【試乗記】「乗れば乗るほど笑みがこぼれる」 2015年型 スバル「WRX STI」
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昨年12月、著者は2015年型スバル「WRX」に試乗する機会に恵まれ、カリフォルニア州北部のかなりチャレンジングな道でWRXを走らせた。その時の感想を「感心した」と一言で終わらせてしまうのは、著者の気持ちを正確に表しているとは言えない。しかし、それでもWRXを運転した筆者の気持ちは「新しいWRXは本当に素晴らしい車だ。以上」という一言だ。全天候型のスポーツセダンということを考えれば、決して高い買い物ではない。見た目について色々と言う人はいるだろうが、WRXを凌ぐクルマはないだろう。

だが、WRXの兄貴分である「WRX STI」が登場してきた。ウイングをつけた最高のクルマだ。ラリーカーの中のスーパースター。著者を含めた多くの人にとって、このクルマは未舗装路を走るワクワク感を体現している。WRXはシャープなクルマだが、筋金入りのSTIはWRXより、常にほんの少しだけシャープさが増していた。しかし、ここ数年はそれが必ずしも良いこととは言えなかった。WRXで最も好ましかった点は、それが常時攻撃用ミサイルのようなクルマではなかったことだ。寛容で、運転しやすいクルマだった。そして正直に言って、かなり快適なクルマでもあった。だから、WRXかSTIかという議論になれば、毎日運転をするにはWRXがいいと言ってきた。もちろん、あのウイングに憧れもある。しかし、今までのSTIは、WRXよりも運転していて高い価値が感じられるクルマとは言えなかったし、心地よさだとか洗練という面でのアップグレード感は全くなかった。

新型WRXは間違いなく、スバル史上最高に優れたホットハッチ、いやホットセダンだろう。しかし、その上を行くかもしれないクルマがあるとしたら、一体どんなクルマなのだろうか。私は答えを探しに再びカリフォルニア州北部に向かった。もちろん、歴史あるマツダ・レースウェイ・ラグナ・セカにも立ち寄った。




個人的な気持ちだが、スバルが2015年型STIでゴールドのBBS製ホイールを復活させたことに感謝の言葉を述べたい。ブルーとゴールドのコンビネーションは、STIのアイコンだ。特に、巨大なリアウイングを後部に備えていれば、このホイールは外せないと著者は考えている。標準のWRX STIには装備されていないことを考えると、もちろんこの組み合わせが万人向けとは言えないだろう。しかし、筆者にとってはこれらを持たないSTIは考えられないのだ。

というわけで、すべてのSTIにゴールドのホイールがついているわけではない。最初の3カ月だけ製造され1,000台のみが限定販売される「ローンチエディション」のWRブルーにだけ装備される。「ローンチエディション」のその他の特徴は、ショートシフターを採用していることと(他のモデルではオプション)内装にブルーのトリムが使われているということだ。インテリアについては後ほど詳しく述べることにする。

2015年型WRXのデザインについては、すでに多くのことが語られ、必ずしも絶賛されているわけではない。しかしこの新型STIに関しては、筆者は見れば見るほど好きになってくる。特に先代に比べればずっと好ましい。確かに美しいとは言えない(だが、スバルに"美しいクルマ"など、これまであっただろうか?)(日本語版編集者注:ありましたとも「アルシオーネSVX」とか)。しかし、2015年型WRXに採用されたデザインワークはSTIでは好結果を生んでいる。フロントのファシアがより下がってアグレッシブになったおかげで大きな鼻の部分は気にならなくなった。そして大きくなった18インチのホイール(ダンロップのサマータイヤ、 245/40R18スポーツマックスを装備)が、しっかり四隅に収まっている。




サイズはベース・モデルのWRXと同じである。インプレッサと共通の2,649mmというホイールベースの上に、全長4,595mm、全高1,476mm、全幅が1,796mmのボディが載っている。デザインが変更されたフロントエンドと後部の大きくて機能的なリアウイング以外に、外見的な変更点は、STIのロゴが目立つところに取りつけられたぐらいだ。ちなみに、LEDヘッドランプは標準装備となった(WRXではオプションだった)。このヘッドライプは先代までに比べ、より細身なデザインになっている。ウインカーはフォグランンプのすぐ上、ファシアの下部に移された。WRXと比べると、STIには統一感がある。しかしそれでも、美しいとかバランスが取れていると言えるレベルではない。WRXとSTIを並べて見ると、スバルの開発者たちはまず最初にSTIを念頭においてデザインしたことが分かる。そこから様々なものを取り除いて、パワーが控え目なWRXを作ったに違いない。

