※【試乗記】 2015年型 日産「GT-R」(ビデオ付)
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2013年11月に横浜の日産グローバル本社ギャラリーで発表された、2014年モデルの「GT-R」。アメリカでは"2015年型"として、2014年初め頃から販売が始まる予定だ。それに先駆け、来日していち早くこの最新型GT-Rに乗ったアメリカ版Autoblogの記者による試乗記をお送りしよう。


1969年、日産から初代「スカイラインGT-R」が誕生した。それから46年が経つが、ほぼ半分の年月はGT-Rが生産されていない。初代と2代目は1969年から1973年まで造られ、次の3世代は1989年から2002年まで生産された。そして、最新モデル(現在はスカイラインGT-Rではなく、「GT-R」だが)はこれまでのところ、2009年から2015年(型)まで続いている。46年のうち、25年間はGT-Rは物質社会の一員であったが、残りの21年間は不遇の時代を過ごし、姿を消していた。

しかし、その46年の中でも、特に1989年から1994年の5年間にGT-Rの伝説とカルト的な人気が生まれた。当時、2.6リッター直列6気筒エンジンを積んだコードネーム「BNR32」(ファンやライバルからは単に「R32」と呼ばれている)のシャシーは、モータースポーツ界全体にショックを与え、600hpのパワーと4輪駆動、4輪操舵を武器にグループAのツーリングカーレースの真ん中を「どうだ!」とばかりに疾駆した。

1968年から1972年の間に日本のレースで49連勝したのは、「PGC10」(初代4ドア・セダン)と「KPGC10」(初代2ドア・ハードトップ)。R32の連勝記録を上回り、日本のスーパーN1耐久シリーズで50戦50勝し、さらにはニュルブルクリンクで8分の壁を初めて破った量販車は、「R33」(1995年~1998年)だ。そしてチャンピオンシップを制覇するクルマであり続け、同時に母親のクレイジーな妹とプレイステーションに夢中な弟を何とか家へ連れて帰ることができるような、カッコよくて顎の角張ったGT-Rに進化したのは、「R34」(1999年~2002年)だった。

だが、全日本ツーリングカー選手権で初戦から29連勝し、4年連続グループAのシリーズチャンピオンに輝いたのは、R32だ。オーストラリアのバサースト1000kmレースで2年連続優勝し、オーストラリアツーリングカー選手権で3年連続優勝したことで(その後、競技からGT-Rを追い出すためにレギュレーションが変更された)、オーストラリアで「ゴジラ」の愛称がついたのもR32だ。さらに、ベルギーのスパ・フランコルシャン24時間レースで3年連続クラス優勝を飾ったのもR32だ。そもそも、レース対応が可能な電子制御トルクスプリット4輪駆動システム「アテーサE-TS」と電子制御4輪操舵システム「SUPER HICAS」を一般人にも与えてくれた量販車のスカイラインGT-R、276hpを発揮するペガサスを生み出したのは、R32だった。さらに言えば、たった4つの市場(日本、香港、オーストラリア、ニュージーランド)で、この全てをポルシェの半額でやってのけたのは、R32だったのだ。ちなみに1997年になって、ようやく英国にR33の輸出が開始された。

昨年11月に開催された東京モーターショーで著者が猛烈な勢いで取材した翌日、ほんのつかの間だが、我々は新しくなった「R35 GT-R」と「GT-R NISMO」を試乗する機会に恵まれた。両車は、R32と"へその緒"でつながっているスーパークーペだ。もっと証拠を挙げるなら、スカイラインGT-R初のNISMO版、つまり、ボディカラーはガンメタルグレーしかなく、空力の改良が加えられ公道走行可能なホモロゲーション・モデルの生みの親はR32なのだ。

日産によると、この新しくなったGT-Rはより成熟したという。試乗してみて、我々は"成熟"の定義によってはその通りだと認めるつもりだ。もし前年型のGT-Rが飼い慣らされていないトラだとしたら、日産は少なくともこのトラにカウチやカーペットでオシッコをしないように躾けたと言える。しかし、まだ油断は禁物だ。「トラの逆鱗に触れるから突然動き出してはならない。それに、トラは恐怖を感じ取ることができる。だから...」











