新型ジープ「チェロキー」
かつて日本でも「XJ」型と呼ばれる2代目モデルが大ヒットした「ジープ・チェロキー」。その後、北米諸国では「リバティ」と名前を変え2世代に渡って作られていたが、2013年、なんと横置きエンジンのFF車「ダッジ・ダート」をベースとするSUVにフルモデルチェンジ(ということは、アルファ ロメオの「ジュリエッタ」とプラットフォームを共有していることになる)。大きく方向転換したにもかかわらず、北米では「チェロキー」の名前が復活した。日本発売に先駆け、本国Autoblog USの記者による複雑な思いが込められた試乗記をお届けしよう。

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新型ジープ「チェロキー」について、読者の皆さんに伝えるべきことが3つある。第1は、新型チェロキーは"ものすごく"いいということだ。

1974年から2001年までの27年間、ジープはチェロキーを生産し、このブランドを築き上げた。12年前、北米ではチェロキーのネームプレートは遠くの丘へ転がっていき、そのまま隠居してしまった。そして、「リバティ(自由)」という含みのある名前のクルマが後を引き継いだ。

そのリバティも今はなくなったが、ファンの間でリバティが恋しがられることはほとんどない。大きな期待をかけられたクルマに取って代わられるからだ。そのクルマは、チェロキーの名を北米の人々に返してくれるだけでなく、年間の北米販売台数が170万台になるミッドサイズ・クロスオーバー・セグメントにジープを返り咲かせることを期待されたクルマだ。しかし、もっと伝統的な"ジープ"を望む人々は、金切り声をあげて懸念を訴え、特にメキシコのファンは、補助灯としっかり固定された堅牢なフロントアクスル、そして牽引ケーブルをつかみ、新型チェロキーを叩きのめして(あるいはウィンチで引っ張って)海へ戻そうとしている。

このことはジープの新たなミッドサイズ・クロスオーバーについて伝えるべき残りの2つを思い出させる。それは、「ジープ・チェロキーは死んだ」ということと、「ジープ・チェロキーは新たなクルマとして続いていく」だ。




まず、どのようにして我々がここにたどり着いたのか考えてみよう。リバティは北米以外では"チェロキー"と呼ばれ続けたが、「チェロキー神話の原型」とはほとんど関係がなかった。昔ならば、汚れたチェロキーを目にすることは、湯気が立つヤギの内臓の山の中から嬉しいニュースを見つけるような、縁起が良い日のしるしだとされた。一方、汚れたリバティを目にすることは、ドライバーが曲がる場所を間違えたか、ピクニックで公園に来てしまったことを暗示した。

しかし本当のことを言えば、リバティに移行する直前のチェロキー(XJ)の生産が終了する頃は、XJでさえ「チェロキー神話の原型」ではなくなっており、ジープ愛好家たちからは、チェロキーはブランドの弱点と見なされていた。

リバティの時代に入り、映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のような進化が始まった。リバティが2002年に登場した時、少なくともジープの基準で言えば内外装ともに丸みを帯びていた。ブランドの伝統である丸型ヘッドライトを踏襲していたにもかかわらず、丸いヘッドライトはリバティがジープ・ブランドから遠ざかってしまったように感じさせただけだった。10年後、リバティが遺言を書き、空へ旅立って行く準備をしていた時、リバティの内外装は15年も時を遡り、「ジープ・ブリック(れんが)」として知られる角張ったデザインに戻ってしまっていた。

リバティはミッドサイズ・クロスオーバー・セグメントにおけるジープの新しい道筋を固めることを目的に生み出されたが、どのように呼ばれようとも、リバティは本当の意味でチェロキーの後を継ぐことはできなかった。しかし、名前が変わったことでチェロキー愛好家は松明を燃やし続けることができ、挽歌を歌いながらリバティが死を迎え、神話が戻るのを待った。そして正式にリバティという名のトラックは生涯を終え、リバティを生み出した時代も終焉した。ジープはこれを言われたくないかもしれないが、ジープはリバティでやろうとしていたことを新型チェロキーで実現している。オンロードでのお粗末な走りと燃費の悪さという二重の足かせを解き放ち、ジープのオフロード走破性を洗練されたインテリアと組み合わせたのだ。