STIには、標準仕様、ローンチエディション、リミテッドの3グレードがラインアップされている。リミテッドは、シートが本革製となり、運転席にはパワーシートを採用。さらにハーマンカードンの高級オーディオが搭載され、ムーンルーフもついている。しかし、どのモデルでも、インテリアは概ねWRXと共通だ。ダッシュボードのトリムやユニークなステアリングホイールはそのまま流用されているが、シフターは異なり、アルカンタラ表皮と赤いアクセントが入れられたシートも少し異なる(写真のローンチエディションの場合はブルー)。

STIのインテリアはビジュアル的には、まずまずと言ったところか。特筆することもないが、コントローラーや各種スイッチのレイアウトはよく考えられており、使いやすい。しかしながら、WRXのインテリアと同じように、一部にプラスティックを使用しているため、高級感を出し損ねている。とりわけ、希望小売価格が3万4,495ドル(約350万円)からと決して安くはないので、プラスティックの多用はやめてもらいたかった。しかし、シートの座り心地はよく、ホールド感も十分にある。フラットボトムのステアリングホイールはリムの太さが好ましく、操ることが楽しかった。その他の主要な装置の操作性も問題はない。筆者が過去のSTIで最も不満を感じていたのが安っぽいインテリアだった。この新型では、大きな改善はなかったものの、方向性としては間違っていないと感じられた。フォルクスワーゲンの「ゴルフR」のようにスタイリッシュで、なおかつ落ち着いた雰囲気や洗練が感じられるようなクルマではない。しかし、今となっては旧式な三菱の「ランサーエボリューション」に比べると、紛れもなく豪華である。




室内は大人4人(必要であれば5人でも)が乗り込むのに十分な広さがある。残念ながら、新型STIにハッチバックモデルはない。しかし、後部シートを倒せば、トランクから荷物が入れられ、荷室スペースは約339ℓになるとスバルのスタッフはアピールしていた。また、インプレッサの他のモデルと同じように、STIのインテリアは開放的で風通しがいい感じがする。全方向の視界も十分に確保されている。後部に大型のリアウイングがついていても、後方から来るクルマがはっきりと見えた。スバルがオプションで用意しているナビゲーションシステムは使えるが、他社の方がもっといいものを提供している。インフォテイメントについては、取り立てて話すようなものはない。すべてが非常にシンプルだ。今日のようなネットの時代に、このシンプルさは落ち目のように見えるかもしれない。しかし、このSTIには、ある種の新鮮さを感じる。まるで「タッチスクリーンやスマートフォンを触っていないで、しっかりと運転しなさい」と言われているようだ。

結局のところ、STIが輝きを放っているのは、そういうところなのだ。「フォレスター」の2.0リッター水平対向4気筒ターボエンジンを採用しているWRXと違い、STIは先代から引き継いだ最高出力305hp/6000rpm、最大トルク40.0kgm/4000rpmの2.5リッター水平対向4気筒エンジンを採用(ECU-電子制御ユニットはわずかだがチューンアップされている)している。車両重量は先代モデルより0.9kgだけ重い1,536kgである。リミテッドモデルでは、約26kg重くなる。ベースカーは先代とほぼ同じ重量であるため、スバルでは、0-60mphを5.1秒と見ている。この数字は2014年モデルと同じだ。エンジンのスペックに変更はない。燃費も同じだ。市街地では17mpg(約7.2km/ℓ)、高速道路23mpg(約10 km/ℓ)、複合19mpg(約8km/ℓ)となっている。



