【試乗記】2015年型 スバル「WRX」
日本では東京モーターショーが開催されていた2013年11月、アメリカのロサンゼルス・モーターショーで発表されたスバルの新型「WRX」。今回はAutoblog US版の記者によるその試乗記をお届けしよう。ただしこれはあくまでも「米国仕様」なので、(これまでと同様に)日本向け仕様はスペックやモデルラインアップが異なる可能性も高い。ご参考までにお読みいただきたい。

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スバル「WRX」のハンドルを握る度に筆者は思うことがある。両親のどちらかが、トップ・シークレットを扱うスパイで、フィンランドで諜報活動をしていたらよかったのにと。 もし筆者が優秀なドライバーを生み出しているフィンランドで育ったら、子供の頃にラリーカーをコントロールする術を身につけ、プロのWRCドライバーとし て、スリリングでやりがいがある、素晴らしいキャリアを過ごすことができたのにと思うからだ。

スバルはWRXの試乗プログラムをカリフォルニア州北部の公道で実施した。これには、明確なメッセージがある。両側に木々が生い茂るこの山間道路は、いくらか危険な匂いがする。この長い道は、登ったかと思えばすく下がることの繰り返しで、見通しの悪いコーナーや水をかぶった路面に出くわすというロード・コンディションだった。そして言うまでもなく、ほとんどのコーナーの内側には雪や氷が残っていたり、砂利が散らばっていた。しかし、私はにやにや笑いを止めることができなかった。私と同乗者は2速と3速をシフトしながら走り、正確なステアリングのインプットと出来のよいブレーキのおかげで、安全に、そして、木に頭から突っ込むこともなくドライブを続けることができた。WRXは路面を余すところなく、凄まじいまでのバランスを保ちながら、この道を攻略していった。今回の試乗で、自分がどれほどこのクルマを愛していたのか、思い出させてくれた。

こうして100エーカーに拡がる森でスバルが情熱を注いできたWRXを体験したわけだが、それだけでは充分とは言えない。そこで、今度はカルフォルニア州の海岸沿いを走る1号線でWRXを満喫。長い試乗が終わって、私は理解した。スバルが「WRXは最高のドライビングをお届けします」と言っていることは、単なるPR用のたわごとではなかったということだ。もちろん、いくつかの妥協があるにはあるが...。




今までもWRXは決して姿形が美しいというクルマではなかった。新型は2013年にNYオートショーで発表した最高にホットなコンセプトカーをベースにしているはずにも拘わらず、今までの傾向を打ち破ることはなかった。そして、私は今までのWRXに試乗した時と同じセリフを言うことになる。運転している時に姿形は目に入らないと。スバルの幹部連中も、WRXを買う人はカッコイイから選ぶわけではないということが分かっている。

しかし、何が非常に悲しいかと言えば、では、機能性を求めてこの新型モデルを買うかといえば、必ずしもそうではないということだ。ハッチバック・ボディはなくなってしまった。スバルは蘇らせるつもりはない。スバルのエンジニアに5ドアの生産を中止した理由を聞いたところ、基本的にはコストの話に行きつくという返事が返ってきた。2種類のボディスタイルを生産するのか、その資金をシャシーやパワートレインの開発につぎ込むのかという選択の問題だ。スバルは、2種類のそれなりに良いクルマを作るより、1種類の素晴らしいクルマを作ることに決めたというわけだ。理屈は理解できる。しかし、機能性が高く、外見も素晴らしい5ドアを選んだ先代WRX購入者の半数に、その理屈を説明をする立場にはなりたくないと筆者は思った。

スバルはモデル名からインプレッサを外したことを含め、ルーツである「インプレッサ」との違いを新型WRXにはふんだんに盛り込んだと言っている。その違いは乗ってみればすぐに分かるが、一見しただけではなかなか分からない。WRXは標準型のインプレッサより、少しばかりサイズが大きくなった。ホイールベースは0.5cm、全長は約1.5cm長くなり、全高は約1cm高く、そして全幅は約5.6cmも大きくなっている。ボディ・パネルのほとんどが変更された。しかし、窓ガラスとルーフ、トランクの蓋はインプレッサから引き継いでいる。払われた費用と努力を考えれば、平凡な従兄弟のインプレッサとこの王者たるWRXの間で、ビジュアル的に大差がないことに失望したと言ってもいいだろう。




