【試乗記】2015年型マクラーレン「P1」(ビデオ付)
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筆者はポルシェ「918スパイダー」を絶賛し、フェラーリ「ラ フェラーリ」については、あらゆる角度から判断して、すばらしいイタリア車になるだろうと言ってきた(たとえフェラーリ ラ フェラーリという車名がレコードのシングル盤の音飛びのように聞こえたとしても)。そしてこの2つのハイパーカーの中間に位置するのが、圧倒的な存在感を放つ英国車、マクラーレン「P1」だ。

ドライバーのためのスーパーカーとして考えるなら、P1はダイナミクスや敏捷性の面で918スパイダーより優れている。一方で、918はP1に匹敵する驚異的なスピードと並はずれた燃費を両立させる性能を秘めた奇跡のクルマだ。両車の値段は100万ドル(約1億円)前後。厳密に言えば、918スパイダーが84万5,000ドル(約8,670万円)、P1が115万ドル(約1億1,800万円)だが、このクラスとなると数十万ドルの差など微々たるものだ。これらのクルマなら、シングルシートでオープンホイールのようなクルマを運転せずとも普通のドライバーが公道でF1マシンに近い走りを体験することができる。

P1のテスト用プロトタイプNo. 5で念願の試乗を行うために、ロンドンの南にあるダンスフォールド飛行場を訪れた時、筆者がどれだけ興奮していたか想像できるだろう。この『トップギア』のテストトラックに来る時は決まって雨が降り続いていたが、ありがたいことに今回の試乗では暖かい気温と晩冬の輝く陽光に恵まれた。サーキットのそばにあるマクラーレンの仮設ルームに到着すると、筆者が運転する予定の甘美で燃えるような黄色のP1はマクラーレンの顧客が試乗中だった。

この顧客の男性と美しい奥方は、彼ら自身によるドライブに加え、マクラーレンのチーフテストドライバーであるクリス・グッドウィン氏とマクラーレン「MP4-12C GT3」のドライバーを務めているダンカン・タピー氏による強烈なラップを含めた数周の試乗をちょうど終えるところだった。この夫婦と話した時、2人はまるで10代の若者のように舞い上がっており、口を耳から耳まで伸ばすほどの笑顔を浮かべていた。彼らはドバイやモスクワ、シンガポール、ビバリーヒルズからやって来たのではなくオハイオから来たという。私たちの金持ちに対する固定観念は改めた方がよさそうだ。




まずはP1を走らせた感想から述べるべきだが、その前に、同車がドライバーに何を提供しているのか説明する必要がある。P1で採用された"ガソリンと電気"によるプラグインハイブリッドのパワーユニットは、これまでのMP4-12Cと同様に、アルミ製フレームとカーボンファイバー製モノセルを組み合わせた車体に搭載され、リカルド社によって組み立てられた「M838T」型3.8リッターV型8気筒ツインターボを使用する。ただしP1ではすべてに改良が加えられ、パフォーマンスの改善が図られている。

マクラーレンによれば、P1の乾燥重量は1,395kgで、これは最高出力570hpのフェラーリ「458 イタリア」とそれほど変わらない。P1が搭載する電気モーター、リチウムイオンバッテリー、そのほかEV関係の補器類が車両重量の中で占める割合は204kgほどだ。リア・ミドシップに搭載されたコンパクトなV8ツインターボエンジンは単独で最高出力727hp(MP4-12Cは616hp)、最大トルクは73.4kgm(MP4-12Cは61.2kgm)を発揮する。これらの数値だけでもよだれが出るほど魅力的だが、それに加え、4.4kWhのリチウムイオンバッテリーが電気モーターを駆動させ、さらに176hpと26.5kgmのパワーを生み出す。Eモードでは電気モーターのみを使用して最大12kmほどの距離を走らせることが可能だという。

電気モーターから提供されるパワーは、Eモードを除くすべてのモードでガソリンエンジンと組み合わせることができ、それにより最高出力は903hp、最大トルクは91.8kgmにまで高められる。このパワートレインには F1マシンで使用される KERS(運動エネルギー回生システム)が応用されており、ステアリングホイールに設置された赤い「IPAS」ボタンを押すことで、フルスロットル時に作動する。IPASとは"Instant Power Assist System(瞬時にパワーを補助するシステム)"の略で、名前の通り、使える電力を瞬時に供給し、長い直線でのパフォーマンスに貢献する。



ドライバーを最高にワクワクさせるレースモードでガソリンとモーターを組み合わせると、0-100km/h加速は2.8秒で、0-200km/hは6.8秒で到達する。0-300km/hは僅か16.5秒。これは伝説のマクラーレン「F1」より5秒速く、918スパイダーより6.5秒速い。そう、P1は格段に速いのだ。

P1に採用されているアダプティブサスペンションは従来の構造と大きく異なり、前後のピッチングと左右のロールを制御するサーキットが、純粋にダンパーの減衰力を制御するサーキットから独立している。MP4-12Cではこれらの制御がすべて1つのサーキットを介して行われていた。この構造によってP1は驚くほど細かく、なおかつ瞬時に油圧制御を行えるようになった。改良したサスペンションの性能が劇的に向上したため、MP4-12Cではプロアクティブ・シャシー・コントロールという名前だったのが、P1ではレースアクティブ・シャシー・コントロールと変更されたほどだ。

