【試乗記】「最も速く、楽しい4シーターだ!」 フェラーリ2013年型「FF」(ビデオ付)
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「ママに会いたい」。筆者の運転するフェラーリ「FF」の後部座席でチャイルドシートにピッタリと収まっている5歳の少年から、恐れていた言葉が発せられた。この試乗の少し前、筆者はこの少年の父親の許可を得て、彼と彼の2人の兄弟をこれまで彼らが乗ったことのないスーパーカーというものに乗せてあげたのだが、これはひどく失敗だったようだ。

筆者は少年をリアビューミラー越しに見ようと首を右に伸ばし、「今なんて言ったの?」と注意深く尋ねた。数秒の沈黙が筆者を緊張させた。少年に何かショックを与えてしまったのか、もっと最悪の場合、むち打ちにでもさせてしまったのではないかと不安になったのだ。

この651hpのパワーを発揮するイタリア車が面倒を起こすのは分かっていた。




フェラーリは2011年のジュネーブモーターショーでこのFF(フェラーリ・フォー)を発表した。先代の「612スカリエッティ」とは違い、この新型モデルにはいくつかのかなり新しい試みがされている。まず、ピニンファリーナが手掛けたボディは2ドアのシューティングブレイクとこれまでにない個性的なデザインで、2ドアながら4シーターで、大人2人が快適に座れる後部座席と大容量の荷室を持っていること。2つ目はフェラーリの市販車としては歴代最大排気量となる6.3リッターV12エンジンを搭載していること。最後に、これまで60年以上にわたり後輪駆動のクルマを造り続けてきたフェラーリにとって初めての4輪駆動モデルであることだ。

Autoblogの記者であるマット・デイヴィスが2年前にイタリア北部のドロミテ山群でFFの初試乗を行ったが、今回は筆者が走り慣れている南カリフォルニアで、この4シーターのイタリア車を数日間にわたって試乗する機会を得た。

実際に目にしたFFは、筆者がこれまで見た画像やビデオから想像した姿よりも大きく、全長も驚くほど長かった。FFが筆者のもとに到着したとき、ちょうど私の駐車スペースの隣にベントレー「コンチネンタルGTスピード ル・マン リミテッド エディション」が並んでいたので、両車を比べることができた。FFはベントレーのライバル車よりも全長は長く、車幅は大きく、車高は低い。FFはV12エンジンを搭載しているためロングノーズで、室内の快適なスペースを確保するためにホイールベースもワイドになっている(コンチネンタルGTスピード ル・マン リミテッド エディションのホイールベースはFFよりも約200mm短い)。




FFの室内は4人の大人が乗っても窮屈さを感じることがない。フロントシートは温度調整の可能なシート・ヒーター機能を備えた電動式で、リアシートを折りたためば、ラゲッジスペースを増やすことが可能だ。電動テールゲートを備えたトランクの容量は最大28.3立方フィート(約800リットル)で、旅行用スーツケースとゴルフバッグを数個ずつ積める空間がある。

インテリアはまるで飛行機のファーストクラスのように豪華で、カーボンファイバーとアルミニウム以外の部分はソフトレザーで覆われ、イタリア製のハンドバックのような質感と匂いを漂わせている。全体のバランスと仕上がりもすばらしい。この内装については賛否両論があるかもしれないが、筆者とFFに同乗した人たちの多くは、洗練されたインテリアに魅了された。

FFに乗った人々は、内装や乗り心地を満喫していたが、彼らの足元の下に隠されたテクノロジーについて理解するのは難しかったようだ。その革新技術について説明をしても、彼らは困惑するばかりだった。




FFはフェラーリのトップレンジであるV型12気筒エンジンをフロント・ミドシップに搭載している。6.3リッターの自然吸気式直噴エンジンはアルミニウム製で、最大出力は651hp、最高トルクは69.7kgm。これまで全てのモデルで後輪駆動方式を採用していたフェラーリだが、FFでは新開発の4輪駆動システム「4RM」を採用している。