新型チェロキーを一言で表すと(フェイス部分は別として)、まず「予告されなかったようなものではない」と言いたい。2009年11月、(今やジープを含むクライスラー・グループを傘下に収める)フィアットが、5カ年計画(クライスラーグループ製の車の情報サイト『Allpar』に詳細が掲載されている)を発表した時、筆者が聞いたのは、フィアットのプラットフォームで作られるクルマは、7本スロットグリルや「ショート・オーバーハング、台形のホイールアーチ、視認性、耐久性の優れた素材による機能的なインテリア、悪天候時のハンドリング性能、先進の4輪駆動、牽引能力」といったジープのDNAを受け継ぐことになるだろうというものだった。その計画は、「新たな外観、新たな感覚、新たな姿勢でブラントを再建」し、オンロードでの走りや燃費に焦点を置き、さらに"オーナーの最大グループ"、つまり「もっとできるだろうが、楽観は出来ないぞ」と思った時のために"本物の道具"を欲しがる、普段は日常の生活に追われた世界中の"ドリーマー"を満足させるコンテンツを加えることだった。これはオフロードの走破性を犠牲にすることなく達成されなければならなかった。

新型チェロキーは、こうした意図のもとで生まれたクルマの1つであり、その哲学の独創性は効果的にフェイス部分に表現されている。

デザイナーは、新型チェロキーのほぼ全ての部分とディテールの多くを、ジープにとって重要なモノにうまく関連づけている。実際のところ、ブランドキュー(特に米国の軍用4輪駆動車として誕生したジープ・ウィリス)を繰り返し引用しているため、「おぬし、やりすぎだぞ」と思わず言いたくなった。フロントガラスのロアラインがドアミラーから離れ、沈み込んでいる様子は「ラングラー」のハーフドアを連想させると言われている(至近距離から見てみるといい)。マルチメディア・インフォテインメント・システム「Uconnect」のスクリーンとセンターコンソールのエアコンの吹き出し口を囲むデザインはウィリスのグリルとヘッドライト部分を思い起こさせるようにデザインされている(想像力を駆使してくれ)。計器パネル(OK、すっきり整っている)でパーキング・アシスト機能を説明する際に使われるクルマのアイコンもウィリスだ。さらに、おきまりの台形型ホイールアーチがインパネ(すっきり整っていて見た目もいい)上のステッチで表現されている。フロントガラスの底辺には"丘を登るウィリス"のイラストがあり(OK、わかった)、「ジープ・カーゴ・マネジメント・システム」で取り付けられたフックは、それぞれウィリスのフェイス部分があしらわれている(もう十分?)。それに、ジープのオフロードファンにとって聖地であるユタ州モアブのトレイル「ヘルズ・リベンジ」の地図がインテリアのプラスチック部分に型取られている(イースターエッグを探すように、自分で探してみてくれ)。




では、グリルと一続きになった"滝"のようなボンネットはどうだろうか。これは、1970年代半ばに誕生した初代チェロキー(SJ)の縦溝の入ったグリルの繰り返しだ。ジープのデザイン責任者であるマーク・アレン氏によると、デザインチームには気に入ったフロントエンドのスケッチがあり、ライトの位置で遊んでみたらそのスケッチをうまく生かすことができたという。そのためフロントエンドは、上側の細長く鋭くつり上がったデイタイム・ランニング・LEDライトと、グリルのほぼ真下に配置されたプロジェクター式のメインライトが最も目立つようになったというわけだ。

ボンネットの両側に丸くて大きなヘッドライトを付けたとしたら、あるいは、このクルマを"チェロキー"と呼ばなかったとしたら、ジープのデザインチームはこの遠吠えを始めそうな顔をボツにしたかもしれない。外観が気に入らないという理由による人々の憎しみはどれほどだろうか。このクルマがチェロキーだということが気に入らない人々の憎しみはどれほどだろうか。しかしアレン氏は、何か違うことをする必要があったからだけでなく、何か新しいものを作り上げる必要があったと言い、「このクルマを"チェロキー"と呼ばないのは、単に問題を避けているだけだ」と語った。

さらに、デザイナーたちは"ジープ・ブリック"よりも効率的になるように手を打つ必要もあった。「企業平均燃費(CAFE)」という米国で販売される自動車に適用される燃費基準が自動車業界の脅威となり、"新"ジープの中心課題の1つが燃費となったのだ。「以前のブロックのようなチェロキーは空力学的にとても非効率だったので、ブロック型にしようとするのは間違っていた」とアレン氏は話す。