サイズ以外で変わった点は、新しくデザインされたダークガンメタリック・カラーの17インチ・ホイールを採用したことだろう。これは現行型STIと似た5スポーク・パターンで、これまでWRXのオーナーが大騒ぎをして求めていたものらしい(しかし、あのWRC仕様のゴールドのホイールはどこへ行ってしまった!?)。さらにLEDのヘッドライトや(最上級グレードのみ)、テールランプにもLEDを採用している。そうした変更を施した結果...でもやっぱり、単にインプレッサの高性能バージョンのように見えてしまう。だが、路上でWRX以外のクルマと見間違えられることは、特に象徴的な「WRブルー」のボディ・カラーであれば、まずないだろう。

他にもインプレッサっぽさが感じられてしまうのがインテリアだ。内装のパーツの多くがハイパフォーマンス・モデル(つまり高価格でもある)用にグレードアップしているにも関わらず、このような印象を受ける。しかし、これに関しては特に言うことはない。合成樹脂のドアは、それなりによく見えるし、センターコンソールとダッシュボードにはカーボン調のパネルが新しく使用されている。全体としてみれば、インテリアは特別なものではないが、きちんとよくまとめられていると言えるだろう。すべてが操作しやすく、間違いなく見た目の形より機能が優先されている。後部座席には十分なスペースがあり、大人2人、小柄な人だったら3人は座れるだろう。このリア・シートは可倒式なので、大きな荷物も後ろのトランクから入れることができる。ただしもちろん、ハッチバックと比べたら簡単に入れられるわけでもないし、実用的でもない。

スバルがインテリアに加えた改良点で述べておくべきことはまだある。まず、ステアリング・ホイールの形状が変更されたこと。フラットボトムで径が小さくリムが太くなっている。お陰で山道における頻繁な切り返しも容易になった。また、新しくなったフロントシートは座り心地がよく、ホールド性も今まで同様にしっかりとしている。先代のようなヘッドレスト一体型シートバックではなくなり、調整可能なヘッドレストが装備された。さらに良くなったのは、6速マニュアル・トランスミッションのシフトレバーだ。これは現行のSTIに使われているユニットに近い。よりストロークが短くなり、操る楽しさが感じられる。




しかし、新たに採用された2.0リッター水平対向4気筒エンジンの話になると、興味は半減する。これは本質的には2014年型「フォレスターXT」に搭載されているエンジンの改良版だ。WRXでは最高出力268hp/5,600rpm、最大トルク35.7kgm/2,000-5,200rpmにチューンされているが、先代と比べると、最高出力で3hp、最大トルクでは約2kgmのパワーアップが実現しただけである。また、このエンジンは2014年型モデルより約27kg車重が増えた車体を動かさなければならない。著者が試乗したマニュアル・トランスミッションを搭載モデルの車両車重は約1,482kg。したがって、スバルは6速MTモデルで0-60mph加速5.4秒と、先代モデルより若干遅くなると見積もっている。しかし、5.4秒というのは、かなり控えめな数字だとスバルも認識しており、筆者の体感的にもそのとおりだと思う。

トランスミッションは6速マニュアルが標準(万歳!2014年型の5速マニュアル・トランスミッションより1速多い!)。また、新開発の無段変速機(CVT)も用意されている。問題は、エンスージァストにとって、どちらが受け入れがたいかということだ。つまり、スポーツ・セダンにCVTが採用されるという事実か、それともこのCVTがかなり良いということを認めることか。私なら、ためらうことなく変速レバーがついているWRXを選ぶ(スバルもWRX購買者の80%はマニュアル・トランスミッションを選択するだろうと考えている)。しかし、CVTも実際のところ、悪くはない。かつてスバルがWRXに載せていた、旧い4速オートマティックに比べるとはるかに良いと言い切れる。

