【試乗記】 2015年型 ポルシェ「マカンターボ」
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"ポルシェがラインナップ充実のためにコンパクトSUVを開発している"という話が聞こえてきたのは、2007年の5月のこと。当時、ドイツの自動車専門サイトに「ロクスター」とされるコンパクトSUVがスクープされ、このクルマは同じく当時開発中だったミドルクラスSUV、アウディ「Q5」がベースになるという噂が流れた。2010年9月、ポルシェは、その名称が「ケイジャン」となる可能性を示唆。それから数カ月の間、ケイジャンは依然として、"Q5をベースとした車になる見込み"と報じられていた。

約1年後の2011年8月には、開発初期のテスト車両が写真に捉えられたが、内部の構造はアウディのボディに隠され、新型モデルの本当の姿を知る手掛かりは得られなかった。その後2012年初頭に、ポルシェがその市販モデルの名称を「マカン」と発表した後でさえ、"サスペンションやブレーキ、エンジンは、ポルシェによってチューンアップされるものの、Q5と同じシャシーが採用される見込み"とメディアは報じていた。

このような経緯から、今だに多くの人がポルシェの新型車であるマカンを"大きく手を加えられたQ5"と考えているのも当然だろう。

ポルシェは、マカンに関するいくつかの謎を明かすべく、筆者を含め世界中のメディアやジャーナリストをドイツに招き、この新型クロスオーバー(欧州ではこれを"SUV"と呼んでいるが、そのプラットフォームからして、筆者を含む米国人にとっては、れっきとしたクロスオーバーだ)をじっくり見せてくれた。このポルシェのテクノロジーワークショップは、デザインやメカニカルな部分の解説が済んだ後、短時間の試乗でしめくくられた。有意義でためになった今回のワークショップは、筆者に全く新しい視点でマカンを見せてくれたのである。



マカンは、フォルクスワーゲン グループのモデルに広く取り入れられている、モジュラー・ロンギテューディナル・プラットフォーム(MLP)を採用している。これは、現在アウディ「A5」「A6」「A7」「A8」および「Q5」と共有するアーキテクチャーだ。このパフォーマンス重視のアーキテクチャーにより、クラッチの前にディファレンシャルとエンジンを縦置きすることができ、より良好な重量配分となる。フォルクスワーゲンはこの拡張性の高いMLPを、様々な長さのホイールベースに合わせて供給しているが、マカンの場合、ホイールベースはQ5とほぼ同じ2,805mmとなっている。

ボディサイズは、全高がQ5より35mm低く(マカンS/1,625mm、Q5/1,660mm)、全長が50mm長い(マカンS/4,680mm、Q5/4,630mm)。また、トレッドが約40mm広いため(マカンS/前1,655mm 後1,651mm、Q5/前後とも1,615mm)、全幅も広くなっている。マカンSの車体重量は、Q5の高性能モデル「SQ5」よりも135kg軽い(マカンS/1,865kg(DIN値)、SQ5/2,000kg)。

当然ながら、プラットフォームを共有しているモデルとは、フロアパンとファイアウォールを共有している。また、基本的なサスペンションアーキテクチャーや、パワーステアリングユニット、リアブレーキも共有しているが、ポルシェはそれらに手を加え、新たな役割を与えている。これら主要部分と、フォルクスワーゲングループの他のモデルと共有している標準的な電気系および機械系のサブシステム以外は、ほぼすべてマカン独自のものだ。