車内に乗り込むためには先ずカーボン製のスワンドアを持ち上げ、ゲームのツイスターをするみたいに右足を幅広いシルの向こう側に伸ばし、身体を曲げてシートにドスンと腰を下ろせば完了だ。レカロ製のパフォーマンスシートの座り心地はとても快適だった。車内を見回すとMP4-12Cに搭載されていた、すばらしい並びのコントロール装置と大体同じものがP1でも確認できた。これらの装置を使いこなすためには、MP4-12C同様、厳しい訓練を通して慣れる必要がある。今回、筆者の運転助手を務めてくれたのは、忍耐強く面倒見のいいレーサー、ダンカン・タピー氏だ。




グッドウィン氏とタピー氏は顧客とのドライブの余韻が残っていたせいか、ダッシュボード中央の2つのダイアルで走行モードを切り替える間、シームレス・シフト・ギアボックス(SSG)を完全なオートモードにしておいた方がいいかと筆者に尋ねてきた。筆者はその提案を軽く聞き流した。というのも筆者は、MP4-12Cと基本的に同じであるこのギアボックスをパドルでシフトすることが大好きだったからだ。念のために言っておくと、P1のSSGはオートモードでもシフトアップとシフトダウンを見事に行ってくれ、ドライバーは心を解放して、より本格的なダイナミクスを深く体験することができる。しかしP1と過ごせる時間がほとんどない筆者にとって、パドルシフトを使わないなんて考えられなかった。

カーボンファイバーのパッセンジャー・タブに固定されたパフォーマンスシートは、サイドサポートが高くホールド性は良好で、これに体が慣れてくると、コックピットはとても理に適った作りになっているのが分かる。MP4-12Cで非常に好感の持てた点がP1にも受け継がれている。特にミドシップ・エンジンのクルマで、全方位に良好な視界が確保されているのはありがたい。センターコンソールの高い位置にあるスタートボタンを押すと3.8リッター・ツインターボが目を覚まし、後方の広く寝かされたパワーユニットから重々しいアイドリング音が聞こえてくる。筆者はまずノーマルモードからスタートし、それから徐々にアグレッシブな設定に変えていくことにした。そして最後の数周はEモードを試したいとリクエストした。

ノーマルモードでもP1をハードに走らせることはできるが、最初の1周はこの現実離れした野獣がどのように"ノーマル"であり得るのかを知ることが筆者の目的だった。そのため、普通の日に小さなバッグを1つか2つ、フロントに設けられた4.2立方フィート(120ℓ)の銀色の荷室に入れて、郊外をドライブするという想定でこのクルマを走らせてみた。またそうしたことで、筆者の運転がヒートアップする前にダンスフォールド飛行場のレイアウトをすべて覚えることができた。




この短い試乗で筆者が気づいたことは、もしあなたがエキセントリックな種類の人間であるならば、P1は毎日運転するドライバーにとってパーフェクトなクルマだということだ。P1は究極のスーパーカーでありながら、すべてをノーマルに設定するとMP4-12Cと同じ快適さが得られる。とはいえ、P1のステアリングのレスポンスがMP4-12Cと比べて鋭いことにすぐに気づく。ステアリング・ギア比はロック・トゥ・ロックが2.2と、MP4-12Cの2.6と比較しても超クイックだ。ステアリングの動きは軽くて操作し易く、曖昧な感じはまったくしない。舗装のよくない路面を適度な速度で走らせてみると、ピレリ製「Pゼロ・コルサ」のタイヤ(フロント19インチ、リア20インチ)が組み合わされたパッセンジャーセルとダンパーのチューニングは、MP4-12Cよりも堅いというのが全体的な印象だ。この頃には筆者もコースの状態を把握していた。ダンカンはその横で丁寧にサポートしてくれていたが、筆者の探求にひどくうんざりしていたのは明らかだった。

ノーマルモードを卒業してスポーツモード、それからトラックモードにすると、目一杯のコーナリングで強い重力加速を体感しようとしている自分に気が付いた。マクラーレンによれば、P1の横加速度は最大2.4Gで、スキッドパッドでのテストでは軽く1.8Gを維持していたという。これは本当に驚異的な数字だ。ダンスフォールド飛行場の未舗装のコースに再び慣れたところで、エンジンと電気モーターによるブーストを同時に働かせ、さらにスピードアップすることにした。この時、自分の運転が完璧であると錯覚してしまうほど、P1は無限の可能性を感じさせてくれた。

車体のバランスは尋常ではないほど正確で、すべての区間において最大限の速度が発揮できるように設計されている。ドライバーズシートと助手席との距離が非常に近く配置されているのは、最適なシャシーの運動性能を得るために、重心を中央に寄せることを意図した戦略だ。テール・スライドを誘引させても常に程よいスリルで、ステアリングは手応えが抜けることはなく、薄気味悪いほど正確だ。乗り手の思い描くラインを正確に見越して、毎回正しい旋回と荷重移動を行ってくれる。そしてキャビンの内側には大満足のエンジン音が響きわたる。



