紛れもない珍車であることは承知のうえで、今回はアリエル「アトム3」についてレポートしよう。アリゾナ州にあるカーディーラー、フォーマンモータースポーツの協力を得て、筆者はついにこのスポーツカーに迫ることができた。

アトム3は、軟鋼パイプのフレームに、ホンダ部品倉庫から持って来た自然吸気2.0リッター K20Z 4気筒エンジンと6速マニュアルのトランスミッションを搭載し、いくつかのファイバーグラスまたは少しのカーボンファイバー製パーツ、4つの車輪、4点式シートベルトが付いた2つの軽量なレース用シート、ステアリング・ホイールとペダル類、それに"オプション"のフロントガラスが付いている。

しかし、それらのパーツを組み合わせただけという以上の、非常に見事なクルマに仕上がっている。筆者も皆さんと同様、アトムのシートに身を沈めて日没に向かって走ったらどんなだろうといつも夢想していた。実際に乗ってみると、最新モデルのアトムは今まで作られたクルマの中で最も純粋に、最も顕著にドライバーズカーとして焦点を合わせて開発されたクルマだということが確信できた。

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ドライバーシートに乗り込むところから、新鮮な体験だった。車には、ドア、ルーフ、フードがないので、まず足を高く持ち上げ、微動だにしないほどしっかりした造りのアトムの基本構造を構成している格子状のスチールチューブのフレームをまたぎ、シートを踏みつけなければならない(靴の汚れはきちんと拭いておくべし!)。それは、まるでタイヤが4つ付いたジャングルジムによじ登るような感覚だ。しかし、一度やり方を覚えると、それほど難しくはない。そして、ついに何年も心待ちにしていた試乗の瞬間が訪れる。乗り込む際の苦労など一発で晴れてしまった。

アトムの試乗といえば、英人気番組『トップギア』の司会者、ジェレミー・クラークソンが風圧で顔を波打たせていたのが印象深い。そして筆者はというと、クラッチを放すとすぐにエンストしてしまった...。

ここで、アトム3のエンジンをかける儀式について説明しよう。コックピットの外にある大きな赤いプラスチック製のキーをオンにして、飛行機のコックピットにあるようなトグルスイッチを切り替えた後、これまた分かりづらいスターターボタンを押す。何度かやってみると、スムーズにできるようになるが、未経験者にとっては、盗難防止装置が付いているようなものだ。




エンジンをかけてアイドリングの音を聞くと、まさにホンダのK型エンジンだった。試乗車にはオプションで7171ドル(約72万円)のスーパーチャージャーが搭載されていたため、標準では245hpの出力が300hpまでパワーアップしている。大したパワーじゃないと思うかもしれないが、アトムの重量が約612kgであることを考えると、パワーウェイトレシオが約2kg/hpに匹敵するという、ドライビングの楽しさと怖さが同居する車となっているのだ。

そして、その恐怖と快感を増幅させるのが、スーパーチャージャーから聞こえる、映画『スター・ウォーズ』シリーズに登場する戦闘機「Xウイング」のような音と、抜けの良い排気音だ。ドライバーの右耳の後ろ、数センチのところにF1チックなエアインテークシュノーケルを設けているため、スーパーチャージャーは小銭を詰まらせたのではないかと思えるほどの轟音で、まるでそこら中の魂をエンジンという名のブラックホールへと吸い込んでしまいそうな唸り声を上げる。自分のすぐ後ろにあるインテークへと空気が吸い込まれて、小容量のスーパーチャージャーの中へ入っていくサウンドを聞きたいがために、タップダンスをするように何度もアクセルペダルを踏んでしまった。




アクセルを強めに踏み込んで、いざ出発。アトムの構造から皆さんも想像できると思うが、路面や前方を飛ぶ虫、他の車のホイールウェル(タイヤハウス)など、周囲の景色がすべて目に飛び込んでくるので、少々落ち着かなかった。そこで、整備された舗装道路を求めて、急いで車を走らせた。

安全な場所に来ると、走りの感触を堪能できるようになった。アトムに使用されているオールアルミニウム製プッシュロッド式のビルシュタイン製ショックアブソーバーの動きから、パワーアシストは付かず超クイックなギア・レシオのステアリングラックが前後に動く様子まで、ほとんど全てのパーツの動きを絶えず見ることができる。ロータスの創設者、コーリン・チャップマンの概念をこれほどまでに体現した車は、最近では他に思い出せない。



走るうちに、だんだん心地よくなってきたので、20mph(約32km/h)のスピードで、ギアをセカンドに落としてから、一気に加速してみた。すると、スーパーチャージャーが爆発的に作動して、視界がゆがみ、頭がシートの背もたれに抑えつけられ、1秒も経たないうちに、エンジンの回転数がリミッターに当たった。オプションのシフトランプをステアリングホイールに装着しておくのが得策かもしれない。ギアをサードに入れて、同じことを繰り返してみたが、「足をアクセルペダルから離せ」という自衛本能が働くまでスピードメーターを見る余裕がなかった。アリエルでは、スーパーチャージャー付きのアトムは3秒もあれば余裕で0-60mphを加速すると言っていたが、それは充分信じられた。そして無事、試乗が終了した。