2015年型GT-Rの開発にあたってエンジニアたちが分かれ道に立った時、彼らはどちらか一方を選ぶのではなく、両方の道を進むことにした。GT-Rは、絶対的な速さとニュルブルクリンクのラップタイムについては問題ないところまで到達していた。最高出力480hpを発生させる2009年型はニュルブルクリンクを7分29秒03で走ったが、545hpの2014年型では7分18秒60になり、11秒もタイムを縮めたのだ。

必要とされていたのは、「もっと速く!」ではなく、マナースクールでの上級コースだ。GT-Rは最初に登場したときのような騒々しいマシンの姿をした獰猛な牛ではなくなっていたが、購入者はこのクルマが予想以上のノイズを発すると認めた上でディーラーで契約書にサインしなければならなかった。これは、あまりに大きな走行音にオーナーたちがどこか故障しているではと思い込み、慌ててディーラーに持ち込むのを防ぐためである。

そこで日産は、今回の開発の分かれ道にさしかかった時、右の道では速さを追求し続けるハード仕様のNISMOパッケージを造り、左の道では少しばかり冷静で、リラックスしていて、落ち着いた標準仕様のGT-Rを造ることにしたのだ。











標準仕様のGT-Rでは、4輪の接地荷重をより均等に配分するため、サスペンションを中心に改良が施された。ストロークが長くなり、新しいフロントスタビライザーが採用され、バネ定数が調整された。ブッシュも見直され、ショックアブソーバーのバルブを制御する電子装置も修正された。その結果、第1にグリップ力が高まり、第2に成熟した証として、滑らかな乗り心地が生まれ、ストレートラインを維持するためにステアリングホイールをせわしなく操作する必要がなくなった。

低速走行で必要とされる操舵力を軽減するため、新しいステアリングポンプが備え付けられた。ブレーキはよりリニアな反応を示し、制動力の調整もしやすくなっている。製造工程の改善とさらに正確になった部品同士の合わせ込みにより、リアのボディ剛性が高められている。20インチのダンロップタイヤ「SP SPORT MAXX GT DSST CTT」はコンパウンドが新しくなり、サイドウォールが固く、段のあるトレッドブロックがロードノイズを軽減する。キャビンは、22ポンド(約10kg)増えた防音材のおかげで、以前は騒々しかったドライブラインからのノイズが遮断されている。さらに、オプションでボーズのオーディオシステムを取り付ければ、「アクティブ・ノイズ・キャンセレーション」も装備される。

"洗練"に主眼を置いたGT-Rは、目に見える部分の部品に施された変更はほとんどなく、主に装飾的なものだ。機能的な変化といえば、「アダプティブ・フロントライティング・システム」を採用したヘッドライトだろう。4つのLEDライト(3つロービームと1つのハイビーム)が備わり、犬の足のように曲がったデイタイム・ランニング・LEDライトがアクセントになっている。その他に、4つのLEDテールライトがドット状から一続きのラインになり、サイドベントのエンブレム部分のデザインが新しくなった。ボディカラーは、新たに「ゴールドフレークレッドパール」(近くで見てみるとゴールドに色づいたガラスフレークが見える)が加わっている。インテリアでは、カラーに淡いアイボリーが追加され(日本では「Premium edition」専用オプション)、シートやシフト周りのステッチが増えている。「Black edition」を選ぶと、アルミ製に比べて重量が半分になるカーボン製のトランクリッドにドライカーボンのリアウィングが装着される。




















今度は、右の道で造られたGT-R NISMOを見てみよう。オリジナルのR32と1997年に発売された400hpの「R33 NISMO 400R」に続き、GT-Rの歴史の中で3代目のNISMOの冠をかぶったGT-Rだ(「R34 Z-tune」もNISMOで造られたが、異なる哲学で造られた野獣なのでここには含めていない)。このGT-R NISMOは最高出力600hpと最大トルク66.5kgmを発揮し、より速く走るための役割を担う。