正直に言うと、新型チェロキーの流出画像を見た時、我々はその外観にビックリした。しかし、我々自身の経験は、新型チェロキーの発表時に数人の自動車ジャーナリストの間で行った非公式で完全に非科学的な調査の結果と一致した。それは、「だんだんと好きになる」というものだ。新型チェロキーと1日一緒に過ごすと、外観は気にならなくなり、今ではダイカスト成形のミニカー「ホットウィール」が実物大になったように思える。読者の皆さんも新型チェロキーのデザインに慣れるチャンスがあるだろう。なぜか? それは、我々の非公式で完全に非科学的な見解では、新型チェロキーは爆発的に売れると予想しているからだ。なぜか? それは、新型チェロキーが"ものすごく"いいからだ。

フロントエンドの話はこれくらいにして、(冒険心はないかもしれないが)ハンサムなその他のエクステリアを見てみよう。あらゆる車種のクルマを思い起こさせ、リアエンドに関してはスバル「トライベッカ」さえ話題にのぼったほどだ。チェロキーの周囲を取り囲む"スプライン・ライン"は唯一、ホイールアーチ部分で途切れているが、寝かされたフロントガラスや後ろのリアガラスに取り付けられたパンチの効いたスポイラーといった"流麗な"上側部分と、機能的で質素な下側部分を分断している。キャラクターラインはサイドを引き締め、リアのLEDテールライトは後ろから見た時に上下を分割させている。

チェロキーのインテリアに関して但し書きは不要だ。10時間に及ぶ試乗で、「おっと、これは安っぽい」と思わせるようなモノはただの1つも見つからなかったし、遭遇しなかった。大抵はこの反対のことが起こる。インテリアデザイナーのクラウス・ブッセ氏によると、「新型チェロキーの開発にあたって、我々はリバティを意識しませんでした。その代わり、兄貴分の『グランドチェロキー』を参考にして、どうやったら小さく、もっと手頃な価格のパッケージにできるか考えました。レザーで包まれたインパネとアルカンターラのヘッドライナー以外であれば、(グランドチェロキーの)全ての内装を新型チェロキーに備え付けることができます。また、内装のパーツはグランドチェロキーと同じ素材、または同種の素材から選べます」という。




インテリアのデザインと仕上げは感じが良く、調和が取れている。ビニールとプラスチックは柔らかく触り心地がいい。我々が運転した「ラティテュード」モデル(下から2番目の価格のモデル)のステアリングホイールは肉厚でレザーが巻かれていた。ドアノブはメタル調仕上げのプラスチックだが、本物の金属のような重さや感触(その温度に至るまで)を得られる。「リミテッド」モデルの新しい3スポーク・ステアリングホイールの先には、メーターをカスタマイズできる7インチのスクリーンが装備されている。コントラストカラーとクロスステッチを特徴づけるインテリアの配色は、モロッコやアイスランド、ヴェズヴィオ山、キリマンジャロ山といった国や地形にインスピレーションを受けているという。布地のシートは、普通のクルマなら「まあ、ベストを尽くしたんだろう。でも結局は布だけどね」としか言いようのない部分だ。しかし、新型チェロキーでは違う。シートに使われている生地は、スカンジナビアの人々が着る分厚いコートからヒントを得ている。試乗したラティテュードでは、アイスランドがテーマの生地がしっかりした発泡材を包み込んでいた。黒とライト・グレーがパネル状に組み合わせられ、スポーツシートのサイドサポートから座面にかけて施されたシルバーのクロスステッチによって引き立てられている。1日座っても快適なシートだった。

ジープはインテリアのデザイン目標の1つとして、収納スペースを最大限にすることにこだわった。用途がないスペースには全てポケットが作り込まれているようだ。ダッシュボードにCDプレーヤーがないので、インパネ上に小さな収納スペースを作ることができた。空調ユニットが縦方向に備え付けられていることで、グローブボックスも大きい。ドアのアームレストにもウィンドウスイッチのちょっと先に小さなポケットがある。キャビン中央のアームレストの前には、我々が見たこともないような形のものを入れておくための窪みが存在する。さらに助手席の座面を上げると、シートに作り込まれた収納スペースが現れる。収納スペースの多くにはつまみが付いたラバーのインサートが入っており、簡単に引き出せて掃除ができる。まさに、何でも集める人や冬眠前に餌をため込んでおくリスのような人間のためのクルマだ。