STIの加速は、WRXに比べて0.3秒速いだけ。それはパワーの出方によるものだ。WRXは2,000rpmという低い回転数で最大トルク35.7kgmを発生するが、STIではより高いエンジンの回転数に達しないと、推進力を100%発揮しない。このウイングがついたセダンは、パワーが劣る兄弟車と比べるとやや長めのターボラグが感じられるが、スバルはよりパンチ力が感じられるようにスロットルのレスポンスを再チューニングしている。エンジニアによると、スロットルペダルを25パーセント踏み込むだけで、先代の50パーセントの踏み込み以上のレスポンスを発揮するという。言いかえれば初期開度でより大きな活力を発揮するということだ。しかし急発進するようなことや、リニアでない感じはしなかった。スロットルの調整はしやすく、STIはノーマルのWRXに比べると、要求されていることを適確に素早く感じとってくれる。STIに搭載されている「SI-Drive」システムには、 I(インテリジェント)、S(スポーツ)、S#(スポーツシャープ)という3つの制御モードがあり、ドライバーが望むスロットルマッピングに切り替えることが可能だ。

トランスミッションは先代と同じように、6速マニュアルしか選べない。これは素晴らしく、特にローンチエディションに装備されるショート・ストロークのシフトは最高だ。風が強いことで有名なカリフォルニア州モントレーの南にあるカーメル・ヴァレーロードを走っていたときには、3速と4速のギアチェンジを何度も行い、時折コーナーの出口では高回転でパワーを発揮させるために2速まで落とすこともあったが、操作はとてもスムーズだった。今までのSTIでは、クラッチベダルが筆者の好みからするとやや重いと思っていたが、今回は全く問題がなかった。渋滞に巻き込まれたとしても、左足が悲鳴を上げることはないだろう。




カーメル・ヴァレーロードでの試乗は最高に楽しめるものだった。永遠に続くかと思える曲がりくねった山道、登り坂と下り坂の繰り返し、様々な大きさのカーブ。しかし、カリフォルニア州のきれいに舗装された田舎道とは違い、この風光明媚な道には、時折、滑らかではない路面が登場する。そういう道を走行している時にはSTIの、文字通り"粗さ"を感じた。もっとも、STIにはWRXより硬いサスペンションが装備されていることから、少々の乗り心地の悪さは予期できたし、それは限度を超すほどのものでもなかった。しかし、フロントのスプリングレートが22パーセント硬いということが(バックは6パーセント硬いだけだ)顕著に表れており、これは常に歓迎できるというものではなかった。シャシーは寛大とは言えず、荒れた路面では次から次へと旧態じみた振動に見舞われ、それは特に助手席側で顕著だった。

しかし、なめらかに舗装された道路やサーキットでは、シャシーのチューニングが素晴らしかったことを考えると、多少ガタガタしていても、許せると思ってしまう。何より、STIのステアリングは最高だ。スバルはこのクルマに、未だに油圧式パワーアシストを採用している。13.1:1というステアリングギア比は、先代STIの15.1:1や新型WRXの14.5:1より速められている。路面からのフィードバックも申し分ない。これまでに数多くのスバル車に乗ってきたが、新型STIはその中で最もゴーカートのようにドライブできるモデルだ。よりコンパクトな「BRZ」よりも操作性がよかったくらいだ。コーナーを激しく攻めてみると、WRXよりもSTIの方が断然満足できた。この2つのクルマを大きく分けているところは、主にステアリングだろう。STIのステアリングは史上最高のレベルに達している。路面の悪い所では首が痛くなるリスクがあるにせよ、STIのステアリングを握っていると、すべての動きが正確に素早く伝わってくる。



カーメル・ヴァレーロードの小旅行を終えると、我々はラグナ・セカに向かった。スバルがサーキットで試乗させてくれたのだ(ラグナ・セカでブルーのSTIを走らせるなんて、ゲームの「グランツーリスモ」の世界が実現したようなものだ)。さらにスバルは我々のSTIにチューニングを施し、この場により相応しいSTIにした。つまりその秘密を公表してしまうと、標準で装備されていたブレーキをレース用のブレーキ一式にアップグレードしたのだ。標準では、STIはブレンボ社製のブレーキ・システムを採用している(フロントに13インチと4ピストンキャリパー、リアは12.4インチと2ピストンのベンチレーテッド・ディスクブレーキ)。通常のドライブであれば、フェード現象を感じることもないし、十分な制動力に欠けていると思うこともない。しかし、ラグナ・セカでは本気で攻めたので、ブレーキの高性能化はありがたかった。

