【試乗記】「ほぼ完ぺきだ!」 新型「コルベット・スティングレイ」(ビデオ付)
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待つのが好きな人はあまりいない。とりわけ、待つ相手が地球上で最も期待されている新型スポーツカーの1つとなればなおさらだ。しかし、世界はこのスポーツカーの詳細を得るのに5年も待たされた。

「C7」と呼ばれる新型「コルベット」の噂が初めて飛び交ったのは2008年のこと。しかし、厳重に偽装されたプロトタイプが初めてキャッチされたのは、2012年の初めだった。その後、シボレーは実体のあるプロトタイプの走行を世間にさらしたが、次期フラグシップを見事に隠し続けた。そして今年1月。ようやくシボレーはデトロイトオートショー正式に新型「コルベット・スティングレイ」のカバーを外し、内部を公開した。

それからさらに待ち続けること半年。ついに試乗する機会が筆者に巡ってきた。

コルベットのステアリングを握り、アスファルトに2本の太いタイヤの跡を残すと、鬱積していたフラストレーションや、モヤモヤした気持ち、何年にもわたる見当違いの憶測の全てが、たちどころに消えてしまった。これまでの"待つことの苦しみ"には価値があったのだ。




過去のコルベットを必要以上に飾り立てたり、甘い言葉で伝えたりする必要はないだろう。過去60年間、米国を象徴するスポーツカーであったコルベットは、どの世代のモデルも完璧とは程遠かった。後期型モデルは大きな馬力を生み出し、素晴らしいコーナリンググリップを発揮したものの、スタイリングやパフォーマンス、装備をひっくるめた"スポーツカー"というパッケージとして見ると、コルベットはエンスージストに言葉を失わせてしまうほどの感動をもたらすクルマではなかった。だがそれもこれまでの話だ。

筆者の試乗インプレッションをお伝えする前に、7代目となる新型コルベット(C7)の概要をおさらいしておこう。(さらなる詳細は、我々が今年初めにお届けした記事(英語)を読んでいただきたい)

「エンジンレイアウトがミッドシップに変更されるのでは?」という噂が絶えなかったが、C7は先代までと同様に、エンジンをフロントに配置した後輪駆動を継承している。しかし先代たちとは異なり、C7は重いスティール構造の大半を廃止し、軽量なアルミフレームを採用。構造用接着剤を用いて多くの場所を接合するなど、革新的な組み立て工法のおかげで、新型のシャシーは2013年モデルよりも45kg軽くなり、剛性は57パーセント高まっている。軽量化はシャシーにとどまらず、羽のように軽いボディパネルやカーボンファイバー製のルーフ、重量を最小限に抑える助けとなるカーボン・ナノコンポジット製アンダーパネルも採用している。生まれ変わったボディは流線形(空気抵抗係数を示すCd値はわずか0.29)でスタイリッシュ、独特の雰囲気を放ち、しかも軽い。車両重量はわずか1,496kgだ。




コルベットの伝統とも言うべき8気筒は引き継がれたが、エンジンは刷新され、完全に現代的になった自然吸気式6.2リッターV型8気筒となった。このオールアルミ製「LT1」型スモールブロックエンジンは、直噴システムと連続可変バルブタイミングを特徴とし、最高出力455hp(日本公式HPでは460ps)と最大トルク63.6kgmを生み出す。シボレーがこれまでコルベットに搭載した中で"最もパワフルなスタンダードエンジン"と呼ばれるのに相応しい力を持っている。

最近はマニュアル・トランスミッションを設定しないクルマが増える傾向にあるが、ありがたいことに、コルベットのオーナーには自分自身でギアを入れるか否かの選択肢が今回も提供される。2013年モデルの6速MTに代わり、シフトダウン時にエンジンの回転を合わせてくれる「アクティブレブマッチング(ARM)」機能が付いた新開発の7速MT(トレメック製TR6070)が標準搭載となる。「ペダルはやっぱり2つがいい!」という方には、先代からのキャリーオーバーとなるパドルシフト付6速AT(ハイドラマチック6L80)が用意されている。どちらのトランスミッションも、ギアボックスは車体後方に搭載されたトランスアクスルに組み込まれ、全体の車体バランスを最適化するのに一役買っている。また、米国ではオプションとなる「Z51パフォーマンスパッケージ」を装着したモデルには、3モードの電子制御LSD(リミテッド・スリップ・ディファレンシャル)が装備される。

