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ポルシェ911に手を加えていこう。まずは標準モデルの「911カレラ」から。その3.6リッター水平対向6気筒エンジンのアルミ製シリンダーのボア径を拡大して3.8リッターに排気量を上げ、リアのトレッドを広げてエキゾーストパイプを2本増設して4本出しにすると、「911カレラS」になる。これに2組の湿式多板クラッチを取り付ければ「911カレラ4」「911カレラ4S」の完成だ。そして2基の過給器とパイプを取り付け、2つのフェンダーに穴を開けて幅広のリアタイヤを付ければ「911ターボ」が、さらに給気圧を上げて560馬力に増大させると「911ターボS」が出来上がる。バージニアスリム(タバコ)のコピー風に言うならば"911は進歩した"モデルだ。

あるいは別の"進化"も考えられるだろう。この3.8リッターエンジン搭載のマシンをドイツのヴァイザッハ研究開発センターへ運び込み、「エサ」を与えてみよう。レースを「エサ」に例えるなら、「911」は最強の肉食動物だ。彼らの住み家は、モーターオイルなどの広告が貼られた壁や、紅白のストライプに塗られたコーナーから出来ている。

さて、先程は手を加えていったので、今度は取り除いてみよう。「911」から重量の嵩む様々なパーツを取り去る。それによって、より鋭い加速やハンドリング、そしてスリルなどを手に入れたマシン。それが「911 GT3」だ。

このやり方は4世代に亘るGT3に共通したものであり、991型ベースの第5世代となる新型GT3でも踏襲されている。従来のモデルよりも剛性が高くて、パワフルかつ速く、操作性も向上した。重量は増したが、新型は期待通り、パワーも増大している。

新型911 GT3を発表会見の冒頭で、ポルシェは第3代アメリカ大統領、トーマス・ジェファーソンの「すべての世代が革命を必要としている」という言葉を引用した。このGT3の進化をこの言葉に例えたのだろうが、実際のところは、新型のトランスミッションがPDKのみと発表されて以来、多くのファンやメディアが抱いていた疑問に答える言葉であったのだろう。その疑問とは「マニュアル・トランスミッションはどうしてくれるの?」というものだ。




このマシンの歴史は、「GT」の名を冠した最初のポルシェである1957年モデルのポルシェ「タイプ356A1500GS カレラGT」に始まる。だが、人気を博すのは70年代に入ってからだ。公道仕様のレースカーとしてポルシェの名をゆるぎないものとした初のマシンは「ダックテールスポイラー」で知られる1972年モデル「911カレラRS」。

初代911GT3は1999年に登場した。車重は1347kg、360hpを叩き出す3.6リッターエンジンを搭載し、0-62mph(0-100km/h)は4.8秒、最高速度は188mphを超えた。そこに採用されていたドライサンプ潤滑システムや鍛造ピストン、チタン製コンロッド、改良されたエンジン・マウント、ロック機構付きディファレンシャルは、この最新型にも受け継がれている。

第2代の997型GT3は2009年に登場。エンジンは3.8リッター、馬力は435hpとなり、0-62mphは4.1秒、最高速度は194mphであった。

そして最新の991型GT3は、3.8リッター水平6気筒エンジンから475hpを叩き出し、0-62mphは3.5秒で、最高速度は195mphである。




GT「3」は元をたどると、1997年に登場したGT「1」に行きつく。GT1はル・マン24時間レースへ参戦するために開発されたホモロゲーションモデル。ちなみに同車のパワーは544hpであった。新型GT3のエンジンは、標準モデルの911のそれとはほぼ完全に異なる。共有しているのはクランクケースとタイミングチェーンだけ。マニホールドは新しくなり、クランクシャフトは軽量化された。また、ドライサンプ潤滑システムやエアインテークも一新された。直噴エンジンを搭載した初めてのGT3となるが、この直噴システムはノーマルのカレラとは別物で、より高圧で燃料を噴射する。

鍛造ウィッシュボーン式サスペンションに取り付けられたハブとホイール・キャリア、ベアリングは大型化したが、アルミ製ダンパーを採用したことは軽量化につながった。またこれまでのGT3と同様、オールアルミのサスペンションは、車高、トー、キャンパーの調整が可能である。20インチ鍛造ホイールは、フロントが先代のGT3に比べ0.5インチワイドな9インチになった。リアは先代と同じ12インチだ。ブレーキは、アルミ製キャリパーを備える380mmの鋳鉄ディスクが標準だが、オプションでPCCB(ポルシェ・セラミックコンポジット・ブレーキ)も設定されている。PCCBはローターにセラミック複合材を用いたスーパーブレーキで、フロントは410mmのローターに6ポッドのキャリパーが、リアは390mmのローターに4ポッドのキャリパーが組み合わされている。これは間もなく発売されるハイブリッド・スーパーカー「918スパイダー」にも採用される。