簡単な言い方をすれば、FFには2つの独立したトランスミッションが搭載されている。フロントは PTU(パワー・トランスファー・ユニット)と呼ばれる2段ギアボックスで、エンジンのクランクシャフトの前端から直接、ギアを介して動力を前輪に伝える。リアはトランスアクスル・レイアウトを採用した7速デュアルクラッチオートマティック・ギアボックスに、ドライブシャフトを介して動力を伝える伝統的なスタイルとなっている。普通に考えれば不可能と思えるような複雑な構成にも関わらず、2つのギアボックスはまるでシルク・ドゥ・ソレイユのアクロバットのように精密な動きで相互に作用している。

試乗中、FFはほとんどの時間を後輪駆動で走った。しかし、それが常に最適とは限らない。そこでFFは高機能のセンサーがトラクションを算出して、パワーをフロントアスクルへ送るかどうか継続的に判断する(フェラーリは、4RM コントロールが予測理論を取り込んだソフトウェアによって、"グリップ力を推測"すると言っている)。そして指示が出されると、PTUが電子制御式の湿式多板クラッチを使って動力を右前輪と左前輪にそれぞれ伝えるという仕組みだ。PTU内に組み込まれたトランスミッションは、リアが1速と2速のときには1速に、3速と4速のときは2速になる。時速が100キロ以上出ている場合、フロントギアボックスは作動せず、後輪駆動のみとなる。



4RMシステムはESC (電子式スタビリティー・コントロール)、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)、EBD(電子制御ブレーキ・バランス調整)、 E-Diff(電子制御ディファレンシャル)、 F1-Trac(F1トラクション・コントロール)といった電子制御システムと結合して機能し、4輪のトルク配分を最適にコントロールしてパフォーマンスを向上させる役割を果たす。4RMシステムは摩訶不思議なくらい難解な構造をしているにも関わらず、その重量はたったの40kgだという。

そして大事なことは、人間がトラクションの制御から完全に蚊帳の外に置かれてしまうわけではない、ということだ。フェラーリはドライバーに、ステアリング・ホイールに搭載された「エヴォルブド(進化した)GTマネッティーノ」と呼ばれる機能を使って、ビークル・ダイナミクスのセッティングを選ぶ余地を残している。ESCオフ、SPORT、COMFORT、WET、ICE-SNOWという5つの走行モードが用意されたこの装置は、スイッチを捻ると即座にグリップ力とダンパーの制御を切り替える。

また、FFは第3世代のフェラーリ磁性流体サスペンション・システムを搭載しており、ダンパー内で電子的に発生させた磁気の変化によってダンパーの粘度を1,000 分の 1 秒単位でコントロールすることが可能だ。このシステムの制御は自動で行われるが、ドライバーはステアリングホイール上に設置されたボタンで、路面の状況に合わせてダンパー設定を柔らかくしたり、車高を持ち上げたりなどの操作を行うことができる。アルミニウム製のサスペンションアームの先には、第 3 世代のブレンボ製カーボン・セラミック素材(CCM)のブレーキが搭載され、軽量の21インチ鍛造ホイールの内側にはアルミ鋳造マルチピストン・キャリパーが覗いている(タイヤサイズはフロント245/35ZR20、リア295/35ZR20)。



筆者はFFのライバル車にあたるアストンマーティン「ヴァンキッシュ」や、ベントレー「コンチネンタルGTスピード」メルセデス・ベンツ「CL65 AMG」を試乗していたので、FFの走りがどんなものか事前に何となく予想していたのだが、実際に乗ってみると、いろいろな意味でその予想は大きく裏切られた。

前述の4シーターのライバル車とは違い、FFはレーシングカーのにおいがプンプンしている。サポート性が高いドライバーズ・シートに乗り込むと、F1マシンを彷彿とさせる様々なスイッチが搭載されたステアリングホイールが目に入ってくる。V8の「458イタリア」と同じで、通常はステアリングコラムやダッシュボードに配置されるスイッチ類(スタートボタン、ウィンカー、ワイパーなど)がステアリングホイール上に設置されている。シフト操作はセンターコンソールに配置されたボタンとステアリングコラムに搭載されたパドルシフトを使用する。ウィンカーとワイパーはボタン式だが、オーディオやエアコンディショナーなどその他のインターフェースは従来の場所にあり、操作もこれまでのフェラーリ車と変わらなかった。