サスペンションも大いに見直されている。ショート/ロングアーム構造が復活したものの、構成部品は一新された。中空のロアコントロールアームと新設計のアルミニウム製リアトーリンクが組み付けられ、先代の設計と比較して約5kgの軽量化に成功。標準モデルには、ビルシュタイン製でピストン径35mmの単筒式ショックアブソーバーが装備され、前述のZ51パフォーマンスパッケージにすると、ピストン径が45mmになる。ゼネラルモーターズ(GM)の3世代目「マグネティック ライド コントロール(磁性流体を使って減衰力をリアルタイムで制御するシステム。以降MRC)」は、米国ではZ51パフォーマンスパッケージのオプションとして提供されるが、先代よりも反応時間が40パーセントも速くなっているとのことだ。




パワーステアリングは、軽量化や最適なパッケージング、燃費の向上のために電動式となり、アシスト量やギアレシオが走行状況に応じて可変する。シボレーはステアリングコラムの剛性を150パーセント、ねじり剛性を600パーセントアップさせた。これにより、ステアリングシステムは先代より5倍も固くなっている。全体的に、新しいステアリングは直進安定性やリニアな操舵感、パフォーマンスの高いドライビング時のステアリングフィードバックが向上するように設計されたという。

標準装備されるホイールは鋳造アルミニウム製で、フロントが18×8.5インチ、リアが19×10インチ。コルベット専用に設計されたミシュラン製ランフラットタイヤ「パイロットスーパースポーツ」(フロント245/40R18、リア285/35R19)を履く。Z51パフォーマンスパッケージでは、さらに大きな鍛造アルミニウムホイール(フロント19×8.5インチ、リア20×10インチ)が奢られる。タイヤの幅は標準タイヤと同じだが、サイドウォールが短くなり(つまりフロント245/35R19、リア285/30R20となる)、デュアルコンパウンドのラバーがよりアグレッシブな走りを実現させる。13年モデルの「グランスポーツ」よりもタイヤ幅が狭くなったことに気づいた方もいらっしゃるだろうが、シボレーによると、フットプリントを小さくしたことで、ステアリングのレスポンスと燃費が向上し、それでもなお、コーナリング時の最大横Gは1Gを超えるという。

ブレーキは、4ピストン固定キャリパーを持つブレンボ製を採用。標準のローター径はフロント320mm、リア338mmとなっている。ローターの摩擦面積が35パーセント大きくなり、シボレーによれば、制動距離が9パーセント短縮されたという。Z51パフォーマンスパッケージでは、スロット付ローターが装着され、ローター径も標準より大きくなる(フロント345mm、リア338mm)。また、激しいブレーキング時の冷却を向上させるブレーキダクトも装備される。




メカニカルな点についてのC7の数字は素晴らしく思える。しかし、それは先代でも同じだった。大抵の人が認めるだろうが、コルベットの弱点は常にパッとしない内装だった。しかし、評価できることに、シボレーはこれも解決している。

C7の全てのモデルのインテリアから、先代たちを醜く見せていたプラスチックの表面が姿を消した。ロールス・ロイスの職人と肩を並べることはまだないだろうが、C7はキャビン内の全てに高級素材が使用され、様々なパーツはラバーやナッパレザーで包まれ、本物のカーボンファイバーで形作られている。過去に何度も指摘されている"困惑"のシートは再設計されており、標準の「GTバケット シート」か「コンペティション スポーツ バケット シート」(今後登場する予定)のどちらかを選ぶことができる。どちらのシートもフレームは軽量なマグネシウム製で、剛性を高めながら軽量化を図っている。

ここからまた3,000字を費やしてC7の新しくなった箇所を書くよりも、スペースを有効活用して、本当に重要なこと、つまり新型のドライビングダイナミクスをお伝えしよう。

大きな駐車場に10台ほど用意されたピカピカの試乗車は、トランスミッションとオプションの組み合わせが全て異なっていた。筆者が向かったのは、Z51パフォーマンスパッケージに7速MTとMRC付きのサスペンションを組み合わせたモデルだ(Z51専用の車幅いっぱいのリアスポイラーが特徴)。




ざっとC7の周囲を歩いて新しいスタイリング(シャープでエッジが効いていて、独特)をうっとりしながらチェックし、大きさを頭に入れる(新型コルベットの全長はポルシェ「911」とほぼ同じだが、SRT「バイパー」よりは長い)。サーボモーターで作動するドアを開け、コックピットへ滑り込むと、身長6フィート2インチ(約188cm)の筆者にはピチピチの感じがしたので、電動シートをいっぱいまで後ろに下げた。足を快適に伸ばせ、ヘッドルームには1~2インチ(約2.5~5cm)程度の余裕があり、太腿と背中は新しいGTバケット シートでしっかりとサポートされていた。快適性とホールド性に関しては、以前のシートよりもずっと良くなっている。素晴らしい改良だ。