ボディは、ドアとバックライトの開口部周りのボディシェルに接着剤を増やしたことで剛性が高まっている。ボンネットの下には日産のGT3レーシング・プログラムから受け継いだ2つの大きなターボが備わり、イグニッションのタイミングコントロールが改善され、燃料ポンプも大きくなっている。最高出力を標準仕様から55hp引き上げたのに伴い、専用のビルシュタイン製「ダンプトロニック」ダンパーに装備された減衰力制御ユニットをはじめ、リンクや高剛性のホイールハブボルト、専用開発されたダンロップタイヤに至るまで、サスペンション部分が総合的に見直されている。

新しくなったフロントバンパーはわずかに幅が広くなり、エンジン下のカバーにはストレーキが装着され、リアスポイラーは大きくなっている。また、長くなったテーパー状のリアエンドは、標準仕様と比較して時速186マイル(300km/h)時のダウンフォースを220ポンド(100kg)増大させる。設定された5色のボティカラーには、かつてのガンメタリックの進化版である「ダークマットグレー」が含まれている。こうしたNISMO専用の装備とさらにシャープに磨き上げる「NISMO N Attack Package」(価格は夏頃発表予定)のおかげで、GT-R NISMOはニュルブルクリンクで7分8秒679を叩き出した。オーストラリアの自動車専門サイト『Car Guide』に掲載された内部情報が本当であれば、0-100km/hを2.08秒で駆け抜けるという。



内装は、レカロ製のカーボンバック・バケットシートや至る所に使われているアルカンターラ、センターマークが付いたアルカンターラ巻のステアリングホイールなど、全てが"日常的にも乗れるレースカー"仕様となっている。

残念ながら、GT-Rの分かれ道の話は、ほとんどが資料を読んだもので、我々が実際に経験する時間はほとんどなかった。より洗練された標準仕様のGT-Rに乗ることができたのは、日本の平坦な道で、時間はたったの30分。しかも、時速80kmまでしかスピードを出せなかった。我々が最後にGT-Rに乗ったのは2008年で、その時はポルトガルのエストリル・サーキットでごく初期型のGT-Rを数ラップ走らせたのだが、「建物や側溝に突っ込んでも不思議じゃない」と思ったことが今でも強烈に記憶に残っている。GT-Rで限界に達するということは、既に自分の限界を超えてしまっているということを意味した。なぜならクルマを制御するコンピューターがドライバーのためにあらゆる手を尽くし、ドライバーに自分でコントロールしていると思わせてくれているからだ。もっと正確に言えば、クルマのコンピューターが(普段我々が使うパソコンと同じ2進法だ)限界に達したときは、パソコンのオペレーティング・システムが異常に陥ったときブルースクリーンになるように、優しい警告音やカウントダウンのタイマーを表示して知らせてくれるということはないのだ。

我々は2015年モデルをトイレの躾けができたトラだと考える。安定した状態で直進するクルージングでは、GT-Rはミリ単位の薄い板で覆われた日産「セントラ」のようだからだ。標準のGT-Rに装備されるステアリングホイールは驚くほど細く(写真のBlack editionのものとは異なる)、「370Z(日本名:フェアレディZ)」のステアリングホイールよりも細い。セントラのようにGT-Rを走らせれば、ほぼ同じように振る舞う。単にセントラの燃費を重視したエンジンのサウンドをタイヤノイズとドライブラインのわずかな駆動音に交換しただけだ。ステアリングの切り始めの数度とブレーキペダルの最初の踏み込みでさえ完全に共通している。