アトム3には、11秒以内で0-100km/hと100-0km/hが可能という興味深いデータもある。100-0km/hが11秒以内というのは、ブレーキを踏み込んだときに前頭葉がシビレるくらいの数字だ。とにかく、アトムは最高の車だった。これほどにも激しく、心身に影響を及ぼす加速は、普通なら2輪車でなければ体験できない。筆者も、ロケットなみの加速のクルマに乗った経験は数回しかないが、それ以上に強烈な体験を、しかも何度も簡単に味わえるクルマはアトム以外にない。

試乗車は、3975ドル(約40万円)のアルコン社製トラックブレーキパッケージを搭載していたため、リモートブレーキアジャスターでブレーキバイアス(ブレーキの前後の配分)を多少調整することができた。アトムほどの減速を人生で経験することはほとんどないと思う。つまり、アトムは加速よりも減速して止まることに優れているといっても過言ではない。それくらいにとてもすばらしい減速だった。



試乗したアトムは、コッパー(銅)カラー(カスタムカラーで750ドル)で、新品のヨコハマタイヤA048(サイズ225/45/16で367ドル)に16×7インチのワイドなホイールパッケージをオプションで付けていた。同じくオプション仕様のサスペンションは、レートの異なるツインコイルスプリングを使用しているため、裏道やレースコースでも優れた能力を発揮しつつ、比較的、扱いやすい乗り心地乗り心地が得られる。粘着性ラバーを使用したタイヤ(A048)のグリップはこの世のものとは思えない。ドリフトをしようにも、うまくできない。いや、できることはできるが(フォトギャラリーのタイヤが煙を上げている写真を参照)、ザラついたアスファルトにしっかりとくっつくタイヤのトラクションを克服するには、自分の持つドライビングテクニックを総動員して必死で頑張るか、明らかにぎこちないドリフトで我慢するしかない。だから、そんな楽しいおふざけも、すっかり空振り状態だった。直進以外のあらゆる方向にホイールを動かしながら走る際にかかる横力は1Gをはるかに上回る。カウンター・ステアの真似事で、スーパーカースペックのアトムのグリップ力を奪うことはできないのだ。



試乗車には、一目で分かるようなオプション装備がエクステリアにもいくつか施されていた。フルガラスのウインドスクリーンパッケージ2850ドル(約28万5000円)(小型のエアロスクリーン2枚を146.85ドルで装備することも可能)、アトムのようにオープンなコックピットでは吹きつけてくる風がつきものだが、クリアプラスチックのサイドパネルが風よけとしてそれなりに役立った。それよりもありがたかったのは、フロントガラスが小石や大きなバッタが跳んでくるのを防いでくれたことだ。フロントガラスを付けたくないという人は、フルフェイスのヘルメットもしくは最低限でも目を守るためにアイプロテクターを装着することを強くオススメする。

ここまでのところで、この試乗車が、アリエル「アトム3」の基本価格49980ドル(約500万円)をかなり上回る金額になっていることがお分かりだろう。実際、その約2倍の82695ドル(約830万円)という価格が付いていた(オプションを含めてということ?)。素のアトム(スーパーチャージャーを付けていない)でも、十分に走りを楽しめると思うが、この試乗車のようにアーク放電によるパウダーコート加工を美しく施したシャーシを持ち、このパフォーマンスなら、この価格も納得できる。デザインとコンセプトがアトムに最も近い車は、ロータス「エリーゼ」だろう。価格もほぼ同額だ。確かに、エリーゼは申し分なくすばらしく、アトムと比べるとかなり実用的な車だ(こんなことを書いている自分が信じられないが...)。しかし、それがもっと楽しいかと言えば...もう一回考え直した方がいい。アリエル「アトム3」を超えるほど内蔵に響くドライビングを体験させてくれる4輪車は他にはないし、現在、作られている他の車と比べるだけ無駄というものではないだろうか。



アトムというマシンを操縦する感覚を説明するには、車という概念ではなく、全く違うアプローチの方が分かりやすいかもしれない。たとえば、自分が、米のアニメ『ルーニー・テューンズ』でおなじみのワイリー・コヨーテ(天才的な頭脳を持っている)になったと考えてみよう。いつものように、すばしっこい青い鳥のロードランナーを捕まえて食べようと、無駄な努力ながらも、アクメ社の赤いロケットにローラースケートをくくりつけるワイリー。その爆発的なワイリーの走りは、6速マニュアルのスーパーチャージャーを搭載したアトムのアクセルを目一杯踏み込んで走る感覚に近い。

そう考えると、アリエル「アトム」は、ワイリーからうまく逃げ続けるロードランナーを捕まえることができる唯一のアイテムなのかもしれない。ぜひ、ワイリーに使ってほしいものだ。

By Jeremy Korzeniewski
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

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