新しくなったコックピットの構成は、新設計のシートと同様にどの部分も満足のいくものだ。目に見える部分をくまなく調べたが、"昔のGM"から流用された部品を何一つ見つけることができなかった。径が若干小さくなった新しいステアリングホイールは太く、筆者の手にピッタリと馴染んだ。また、MTとATのどちらを選択するにしても、全てのモデルにパドルシフトが備わっている(パドルシフトについては後述)。

ステアリングホイールの右側に付いている四角い「スタート/ストップ」ボタンを押すと、V8エンジンが瞬時に始動する。インパネの光のショーとメーターの針のダンスに続き、エンジンは静かにアイドリングに入った。デフォルトでは、エグゾーストノートは抑えられおり、気弱な感じさえしたが、容易に変更できるようになっている。

シボレーは、新型コルベットがドライバー志向になるように力を注いでおり、その努力の大半は路面状況に応じて走行特性を選べる新設計の「ドライバーモードセレクター」に向けられた。コックピットに備え付けられたこの回転ノブは、シフトレバーのすぐ後ろに位置し、あらかじめ構成された5つの設定(ウェザー、エコ、ツーリング、スポーツ、トラック)から選ぶことができる。スロットルのレスポンス、インパネの表示、ステアリングのアシスト量、トラクションコントロール、アクティブ フューエル マネジメント(燃費向上のための可変気筒システム)など、12のパフォーマンス要素が変わり、それぞれがC7の個性を完全に変えてくれる。


まず、走行モードをスタート時のツーリングからスポーツへ切り替える。タコメーターのグラフィックが変わり、後部中央の4本のテールパイプから発せられるエグゾーストサウンドがすぐさま威嚇するような音色になった。

新開発の7速MTは、ペダルを離す最後の数インチの間でしかクラッチがつながらず、機械的な感じがして、良い意味でそれとなく安心感を与えてくれる。一度ならずエンストさせてしまい、C7特有のスタートに慣れるのに少々時間がかかったが、走り出してしまえば、C7はシルクのようにスムーズだった。お伝えした通り、アクティブレブマッチング(ARM)は7速MTモデルでは標準で装備されている。ステアリングホイールに備わったパドルシフトは、6速AT車ではギアを選択するために使用するが、MT車ではARMのオン/オフ用に設けられている(ARMがアクティブになると、インパネのシフトポジションインジケーターが白から黄色に変わる)。ギアが完全に選択されるまで待たなければならない他社の類似システムとは異なり、GMのシステムは先進センサーを使って次のギアを予測し、回転合わせを行う。実際にやってみると、筆者がこれまで操作したことのあるどのシステムより、上手く機能した。

エアアウトレットのついたボンネットの下から生まれるパワーは否定しようがない。アクセルペダルを踏み込むと、C7は荒々しく飛び出し、控えめなところがどこにもない。シボレーによると、0-60mphは3.8秒で、1/4マイル(約402m)の走行タイムは、119mph(約191km/h)で12.0秒とのことだ。実際に運転すると、首が折れてしまいそうな加速力とV8エンジンの刺激的なサウンドが相まって、その速さを強烈に体感できる。バーンアウトはいとも簡単にできたが(トラクションコントロールとスタビリティコントロールはすっかり打ち負かされてしまうようだ)、路面に張り付くミシュランのコンパウンドタイヤは白煙を発しなかった。ただ、これは路面がアスファルト舗装だったからかもしれない。




シボレーは、コルベットで高速道路走行時の燃費を29mpg(約12.3km/ℓ)にできたことをとても誇りに思っている。この燃費は、7速のギア比がいらいらするほど高いこととアクティブ フューエル マネジメント(455hpのV8は、特定の条件下で安定した巡航をすると、文字通り126hpのV4になる)によって達成されている。高速道路のある区間で、筆者はC7を60mph(約96km/h)まで加速させ、7速に入れた。そこからアクセルを目いっぱい踏み込んでみたところ、加速は"無い"も同然で、70mph(約113km/h)に到達するまでに、筆者の腕時計で約10秒もかかった。この設定だと、燃費性能を追求したシボレー「クルーズ・エコ」の方が速く加速できるに違いない。6速はほんのわずかにマシという程度だったので、筆者は3時間の試乗の間、1速から5速までしか使わなかった。試乗中のガソリン代を筆者が支払わなくていいというのもそうした理由の一つだ。

道路標識のスピードよりもはるかに飛ばしても、C7は非常に安定しているが、カーブの多いセクションでも同様に優秀だと気づいた。タイヤのグリップ力は素晴らしく、MRC(市場に出ているアクティブシステムの中でもいまだに筆者のお気に入りだ)は落ち着き払っていた。驚くかもしれないが、新設計のシャシーはとても軽い感じで、ちょうどいい重さのステアリングを介して容易にクイックな荷重移動ができた。また、制動力も強みだろう。C7に成績をつけるとしたら、主要なパフォーマンス項目(加速、ブレーキ、コーナリング、高速域での安定性)において"オールA"だ。




