコーチラインを描き入れて来たそうだが、それ以前はお店の看板を描くお仕事をされていたとか。




"ロールス・ロイスのクラフトマンシップ"というと、頑固でストイックな"この道何十年"という高齢の職人が作業に取り組む姿を想像するが、レザー内装に刺繍を施すハナさんは写真の通り、うら若き女性だった。彼女は学生時代にアートを専攻し、グッドウッドの工場の近くにある美術工芸品のお店で働いていたそうである。ロールス・ロイスの内装に使われるレザーは全て北半球で飼育された雄牛のものを使用するという。なぜ雄牛かというと、雌牛は妊娠による皺があるから。なぜ北半球かというと、南半球の牛には蚊に刺された痕があるから。レザーはシートだけでなく、ステアリング・ホイールのカバーやルーフ、ピラーの内張など、用途によって全部で11種類の革を使い分け、これらの革には表面に薄い皮膜で色を着けるため、「革がキュウキュウいわない」そうである。

この日、見せていただいたヘッドレストなどに施される刺繍は、ロールス・ロイスのロゴから美しい花柄、そして注文主の家紋や動物(干支だろうか)など実に様々。これはまず図柄をスケッチし、それをコンピューターにプログラミングするところから作業が始まるという。刺繍に要する時間だけなら、例えば龍の図柄で30分ほど。「R-R」のロゴなら2分でできるそうだ。家紋や干支を入れてしまったら、下取り価格が心配に...なんて思う人はロールス・ロイスの顧客にはいないのだろう。




ロールス・ロイスのビスポークには、「ペイント」「レザー」とそしてもう1つ、「木」による内装の装飾があると、ビスポーク製造および品質管理担当ゼネラル・マネージャーのウルス・メーナー氏は説明する。ロールス・ロイスでは樹木の種類や木目、色味など、数種類の中から選べるだけでなく、顧客の要望に合わせて図柄を木象眼、いわゆる寄木細工によって施すことも可能だ。ただし、車内に使用するウッドパネルなどは、家具や建築と異なり、「クラッシュ・プルーフ」つまり衝突時に決して乗員を傷付けることがないようにしなければならない。そのためロールス・ロイスのウッド・パネルはアルミニウムに何層もの薄い木を貼り合わせ、それを圧着して製作するという。表面はラッカーを塗っては磨くという行程を何度も繰り返し、「ピアノ・フィニッシュ」と呼ばれるピアノに見られるような光沢を目指すそうだ。

メーナー氏によれば、ファントムを注文する方は100%、ゴーストでも80%の顧客が、ビスポークによる特別仕様を希望するという。ちなみに車両価格が5千万円台のファントム系と、3千万円台のゴースト系では、「ペイントやレザーの品質も行程も同じ」だが、生産台数の規模が違うため、「1つの行程に掛ける時間が異なる」そうだ。




記者の中から寄せられた「ロールス・ロイスの伝統にそぐわない色や仕様の注文があった場合、お断りすることもあるのか?」という質問には、「今までそれほど酷い注文を受けたことはありませんが、基本的には気にしないようにしています。あまりに酷かったら、そこは目を瞑って対応(笑)します」とのこと。「半年前には、全部ピンクにして欲しいという注文を受けました。ボディもレザー内装もカーペットもウッドまでピンク。でもちゃんと製作しましたよ。お乗りになる方それぞれに、"自分が乗りたいロールス・ロイス"というものがあると思います。そのご希望には出来るだけお応えしたい」という。かつてはロック・ミュージシャンが所有するロールス・ロイスをピンク色に塗り替えただけで本社からクレームが来たという話もあったが...。この日、展示されていたレザーの見本にも、黄色や水色、ライトグリーンなど、かなり奇抜な色が含まれていた。



限られた人のために、限られた台数が製作される、限りなく上質で洗練された真の高級車。自分とは一切無縁でも、浮世にこういう自動車が存在するというだけで嬉しい気分になる。パワートレインや「スピリット・オブ・エクスタシー」と呼ばれるマスコット像の姿は少しずつ変わっても、最高級を求める人のために最高の技術で最善を尽す、ロールス・ロイスの哲学は変わらない。

ロールス・ロイス・モーター・カーズ東京 公式サイト


By Hirokazu Kusakabe

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