エクステリアには、ポルシェのクロスオーバーのデザイン言語が明確に表現されており、カイエンの小型版のように見える。ボディ形状は流線型の度合いが比較的強く(空気抵抗係数は0.36)、サイドミラーはドアパネル上にマウントされ、テールゲート上部にはボディと一体化したリアリップスポイラーが装備されている。また、左右ドアの下部には、ユニークなアクセントとなるサイドブレードが見られる。その素材はカーボンで、ボディカラーとの同色塗装またはラバブラック塗装仕上げが施され、マカンの全高を低く見せている。マカンのスタイリングで最も魅力的なところは、ユニークなクラムシェル・ボンネットだろう。このアルミ製のボンネットは、実は2枚のパネルを張り合わせたもので、パネルとパネルの間には空気の通り道がある。これがダクトシステムと一体となり、エンジンの両側にあるインテークに空気が送られる。このような設計は、革新的かつ効果的であるだけでなく、万一マカンが歩行者と正面衝突しても、空気を挟んだボンネットがクッションの役割を果たし、歩行者に対する安全性を高める。また世界一簡単に、手を汚さず片手で開けられるボンネットを設計したことに対しても、ポルシェのエンジニアを評価したい。

マカンには、フォルクスワーゲン製のディーゼルエンジンが搭載されるとの噂があったが、ディーゼルモデルはまず欧州向けに導入され、日本と米国向けにはターボチャージャーを備えた2種類のガソリンエンジンモデルが提供される。マカンSが積むのは、最高出力340ps、最大トルク460N・mを発生する3.0リッター90度V型6気筒ツインターボエンジン(ちなみにアウディ「SQ5」が積んでいるのは、スーパーチャージャー搭載の3.0リッター60度V型6気筒エンジン)。一方、マカンターボには、最高出力400ps、最大トルク550N・mを発揮する3.6リッター90度V型6気筒ツインターボエンジンが搭載されている。いずれもオールアルミ製直噴エンジンで(マカンSのエンジン重量は約212kg、マカンターボは約213kg)、通常ハイエンドスポーツカーにみられる潤滑方式のインテグレーテッドドライサンプ潤滑システムを採用し、過酷な走行においても、より安定したオイル供給ができる。ドライサンプ潤滑システムのさらなるメリットは、エンジンをシャシーのより低い位置に搭載でき、重心を低くできることだ。

コンパクトSUVのセグメントに属するクルマの大部分が、8速オートマチックトランスミッションを採用しているのに対し、ポルシェがマカンの限界性能を引き上げるために選んだのは、電光石火のシフトワークを誇る7速ポルシェ・ドッペルクップルング(PDK)デュアルクラッチトランスミッションで、同社のSUVに搭載されるのはこれが初めてとなる。この電子制御式トランスミッションは、選択した各ドライブモード(「スポーツ」「スポーツプラス」「オフロード」)によって、バターのように滑らかな、または弾丸のように素早いシフトチェンジをする。また、オプションのスポーツクロノパッケージを装着したモデルには、ローンチコントロールが備わる。



フロントディファレンシャルを内蔵するように設計変更されたパフォーマンス重視のPDKトランスミッションは、マカンに標準搭載されるフルタイム4WDシステムのポルシェ・トラクション・マネージメントシステム(PTM)と統合されている。多くの4WDシステムは、前後トルク配分があらかじめ設定されていたり、必要なトラクションが得られるのを待ってトルク配分を指示するが、マカンの4WDシステムは、100ミリ秒以下の応答速度で、前後アクスルへのトルク配分をオンデマンドで連続可変制御できる。あらかじめアクスル間のトルク配分の割合は設定されていないものの、ポルシェのエンジニアによると、このシステムはかなり後輪寄りのトルク配分となるよう設計されたとのことだ。さらに筆者が質問を重ね、この4WDシステムが、カイエンと共通ではないことを確認したあとで、エンジニアはマカンの4WDのセットアップが「911」の4WDモデルである「911カレラ4」と共通だと明かしてくれた。この事実からも、ポルシェがこの新しいコンパクトSUVに対して、真摯にパフォーマンスを追求していることがうかがえる。

マカンの加速タイムについて、ポルシェは控えめな数値を発表している。標準仕様のマカンSは、0-100km/hが5.4秒(スポーツクロノパッケージ装着車は、5.2秒)で、最高速度は空気抵抗の壁に阻まれて254km/hに留まる。一方、よりパワフルなマカンターボは、0-100km/hが4.8秒(スポーツクロノパッケージ装着車は4.6秒)で、最高速度は266km/hとなっている。これらの数字はすべて、コンパクトSUVセグメントのトップを行くものだが、おそらくかなり抑えた数字だろう。