ボディシェルは、ルーフ、フェンダー、エンジンリッドやドアなどにアルミを多用した高強度鋼とのハイブリッド構造を採用。従来型に比べ、重量は約13パーセント軽くなっている。




様々な装備が削られているGT3だが、最新型では逆に増やされたものもある。まずは車両重量だ。第2世代の997GT3は1395kg、最新モデルは1430kgである。次にエンジンの回転数。旧モデル(先代)では7600rpm(レブリミットの8500rpmより900rpm少ない)で最高出力435hpを出したが、最新モデルでは8250rpm(レブリミットの9000rpmより750rpm少ない)と高い回転数で、475hpの最高出力を発する。トルクも旧GT3の43.7kgmから44.7kgm(いずれも6250rpm)にアップした。

アルミを多用したボディは攻撃性を増した。車高は低く、車幅は広がり、ねじれ剛性は25パーセント向上した。迫力を増したフロント・エアダムには最大限まで低められたリップスポイラーが付き、直線的なラインで大型化されたメッシュ張りのインテークはより大量の空気をラジエターに送り込めるようになっている。ボンネットの端とフロント・スポイラーの間に開けられたエア・アウトレットから排出される熱で、雨が降った午後には水蒸気が上がるのが見えた。

複合素材製リア・ウイングはこれまでと同様に角度調節が可能だが、1993年型「911RS3.8」ではエンドプレートに型押しされていた「3.8」の数字は支柱に移された。このウイングと大型化されたフロント・リップスポイラーの組み合わせにより、ダウンフォースは先代より20パーセント増加している。



最新のGT3ではトランスミッションがPDKのみとなっている。ハンガリー生まれで「脱出王」の異名をとるマジシャン、ハリー・フーディーニがこの世から消え去ったときに、6速マニュアルのトランスミッションも持って行ってしまったのだろう。ポルシェは記者会見で次のように語っている。「我々はマニュアルシフトをとても大切に思っている。だが、それよりも(変速の)"速さ"を愛している」。

ポルシェは設計を見直すことでエンジンの重量を20kg軽減させ、7速PDK導入に伴う重量増を相殺した。PDKは「電光石火」のシフトワークでシフトアップ&ダウンに要する時間は0.1秒以下である。

PDKのギアレシオは7速すべてにおいて最適に設定されている。ちなみに新型GT3の7速は、他の911シリーズのような燃費ギア(オーバードライブ)ではない。スポーツ性の高いギアレシオを採用した7速で、最高速に達するのだ。



PDKのシーケンシャルモードでは、センターコンソールのシフトレバーを押すとシフトダウン、引くとシフトアップする。あたかもシーケンシャルMTのようだ。もちろんステアリング・ホイールにはパドルも装備されている。さらに左右のパドルを同時に引くとニュートラルの状態になり、まるでクラッチを踏んでいるかのような錯覚に陥る。パドルから手を離すと、駆動力がつながる。

PDKを採用したことで、ポルシェ・トルク・ベクトリングプラス(PTV Plus)の使用が可能となった。これまでのモデルには、ロック率を28パーセントと40パーセントに固定したLSD(Limited Slip Differential)が搭載されていたが、新型にはエンジントルクを左右のリアホイールに可変配分するLSDを組み合わせたPTVと電子制御リアディファレンシャルとの組み合わせによるPTV Plusが搭載されている。その結果、計算上ではあらゆるコースでラップタイムが向上するという。ポルシェによると、ニュルブルクリンクの北コースでは従来のGT3より15秒も速い7分25秒でラップするそうだ。

実車に乗りこんでみても、進化したという印象を受ける。スポーツシート・プラスには、GT3としては初めて、シート高の電動調節機能が備わった。ただしシートバックが固定されているタイプのため、米国ではこのシートを選ぶことはできない。室内は"素"の911シリーズとほとんど変わらない(リアシートがないが)が、911GT3にはアルカンターラが多用されている。