最新のアクティブ・トルク・ベクタリング4輪駆動システムに加え、2015年型には新たな電子技術が追加されている。マルチモード DCCD(ドライバーズ・コントロールセンターデフ)だ。デフォルトでは前41:後59となっている前後輪の駆動力配分を、3種類用意されているドライビングモードによって必要に応じて変更することができる。通常の運転では、どんなに飛ばすとしてもAUTOモードでいいだろう。しかし、サーキットではAuto-(マイナス)がベストチョイスだ。センターデフの差動制限を弱めて、より頻繁に後輪へ多くのトルク配分を振ることができる。逆にAuto+(プラス)の場合、センターデフの差動制限を強め、濡れた路面やグラベル、雪上でのコントロールが容易になる。マルチモードDCCDには完全なマニュアルモードもあり、以前のSTIと同様に、センターデフを任意に50/50まで設定することができる。また、トラクションコントロールのTracモードとの組み合わせで、ホイールを少しばかり横滑りさせることもできる(トラクションコントロールは完全オフにすることも可能)。サーキットにおけるSTIの攻撃力はこれまでより一段と増した。



「グランツーリスモ」でどれだけ最高のラップライムを刻もうと関係ない。本物のラグナ・セカでの体験はチャレンジングで、満足のいくものだった。サーキットはまさしくSTIのホームだ。アクティブAWDシステムは高いグリップを発揮し、エンジンを3速と4速で高回転まで回すと、STIは嵐のようにコーナーを駆け抜ける。全てのドライビング・システムは多くの信頼と、ラップ毎にさらにハードに攻めようという勇気を抱かせてくれる。WRXの試乗ではサーキット走行がなかったので、公道上でのパフォーマンスから推測するだけだが、これほど最高に素晴らしいドライビングは出来なかったと思う。

WRXとSTIのどちらがいい車なのかという議論を複雑化してしまうが、この違いを体験できたのはよかった。ウイングのついたスバルは、WRXとは完全に違う"野獣"とまでは言えないが、先代に比べるとさらにアグレッシブになり、非常に正確で、パフォーマンスの高さも強く感じられる。もはやSTIは、WRXより少しばかりシャープなだけのクルマではない。ステアリングを握っていると、はるかに幸せな気分になれるクルマである。

STIとの比較において、WRXが優れているところは価格だ。STIは最低価格が3万4,495ドル(約350万円)。これに配送料の795ドル(約8万1000円)が別途かかる。それと比べると、WRXは2万6,295ドル(約267万円)である。 WRXリミテッドをSTIと同等の装備にすると、価格差が8,500ドル(約86万円)になる。STIが3万9,290ドル(約399万円)で、WRX Limitedが3万0,790ドル(約313万円)。自分で買うとなると、WRXを購入して、スバルのパフォーマンスパーツカタログか、もしくは、アフターマーケットに、いくらか資金を投入してしまうかもしれない(金のホイールが欲しい!)。あるいはパワーが同じで、より洗練されたフォルクスワーゲンのゴルフ Rを選んでしまう可能性もある。しかしこのSTIの、調子に乗りやすく、騒々しくて、まるでフーリガンのようなところが、このクルマを本当に特別なものにしている。走れば走るほど、距離に比例して笑みがこみ上げてくる。価格を考えればSTIはベストなWRXとは言えないかも知れない。しかし走らせてみれば間違いなく、最も楽しいクルマである。

【基本情報】
エンジン: 2.5リッター水平対向4気筒ターボエンジン
パワー: 最高出力305hp /最大トルク40.0kgm
トランスミッション:6速マニュアル
0-60mph: 5.1秒
駆動方式: AWD
車両重量: 3,386ポンド(約1,536kg )
座席数: 2+3
荷室容量: 340ℓ
燃費: 市街地17mpg(約7.2km/ℓ) 高速道路23mpg(約10km/ℓ)
ベース車価格: 3万4,495ドル(約350万円)
試乗車価格:3万8,190ドル(約388万円)

By Steven J. Ewing
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:日下部 博一

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