マカンの独立懸架式サスペンションは、フロントがアルミ製の5リンクダブルウィッシュボーン式、リアがセルフトラッキング式のトラぺゾイダルマルチリンク式で、アーキテクチャーはQ5とよく似ているが、マカンには電子制御ダンパーシステムのポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメントシステム(PASM)を含むエアサスペンションがオプションで用意される。これを装着すると、エアダンパーによって高速道路における走行性能が改善され、セリフレベリング機能により車高が荷重に応じて一定に維持される。また、オフロードの走破性を高めるために車高を高くしたり、荷積みがしやすいよう車高を下げることができる。最低車高と最高車高の差は90mm。さらに、グリップを高めるため、リアアクスルには電子制御式のディファレンシャルロックが付いている。また、オプションのポルシェ・トルク・ベクトリングプラス(PTV Plus)は、カーブの多い道を走る時の回頭性と安定性が向上するという。コンパクトSUVセグメントで、エアサスペンションやトルクベクトリングを採用しているクルマは他にはない。





フロントブレーキには、ブレンボ製の6ピストン・アルミニウム・モノブロック固定キャリパーが装備され、これが鉄製のベンチレーテッドローターを挟み込む。リアには、シングルピストンスライディングキャリパーと鉄製のベンチレーテッドローターが装備されているが、筆者の記憶では、ポルシェが過去にこのような構成のリアブレーキを採用したことはなかった。そこで、この点を問いただしたところ、エンジニアは「マカンのリアブレーキシステムと、それに組み込まれているエレクトロニックパーキングブレーキは、Q5からそのまま引き継いだ」とあっさりと答えた。ポルシェのSUVとしてはもう一つの初採用となるオプションのポルシェ・セラミックコンポジット・ブレーキ(PCCB)にアップグレードしても、シングルピストンスライディングキャリパーが装備される(ただしローターはセラミック製になる)。

ポルシェは長年にわたり、モデル毎に異なる色のブレーキキャリパーを採用してきたが、マカンも例外ではない。ポルシェの他モデルでは、標準モデル(米国では未導入のディーゼルエンジンモデルを含む)はブラック、Sモデルはシルバー、ターボモデルはレッドとなっており、これと同様にマカンSのキャリパーの色はシルバー、マカンターボはレッドだ。また、PCCBのキャリパーの色はイエローとなる。

すでに述べたように、マカンは電気機械式パワーステアリングのアーキテクチャーをQ5と共有しているが、ステアリングギア比はQ5よりもクイックにしており(マカン14.3:1に対してQ5は15.9:1)、「918スパイダー」からインスピレーションを得て新たに開発されたマルチファンクションスポーツステアリングホイールからは、より重めの感覚が得られる設計となっている。ポルシェのSUVに電子機械式のステアリングシステムが装備されるのはこれが初めてだが、エンジニアの話によると、マカンにはこのシステムが最適なのだという。それはモーターがラックの中に収められた内蔵型となっているため、優れたパッケージングを実現でき、アクティブステアリングの性能も、オプションのレーンデパーチャーウォーニングとうまく融合するからだという。



マカンには、前後で異なるサイズのタイヤが装着されている(カイエンは前後同サイズ)。ポルシェのスポーツカーに共通する、この後輪側がより太いセットアップが選ばれたのは、マカンのユニークな4WDシステムと相まって、トラクションと走行安定性が向上するからだ。念を押すようだが、マカンの4WDシステムは、リアが重い「911」のために設計された4WDシステムと共通なのだ。

マカンSには標準で18インチ(フロント235/60R 18、リア255/55R 18)、マカンターボには、19インチ(フロント235/55R 19、リア255/50R 19)のホイールとタイヤが装着される。またこのほかに、18インチから21インチまで、様々なサイズのホイールとタイヤの組み合わせが用意されている。