早速マシンに火を入れてみる。が、特別なことは何も起こらない。外からは3.8リッターエンジンの音が思いのほか聞こえてくるが、室内を通して聞こえる騒音は遮断されている。郊外の幹線道路を走り出すと、やっぱり特に何も起こらない。荒々しい騒音は聞こえず、サスペンションは快適だ。シートポジションも調整しやすく、ナビゲーションやデュアルゾーン・オートエアコンなどの装備も極めて使いやすい。ノーマルの911を運転しているようだ。シートがカーボン製であることを忘れてしまえば、走行性能を発揮できる道を走らない限り、ロードゴーイング・レースカーに乗っていることを思い出さないだろう。

乗り込むと分かるが、このマシンの真価は、エンジンをかけただけでは分からない。

軽く走行して暖機を行ってから、ワインディングが続く道路を攻めてみる。アクセルを踏み込んで、スロットルを開く。5000から9000rpmの回転域に達すると、すべてが狂暴さを増し、迫力のサウンドを響かせて疾走する。他に聞こえてくるのは、シフトチェンジのたびに発生するPDKのメカニカルノイズだけだ。道に問題がない限りすべてが上手くいき、リアタイヤは路面を捉えて離そうとしない。

コーナーリングは素晴らしい。ステアリングは中立付近では思ったより軽いのだが、舵を切ると直ちに正しい方向へ向きが変わる。単に正確というだけでなく、本物のフィールがある。非常に馴染み深い感触だが、電動式パワー・ステアリングの世界ではめったに出会えないものだ。



サスペンションは1.2インチ低められており、LSDを組み合わせたPTVとリアアクスルステアは大いに役立つ。2014年モデルのポルシェ「911ターボ」では、後輪が2.8度までステアし、GT3では1.5度までとなっているが、これでも十分なパフォーマンスが発揮できる。リアアクスルステアは、31mph(約50kmh)までの走行速度ではフロントタイヤと逆位相にリアタイヤがステアし、50mph(約80kmh)を超えるとフロントとリアが同位相にステアする。このシステムのお陰で、Uターンからヘアピンカーブまで、まるでレールにのっているかのように軽やかに操縦できる。距離のある高速カーブでも心配無用だ。「永久に滑らないぞ」とコ・ドライバーが言ったくらい、非常に粘りのある走りを見せてくれる。「永久に」ということはないが、実際にグリップが失われるのは「もっと危険な走りをしたい!」と一線を越えた運転をしたときだろう。

我々はパドルシフトの愛好家ではないので、常にシーケンシャル・マニュアルモードでドライブし、コーナーの入り口や出口ではレバーを押したり引いたりしてギアチェンジした。これは腕の筋肉を僅かに動かすだけの魂の抜けた(しかし素早い)パドル操作と、第3のペダルを使った恐ろしく時間が掛かる(気がする)シフトチェンジの、ちょうど中間に位置する経験だった。

次に紹介したいのは、素早いスタンディングスタートのためのローンチコントロール機能だ。ブレーキペダルを踏み、アクセルペダルをベタ踏みし、マシンの叫びを聞きながら4500rpmを保つ。そしてブレーキペダルをリリースすると一気に加速。忙しくシフトをしているうちに、気が付いたら200ヤード先にいる。

森じゅうの動物たちを驚かせるような迫力あるサウンドを田舎道に響かせ終えたら、街乗りのスピードに落としてみよう。驚くほど普通の車を運転していると思うだろう。高回転の叫びを聞いていると、かつてディーゼルエンジンの「アウディA7」がひどい暴風雨の中、高速道路で滑って火の車になったことを思い出さずにはいられない。ちなみにGT3はこれまでに、そんなやんちゃな出来事を経験したことがない。なにせアウトバーンを走っていてもロード・ホールディングは抜群。エルビス風に言うならば「俺は君から離れないよ。だって夢中なんだから」というところか。

今日試乗して、唯一困ったことは、大きなリアウイングのせいで、バックミラー越しに後続車を見るのに苦労したということくらいだ。

英の車雑誌『CAR』はかつて各号の最後のページに英国で市販されている車の詳細なスペックを掲載していた。各ブランドを紹介する冒頭には、ちょっとしたコピーが付けられていた。ポルシェにつけられていたのは、「もし、買えるなら、買うべきだ」という一文だ。

ことGT3について言うのなら、この一言だろう。「即、買いだ!」

【基本情報】
エンジン:3.8リッター水平対向6気筒
パワー:最高出力475hp/最大トルク44.9kgm
トランスミッション:7速PDK
0-62mph:3.5秒
最高速度:195mph(日本の公式HPでは315km/h)
駆動方式:RR
車体重量:1,430kg
座席数:2
荷室容量:125ℓ
燃費:TBD
メーカー希望小売価格:13万400ドル(約1280万円)から

By Jonathon Ramsey
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:日下部博一

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