運転席の位置を身長5フィート11インチ(約180cm)の筆者に合わせ、後席に座ってみたところ、膝前は膝を左右に揺することができる程度の余裕があった。シフトレバーはというと、握った感じはいいが、見た目はあまり好きではない。しかし、不満な部分を見つけるには長い道のりが必要だった。




標準で搭載されるエンジンは「タイガーシャーク マルチエア2」と名付けられた2.4リッター直列4気筒ユニットで、最高出力184hpと最大トルク23.6kgmを発揮する。EPA(米環境保護庁)による燃費は、4x2モデルで市街地22mpg(約9.4km/ℓ)、高速道路31mpg(約13.2km/ℓ)、複合25mpg(約10.6km/ℓ)となっている。一度ガソリンを満タンにすれば、高速道路で"約500マイル(約805km)"の走行が可能だという。この燃費をライバル車と比較してみよう。まずはフォード「エスケープ」のSEモデル。最高出力168hpと最大トルク23.5kgmを生み出す2.5リッター直列4気筒の「デュラテック」エンジンを搭載し、燃費は市街地22mpg(約9.4km/ℓ)、高速道路31mpg(約13.2km/ℓ)、複合25mpg(約10.6km/ℓ)だ。最高出力185hpの2.4リッターエンジンを積んだホンダ「CR-V」では、市街地23mpg(約9.8km/ℓ)、高速道路31mpg(約13.2km/ℓ)、複合26mpg(約11.1km/ℓ)となっている。

新型チェロキーにオプションで用意されているエンジンは、初採用となる3.2リッターV型6気筒の「ペンタスター」エンジンで、最高出力271hpと最大トルク33.0kgmを発生させる。EPA燃費は、4x2モデルで市街地19mpg(約8.1km/ℓ)、高速道路28mpg(約11.9km/ℓ)、複合22mpg(約9.4km/ℓ)だ。再びフォード・エスケープを引き合いに出してみよう。最高出力240hpと最大トルク37.3kgmを誇る2.0リッター「エコブースト」エンジンを搭載したモデルでは、市街地22mpg(約9.4km/ℓ)、高速道路30mpg(約12.8km/ℓ)、複合25mpg(約10.6km/ℓ)となっている。

燃費は、新型チェロキーに用意されている3つの4輪駆動システム、「アクティブ・ドライブI」、「アクティブ・ドライブII」、「アクティブ・ドライブ・ロック」の設計から恩恵を受けている。アクティブ・トライブIとIIはベースモデルの「スポーツ」、量販モデルの「ラティテュード」、ラグジュアリー仕様の「リミテッド」にオプションとして用意されている。「アクティブ・ドライブ・ロック」は、「トレイルホーク」モデルに標準装備だ。駆動系から生じるロスをなくすため、4輪駆動の必要がないときには後輪の駆動を自動的に切り離す機能が全てのモデルに備わっている。前輪のみによる2輪駆動時にはプロペラシャフトが回転することさえなく、その先端のシフトカラーは必要に応じて制御される。

アクティブ・ドライブIはパワー・トランスファー・ユニット(PTU)を1つ搭載し、リア・ディファレンシャル・モジュールへ駆動力を送る。アクティブ・ドライブIIになるとPTUがもう1つ加わるので、4輪駆動時に減速比を2.91:1というローレンジに切替えることができる。また、サスペンションが約1インチ(約25mm)引き上げられる。クロールレシオは搭載するエンジンにより異なり、2.4リッターエンジンで56:1、3.2リッターV6エンジンで47.8:1となっている。トレイルホーク・モデルのアクティブ・ドライブ・ロックには、ロッキング・リア・ディファレンシャルが加わる。

新型チェロキーのボディ構造は、65パーセントが高張力鋼でできている。ねじり剛性は約20,066Nm/度で、リバティと比較して36パーセント高まっているという。サスペンションは独立懸架で、フロントがマクファーソンストラット式、リアが4リンク式となっている。小細工や目を見張るような電子補助装置はないが、ジオメトリーが優れている。リアのドライブユニットはクレードル内で分離されており、さらにそのクレードルはボディから切り離されている。アーティキュレーションは、フロントで6.7インチ(約170mm)、リアで7.8インチ(約198mm)となっている。