キーを回して赤いエンジンスタートボタンを押すと、エンジンはアイドリングに入るまで甲高い独特のうなり声をあげた。デュアルクラッチシステムは予想通り、1速に入れただけではFFが動き出すことはなかった。電子式ブレーキを解除しクラッチを繋ぐには、孔の開いたアクセルペダルを軽く踏み込む必要があるのだ。このギアボックスはオートマティック・モードにしておいても、必要に応じてパドルを引くばマニュアル・シフトが可能だ。




まずはマネッティーノをCOMFORTモードに入れ、シフトをオートにしてFFを走らせてみた。

圧倒的な排気量を誇るV12エンジンは、街中を制限速度で走るためには充分過ぎるほどのパワーを発揮する。シフトアップやシフトダウンも非常にスムーズで、カチャカチャと耳障りな音を立てることがない。オート操作でスピードを出さなければFFは従順で、フェラーリらしさは感じられなかった。FF本来の走りを楽しむには、アクセルを強く踏み込まなければいけないということだろう。

FFを堪能したいのであれば、SPORTモードに替えてマニュアル操作で走らせることをお勧めする。前輪が真っすぐな状態でアクセルを床まで踏み込んだところ、その数マイクロ秒後に車体が一瞬、スッと沈み、後輪のタイヤが路面を擦って解き放たれ651馬力が貪るように速度を上げ始めた。目の端でタコメーターの針をチェックしながら、右手でハンドルのパドルシフトを順にシフトアップしていくと、エンジンの回転数は8000rpmに達した。シフトチェンジは筆者が想像した以上に俊敏でスムーズで、エンジンが最大回転数に達したときのエキゾーストノートは官能的だった。



時速制限のある道で運転していることを腹立たしく思いながら、筆者はブレーキを踏んだ。FFではアクセルペダルから足を離すと同時にキャリパー内のピストンを作動させてブレーキの応答性能を高めているので、筆者がブレーキを踏むと即座に減速した。数秒後には約1880kgの運動エネルギーは熱に転換され、カーボン・セラミック素材のブレーキに吸収される。高機能なブレーキシステムのおかげで、FFは完全に停止したが、この道ではFFのスピードを堪能しきれず、物足りない感があった。

しかし、ロサンゼルス近郊の峠道として有名なマルホランド・ハイウェイに近づくと、その心境は一変した。走行モードはSPORTのまま、パドルシフトでシフトチェンジを行いながら、エンジンを4000rpmにキープ維持してコーナーに差し掛かかる。最初のターンインは筆者がこれまで運転したどの4シーターモデルより素早く、ステアリングの反応もまるで車体が1トンも軽くなったかのようにダイレクトだ。横揺れも気になるほどではなく、コーナーのターン時にピレリのタイヤがきしむ音も聞こえない。またシートボルスターが筆者の体をしっかりと支えてくれた。

自信がついてくると、今度はもう少しスピードを出してターンに挑戦した。筆者がこれまでに運転したフロントエンジンの4輪駆動車と同じように、FFもコーナーでブレーキングが遅れるとアンダーステア気味になると予想したのだが、FFは驚くほどニュートラルステアだった。ステアリングに鈍重さや不可解な重さは感じられず、不自然なキックバックを伝えて来ることもなかった。フィードバックは精密かつ正確で、ほとんど完璧と言っていい。エンジンの搭載場所や駆動方式を知らなければ、おそらくミッドエンジンの後輪駆動だと勘違いしただろう。




FFは4輪駆動システムを搭載しているが、重量配分は47:53と、リアへより大きな荷重を配分するレイアウトを維持しているため、テールが安定している。それでも、コーナーの途中でアグレッシブにスロットルを開ければ、前輪より先にリアが僅かに滑り出すことに気付いた。だがそこで最大20%のトルクが前輪に伝えられ、まるで魔法のように全てがラインに収まるのだ。FFはどう見てもコンパクトなクルマではないが、小型スポーツカーのような軽快な走りを見せてくれる。