CVT搭載車には、SI-DRIVEが装備されている。SI-DRIVEには、 I(インテリジェント)、S(スポーツ)、S#(スポーツシャープ)という3つのドライビング・モードがある。CVT搭載車の試乗では、大半の時間をスポーツシャープに設定して運転した。スポーツシャープには8段ステップ変速("疑似ギア")が装備されており、ステアリングホイールのパドルシフトで操作できる。かなり魅力的にセットアップされており、シフトアップもシフトダウンも変速は素早かった。シフトを自動に任せて走行すると、CVTはスロットルとブレーキのインプットに合わせて、必要なところでタコメーターの針がカチっと動き注意を引く。コーナーリング中にも高回転を維持し、ブレーキングすると積極的にシフトダウンを行い、常に最高のパワーが引き出せるように、回転数をパワーバンドの中心から外さない。これは驚くほどよかった。本当に。



パフォーマンスについて言えば、CVT搭載車の場合、いくらか落ちる。0-60mphで5.9秒とスバルは話しているが、これも控え目に言ってという話である。また、スバルの説明によると、SI-Driveのスポーツモードにはローンチ機能が搭載されているという。スポーツモードでブレーキとスロットルを同時にホールドすると、エンジンは回転数を保ち、ブレーキ・ペダルから足を離せばWRXは急発進する。(つまり、ブレーキトルクの仕組みだ)。筆者は実際に試してみた。できるだけエンジンの回転を高く維持するだけで、拍子抜けするほど簡単に60mph(約96.5km/h)まで加速した。しかし、これは我先にとスタートダッシュしたい人たちにとっては、最高にクールな仕掛けだろう。

また、CVTを搭載すると燃費が向上するというが、それは、すぐに実感できるものではなかった。環境保護庁(EPA)の公式な数字は今後、出てくるだろうが、スバルは市街地19mpg(約8 km/ℓ)、高速道路25mpg(約11km/ℓ)、複合21mpg(約9 km/ℓ)と言っている。この数字はいただけないが、スポーツモードで環境保護庁のテストを受けたからだという。WRXのオーナーの大半はスポーツモードを使用するだろうとスバルは考えている。インテリジェントモードで走行した場合には、市街地23mpg(約 10km/ℓ)、高速道路30mpg(約13 km/ℓ)、複合25mpg(約 11km/ℓ)と燃費は向上する。しかし、インテリジェントモードを使用するドライバーが少なければ、この数字は現実的ではない。それで、現実に達成できる数字で行こうとスバルは決めたと説明している。6速マニュアルを搭載したWRXは、市街地21mpg(約9km/ℓ)、高速道路28mpg(約12km/ℓ)、複合24mpg(約10km/ℓ)。ドライビングの楽しさを考慮すれば、悪くない数字だ。

マニュアル・トランシュミッション搭載のWRXのどこが素晴らしいかと言えば、スイッチを切り替えるドライブモードがない点だ。車に乗り、エンジンをスタートさせ、走り出す。大騒ぎもドラマもない。必要な時には、いつでもパワーを引き出せる。6速のシフトレバーはギアに確実に入り、クラッチペダルには適度な重みがあり、スロットルのインプットに完璧に合っている。クラッチはとても自然な感じでつながり、スロットルは非常にリニアで、調整がしやすい。



2015年型WRXには、非常に多くのチューニングが施されている。先代より、さらにアグレッシブに、より一層大胆になった。ステアリング・ギア比は15:1から14.5:1へ速められ、スバルのエンジニアによると、BRZより鋭く曲がれるようになったという。確かに、思う通り直ちに向きを変えてくれる。新しくなった電動アシスト付きのラックからは、ステアリングフィールを十分に感じることができた。切り込んだときの手応えもリニアで、ドライバーに確実なフィードバックを伝えてくれる。