ずいぶん前にクロスオーバーが誕生した時、その名前はユニボディで乗用車のような構造のクルマということを示す意味しか持っていなかった。各社のマーケティング担当者がクロスオーバーはより乗用車に近い走りができると保証したが、「ボディ・オン・フレーム構造のトラックのような走りはできない」と言った方がより真実に近かった。

しかし、それはその時だけの話だ。現在は数車種のクロスオーバーが最終的に残っている。その1つが新型チェロキーだ。最初の約束を守り、本当に乗用車のような走りを見せてくれる。新型チェロキーには、ダッジ「ダート」と同じ「コンパクトUSワイド」プラットフォームが採用されており、このアーキテクチャーによって何も犠牲にすることなく、落ち着いてセダンからオン/オフローダーへ切り替わることができる。

クライスラーのエンジニアの尽力によって適合されたZF製9速トランスミッションはそうした走りへの取り組みに一役買っている。スロットルを乱暴に操作しない限り、シフトチェンジに気づくことはない。我々がチェロキーをポルシェ「911」であるかのように走らせ始めてようやく、所々、我々なら選択しないようなギアに入る場面に遭遇した。

このトランスミッションの興味深い特徴は、「電子制御式レンジセレクト」が備わっていることだ。市場に出ている多くのギアボックスとは違い、ドライバーは9速の中からギアを選択することはできない。ドライバーが行うのは、利用できるギアのレンジをトランスミッションに伝えることだ。そうするとトランスミッションが現在の走行状況と燃費に最適なギアを選択してくれる。例えば、登り勾配で牽引をする状況で、4速より上のギアに入れたくない時だ。ギアのセレクターを"マニュアル"の位置に動かして4速を選んでも、ギアが4速に入るわけではない。トランスミッションが1速から4速までのいずれかのギアを選択し、それ以上のギアにはならないのだ。

また、4輪駆動システムはチェロキーの高速走行時の挙動も向上させている。どのスピードでもトルクの割り当てを自動で制御し、「スポーツ」モード時は、前後トルク配分を40:60に維持する。



我々は、3.2リッターV6エンジンを搭載したチェロキーに乗り込み、米カリフォルニア州マリブの有名な渓谷で無数のコーナーを全て攻めた。意外だったのは、チェロキーのパフォーマンスについて、ジープだからといって大目に見る必要がなかったことだ。クロスオーバーを運転していると考える必要はなく、いいラインを見つけることだけ考えて走ればよかった。電動パワー・ステアリング・システムはリアルで想定された負荷がかかり、ファイアストン・ブランドのデスティネーション・タイヤ(225/65 R17)は、酷く荒い運転さえしなければ、どのような状況でも路面をしっかりとつかみ、しなやかで静かだった。スロットルやブレーキの操作ポイントで良識を捨てなければ、アンダーステアは起きない。フラつくことはなく、コーナーの中盤までは旋回の体勢は整っていた。コーナー中盤から後半で修正しようとした時でさえ、破綻するようなことはなかった。スポーツ・モードにして、これがSUVではなく乗用車であるかのような気持ち、予想以上に活発な2万ドル(約203万円)半ばのセダンでも運転しているかのようなつもりでチェロキーを限界まで追い込んでみた。すると、まさにそんなパフォーマンスをチェロキーは見せたのだった。

そうは言っても、オフロードでの性能を証明してくれないとジープとは言えない。ジープの担当者が、よりタフで目的意識が強そうに見えるトレイルホーク・モデルの試乗をアレンジしてくれていた。舞台はキャニオン・ランチの熱くて埃っぽく、サソリが出没する丘陵のクローズドコースだ。「Trail Rated」のバッヂが付かない他の3モデルに装備されているトラクション・コントロール・システムの「セレクテレイン」には、「オート」、「スノー(雪)」、「スポーツ」、「サンド(砂)/マッド(泥)」の4つのモードが設定されている。この設定で唯一、不思議に思ったのは、センターコンソールのダイアルで「スポーツ」よりも「スノー」が先に選択できるようになっていることだ。「スポーツ」の方が使用頻度が高いように思うのだが...。リア・ディファレンシャル・ロックを装備するトレイルホーク・モデルには5つ目のモード「ロック(岩)」が用意されている。装着するデスティネーション・タイヤは245/65 R17へと大きくなり、他のモデルよりも車高が1インチ(約25mm)上げられ、全体の最低地上高は約2インチ(約51mm)高くなる。トレイルホーク・モデル独自のフロントとリアのデザインにより、アプローチ・アングル、ブレークオーバー・アングル、デパーチャー・アングルが他モデルと比較して大きくなっている。最後に、フロントとリアに牽引用のフックがあるので、限界以上の行動をした時でも窮地を脱することが可能だ。