究極的なレースモードに設定しようとしたら、それにはボタンを使う必要があるとダンカンが教えてくれた。このレースモードへの設定は"油圧イベント"として知られ、 スティーヴン・スピルバーグ監督が製作総指揮を務めた映画『トランスフォーマー』に近い要素を持っている。

イグニッションスイッチを切って、再びオンにする。指は「レース」ボタンを押したままだ。すると、クルマのあらゆる場所がどう変化したのか、計器ディスプレイが図で正確に教えてくれる。P1の通常の最低地上高4.7インチ(約119mm)からレースモードの2.8インチ(約71mm)まで低くなるのにかかる時間は30秒だ。あわせて油圧シリンダーによって大型のリアウィングが伸び、ほぼ垂直に傾く。このセットアップだと、160 mph(257km/h)で約600kgのダウンフォースを生み出すそうで、マクラーレンによればこれはロードカーとしては最大であるという。

筆者はレースモードで数周を走り、これまでに乗ったどのスーパーカーよりも、このクルマの走りに夢中になった。自分を解き放ち、今までに試したことのない限界の走りに挑戦する感覚はたまらない。フロントとリアに発生する強力なダウンフォースやレースアクティブ・シャシー・コントロール、ガソリンとモーターから瞬時に生み出される圧倒的なパワー、素早く変速するデュアルクラッチ7速ギアボックス、そしてF1マシンのようにシリコンとカーバイドを表面に施した曙ブレーキ工業のカーボンセラミック製ブレーキディスクなどを駆使し、これまで経験したことがないほどP1は速く、かつ安全に、そして正確に走った。筆者の喜びは表情に出ていたようで、ダンカンもついには機嫌が良くなり筆者を励ましてくれた。



コーナーを抜けてメイン・ストレートに出るので筆者がスロットルをフルに開けようとしたその時、ダンカンが「赤いIPASボタンを押せ。今だ!」と大きな声で言った。そこで筆者は言われたとおりにボタンを右手の親指で押すと、突如ジェンソン・バトンもかくやというスピードで加速し、筆者の身体はシートに強く押し付けられた。これまで他の公道仕様車では決して味わえなかった感覚であり、これこそ筆者がずっと切望していたものだ。電気モーターのみによる最高出力は176hpで、これはF1マシンで許可されていたKERSのパワーの2倍以上にあたる。これは病み付きになる。筆者は同じ直線に出ると再び同じことを繰り返し、今度はさらに左手の親指でダウンフォースを減らすための青い「DRS」ボタンも押した。するとP1は弾丸のように地面の上を飛んでいった。ついにはダンカンも立場を忘れて笑った。

試乗の時間はあまりに短く、一瞬で終わってしまったが、それでも筆者はP1のことを理解できた。P1の目指すものが何かをよく理解できたし、そのビジョンを筆者は心底気に入った。P1は誰もが不可能だと思う物理学を完成させ、スピードとバランスを妥協なく追求したスーパーカーとして新しい世界を切り開いたのだ。フェラーリの「ラ フェラーリ」もおそらく同じように大変な努力を続けているだろう。ポルシェは構想段階から、918スパイダーを自動車産業史上最も環境に優しいスーパーカーにしようと、できる限りのことをやって来た。これらのクルマを運転し、その仕組みについて学び、またエンジニアと話すのは最高に心が躍る時間だ。



地上に舞い戻り、レースモードからその対極にあるEモードに変えて最後の1周を走った。マクラーレンが都心のドライブ用に、このEモードを用意したのは称賛に値するが、ポルシェの918スパイダーほど地球の緑化に貢献しようとは思わなかったようだ。だが、28mpg(約12km/ℓ)という燃費は決してお粗末な数値ではない。P1ではドライバーが好きな時にIPASボタンが押せるよう、電力の多くはエンジンのパワーアシストに使われる。「チャージ」ボタンを押せば、リチウムイオンへの急速充電が行われる。平均10分程度でフル充電され、またIPASボタンを押すことが可能だ。

375台が限定生産されるP1はすでに全て完売。デリバリーは2013年10月から始まり、2015年半ばには完了する予定だ。地域別でみると、北米に120台、アジア太平洋に120台、残りはヨーロッパや中東その他の地域にデリバリーされる。

きっとオハイオ州にも届くに違いない。

【基本情報】
エンジン: 3.8リッターV型8気筒ツインターボ+電気モーター
パワー:最高出力903hp/最大トルク91.8kgm
トランスミッション:7速DCT
0-60mph(推定):2.6秒
最高速度:350km/h(電子制御リミッター付き)
駆動方式:後輪駆動
車両重量:1395kg
座席数:2
荷室容量:120ℓ
燃費(推定):12km/ℓ(複合モード)
ベース価格:115万ドル(約1億1800万円)

By Matt Davis
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:日下部 博一

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