サスペンションのチューニングは、先代から変わっていない。マクファーソンストラット式サスペンションをフロントに、ダブルウィッシュボーンをリアに採用している。しかし、それがいいところでもある。私がWRXのサスペンションで気に入っているところは、過剰に荒れた感じがしない点だ。路面の凸凹を許容する優しさみたいなものを感じるし、日常的なドライブにも使えることを改めて主張する。ハイウェイを5時間ぐらい走ったところで、なんら問題はなかった。

2.0リッター・ターボエンジンの推進力の有効活用するために、素晴らしいチューニングがなされている。スバルは新型のトルクベクタリング・システムを採用。筆者が走行した森の中といった道では、すぐにその効果が分かる。コーナーの出口ではしっかりとトルクが掛かり、曲がっている最中に後輪が車体を押し進めているのが確かに感じられる。そのおかげでほとんどスリップすることなく、タイトなコーナーを素早く回れるのだ。マニュアル車の場合、4輪駆動の前後輪へのトルク配分は通常50:50になっている。CVT搭載車は45:55に設定されている。もちろんこの配分は可変式で、必要とあらば100%全ての駆動を後輪のみに伝えることもできる。



ブレーキのパフォーマンスも改良された。フロントには、デュアルピストン・キャリパーと12.4インチのベンチレーテッド・ローターを採用。先代は直径11.6インチのユニットだった。リアの方は変わらず、シングルピストン・キャリパーと11.3インチのソリッド・ローターが装着されている。公道を走っている時には、これ以上、高性能のブレーキパフォーマンスが必要だとは思わなかったが、ペダルを踏んだ時の感覚が、もう少し改善されて欲しいと感じた。残念ながら、ブレーキ・ペダルの踏み初めにかなりあいまいな領域がある。気合いを入れて飛ばしている時、必要な制動力を引き出すためには、つま先をフットボードへ深く踏み込まなければならなかった。フェード現象については、カリフォルニア北部の最高に素晴らしい道路を何時間も走りまわっても発生しなかった。

この試乗で特に驚くべき体験はなかった。期待していた通りだと言える。先代モデルよりいい出来に仕上がっているが、それでも、相変わらずスバルらしい風変わりな感じが、妙なスタイリングや、無味乾燥なインテリアに残っている。近年、スバルはWRXとSTIを合わせて1万3,000台から1万4,000台を販売しているが、2013年の販売台数はさらに増えたとみられている。スバルは、ハッチバックの製造を中止したにも関わらず、同様の販売台数を2015年型WRXに見込んでいる。価格は先代モデルとほぼ同じ2万629500ドル(約264万 円)からと発表された。現在予約受付中で、発売は2014年春の予定だ。

新型のWRXは物凄く楽しいクルマの1つだ。先代の長所は引き継ぎ、研ぎ澄まされている。そして先代の短所も、そのまま引き継がれている。つまり、パーフェクトだとは言えない。WRXをフォードの「フォーカスST」や人気が衰えないフォルクスワーゲン「ゴルフ GTI」と比較してけなすのは簡単なことだ。フォーカスもゴルフもずっと洗練されたインテリと、ホットハッチの典型的なダイナミックスさを備えている。しかし、WRXの天候を選ばない走行性能は、四季を通じてどんな天候の下だろうとドライブを楽しみたいと考えているオーナーにとって、そんなものは問題でないと思わせてしまう。公道を走れるラリーカーとして、スバル WRXより素晴らしいクルマは他にない。

【基本情報】
エンジン: 2.0リッター水平対向4気筒ターボエンジン
パワー: 268hp / 258 LB-FT
トランスミッション:6速マニュアル・トランスミッション
0-60mph: 5.4秒
駆動方式: 4輪駆動
車両重量: 3,267ポンド(約1,482kg)
座席数: 2+3
荷室容量: 340ℓ
燃費: 市街地21mpg(約9km/ℓ) 高速道路28mpg(約12km/ℓ)
基本価格: 26,295ドル(約268万円)

By Steven J. Ewing
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:日下部 博一

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