以前にも書いたことがあるが、数時間の試乗で試乗車を埃だらけにすることは、そのクルマにどれほどの能力があるのかを探るためのエクササイズだ。大半のオーナーのほとんどは進んでやらないにしろ、こうしたエクササイズを必要とする人もいるのだ。ライバルと比較して、そのクルマはオフロード性能が高いだろうか? イエス。ただしこの答えはランドローバーLR2(日本名:フリーランダー2)」のベース価格が3万7,295ドル(約379万円)もするのでなかったら、また違っただろうけれど。それはジープか? イエス。それはジープ・ラングラーか? ノー。ジープには既にラングラーがあるのでその必要はない。新型チェロキーは、" ドリーマー" のために作られたことを忘れないでほしい。我々が試したオフロード走行のちょっとした部分でさえ、彼らのほとんどにとっては" 悪夢" になるだろう。自分の行動を分かっているならば、新型チェロキーでいろいろな場所へ行くのもいい。オフロードの達人であれば、おそらくジープの中ではラングラーに興味を持つはずだ。




主要な新機能は「セレクスピード・コントロール」で、「セレクテレイン」コントローラー内のボタンを押すと作動する。これはチェロキーを基準速度の0.6mph(約1km/h)から5.5mph(約9km/h)まで、ドライバーの要求によって0.6mph刻みに9段階の設定速度で走らせるものだ。最初、筆者は少々混乱してしまった。セレクスピード・コントロールの真上に「ヒル・ディセント・コントロール(HDC)」のボタンがあり、同様に0.6mph毎の車速を設定できるので、部分的に同じ役割を果たすからだ。しかし、それらの違いはこういうことだ。HDCはESCシステム、エンジントルク、ブレーキ圧を使って下り坂で設定速度を維持し、5段階のスピードしかない。一方、セレクスピード・コントロールは基本的にオフロード時のクルーズ・コントロールで、登り・下りに関係なく、障害物があっても機能し、9段階のスピードが選べる。

ここまでで約9,500字も使っているが、まだ述べていないことがあるので紹介しておこう。3.2リッターV6モデルが誇る4,500ポンド(約2,041kg)の牽引能力、10カ所のエアバッグ、70以上の安全装備、「パラレル/パーペンディキュラー・パーク・アシスト・システム(縦列駐車と車庫入れの支援システム)」、交通渋滞などで進んではすぐ止まる状況でもチェロキーを走らせることができる「アダプティブ・クルーズ・コントロール・プラス」、「フォワード・コリジョン・ワーニング・プラス(前面衝突警報)」、「レーン・センス/レーン・デパーチャー・ワーニング・プラス(車線逸脱警報)」、緊急通報、車線変更時や駐車場での取り回し時の支援機能の「ブラインド・スポット・モニタリング」と「リア・クロス・パス」システムなどだ。

我々は「ダナ(ジープ用部品で知られるアメリカの有名ブランド)」や「ロッキング・フロント・ディファレンシャル」、「トランスファーケース」といった言葉に触れずにここまできた。「堅牢なフロントアクスル」と言ったのはほんの冗談だ。それにもかかわらず、我々はジープ・チェロキーについて話している。それも素晴らしいクルマについてだ。求めていたチェロキーではないかもしれないが、チェロキーは死んでも、チェロキーは新たなクルマとして続いていくのだ。

しかし、ジープがいま再び魅了しようとしている世界中の多くの人達にとっては、このクルマこそが求めるチェロキーであったとしても、我々は全く驚かないだろう。新型ジープ・チェロキーは結局のところ、" ものすごく" いいのだから。

【基本情報】
エンジン:3.2リッターV型6気筒
パワー:最高出力271hp/最大トルク33.0kgm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:4輪駆動
車体重量:4,044ポンド(1,834kg)
牽引力:4,500ポンド(2,041kg)
座席数:2+3
荷室容量:24.6立方フィート(約697ℓ)/54.9立方フィート(約1,555ℓ)
燃費:未定
ベース価格:2万6,495ドル(約269万円)
試乗車価格:3万4,365ドル(約349万円)

By Jonathon Ramsey
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:日下部博一

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