ボディを覆っている板をはぎ取ってしまえば(ミリ単位の薄さなのでやるのは簡単だ)、わずかに飼い慣らされた大きな猫が現れる。ステアリングを素早く10度以上切れば、GT-Rは"曲がる"のではなく、旋回心軸を中心に"回る"のだ。ブレーキペダルの最初の踏み込みを抜けると、リニアなレスポンスはそのままだが、イタリア・マラネロにあるフェラーリのF1シミュレーターのペダル(フェルナンド・アロンソフェリペ・マッサが使用するものと同じ)のようにしっかりと堅い。我々はまさにそのシミュレーターを数カ月前に使ったばかりなのでこれは確かだ。スロットルに圧力をかけると、ギアが2段下がり、まるで生命が脅かされているかのように急速に飛び出す。

新しくなったGT-Rは、十分にしなやかだが、しなやかと言うには固い。我々が最近試乗した(もっと高価な)ポルシェ「911 GT3」ほど落ち着いていていないし、洗練されてもいない。だが、我々は喜んでロサンゼルスからラスベガス、あるいはフェニックスまでこれを走らせ、パワフルな雰囲気の中で聞こえてくる独特の低音と、パワフルなその速さを可能な限り楽しむだろう。気が散るような騒々しさは皆無だが、0-60mphを2.7秒以下で疾走できる現代的でハードコアなスポーツカーらしいサウンドを奏でる(2.7秒とは2014年モデルの0-60mphタイムで、日産は2015年モデルのタイムを公表していないが、2014年モデルより速くなっていると話している)。試乗会でR35の進化を体感した他のジャーナリストたちが、この新しくなったGT-Rがどれほど洗練されているかについて話していたのだが、それを聞くのがおそらく一番分かりやすいと思う。我々が「現行型よりも洗練されていると思う?」と聞くと、どの人も「そりゃ、もちろん」と答えたのだ。

我々にとってGT-Rは獣だ。だが、鎖でつながれて散歩に連れて行かれる時は、うなったり暴れたりするのをやめる方法をようやく教わったようだ。



GT-R NISMOの試乗に与えられた時間は、標準のGT-Rよりもさらに短く、千葉県の袖ケ浦フォレスト・レースウェイでウォームアップからクールダウンまでブックエンドで挟まれたような4ラップだけだった。ニュルブルクリンクのノルドシュライフェ(北コース)をわずか7分8秒代で走ることができるクルマにとって、袖ケ浦の1.1マイル(約1.8km)しかない外周はあまりにも短すぎて、4ラップ中3ラップは最終コーナーでまだもう1つコーナーがあると思ってしまっていた。我々が言えるのは、GT-R NISMOは絶対的に速く、ピンのように鋭く、驚異的な素早さで方向転換するということだ。試乗後にテストドライバーの運転による同乗試乗も経験したのだが、もし彼のような優れた反射神経を持っていれば、GT-R NISMOをその重量にそぐわぬ機敏さで走らせることができるだろう。

今年、米国でGT-Rが発売されたら、価格は若干上がるのではないかと予想している(日本では2013年12月に販売が開始された。905万1,000円から)。それでもスーパーカーのパフォーマンスを考えるとバーゲン価格のままだ。スーパーカー界の「コルベット」だと言っていいだろう。罪深く、非の打ちどころのないパフォーマンスやあらゆる点で素晴らしいこと、ライバルとなるクルマほど洗練されてないとしても、ライバルよりも速く走れ、価格はほぼ半額。しかも、楽しみやすく、近づきやすいパフォーマンスになっている。

GT-Rのチーフ・プロダクト・スペシャリストである田村宏志氏は、「GT-Rは圧倒的なハイパフォーマンスを子どものように楽しませてくれる」と話していた。

最新モデルのGT-Rは、オオカミ人間の子ども、だが以前よりも18パーセント毛が少なくなった(やや人間に近づいた)オオカミ人間の子どもである。

【基本情報】
エンジン:3.8リッターV型6気筒ツインターボ
パワー:最高出力545hp/最大トルク64.0kgm
トランスミッション:6速DCT
0-60mph:2.6秒(推定)
駆動方式:4輪駆動
車体重量:3,828ポンド(約1,736kg)
座席数:2+2
ベース価格:未定

By Jonathon Ramsey
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:日下部 博一

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