ポルシェは、ドイツ・デュッセルドルフのちょうど南西にあるグレーヴェンブロイヒのドイツ自動車連盟(ADAC)交通安全センターで、短時間だがマカンの試乗の機会を設けた。運転は許されなかったが(2、3カ月後には自ら試乗することができるだろう)、この試乗は助手席からマカンのドライビングダイナミクスを観察するチャンスを筆者に与えてくれた。

まず最初は、起伏の多い0.5マイル(約805メートル)のロードコースを高速で数周走った。傾斜のついたコーナーや、アップダウンの多いコースだ。ところどころ濡れた路面があるのは仕方ない。テストドライバーは、各ドライブモードでマカンSを猛烈にプッシュし、PDKとPTMが、異なったプログラム下でどのように動作するかを見せてくれた。予想通り、マカンはほとんど問題なくコースを周回した(もちろん、森の中に突っ込んでしまうとも思っていなかったが...)。ボディのロールは感じられたが、4WDシステムによってマカンは粘り強く路面をとらえ(この時装着していたのはオールシーズンタイヤ)、走行中アンダーステアはほとんど顔を出さなかった。一番感動したのは、急傾斜で、時速65マイル(約105km/h)のスピードが出る恐ろしいほど高さのあるコーナーのバンクを、マカンはしっかりと冷静に駆け上がり、コーナーを抜けたあとは内側のサスペンションが縮んで、素早く姿勢を立て直したことだ。必然的に重心が高くなるSUVは、通常こんな風には走らない。



ポルシェは、オフロードの走破性においては、マカンよりもカイエンの方が優れていることを認めているが(同時にサーキット走行ではマカンの方が上とも認めている)、それでも筆者は、ぬかるみや岩が多い、やや走行困難な悪路での試乗に参加した。最低地上高とサスペンションの接地性能に問題はなかったが、急勾配のぬかるんだ路面を上る時には、トラクションを得ようとPTMが猛烈に作動した。その結果、マカンはすべての坂を越え、45度の傾斜の坂も楽々とクリアした(ポルシェは中東で撮影したマカンの"砂漠走行"のビデオも公開した)。ただ、このようなオフロード走行には、ディファレンシャルロックを備えたもっと優秀なクルマがある。もし自分のガレージにマカンがあったとしても、モアブやルビコン(両地ともオフロードを楽しむ場所として有名)のオフロードトレイルには、他のクルマを選ぶだろう。

2回にわたる短時間の試乗で、マカンの本当の姿が明らかになった。それは、クロスオーバーの皮をかぶったスポーツカーだったのだ。

依然としてアウディ「Q5」、BMW「X3」メルセデス・ベンツ「GLKクラス」などのライバル達は、フルサイズSUVの小型版として造られているが、ポルシェは別のアプローチをとってきたようだ。カイエンが牽引能力とオフロード性能を持つファミリー向けのモデルである一方、マカンは背が高く実用性の高いスポーツカーであり、その姿がたまたまカイエンに似ているのだ。

ここまで技術面を中心にマカンを見てきたわけだが、この小型クロスオーバーを、ユニークで、ワクワクするようなドライビングを実現するクルマにするために、ポルシェが注ぎ込んできたリソースの量に感動せずにはいられない。この新型モデルのハンドルを自ら握るまでは最終評価は控えるが、このクルマと1日を共にして、一つはっきりと分かったことがある。それは、マカンを"Q5にポルシェのバッジを付けたクルマ"だと片付けるのは、浅はかとしか言えない、ということだ。

【基本情報】(マカンターボ)
エンジン:3.6リッターV型6気筒ツインターボ
パワー:最高出力400ps /最大トルク550 N・m
トランスミッション:7速PDK(ポルシェ・ドッペルクップルング)
0-100km/h:4.8秒
最高速度:266km/h
駆動方式:4輪駆動
車体重量:1,925kg(DIN値)
座席数:2+3
メーカー希望小売価格:9,970,000円

By Michael Harley
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

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