しかし、MTモデルの後に運転したATモデルには、Z51パフォーマンスパッケージとMRCのオプションがなく、筆者は好印象を受けなかった。伝統的な6速ATはC7のパフォーマンスの切れ味を失わせてしまっているようだ。MTと比べ、ソフトで、スローで気だるい(パドルシフトによるシフトチェンジでさえも、イライラさせるタイムラグがあった)感じがした。フル加速の点に関してはほんの少し素早かったものの、ギアボックスはドライビングで得られる興奮の大半を奪い去ってしまった。筆者の長年の持論に賭ける必要はないが、今後発表されるハイパフォーマンス版の「Z06モデル」(おそらくZ07になるだろうが)では、使い古されたATをお払い箱にして、相応しいデュアルクラッチ式のATが導入されるのではないかとみている。

シボレーは、トラックでのドライビングを再現するために、飛行場に大きなスキッドパッドを用意し、Z51パフォーマンスパッケージとMRCを装着した7速MTモデルでエンドレスに周回することをジャーナリストたちに許してくれた。ドライバーモードセレクターで走行モードをトラックに設定すると、C7はバランスのとれたシャシーのおかげもあって優れた能力を発揮し、オレンジの三角コーンのすぐ根本を毎回、容易に走らせることができた。制動力は強く、ペダルによる調節も良好だ。コーナー中盤のバランスは素晴らしかったが、いくつかのタイトなコーナーで遅れ気味にブレーキを踏んだ際、わずかなアンダーステアに気づいた。筆者はこれを予期していなかったので、本当にがっかりさせられた。きちんとしたトラックでC7を走らせて、ハンドリング性能を詳しく検証するのが待ち遠しい。

その他の失望した点に関しては、C7のリストはかなり短い。新開発のドライバーモードセレクターのデザインは素晴らしいが、モード切り替え時の電子反応が遅いように感じ、また、回転ノブは1回で狙ったモードに合わせるのが困難だった(なぜ、各モードが通過する時にストッパーが働くようにしないのだろうか)。スタイリッシュなサイドミラーはカッコいいが、小さすぎて車体後方やサイドをしっかりと確認できない。半透明のアクリルのルーフパネル(3種類のルーフから選べるうちの1つ)は、キャビン内に太陽光が入り過ぎて暑くなってしまい、その結果、不透明のルーフパネルを装着しているモデルよりも温度調節システムが働いてしまう。最後に、ドアのロックの設定にかかわらず、2、3回連続して素早くドアのリリースボタンを押せばドアが開くようにしてほしい(毎回、ドアのロック解除スイッチを捜さなければならないので、C7から出る時には複数のステップを踏む必要がある)。



全体的に見て、筆者は新しく生まれ変わったコルベットにとても感動した。筆者がこれまでに運転したコルベットの中で1番だ。

しかし、重要な問題がまだ残っている。SRTバイパーポルシェ 911との比較だ。3車を交互に運転することはできなかったが、別々に運転したことのある筆者としては、3車の中でバイパーが最も魅力的で、刺激的で本能的だと思う。バイパーを飼いならそうとするSRTの試みに反し、バイパーはむき出しの切れ味を持つ珍しい車で、V10エンジンが怒号を上げて目覚める時に心拍数が増大するように意図的に設計されている。ポルシェ 911は3車の中でも紳士的で、品質は最も良いが、リアに搭載された水平対向6気筒エンジンの物腰は見事なまでの洗練さ、バランス、気品と引き換えに全体的なパフォーマンスをいくらか諦めている。

全く新しいC7こと、コルベット・スティングレイは3車の中で最も多才なスポーツカーとして出現し、技術的にも傑作といえる。これほどのハイパフォーマンスにもかかわらず、かなりのお買い得であるのに加え、日々運転にも相応しい礼儀正しさと、いつでもトラック走行ができる能力の間で最高のバランスを見せている。完璧なパッケージには及ばなかった先代たちとは異なり、シボレーは一片の言い訳もないスポーツカーとしてのコルベットをついに届けてくれた。

【基本情報】
エンジン:6.2リッターV型8気筒
パワー:最高出力455hp(460ps)/最大トルク63.6kgm
トランスミッション:7速MT
0-60mph:3.8秒
駆動方式:後輪駆動
車体重量:1,496kg
座席数:2
燃費:市街地 17mpg(約7.2km/ℓ)、高速道路 29mpg(約12.3km/ℓ)
ベース価格:5万1,995ドル(約514万円)

By Michael Harley
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:日下部博一

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