その翌日、筆者は妻と2人の子どもをFFに乗せ、LA北西部のリゾートタウン、オーハイに日帰り旅行に出かけた。往復で100マイル(約160km)ほどの距離で、険しい山道ではなかったが、4つのシートは全て埋まり、トランクには荷物で一杯の状態でのドライブだった。少しだけ前に移動させた助手席に妻が座り、その後ろには6フィート(約183cm)近くの息子が座る。6フィート2インチ(約188cm)の筆者の後ろには娘が座った。デュアルゾーン・エアコンディショナーの温度を21℃に設定し、シフト操作をオートにしたので、4時間ほどのドライブは家族全員が快適に過ごせた。妻は従順な乗り心地と、助手席のダッシュボードに設置されたスピードメーターやタコメーターなどを表示するデジタルディスプレイ(オプション)を褒め、子供たちは後部座席の快適さや、前座席の下に靴を置けるスペースがあることを喜んだ。

FFは時速65mph(約105km/h)制限の公道でも問題なく走ってくれた。だが普通の道では COMFORTモードでさえ物足りなく感じ、このクルマの実力を出し切れないと感じた。SPORTモードなどのアグレッシブな走行モードでは、きっと多くの人が直線コースを走らせたいと思うだろうが、このフェラーリは乗員をまだ行ったことのない道に連れ出し、V12の咆哮を峡谷に響き渡らせるような、そんなふうにドライブされることを好む。




運転する楽しさを追求したFFはその点で、ヴァンキッシュやコンチネンタルGTスピード、CL65 AMGより勝っているといえる。このセグメントのクルマはどれも速度と操舵性に優れ、快適性と十分な装備を備えているが、フェラーリのFFほど強烈な印象を残すクルマは存在しない。人を引き付ける魅力があり、どんな天候にも左右されない実用性を兼ね備えている。ボディサイズやホイールベース、車体重量や4シーターということを考慮に入れれば、FFのパフォーマンスは神がかり的とさえ言える。

FFを返却する数時間前に、近くの友人の家に寄って、友人の息子をドライブに連れていくことを提案した。筆者が少年たちにFFのボンネットを開けて赤いひび模様のインテークプレナムや、膝をついてカーボン・セラミック素材の大きなブレーキを見せると、彼らは目を皿のように丸くした。一通りの説明を終えると、少年たちをFFに乗せて近所の周りを走ることにした。

筆者が街のはずれに向けてクルマを走らせていた最初の数分間、3人の少年はみな静かだった。最後の角を曲がったとき、窓を全開にしてエンジンがレッドゾーンに達した音を確認すると、シフトを1速ずつ上げていく。少年たちはこれまでに経験したことのない加速を体験し、あっけにとられていた。筆者は満足して減速した。



後部座席に座る5歳の子どもの怯えた声が沈黙を破った。

「ママに会いたい」

筆者は少年をリアビューミラー越しに見ようと首を右に伸ばし、「今なんて言ったの?」と少年に注意深く尋ねた。そのあとの数秒の沈黙が筆者を緊張させた。いたずらに少年に精神的ショックか、もっと最悪の場合、むち打ちにでもさせてしまったのではないかと不安になったのだ。

そのとき、その少年とミラー越しに目が合い、彼が満面の笑みを浮かべているのが見えた。クルマにすっかり魅了された少年は続いてこう言った。

「冗談だよ、もう1回やって!」

【基本情報】
エンジン:6.3リッターV型12気筒
パワー:最高出力651hp/最大トルク69.7kgm
トランスミッション: 7速DCT(デュアルクラッチ)
0-60mph:3.5秒(推定値)
最高速:208mph(約335km/h)
駆動方式: 4WD
車体重量:1,880kg
座席数:2+2
荷室容量:450ℓ/800ℓ〔最大〕
燃費:市街地11mpg(約4.7km/ℓ)、高速道路17mpg(約7.2km/ℓ)
メーカー希望小売価格:295,000ドル(約2915万円)
試乗車価格: 377,341ドル(約3730万円)

By Michael Harley
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:日下部博一

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